恋愛断技編と同じく、11巻まで来てもこう書くというわけではありません。
今回はちょっと文体を変えてみたり。ちょっと軽い感じで。
温泉。総二はいま、一糸まとわぬ姿、つまり裸だった。
湯に浸かり、視線を水平より少し上の方で固定し、頭の中で素数を数える。別に、いつもそうしているわけではない。そうしないと、イロイロと抑えがきかなくなってしまうからだ。なぜ素数なのかは自分でもわからないが。
背中には、柔らかくも温かい感触が触れている。浸かっているお湯よりも温度は低いはずだが、いまの総二には、それ以上の熱を持っているように感じられた。いや、熱いのは自分の躰なのかもしれない。
背中に触れているのは、愛香の背中だった。背中合わせで、一緒に温泉に浸かっている。ともに湯に浸かっている以上は当然だが、彼女もまた、生まれたままの姿である。端的に言えば、裸だった。全裸だった。大事なことなので二回言った。誰に言っているのかわからないが、思考回路はショート寸前であるため、自分でもよくわからない。いますぐ会いたい相手はすでに背後にいるのだが、この状況で後ろをふりむくのは、いろいろと勇気がいる。泣きたくなるような月明かりも射しこんでいるし、純情どうしよう。心は万華鏡。やはり自分でもなにを考えているのかわからないほど、総二は混乱していた。
つい先日、総二がツインテール属性を奪われた一件では、みんなにとても世話になった。そのお礼とお詫びとして、総二に可能な範囲でみんなのお願いを聞くことにしたのだ。
その内のひとつである尊のお願いが、みんなでどこかへ旅行をしようというものであり、心身を癒せる場所、温泉などがいいのではないかと提案されたのだ。
尊としては、あくまでも温泉は例えであり、総二たちの好きなところで構わないとのことだったが、尊の『お願い』であったこと、さらには皆が皆、肉体的にも精神的にも疲れを覚えていたこともあり、満場一致で温泉に決まった。問題となったのはどこの温泉に行くかだったが、慧理那の母である慧夢から、神堂家所有の温泉地があると言われ、招待されたのだった。名は、神堂温泉。直球過ぎである。
いま入っているこの温泉は、ツインテールを尊ぶ神堂家六千年――ずいぶん盛ってる気がするが――の歴史において、温泉に浸かる上で身につけていいのはツインテールを結ぶものだけで、タオルや水着すら許されないほどだという。混浴である。ここに来てすぐにも浸かったのだが、同行した全員と一緒に入るはめになったのだ。
ツインテイルズの仲間である愛香やトゥアール、慧理那にイースナ、メガ・ネプチューン=Mk.Ⅱことメガ・ネ――ゆるキャラであるメガネドンの気ぐるみを着ているが――は言うに及ばず、神堂家のメイドにして慧理那の護衛兼ツインテール部顧問の尊、総二の母である未春に、慧理那の母であり陽月学園理事長、慧夢。そこまでならばツインテイルズ関係者であるため、テイルレッドに変身することで少しは気を楽にすることもできたかもしれないが、あいにく今回は愛香の姉である恋香がいた。結果、男の姿のままで、気まずい気持ちを抱えて温泉に浸かることになった。疲れをとるために温泉に浸かりに来たというのに、精神的にはむしろ疲れることになったのだった。
いや、心の底から嫌だったわけではない。総二もまた男であり、そしてツインテールを愛する者だ。
普通、風呂に入る時は、ツインテールをほどいて髪の手入れをしなければならない。美しいツインテールを、いやツインテールだけでなく、女性の命といえる髪の美しさを維持するため、それは当然のことだ。しかしここでは、ツインテールのままで、湯に浸かれる。ツインテールを浸からせることで、さらにツインテールを輝かせる。いつでも愛香のツインテールを見ていたいと思っている総二にとって、願ってもない場所ではあるのだ。
それに、温泉の効能によってだろうか、総二の頭はどんどん火照り、愛香を抱き締めたくてしょうがなかった。愛香とふたりっきりであったなら、そしてここが神堂家のものでなかったなら、気恥ずかしさを覚えながらも温泉と彼女を堪能していただろう。
