やまと復活 鬼神の護衛艦   作:佐藤五十六

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第32話

あしがらside

撃てぇ(テェー)。」

黄海(ホワンハイ)に突入した第二護衛隊群は、旗艦であるヘリコプター搭載護衛艦いせを中心に防空輪形陣を敷いていた。

ミサイル護衛艦(DDG)3隻(臨時配備のやまと、あしがら、きりしま)をトライアングルに配置して、その間を汎用護衛艦(DD)5隻(はるさめ、たかなみ、おおなみ、てるづき、たにかぜ)が固めている。

さらには、たにかぜ型護衛艦は、真にミニイージス艦としての能力を持たせた護衛艦である。

防空戦や艦隊戦にも対応可能な、護衛隊群単位で採りうる最善の陣形である。

とはいえあしがらのレーダー画面を見る限り、中国空軍(ベータ目標)のJ-11が大きく数を減らしたようには見えない。

事実12発のSM-2(スタンダードミサイル)は、半分近くが回避されていた。

やまとのやったように対電子対抗手段(ECM)を全開にして戦闘しているため、どうしてもJ-11の編隊はこちらに肉薄せざるをえない。

それがせめてもの救いであり、また付け込める隙でもあるのだ。

「スタンダード防空圏突破まで10分35秒。

間違いなく、本艦だけでは阻止できません。

やまとに支援を要請してください。」

レーダー員が報告する。

「分かった。」

艦長は頷く。

「第2射、発射用意。

できるだけ数を減らす必要があるからな。

撃てぇ(テェー)。」

あしがらside out

 

第二護衛隊群司令部side

「やまとはどうなってる?」

やまとが、J-7(アルファ目標)と交戦しはじめていた頃の事である。

司令が首席幕僚に聞く。

「アルファ目標と交戦を開始した。

との報告は入っています。

黙って見守るしか無いでしょう。」

「ふーむ、そうか。」

「アルファ目標とは別の対空目標捕捉。

ベータ目標と呼称。

あしがらと交戦を開始しました。」

やまとのレーダー員とほぼ同時にこちらでも、敵機接近との報告が入る。

「アルファ目標がやまとに向け、対艦ミサイルが発射しました。

数、84発。」

「何っ、多過ぎる。

いくらやまとでも手に余るぞ。

やまとは何と言っている?」

首席幕僚に問われた通信士が、慌ただしく通信室に向かう。

電文を持って戻ってきた通信士はそれを読み上げた。

「敵対艦ミサイルの数は、本艦の対処能力を超えてはおらず。

故に、手出し無用との事であります。」

それを聞いた首席幕僚は、一瞬呆然とした。

「は?

それは、本当か?」

「はい。」

「そうか、わざわざありがとう。」

「いえ、自分はやるべき事をやったまでです。」

「やまとはそう言っていますが、司令いかがしますか?」

首席幕僚は、そばにいた司令に指示を仰ぐ。

「やまとがそう言うなら、それに従え。

あれは、海自最強の(ふね)だからな。

簡単に沈むことも無いだろう。」

「わかりました。」

第二護衛隊群司令部side out




たにかぜ型護衛艦
基本性能は、ほとんどあきづき型に準拠。
主な変更点は、VLSの増設と、SM-2ER改運用能力の獲得である。
同型艦は、DD-119"たにかぜ"
     DD-120"はるかぜ"
     DD-121"ゆきかぜ"
     DD-122"かみかぜ"
     DD-123"いそかぜ"
     DD-124"うらかぜ"の6隻である。

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