ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

11 / 182
知ってしまった真実

「あ……あ……」

 

非常階段の出入り口から入った浅葱は、目の前の光景を見て身が竦んだ

 

目の前に広がっているのは、床一面に広がっている血の池に、その血の池に横たわり呻き声を漏らしている武装攻魔官達

 

そういった光景を見慣れてない浅葱は、ただただ、座り込むことしか出来なかった

 

そして、そんな浅葱の前をルードルフとアスタルテが通るが、彼らは浅葱を一瞥しただけで通り過ぎた

 

そして、二人が通り過ぎて数分後、浅葱の携帯が鳴った

 

最初浅葱は、それを認識出来なかったが、ヨロヨロと取り出して画面を見て、一気に覚醒した

 

画面に表示されていたのは《吉井明久》の名前だった

 

「はい……」

 

『浅葱、大丈夫!?』

 

明久の声を聞いて、浅葱は涙が流れたが、拭うと

 

「大丈夫じゃないわよ! 歩き過ぎて足が痛いし、アイランド・ガードが壊滅状態だし!」

 

と喚いた

 

「本当に……なんなのよ……」

 

と浅葱が涙混じりに言うと、明久が

 

『襲撃してきたのは、鉄人並みにガタイのいい神父とホムンクルスの女の子でしょ?』

 

と問い掛けた

 

「なんで、明久が知ってるのよ?」

 

『ん? まあ、ちょっとばかり死にかけたからね』

 

明久の言葉を聞いて、浅葱は息を呑んだ

 

明久はなんだかんだで正直なので、嘘は言えないのだ

 

その明久が死にかけたと言ったのだ、本当なのだろう

 

「死にかけたって、あんた……」

 

『今は大丈夫だから。それで、例の二人はどこに行ったか分かる?』

 

明久が問い掛けると、浅葱は傍らに置いておいたノートパソコンを掴んで操作してから

 

「あいつら、最下層に向かってるみたいよ」

 

と言った

 

『最下層? なんか貴重な物でもあるの?』

 

「別に無いわよ。有っても、キーストーンが有るだけ」

 

『だよね……』

 

明久はそう言うと、数秒間黙考してから

 

『そのキーストーンがなにか、貴重な素材を使ってるとかはないかな?』

 

と問い掛けた

 

「そんな筈ないわよ。確か、魔術的に補強してあるけど。素材自体は至って普通の筈よ」

 

『それじゃあ、至宝ってなんのことだ……?』

 

明久の言った至宝という言葉に、浅葱は思わず眉をひそめた

 

「至宝? なにそれ?」

 

『知らないよ。あの神父がそう言ってたんだ』

 

明久がそう言ったタイミングで、ノートパソコンの画面に警告文が表示された

 

「はあ!? なによ、これ!? 軍事並のプロテクトじゃない!」

 

『無理ってこと?』

 

明久がそう言うと、浅葱は挑発的な笑みを浮かべて

 

「まさか! 私を舐めないでよね! モグワイ!」

 

浅葱が呼ぶと、ノートパソコンの画面端に不細工なアバターが現れた

 

『やれやれ……AI(ヒト)使いの荒い嬢ちゃんだぜ。俺は本来、アレに関しちゃ、触っちゃいけないことになってるんだが?』

 

モグワイが人間臭くそう言うと、浅葱はキーボードをタイピングしながら鼻息荒く

 

「そんなの無視よ、無視! とっとと、プロテクトを外しなさい!」

 

と命じた

 

『まあ、嬢ちゃんの命令ならいいけどよ……後悔すんじゃねぇぞ?』

 

「……え?」

 

モグワイの言葉に浅葱が首を傾げた直後、画面にソレが表示された

 

「なによ、これ……これが、至宝!?」

 

画面に映し出されたソレを見て、浅葱は呆然と言った

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「そっか……そういうことだったんだ……」

 

明久は呟くように言いながら、携帯を閉じた

 

「これで、彼らが戦う理由が分かりましたね」

 