だが、そこに居たのは愛香だけではない。実の母や、愛香の姉の前では気まずくてしょうがないというか、どんな罰ゲームだ。なんだかいまさらな気もするが、気にしてはいけない。
トゥアールをはじめとする女性陣もいた。いろいろ制御が利かなくなったためか、総二の中から作られたツインテイルブレスが可視化し、それを隠すために愛香に抱きつかれてさらに頭が昂ったところで、彼女たちにも抱きつかれてしまったのだ。ほんとうに、ほんとうに大変だった。コミカルに湯に沈んでいくメガネドンの姿を見て冷静にならなかったら、危なかっただろう。ありがとう、メガネドン。
どうにか入浴を終えたあとの食事は、すばらしいというよりほかないものだった。神堂料理というジャンル名については気にしない。だが、その食事の時にも、いろいろあった。
トゥアールが自作して持ちこんだ、トゥアールジュース。味自体はかなりのもので、総二も含めてみんなの評価は上々だった。だがそれが、混沌のはじまりだった。隠された人格とでもいうのか、普段とは違う一面を何人かが見せたのだ。
いきなり脱ぎ出し、丁寧かつワイルドな言葉でアグレッシブに荒ぶる――なにを言っているのか自分でもわからないがそんな感じ――慧理那や、メソメソと泣きはじめ、総二にしなだれかかってきた尊、いつも通りの痴女だが、いつもとは違う痴女になったトゥアールに、頭の上に『!?』という記号が見えそうな、まるでヤンキーのような空気を撒き散らす恋香、そして未春に言い寄る慧夢と、いろいろと大変なことになった。
総二と愛香、それに未春には特に変化がなかったが、未春は慧夢に押し倒されそうになり、愛香はトゥアールに襲われかけた。性的に。イースナはメガネドンの膝枕で寝た。
急いで愛香をトゥアールから引き剥がし、抱き寄せると、瞳を潤ませた彼女と見つめ合い、その可愛らしさにドキドキしながらもホッと安堵した。怖かったのだろう。以前ソーラになった時に、自分もトゥアールに襲われかけたので、総二にもその気持ちはよくわかった。あの時は逆に愛香に助けてもらったのだが、当事者になってみると意外と動けないものである。
それはともかく、たとえトゥアールが相手であっても、愛香を好きにさせるつもりはない。マザーズの方はちょっとどうしようもないが。そのあと恋香がトゥアールに対して、妹を襲っていいのはアタシと総二だけなんだよと凄み、はじまったトゥアール対恋香。どうしてこうなった。
そして食事を終え、しばらく経ったところで、愛香と連れ立ってこっそり温泉にむかった。
ここにいる間は、自由に湯に浸かっていいと言われていたため、その言葉に甘えることにしたのだ。先ほど叶わなかった、温泉と愛香を堪能するために。
脱衣所でいったん別れ、湯に浸かってドキドキソワソワムラムラしているところで、ふと気づいた。
なぜ自分は、こちらの温泉に来たのだ。
湯に浸かって愛香と戯れるだけなら、この本泉とは別の、小さめの温泉でいいだろう。なぜこちらの温泉に来たのだ。母や恋香がいるうえに、神堂家の私有地でナニをする気だ。
理性はそう訴えていたが、頭がどんどんボーっとしていった。愛香のツインテールを触りたい。彼女を抱きたい。そんな欲望が、次から次へと湧き上がった。
さっき温泉に入っていた時でも、これほどではなかったはずなのだが、なぜだろうか。そう考えたあと、トゥアールジュースのことがなぜか頭に浮かんだ。
気がつくと、最も慣れ親しんだツインテールの気配が近づき、総二と背中合わせに愛香が湯に浸かったのだった。
「そーじ」
「っ!?」
愛香の背中が離れたすぐあと、腕が首に回される。馴染んだ重みが躰にかかるとともに、わずかなふくらみが総二の背中に押しつけられた。見慣れた、総二が世界で一番好きなツインテールが、総二の首にかかる。愛香がおぶさってきたのだ。色香を感じる艶交じりの彼女の声が耳元で聞こえ、総二はゴクリと唾を飲みこむ。同時に、総二の股間のブレイザーブレイド(隠語)もスゴイことになった。
