やまと復活 鬼神の護衛艦   作:佐藤五十六

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第41話

たにかぜside

「敵機、本艦のスタンダード防空圏内に入りました。

いつでも撃てます。」

レーダー員が報告する。

「第二護衛隊群司令部より入電。

イージス艦あしがら、きりしまと共同で敵機の脅威に対処せよとのことであります。」

受話器を耳に当てた通信士が言う。

「分かった。

総員、対空戦闘。

やまとを守りきるぞ。」

艦長の発した声は全艦に伝わった。

「「「ウォォオオ」」」

艦内の至る所で、歓声が響く。

「スタンダード、発射用意。

数、6発。

撃てぇ(テェー)。」

たにかぜ型護衛艦は前級のあきづき型護衛艦とは違い、スタンダード搭載用のVLSが増設されている。

それでも数にして、2個モジュール、16セルだけである。

無論、イージス艦が搭載しているSM-3のような長距離ミサイルは搭載していない。

誘導方式の違いから、射程150kmのSM-2といった艦隊防空用ミサイルまでしか搭載できない。

それでも、一般の汎用護衛艦DDが艦隊防空能力を保持していることは、大きくプラスに働く。

さらに、誘導できる数も、かなり少なく6発までである。

その代わりに、イージス艦よりもきめの細かい誘導が可能となり、それが命中精度の向上に繋がっている。

イージス艦の仕事が大きく減ったのである。

よって、BMDシステムに、全てのイージス艦を投入することが出来るようになったのである。

「本艦発射のスタンダード、全弾命中を確認しました。

第二射、やりますか?」

「よしっ、やるぞ。

第二射、数、6発。

撃てぇ(テェー)。」

「全弾命中。」

その知らせに、戦闘情報センター(CIC)で歓声が上がる。

「静かにせんか。

まだ終わったわけでないぞ。」

その騒ぎを艦長が一声で鎮める。

「敵機、対艦ミサイルを発射しました。

数、18発。

全て、本艦に照準されています。」

艦長は無電池電話を取りだし言った。

「こちら、戦闘情報センター(CIC)、機関室へ。

機関出力最大、最大戦速(さいだいせんそぉー)。」

「機関室、了解。」

「次いで、艦橋。

回避航行、取り舵(とぉりかじ)いっぱい。」

「艦橋、了解。」

「ESSM発射用意。

撃ち方始め(うちぃかたはじめ)。」

ESSMが濃密に弾幕となるように展開される。

数発の対艦ミサイルが海面に叩き落とされる。

残ったミサイルは、なおもたにかぜに迫って来る。

「主砲、撃ち方始め(うちぃかたはじめ)。」

主砲のオットーメララ改70口径62㎜単装速射砲が、火を噴いた。

戦闘では一発当たりの威力は低いが、高い発射速度が物を言う。

ESSM以上の濃密な弾幕が展開される。

たにかぜに近づく対艦ミサイルにCIWSが自動的に弾幕を張る。

そこまでで、対艦ミサイルは半数以上が落とされた。

「チャフ、フレアー展開。

取り舵(とぉりかじ)、15。」

対艦ミサイルの着弾予想位置から、たにかぜを無理矢理ずらさせる。

修正に失敗した対艦ミサイルは、そのまま海面に突っ込み、修正に成功した対艦ミサイルは、たにかぜ搭載の対空火器に捕捉され、撃ち落とされる。

「続いて、面舵(おーもかじ)、45。」

生き残っていた対艦ミサイルは、またもたにかぜの転針についていけず、海面に落ちるかやはり撃ち落とされる。

たにかぜの損害は、至近弾の破片にて艦橋にいた航海科員数名が負傷したのみであった。

「艦長、完璧な勝利です。」

「うちの爺も言ってたが、乗員に死傷者がでなければ完璧な勝利だが、出てしまっている以上そうは言えんよ。」

艦長はそう言って、副長の慢心を諌める。

「取り敢えずは状況終了。」

艦長がそう言うと、緊張の糸は解けたようだ。

たにかぜside out


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