雪菜の言葉に、明久は同意するように頷いた

 

「さて、急いでキーストーン・ゲートに行かないと……」

 

明久がそう言うと、雪菜はキュッと唇を引き結んで

 

「先輩……今のままでは、彼らには勝てません……」

 

と呟くように言った

 

雪菜の呟きを聞いて、明久は動きを止めた

 

「今のままの先輩では、また殺されるだけです……わかってますよね?」

 

雪菜が再び言うと、明久は無言で頷いてから

 

「彼は正規の攻魔師だし、経験もかなりあるだろうしね……でも今からじゃあ、大した戦力の強化なんて」

 

「あるじゃないですか」

 

明久の言葉に被せるように、雪菜は声を上げた

 

雪菜のその言葉に明久が首を傾げていると、雪菜は明久に近寄り

 

「先輩……私の血を吸ってください」

 

雪菜はそう言うと、制服のリボンを解いた

 

「ゆ、雪菜ちゃん?」

 

言葉の意味が分からないのか、明久は呆然とした

 

「今まで人間の血を吸ったことがないから、眷獣達は先輩のことを宿主だと認めてないって、先輩は言いましたよね?」

 

「う、うん……確かに言ったけど……」

 

明久が呆然としていると、雪菜は明久の間近にまで近づき槍の刃で首筋を薄く切った

 

すると、切り傷から鮮血が首筋に沿って流れ始めた

 

「だから、今ここで私の血を吸えば、眷獣達は先輩を宿主と認める筈です」

 

「そうかもしれないけど、確証は……」

 

と明久が言いよどんでいると、雪菜は明久の目を見つめて

 

「確証が無くとも、確率が有るなら、それに賭けたいんです」

 

と言うと、僅かに首を傾げて

 

「それとも……私じゃ、魅力は無いですか?」

 

と問い掛けた

 

「いやいや、雪菜ちゃんは可愛いから! むしろ、それが困るわけで!」

 

と明久が慌てているて、雪菜は明久に抱き付き

 

「だったら……問題ないですよね?」

 

と呟くように問い掛けた

 

その言葉を聞いて、明久はゴクリと喉を鳴らすと

 

「……僕初めてだから、痛くしたらごめんね……」

 

と言うと雪菜を抱き締めて、雪菜の首筋にその鋭く伸びた犬歯を突き立てた

 

すると、雪菜の口から熱っぽい吐息が漏れた

 

茜色の陽の光が、一つになった二人を照らした

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「お、おぉ……」

 

地下深く、海底付近

 

そこは広大な広さのスペースで、巨大な構造物が鎮座していた

 

ルードルフはその構造物を見て、感動したように涙をこぼしながら両膝を突いた

 

正確に言えば、その構造物、キーストーンの中に埋まっている物を見ていた

 

しかし、数秒もすればそれは荒々しい笑みに変わった

 

「ロタリンギアの聖堂より簒奪されし不朽体……我ら信徒の手に取り戻す日を待ちわびたぞ! アスタルテ! もはや、我らの行く手を阻むものはなし! あの忌まわしき楔を引き抜き、退廃の島に裁きを下しなさい!」

 

ルードルフは高らかに笑いながら、背後に眷獣を纏って立っていたアスタルテに命じた

 

だが、アスタルテは一切動かずに

 

命令認識(リシーブド)。ただし、前提条件に誤謬があります。ゆえに、命令の再選択を要求します」

 

と言いながら、視線を上に向けた

 

「なに?」

 

アスタルテの言葉を聞いて、ルードルフは怪訝そうな表情を浮かべながらアスタルテの視線を追った

 

視線の先、キーストーンの後ろから二人の少年と少女が現れた

 

片や、槍を持った凛とした少女 姫柊雪菜

 

そして、もう片方は血に染まったボロボロの制服を着た第四真祖

 

吉井明久だった

 

「やあ……少しばかり、今の命令は待ってもらうよ」

 

明久はそう言いながら、ニヤリと笑みを浮かべた

 




次回、いよいよ戦闘です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。