恋人となって数ヶ月。結構な頻度で交わりつつ、愛香の胸を揉んできた。長く険しい戦いだったが、その甲斐あってか、彼女のバストアップに一応成功したのだ。まあ、ほんとうにわずかなものであり、実際に効果があったかは疑問だが、とにかくそれがわかった時の愛香は、とても嬉しそうであった。
ゆっくりとふりむいて、彼女の顔を見る。なにかを求めるように蕩けた瞳と、見つめ合うかたちになった。何度も抱いているはずだというのに、火照ったその顔と、水気を含んだ彼女のツインテールはいつもよりどこか淫靡で、総二の頭はますます昂ってくる。
「愛香っ」
「そーじ、しよ?」
「――――!」
甘えるように訴えられ、総二の理性が飛びかける。股間のブレイザーブレイド、いや、テイルカリバー(ナニ)はすでに
「んぅっ」
気がつくと総二は、愛香を抱き締め、口づけていた。彼女の口の中に舌を差しこむと、愛香も舌を絡めてくる。彼女の鼻にかかった甘い声が耳に届き、抱き返してくる愛香の躰の感触と、離さないとばかりに総二の躰に触れるツインテールに、どんどん理性が消えていく。
「ひゃうっ」
総二が愛香の頭を、ツインテールをなでると、彼女の口から可愛らしくも艶を含んだ声が漏れた。ツインテールの扱いは、前よりも上達したと自負している。つい先日も、ツインテールをなでるだけで、愛香を達せさせることができたほどだ。もっとも、いろいろとお互いの収まりがつかなかったため、そのあとに続きも行ったが。
「あ、んんっ、そーじ――、この間よりなでるのうまくなってるよ――。んっ」
ますます蕩けていく愛香の声が、さらに総二の欲望を滾らせる。なでながら再び彼女の唇を奪うと、抱き返してくる愛香の力も強くなった。時に頭をなでるのをやめ、彼女の胸をいじったり、お尻をなでたりすると、頭をなでた時とはまた違う反応を返してくる。そんな愛香が、ますます愛しくなった。
「あっ、んっ」
愛香の躰を優しく離すと、彼女に背をむけさせ、後ろから抱き締める。しっとりとしたツインテールとうなじの織り成す美に一瞬、心を奪われる。
愛香の首筋に顔を埋め、吸い付き、胸を揉んではツインテールも揉みしだく。そのたびに、彼女の口から甘い声が漏れる。一度も同じ音色はない。そして、それを奏でているのは自分なのだと思うと、興奮は際限なく高まり続けた。
ここは神堂家のもの。それに、ここにいるのは自分たちだけではない。そんなところで行為を行うのは、いかがなものだろうか。
そう思っていたのだが、どうでもよくなってきている。いまはもう、可愛い恋人である愛香と愛し合いたいという気持ちで一杯であった。というか、もういいや、と欲望を解放することにした。
愛香を抱き上げ、抱えたまま温泉のふちに座る。さすがに浸かったままスるのはまずいかもと、なけなしの理性で思ったためだ。大して意味はないかもしれないが。
「愛香」
「そーじ」
腕を総二の首に回し、期待に満ちた瞳をむけてくる愛しい恋人と見つめ合う。綺麗な月明かりの下、上気した色っぽい肌に惹かれ、月光を照り返し幻想的な美しさを魅せるツインテールを視界に収めながら、再びキスをした。
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――よし、チャンスです。いまの総二様と愛香さんは情欲に支配されまくっています。いつかのスタッグギルディの技の時は、お互いしか見えてなかったために割りこむことは不可能でしたが、いまの発情した二人なら、私も一緒に混ぜてもらって3Pというルートも夢ではないはずっ。もはや、なりふり構っている場合ではありませんっ。いざ! ――――イースナ、なんで私に抱き着いて、なおかつおっぱいに顔をうずめてるんですか。え? ――――
絵面を想像するとギリギリすぎる気が。もう少し長く、とかも思いましたが、いろんな意味でヤバいので。
ちょっとあらすじが長い気もしますが、どこまで書くのがいいのか。バランスは悩むところです。あと、普段は使わない括弧()を使ったり。
エレメリアンは結構ノリで書いてるんですが、書いていて一番楽しいのはやっぱり二人のイチャイチャだったりします。
最後のは、あまり気にしないでください。本気でノリです。ネタです。