やまと復活 鬼神の護衛艦   作:佐藤五十六

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第47話

第5潜水隊side

アメリカ海軍空母打撃群には、護衛として、1隻か2隻の攻撃型原子力潜水艦が随伴している事が多い。

主に、これらは空母打撃群周辺での、対潜警戒に従事している。

アメリカ海軍の空母打撃群の写真を見ても、潜水艦の影など形も無い。

だが、海中にはウ゛ァージニア級もしくは、旧式のロサンゼルス級の攻撃型原子力潜水艦が、潜伏している。

これは、黄海(ホワンハイ)に突入した第二護衛隊群も例外ではない。

第二護衛隊群の周辺にも、潜水艦が潜伏していた。

それが、第5潜水隊である。

所属原隊は、第1潜水隊群で、呉に司令部が置かれている。

大幅増強されつつある海上自衛隊潜水艦部隊の中でも、最新の装備かつ練度も高いことで知られている。

所属艦は"そうりゅう""うんりゅう""はくりゅう"の三隻である。

これらは、最新のスターリング機関を搭載した非大気依存型(AIP)潜水艦である。

この潜水艦達は、第二護衛隊群の指揮下にあって、アメリカの空母打撃群随伴の原子力潜水艦と同じく、対潜警戒にあたっていた。

「じんりゅうが、開戦初っ端からやってくれたからな。

うちらは、それ以上の戦果(大金星)を挙げにゃあならんわ。」

無論、じんりゅうがアメリカ海軍空母を雷撃したことは、国家機密であり、仲間の潜水艦乗り(サブマリナー)達にも知らされていない。

だが、雷撃した周辺海域は、じんりゅうによって徹底的に掃除されていた。

初老の潜水艦乗り(サブマリナー)の言ったじんりゅうの戦果とは、その際に出た中国潜水艦(副産物)のことである。

頭を掻きながら言うその姿には、毒気を抜かれるのだが、言葉の端々に他の艦に対する対抗心が見え隠れする。

しかし、この男こそ第5潜水隊所属の潜水艦、そうりゅうの艦長であった。

「艦長。

何らかの潜航物体の接近です。

この海域ですから、潜水艦の可能性大ではありますが。」

潜水艦の目であり、耳でもあるソナー員が、報告する。

「自然物ではない?」

「はい、100%自然物ではありません。

しかし、探知状況不良。

本海域におけるデータ不足な感は否めません。」

「よろしい。

全艦に発令、音響規制。

魚雷戦用意。

全発射管、魚雷装填急げ。」

「前部発射管室、魚雷装填完了。

いつでも撃てます。」

「現態勢のまま、待機せよ。」

「了解。」

「ソナー員、捉えられるか?」

「先程より、音がはっきりしてきました。

測距開始します。

諸元読み上げます。

数、1、深度、190、距離、5200、速度、15kt。」

「距離、2000まで待て。

発射管扉開放、注水急げ。」

「それにしても、ここは中国領海の中ですよ。

襲ってきたのなら、数が少なくありませんか?」

「あれじゃないか、あの索敵(ピケット)艦とか呼ばれる。」

面倒臭そうに艦長は答えるが、見る見るうちにソナー員共々顔色が変わる。

「「って(てぇ)事は、この先に罠がある。」」

ソナー員と艦長は、同じ結論に至ったようだ。

「第二護衛隊群司令部に、緊急警報を送れ。」

「距離、2000です。」

「1番から2番、発射用意。

撃てぇ(テェー)。」

そうりゅうから発射された89式魚雷は、自力航走(スイムアウト)で、射出された。

発射時の騒音は、ほとんどしない。

だから、敵潜水艦が気付いた時には、もう手遅れであった。

囮魚雷(デコイ)を発射して、かわそうとしたものの、懐に入り込んだ魚雷はかわせるものではない。

水中を爆発音が伝播し、そうりゅうの艦体を叩く。

「全弾命中。

これで、彼らも諦めてくれると、有り難いんですがね。」

ソナー員が報告する。

「奴らの考えなど分からんが、確かにそう思うな。」

第五潜水隊side out




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理由は、書きません。
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