第5潜水隊side
そうりゅう発令所
「隊司令より、命令が下った。
只今を持って、本艦の任務を解除された。
しかし、新たな任務が発令された。」
艦長の言葉に、発令所にどよめきが広がる。
「現在は、戦闘配置だ。
静かにしろ。」
発令所のどよめきに、艦長の叱責が飛ぶ。
「新たな任務の内容を伝える。
たった今を持って、第二護衛隊群を離脱。
渤海に潜入し、状況を偵察せよ。
とのことだ。」
「しかし、本艦だけで大丈夫ですか?」
「本艦だけでやるんだ。
むしろ、何隻で行っても、目立つだけで結果は変わらん。」
「それは、そうですが。」
「分かったならいい。
出力を上げろ。
最大戦速さいだいせんそぉー。」
「アイ・サー」
そうりゅうは、時速20ktで走りはじめる。
キロメートルに直すと、約36km/hである。
ものの直ぐに、渤海の入口にたどり着く。
「ソナー員、目標を確認できるか?」
艦長の確認に、ソナー員は首を振る。
「いいえ、確認できません。
ピン、打ちますか。」
「いや、まだやらんでよい。」
「水上の様子はどうだ?」
「戦時のはずなのに、妙に静かですね。
哨戒艦艇すら出ていないようですね。」
「そうか、あの噂は、本当だったようだな。」
艦長は、しみじみと言った。
「噂って何ですか?」
興味を持ったのか、ソナー員が聞いてくる。
「ああ、やまとに乗ってる同期から聞いた話なんだが、中国の弾道ミサイルを迎撃した直後、目標付近から強力な電磁パルスが確認されたらしい。
それが、北海艦隊の根拠地にふりそそいだらどうなると思う?」
「!」
艦長の言葉にソナー員も気付いたようだ。
というか、ソナー員は思ったはずだ。
誰に聞いたんだと。
それを押し殺して聞く。
「まさか、奴等は出てないんじゃなくて、出れないだけですか?」
現代の船は戦闘艦艇、民間船舶問わず船体の各所で、電子機器が多用されている。
その電子機器は、もしかしなくても電磁パルスの影響を受けるだろう。
「だろうな。」
「予定海域に到達。
当初の予定より、誤差+0.85。
予想の範囲内です。」
ソナー員と会話しているうちに、進出予定海域に到達したようだ。
航海士が報告してくる。
「よし、索敵始め。
例の技本(防衛省技術研究本部)から送られてきた試作品を使うとするか。」
「試製潜水艦用多目的索敵ポッドですか?」
「そう、それだ。
P-3CやSH-60J/Kの積んでるソノブイみたいなやつだ。
あれなら投棄式だし、この艦ふねからも距離を取って索敵できるだろう。」
「了解。
では、索敵モードはどれに設定しますか?」
「熱源モードで、試してみるか?
念のため、ソナーモードの物も、準備しておけ。」
技本から、試作品と一緒に送られてきた取扱説明書を見ながら、艦長はそう答えた。
「了解。
次に、射出方法ですがどうしますか?」
艦長より先に、取扱説明書をかじっていたらしいソナー員が聞く。
「魚雷みたいに射出しますか?
それとも、潮流に流しますか?」
「潮流に流せ。
本艦からの距離、1000で起動させろ。」
「了解。」
ソナー員は、コンピューターに必要事項を入力していく。
「ったく、技本の連中も変な物押し付けやがって。
使い物にならなけりゃ、張り倒すぞ。」
伝統を墨守する事で、新技術への理解が薄いのが世界の海軍関係者である。
「艦長、取り敢えず射出しましたけど、張り倒すって言っても、誰をやるんですか?」
軽く笑いながら、ソナー員は聞く。
「そんなもん、決まっておるわ。
帰ったら考える。
これに限る。」
そう断言した。
それから、時が経つ。
「センサーが、目標を捕捉しました。
水上には、大きな反応は見られませんね。
しかし、水中には三つ見られます。」
「自爆モードに移行させた後、ポッドを切り離せ。
本艦は、その隙に後退する。
安全地帯に移動後、第二護衛隊群司令部にデータを転送する。
以上だ。」
第5潜水隊side out
最近、主に使っているタブレットの調子がおかしいので、更新が少し不定期になりそうです。
できる限り、毎日投稿します。
佐藤五十六からのお知らせは以上です。