やまと復活 鬼神の護衛艦   作:佐藤五十六

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第2話

「すまないが、吉井一尉 副長の引き継ぎが終わったら、艦内を案内してやってくれ。」

「了解しました。」

長谷川はそれだけ言うと、きびすを返して艦内に戻る。

そこには眼鏡をかけた男が残った。

「やまと副長の山下邦雄です。

引き継ぎに関して連絡する事は特にないですね。」

と簡単に引き継ぎを終えて、艦内に入る。

「では副長どこから行きますか?」

吉井一尉の問い掛けに上条は自分の居室から行くことにした。

「第1居住区からお願いします。取り敢えず荷物を置いておきたいので。」

荷物を示してそう答えた。

「そうですね。 ではついでに士官室に行きましょうか?

確か砲雷長と航海長が今から休憩だったはずです。」

歩くこと35分第3甲板の途中にその士官室はあった。

「副長ここが士官室です。」

そう言って吉井一尉が扉を開ける。

「吉井一尉 その方は誰なの?」

「これは失礼しました。 一応31日付けでやまと副長に任ぜられた。

上条定雄です。 よろしくお願いします。」

「はっ失礼しました。自分はやまと砲雷長 遠山夕月三等海佐であります。」

「同じくやまと航海長 早乙女皐月三等海佐であります。」

2人は同時に立ち上がると敬礼をした。

上条も答礼をして、付け足した。

「今日は挨拶をしに来ただけですので、 そんなに畏まらないで下さい。

では失礼します。」

「了解しました。」

そして第1居住区内にある副長室に着いた。 

「こちらが副長室になります。」

「やまとには副長室なんて物もあるのか、しかもこんなに広いのか」

「やまとはその辺の護衛艦とは違います。排水量にしてあたごの約8倍あるのでその分を他に転用できたのです。」

「なるほど」

「荷物を置かれたようなので、機関室に向かいましょうか。」

「何故機関室なのですか?」

「海士から叩きあげたベテランの機関長がいるんですよ。

やまとのことなら彼に聞くのが1番です。」

「へぇ ではすぐ行きましょうか?」

やまとのすべてを知る人が居ると聞いた上条は積極的になった。

「ええ こちらから向かうのが近道です。」

そう言って手近の隔壁から出て歩き始めた。

45分かかって機関室にたどり着いた。

「桜野一士 機関長はいるか」

吉井一尉は若い海士にそう聞いた。

「機関長ならそこにいます。」

桜野一士はそう言って、コンソールの前で座っている男を指差した。

「機関長 吉井一尉がお越しです。」 

桜野一士は気を効かせて機関長を呼んでくれた。

「吉井 何の用だ。」

「新しい副長を連れてきました。」

「ほぉ 吉井の後ろにおるあんさんがか」

「はい やまと副長を任ぜられた上条定雄です。」

機関長は上条の事を値踏みするような目線を送って来る。

「わしはやまと機関長 碇省三三等海佐や。

よろしゅうたのむわ。」

「こちらこそよろしくお願いします。

そういえば、やまとに乗られて長いと聞いたんですけど本当ですか?」

「あぁ そうやのう。旧やまとのころから乗っとった。」

防衛省七不思議の1つに、やまと大改装というか新規建造予算が認められた。という項目がある。

防衛予算の中で巨額の予算を必要とするのにどう言いくるめたのか予算にうるさ財務省の主計官がなぜか認めたのである。

理由についてはいろいろと言われている。

主計官が情報本部のハニートラップに引っ掛かって弱みを握られていただのという確かそうなものから、主計官が艦船オタクでアメリカのアイオワ型戦艦に対抗しただの眉唾なものまでいろいろある。

2012年に行われた大改装にはやまとをもう一隻建造できるだけの予算がかかっていた。

だが何故海上自衛隊はやまとにこだわるのかと問われると大抵の人が他の護衛艦が保有していない対地攻撃能力と答えるだろうが、実際は異なる。

やまとは海上自衛隊が旧日本帝国海軍の後継を証明する血統書なのだ。

そのため1958年の再就役から常に海上自衛隊に籍を置きつづけている。

自分がやまとに乗りはじめた頃の話からここまで話は脱線した。

それを上条は真面目に聞きつづけた。

そして碇三佐の話は終わる。

「これで話は終わりやけど、最後まで聞いてくれたんはあんたが初めてや。

ホンマおおきに。」

碇三佐は本当に嬉しそうだ。

「副長 次行きますよ。」

次に向かったのは、航空機格納庫であった。

「自分は 杉崎幸一三等海佐であります。

SH-60K(シーライオン1番機)機長であります。

副長お待ちしておりました。」

「自分は 相良圭介三等陸佐であります。

UV-22J(シャドー)機長であります。

なお自分は陸上自衛隊より出向中であります。」

相良三佐が出向してきたのには、海上自衛隊でオスプレイパイロットがまだ養成できていない為らしい。

「自分は 折木洋輔一等海尉であります。

SH-60K(シーライオン2番機)機長であります。」

「皆さん 出迎えご苦労様です。

副長を任ぜられた上条定雄です。

よろしくお願いします。」

続いて吉井一尉に連れられて艦内を歩いている。

「次はどこへ行くんですか? 吉井一尉」 

「医務室ですよ。 うちの艦には、名医がいますからね。

ほら着きましたよ。」

「吉井一尉 その方は誰なの?

まさか新しい副長な訳ないわよね。」

「ええ そのまさかですよ。」

「失礼しました。

自分は護衛艦やまと医官 笠原薫一等海尉であります。」

「私は副長に任ぜられた、上条定雄です。よろしくお願いします。」

 

副長としての初日は幹部との顔合わせで終わった。

 




やまとが血統書云々の話は実際にもあった話です。
海上自衛隊の護衛艦わかばは旧海軍の駆逐艦梨でした。
駆逐艦梨の再就役には旧海軍の後継としての血統書が欲しかったのではないかと言われています。
詳しくはググって調べてみてください。


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