第7話
TVside
(現在、首相官邸前に来ております。
つい先程、直木内閣は戦後初となる防衛出動命令発令を閣議決定しました。
それと同時に、憲法9条3項に基づき特別事態宣言が発令され、国民の夜間の外出の自粛を呼び掛けています。
また、現時点で、陸海空全ての自衛隊部隊に、待機命令が発令されています。
一部では、既に出動した部隊等があるとの情報もありますが詳細な発表が行われていないため不明です。
以上、首相官邸前からお伝えしました。)
(続いて、防衛省前にいる三浦さんに伝えてもらいましょう。
三浦さん。)
(はい、防衛省前の三浦です。
現在防衛省は異様な空気に包まれています。
先程防衛省の報道官の発表によると、現時点で海上自衛隊第一から第四護衛隊群には集結命令が発令されています。
が、明確に何処の部隊が出動する等の発表はありません。
防衛省前からは以上です。)
TVside out
やまとside
沖縄海域周辺に到達したやまとは、補給艦おうみと合流し補給を受けていた。
「補給活動はもうすぐ終了します。」
そして補給が終わった。
次第に離れていく両者の間で発光信号を送り合った。
「貴艦の健闘を祈る。」
「了解。」
予定通り補給を終え、やまとは尖閣諸島沖に到達した。
到達してすぐにやまとは危機に見舞われた。
「ソナー探知 方位142 本艦より距離5000 深度100 速度 12kt
目標敵味方識別確認 米原潜ウ゛ァージニアである確率 95.86%」
一瞬緊迫に包まれた
「ウ゛ァージニアが増速 20kt
さらに接近。 距離3000 深度そのまま。」
ソナー員の報告が、にわかに危機感の上昇につながる。
「戦闘部署発動 対潜戦闘用意 総員配置につけ。」
戦闘部署配置が全艦に発令された。
「データを市ヶ谷に確認急げっ!
ワーニング・レッドだ。」
上条の叫びで
「アイ・サー」
「信号弾用意良し。」
「信号弾撃て。」
上条の指示とともに、左舷後方に向け閃光と煙が伸びていく。
「ウ゛ァージニア反応無し。
依然として接近中。」
「市ヶ谷より回答。 先制攻撃を許可する。」
その答えこそが全てを物語っていた。
ウ゛ァージニアは、米軍の指揮下にはないのであろう。
1隻の反乱による逃亡はまさしく沈黙の艦隊そのものである。
ただ1つ違うのは、牙を剥いた相手である。
「
立ち入り検査隊編成急げ。
これより本艦はウ゛ァージニア奪還のための作戦を開始する。
いいな 砲雷長?」
上条の問いに砲雷長は大きく頷きを返す。
「敵潜水艦 魚雷発射管扉開きます。
本艦へ向け魚雷発射 数4接近。」
「
ついで上条は無電池電話を取り、機関室へとかけた。
相手が応答する前に話しかける。
「機関出力いっぱい。
「機関室了解。 機関出力いっぱい。 よおそろ。」
次いで艦橋にかける。
この場合も、相手が応答する前に話しかけている。
「取り舵いっぱい。」
「取り舵いっぱい。 よおそろ。」
やまとは大きく左へ傾いていく。
ただでさえ最大戦速で突っ走っているのだ。
傾かない方がおかしい。
そんな状況で上条は砲雷長に目配せする。
頷いて見せた砲雷長は、砲雷科員に魚雷発射を命じる。
「舵戻せ。 面舵いっぱい。」
今度は大きく右に傾いていく。
「成功です。 敵魚雷全て遠ざかります。」
「今度は、こちらから行くぞ。
「
ヘリ甲板より、2機のヘリが飛んでいくのを確認した上条は砲雷長に命じた。
「ASROC 発射用意。
発射弾数 4発
全弾ウ゛ァージニアとの距離300で自爆。
ウ゛ァージニアを逃がすな。」
「了解。 1番から4番発射用意
左舷舷側VLSよりASROCが飛び出す。
ロケットより短魚雷が切り離され、海面へと静かに着水する。
そして全力でウ゛ァージニアを追う。
ウ゛ァージニア艦内では、パニックが広がっていた。
乗員のほとんどが素人であったからだ。
彼らは徐々に迫ってくる水中探信音に耐えることができなかった。
艦内は騒然としている。
彼らのパニックは唐突に終わる。
それは追いついて自爆した短魚雷によって、強制浮上させられ、その際に怪我を負った者が多かったからだ。
2機のヘリから降り立った立ち入り検査隊員は、ウ゛ァージニア艦内での抵抗が疎らなことに驚いた。
ウ゛ァージニアとその乗員は、連絡を受け駆けつけた海上保安庁の巡視船が連行して行った。
やまとside out