やまと復活 鬼神の護衛艦   作:佐藤五十六

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第44話

陸上自衛隊side

この紛争において、常に影でありつづけた陸上自衛隊員のお話である。

「防衛出動命令が発令された。

既に、海空の自衛隊は戦闘に突入したと聞く。

我らに下されたのは、待機の命令だ。

ただ、すぐに出動することになると思われる。」

これは、大阪府和泉市信太山に駐屯する第37普通科連隊連隊長の訓示である。

駐屯地では、周囲に塹壕が掘られ、陣地が構築されている。

正面の警備詰め所には、配置の隊員が増やされた。

ただし、これは大阪などの後方地域での光景であって、沖縄に駐屯する第15旅団の駐屯地では、中国軍特殊部隊の攻撃に備えて、もう既に実弾が装填された89式小銃が隊員に配られたと聞く。

西部方面普通科連隊は移動命令を受け、相浦駐屯地から那覇駐屯地に移動している途中だという。

そして、夜も覚めやらぬ午前4時、事件は起こる。

それは、一発の銃声からであった。

銃声が響いてから、防衛態勢の構築を行うのは無理があった。

「駐屯地周辺に、敵部隊が展開中。

規模は不明なるも、激しい攻撃を受けつつあり、当番の中隊は、出動せよ。

繰り返す、駐屯地周辺に、敵部隊が展開中。

規模は不明なるも、激しい攻撃を受けつつあり、当番の中隊は、出動せよ。」

アナウンスが流れ、出動した第1中隊は駐屯地内に、侵入した敵の激しい抵抗に遭い、大苦戦の連続であった。

3時間の戦闘で、侵入者全員の排除に成功したものの、死傷者は、最終的に出動した二個中隊合わせて78名を数えた。

「侵入者たったの12人に、ここまでやられるとは。」

戦闘掃除中に現れた第15旅団副旅団長そして那覇駐屯地司令を兼務する荻野一等陸佐は視察の結果、そうつぶやいた。

西部方面普通科連隊(にしふれん)の応援が、いつ駆けつけるのか、それが鍵だな。」

そう結論づけた。

現在、沖縄県全域において交通が麻痺している。

主に、空の便と海の便が中心だが、そのせいで帰れない外国人が那覇空港に溢れてきていた。

那覇空港は那覇駐屯地の目と鼻の先にあるため、那覇駐屯地でもかなり気を使っていた。

現在でも、沖縄県と本土間の物資輸送は貨物専用機により行われているが、その便数は極端に少ないのだ。

国民が沖縄に取り残されている国の大使館は、民間機のチャーターを含めて救出策を練っていたが、何故か、中国大使館には動きが見られなかった。

どちらにしても、中国軍が上陸して来れば、陸上自衛隊が全力を挙げて迎撃を行うしかない。

そうなれば、取り残されている中国人が何をしでかすかも分からない。

「どちらにしても、我らが陸自はすり潰されるだけなのか。」

仲間が搬送されて行くのを、見つめていた若い陸曹のつぶやきは、誰にも聞かれることはなかったが、悲しみが詰まっていた。

敵ゲリラによる攻撃で、陸上幕僚監部と西部方面隊は、沖縄本島内における掃討作戦の実施を求めていた。

しかし、それを行うとすると第15旅団の主力である第51普通科連隊だけでは、人が足りない。

西部方面普通科連隊に続き、本土からの増援部隊の到着を待たねばならないだろう。

「飛んで火に入る夏の虫という言葉がある。

我々は、そうならない為にも徹底して準備を行う必要がある。」

とは第15旅団長の言葉である。

その言葉通り、翌日から始まった掃討作戦は休戦後も続けられ、負傷者数名を出したものの無事に終了した。

陸上自衛隊side out

 

 


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