やまと復活 鬼神の護衛艦   作:佐藤五十六

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第52話

中国潜水艦side

ピーン、ピーン。

魚雷の着水音が響いたあと、キロ型潜水艦の乗員達が、聞いたのは時折魚雷が放つ探針音波だけであった。

それは、徐々に、徐々に、大きくなる。 

比例して、乗員達の恐怖も大きくなる。

それが、最高潮に達したときには、魚雷は命中していた。

潜水艦は大きく傾き、沈んで行った。

それが、別のキロ型潜水艦(遠征68号)の末路であった。

中国潜水艦side out

 

海上自衛隊護衛艦"はるさめ"搭載哨戒ヘリside

第22航空群第122航空隊所属の、SH-60Jが渤海上空で通常通りの哨戒飛行を行っていた。

しかし、機内にはいつも以上に緊張が高まっていた。

それもまあ、致し方ないことである。

まず第一にヘリコプター自体が、敵の航空優勢下での活動に向いていない。

戦闘機や地対空ミサイルに襲われれば、簡単に墜とされるからである。

「機長、磁気探知機(MAD)に、反応(エコー)が見られます。

ソノブイの投下、許可願います。」

戦術航空士(TACCO)は許可を求めた。

SH-60Kと比べて、SH-60Jは旧式の機体と評される事が多い。

だが、それはあくまでも、対潜水艦任務以外の任務での話であって、本来の任務である対潜水艦捜索及び戦闘であれば、性能に遜色は無かった。

「んっ、場所は何処だ?」

さっきのこともあり、機長は敏感に反応した。

「海図にあるE-7地点付近です。」

「ということはだ、第二護衛隊群からまだ距離にして30km以上離れているなぁ。

だが、念のため落としておくか。

七番シューターから落とせ。」

「了解。」

席から、各方面に言われた通りの指示を出す。

「ソナー員、七番シューターにソノブイ装填。

八番に信号弾を装填。

機長、機体を右に旋回させてください。」

戦術航空士(TACCO)は、対潜水艦作戦のセオリー通りに敵潜水艦をあぶり出すつもりのようだ。

「七番、ナウドロップ。」

そう言いながら、戦術航空士(TACCO)は、機器を操作する。

投下ボタンを押すと、機体に据付けられたシューターから、ソノブイがパラシュートで投下される。

「目標、コンタクト。

キロ型潜水艦である可能性大。」

戦術航空士(TACCO)、各種センサー測的始め。

敵潜水艦をいぶり出せ。」

ベテランの対潜水艦ヘリコプター乗りである機長は、すぐさま次の指示を出す。

「通信員、第二護衛隊群にデータを転送しろ。」

「了解。

えッ。」

「どうした?」

「通信システム、オールレッド。

データ転送できません。」

通信員が、喚く。

「回線がダメになっているのか?」

「おそらくですけど、機械自体が、ダメになっているようです。」

「仕方ない。

根気で直せ。」

通信員の問いに、機長は冷静に答える。

「根気ですか?」

「ああ。」

「取り敢えず、叩いてみますか。」

誰も何も言わないが、通信員はベシベシと通信機を叩く。

「システム起動しました。

通信システム、オールグリーン。

直っちゃいました。」

無駄口を叩きながらも仕事は行う。

「データ転送完了しました。」

「分かった。

戦術航空士(TACCO)、状況は?」

「探知状況不明瞭、ただし、接触は続いています。

吊り下げ式ソナーの使用、許可願います。」

「許可する。

何としても、捕まえて見せろ。」

「了解。」

「はるさめより入電。

"魚雷を以て敵潜を撃沈せよ。"

との事であります。」

戦術航空士(TACCO)と機長との会話に通信員が割り込んだ。

「敵潜の状況は?」

「改めて、コンタクト。

阻止線まであと1kmと言ったところだと思われます。」

「吊り下げ式ソナー格納。

攻撃態勢に入る。

ソノブイ用意。」

「用意良し。」

機長の命令に、ソナー員が応える。

「ばらまけ。

武器員、魚雷投下だ。」

「了解。」

戦術航空士(TACCO)ソナーは切っておけ。」

「もう、切ってます。」

深度自体は、浅かったため上空のSH-60Jからも水柱が確認できた。

「一隻の撃沈確実。

では、これより本機は、はるさめに帰投する。」

海上自衛隊護衛艦"はるさめ"搭載哨戒ヘリside out

 


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