中国潜水艦side
ピーン、ピーン。
魚雷の着水音が響いたあと、キロ型潜水艦の乗員達が、聞いたのは時折魚雷が放つ探針音波だけであった。
それは、徐々に、徐々に、大きくなる。
比例して、乗員達の恐怖も大きくなる。
それが、最高潮に達したときには、魚雷は命中していた。
潜水艦は大きく傾き、沈んで行った。
それが、別のキロ型潜水艦(遠征68号)の末路であった。
中国潜水艦side out
海上自衛隊護衛艦"はるさめ"搭載哨戒ヘリside
第22航空群第122航空隊所属の、SH-60Jが渤海上空で通常通りの哨戒飛行を行っていた。
しかし、機内にはいつも以上に緊張が高まっていた。
それもまあ、致し方ないことである。
まず第一にヘリコプター自体が、敵の航空優勢下での活動に向いていない。
戦闘機や地対空ミサイルに襲われれば、簡単に墜とされるからである。
「機長、
ソノブイの投下、許可願います。」
SH-60Kと比べて、SH-60Jは旧式の機体と評される事が多い。
だが、それはあくまでも、対潜水艦任務以外の任務での話であって、本来の任務である対潜水艦捜索及び戦闘であれば、性能に遜色は無かった。
「んっ、場所は何処だ?」
さっきのこともあり、機長は敏感に反応した。
「海図にあるE-7地点付近です。」
「ということはだ、第二護衛隊群からまだ距離にして30km以上離れているなぁ。
だが、念のため落としておくか。
七番シューターから落とせ。」
「了解。」
席から、各方面に言われた通りの指示を出す。
「ソナー員、七番シューターにソノブイ装填。
八番に信号弾を装填。
機長、機体を右に旋回させてください。」
「七番、ナウドロップ。」
そう言いながら、
投下ボタンを押すと、機体に据付けられたシューターから、ソノブイがパラシュートで投下される。
「目標、コンタクト。
キロ型潜水艦である可能性大。」
「
敵潜水艦をいぶり出せ。」
ベテランの対潜水艦ヘリコプター乗りである機長は、すぐさま次の指示を出す。
「通信員、第二護衛隊群にデータを転送しろ。」
「了解。
えッ。」
「どうした?」
「通信システム、オールレッド。
データ転送できません。」
通信員が、喚く。
「回線がダメになっているのか?」
「おそらくですけど、機械自体が、ダメになっているようです。」
「仕方ない。
根気で直せ。」
通信員の問いに、機長は冷静に答える。
「根気ですか?」
「ああ。」
「取り敢えず、叩いてみますか。」
誰も何も言わないが、通信員はベシベシと通信機を叩く。
「システム起動しました。
通信システム、オールグリーン。
直っちゃいました。」
無駄口を叩きながらも仕事は行う。
「データ転送完了しました。」
「分かった。
「探知状況不明瞭、ただし、接触は続いています。
吊り下げ式ソナーの使用、許可願います。」
「許可する。
何としても、捕まえて見せろ。」
「了解。」
「はるさめより入電。
"魚雷を以て敵潜を撃沈せよ。"
との事であります。」
「敵潜の状況は?」
「改めて、コンタクト。
阻止線まであと1kmと言ったところだと思われます。」
「吊り下げ式ソナー格納。
攻撃態勢に入る。
ソノブイ用意。」
「用意良し。」
機長の命令に、ソナー員が応える。
「ばらまけ。
武器員、魚雷投下だ。」
「了解。」
「
「もう、切ってます。」
深度自体は、浅かったため上空のSH-60Jからも水柱が確認できた。
「一隻の撃沈確実。
では、これより本機は、はるさめに帰投する。」
海上自衛隊護衛艦"はるさめ"搭載哨戒ヘリside out