やまと復活 鬼神の護衛艦   作:佐藤五十六

8 / 74
第6話

やまとside

CICにて待機していた上条は若い隊員から呼ばれた。

「副長 横須賀の自衛艦隊(SF)司令部より通信が入っています。」

「分かった。 繋いでくれ。」

「自衛艦隊司令官の友田四郎である。

こちらは海幕人事課長 柳井一等海佐だ。

その隣にいるのが、海幕広報課長 岸田一等海佐。

先ほどの事件は聞いた。 ご苦労だった。」

自衛艦隊司令官の言葉に続いて海幕広報課長が報告する。

「対外的には、やまとの事件は存在しないという線でいきます。

艦長の入院は急病によるもの、心労による心筋梗塞と発表します。

決して銃撃によるものではない。

この点を、乗員達に徹底してほしい。」

海幕人事課長は人事に関する連絡を伝える。

「取り敢えず後任の艦長が決定されるまで、上条二等海佐を艦長代理に任ずる。」

「はっ 拝命します。」

敬礼して答える。

「最後に上海にある東海(トンパイ)艦隊に不審な行動が確認された。

たった今対処可能な自衛隊艦艇はやまと以外にはない。

よって新たな任務を与える。

敵性艦隊が尖閣諸島沖に現れた場合に備え、沖縄海域で待機している補給艦と合流。

補給を受け、尖閣諸島沖海域で待機。

万が一敵性艦隊が現れた場合、現時点では之を警戒及び監視せよ。

防衛出動発令が決定した場合、之を実力で排除せよ。

以上だ。」

自衛艦隊司令官の言葉が終わると通信が切れた。

「至急 出航用意。

本艦は、指示通り沖縄方面へ出動する。」

やまとside out

 

日本政府side

「総理 中国海軍に不審な行動が確認されました。」

再び官邸に説明の為に現れた自衛官達は、一様に顔が青い。

「至急、防衛出動の発令をお願いします。

防衛出動発令までは自衛隊(我々)は法律上の制限により、我が国領土を侵犯した敵軍であっても先制攻撃を加えることが認められておりません。」

うろたえる統幕議長と海上幕僚長を尻目に首相は達観していたようだ。

「そう言うと思っていたよ。

臨時閣議の召集は済んでいる。

後は我が国に、戦争の脅威が迫っていることを閣僚に納得させることだけだ。

1945年以来初めて我が国領土が危機に見舞われるとはな。」

総理と、自衛隊首脳部は連れだって会議室に入る。

「防衛大臣及び自衛隊よりの緊急の閣議の開催要請が入った。

このことは、国民の生命と財産を守るために重要なことである。」

総理がこう述べてから、閣議は始まったものの全員がイマイチピンと来ないのか、ぽかんとしている。

「統合幕僚会議議長、状況説明(ブリーフィング)を頼む。」

「了解しました。

これは、国家機密のため他言無用でお願いするが、つい先刻、海上自衛隊由良基地に停泊中のやまとが、敵の工作員によって攻撃を受けました。

これを受け、総理は非公式の国家安全保障会議(NSC)を召集しました。

自衛隊は中国国内に保有する情報網の全力を挙げて、調査するよう命ぜられました。

その結果、中国人民解放軍は、陸海空全てで物資の買い占め等を行っており、これらが沖縄、尖閣諸島、台湾、いずれの地域への、武力進行の前兆であると考え、台湾軍情報部門と接触しました。

そして情報交換を行った結果、その可能性がかなり跳ね上がりました。

結論を申しますと、明日、明後日には中国軍部隊が、尖閣諸島、沖縄に押し寄せて来る可能性があります。

以上です。」

「統合幕僚会議議長、ありがとう。

中国の侵略意図が明白な以上、すぐにでも防衛出動を命じたいと思うのだが、皆の意見が聞きたい。」

しかし、誰も何も言わない。

というか、言えないのだ、この場にいる安全保障という専門的な分野の人間は、防衛出動に賛成である。

それ以外は、この問題には素人であった。

「では、採決を取りたいと思う。

防衛出動発令に反対の者はおるか?」

誰も手を挙げない。

「反対無し。

よってこのことは承認したと見なす。」

総理の声で閣議は終わった。

10分という短い閣議ではあったが、直木内閣は防衛出動の発令を閣議決定した。

このことにより、直木内閣は、自衛隊法第76条に基づき防衛出動発令より20日間の作戦指揮権を獲得した。

しかし、20日間以降の作戦の継続は国会の承認が必要である。

日本政府side out

 

やまとside

「出航用意 もやい放て。

微速横進。」

UV-22は既にやまとに帰投していた為すぐに出航出来た。

海上自衛隊恒例の帽ふれは急な出航という事もあり行われなかった。

「艦長代理の上条である。

現在本艦は予定を変更し、尖閣諸島沖へと急行している。

艦内の各員にいたっては戦闘に備え、細やかな点検及び整備を行ってほしい。」

「こちら制御室 システム オールグリーン

何ら異常ありません。」

「こちら機関室 異常無しや。」

「こちら砲雷科 兵装に異常ありません。」

「航空科 異常無し。」

艦内全てからの報告を受け終わり、上条は全艦に向けて伝えた。。

「各員にいたっては、当直の者を除きしっかり休息を取るように。

明日は今日よりも忙しいぞ。」

艦内では、艦内有志によりZ旗の作成が進められている。

戦闘時にマストに掲揚するつもりなのだ。

後日、明日は今日よりも忙しいという言葉は色々な報道番組で引用されこの戦争の象徴のような物となった。

やまとside out

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。