やまとside
「衛星データを受信、目標の完全破壊を確認。」
「撃ち方やめ。
ところで、砲雷長。
通報にあった敵潜水艦は、三隻以上だったな?」
「その通りです。
うちの二隻を、はるさめとはるさめ搭載のヘリが沈めたと報告されています。」
「はるさめの艦長は、神山だったな。」
「はい、神山二佐で間違いありません。」
「神山がやったのなら、おこぼれは期待できないなぁ。
三隻目に期待を繋ぐとするか。」
「艦長代理の同期ですか?
すごいじゃないですか、対潜の鬼と呼ばれる人ですよ。」
「まぁ、奴は特別だ。
天賦の才能というのかな、そう言うのを持った奴だ。
ということで、三隻目はうちが沈める。
ソナー員、気張ってかかれ。」
「了解。」
しかし、三隻目を沈めたのはやまとではなかった。
三隻目を沈めたのは、水中を遊弋している第5潜水隊の潜水艦はくりゅうであった。
「副長、いえ艦長代理。
市ヶ谷より通信が届いております。」
そう言って通信長直々に電文を持ってきた。
内容はこうである。
『 発 防衛省中央指揮所
宛 各地で活動中の自衛隊各部隊
一部部隊を除き、全ての部隊は速やかに戦闘行動を中止し、
基地もしくは駐屯地へ帰投せよ。
なお、各地で治安維持任務に当たっている陸上自衛隊部隊及
び黄海に突入している第二護衛隊群はROE(交戦規約)を通常に
戻し待機せよ。
以上。 』
つまり、中華人民共和国政府との間で、休戦講和の交渉が始まったと言うことである。
しかし現場の上条達は、その交渉相手が中華人民共和国ではないことを知らない。
そう、67年前に台湾に逃れた中華民国政府が交渉相手だった。
電文を見た上条の顔に笑みが浮かぶ。
「喜べ、俺達はもうすぐお役御免だぞ。」
「えッ本当ですか?」
「砲雷長か、本当だ。」
この事実は、瞬く間に艦内に伝わった。
「「「「やったぁぁー」」」」
歓声に歓声が上書きされて、もう既に収拾が付かなくなっていた。
「艦長代理、よろしいのですか?」
「今日くらい構わんだろう。
長い長い一日が終わったんだからな。
佐世保に着いたら、全員で宴会だ。
分かったな?」
「「「「了解。」」」」
「砲雷長は不満か?」
「人を残さなくていいんですか?」
「いいんじゃないか、どうせやまとはすぐにドック入りしなけりゃならんし、一日ぐらい大丈夫だろう。」
確かに、やまとの艦内は至るところで、破壊されており兵装の稼働率も大きく低下していた。
まず原因としては、対艦ミサイルの着弾による破壊、それに、46cm砲の連射による疲労の蓄積という二つが上げられる。
「人とかはまあいいとしても、予算はどうするんですか?」
「俺の奢りだ、とか言いたいんだけどそんな余裕、私にはないんだよな。
一人、2000円とかにしましょう。
あとは、主計長が隠し持ってる裏会計でなんとかしてもらいましょう。」
「艦長代理、あなたって人は、異動してきて間もないのに何でそんなこと知ってるんですか?」
「まぁ、その辺は企業秘密ってことでお願いします。」
実際には、帳簿を確かめて主計長に確認したところ、相手から洗いざらい自白されていたのだ。
「まぁいいですけど。
宴会っていうのは確かですよね。」
「あぁ、確かだよ。
無事に帰れたらだがな。」
「もう戦闘はほとんど終結してるんですから、無事に帰れますよ。」
やまとside out