ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)   作:蜜柑ブタ

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 試験的に書いてみました。
 ツムグの過去話というか、序章までの大まかな流れみたいなものです。

 色々矛盾があるかと思いますが、ここがおかしいと思ったら教えていただけると助かります。


過去話  椎堂ツムグ

 

 

 

 

 

 

 

 世紀の大発見だと、当時の学者達は言った。

 

 G細胞を取り込みながら、人間の形を保っている人間が発見されたのだ。

 

 G細胞の研究を行っていた当時の科学者達はこぞって彼の体を調べさせてほしいと懇願した。

 

 地球防衛軍に保護されている彼は、いまだになのに喋る気配はない。

 

 身元確認のため身体特徴や現場に残っていた物から調査がされたが、一向に成果は得られていない。

 

 赤毛に金色が混じった独特の色合いの髪の毛を抜けば、完全な人間の形をしており、顔の特徴は日本人っぽい。

 

 中肉中背で、髪の毛以外に大きな特徴がなく、黒い瞳もまあ普通…である。

 

 しかしどこの誰なのかがわからない。

 

 彼が発見された現場も、ゴジラと怪獣による破壊が凄まじく身元の確認に使えそうなものはなかった。

 

 なにせ彼以外に生存者がいない酷い有様だったから。

 

 発見された状況から、G細胞が混じって蘇生した人間ではないかという推測もあがった。

 

 血塗れで裸だったこと、周りに致死量以上の血が流れていたこと、内臓などからしか出ない体液も飛び散っていたことなどがあげられる。

 

 結局どこの誰なのか分からないまま、せめて彼自身の口から何か語られれば何かわかるかもと待つこと約十日後。

 

 ゴジラが再び日本に上陸した時、初めて彼が口を開いた。

 

「………ゴジラ…、さん。」

 

 しかも笑って。

 

 そこからは早かった。

 

 結局、彼自身、自分が何者なのかという記憶がなく、なぜ第一声があれ(※ゴジラをさん付けしたこと)だったことについてもほとんど無意識だったらしい。

 

 ただゴジラの話題を出すと笑う。なぜか嬉しそうに。それ以外のことだと表情が乏しいのに…。

 

 ゴジラを畏怖している者達は、彼のその様に異常性を感じずにいわれなかった。

 

 その異常性は間もなく発揮された。

 

 ゴジラが遠い地で人里に上陸すると、厳重な扉を熱線で破壊して出ていこうとしたのである。

 

 手から熱線を放つことから人間ではなく怪獣なのではという声が飛び、逃げ出そうとした際に死傷者を出したとして射殺命令が下った。

 

 だが、いくら弾丸を撃ち込んでも死なず、瞬く間に傷が癒えた。

 

 結局、『もういいや』っと言って出ていくのを諦めた。

 

 ゴジラに対する尊敬にも似た念と、異常な再生能力などの人間にはない能力。

 

 形こそ人間だが、人間という定義で収まるものではなかった。

 

 保護から監視に変わるのにそう時間はかからなかった。

 

 様々な実験にかり出されるのも。

 

 多くの研究者がこぞって彼を研究した。

 

 G細胞の平和的利用のために。己の欲望のために。

 

 しかし……。

 

 調べれば調べるほど分かったことは、彼の細胞は、ゴジラと同じように本人の遺伝子に依存しており、体内に注入されると怪獣化はしないが全身の細胞が超健康になる代わりに即死してしまう。

 

 そしてクローンを作ろうとしても、形にすらならず、そこに命が宿らない。

 

 子供を作らせようとしてもなぜかうまくいかない。彼の体は、常人よりも健康体であるにもかかわらずだ。

 

 放射能を受けても中和するが、周囲の放射能を吸着するわけじゃない。

 

 あるのは、異常な再生能力。心臓を潰しても、頭を潰しても、こま切れにされても、全身を業火で焼かれても、水に沈めても、毒を盛られても、彼は死ななかった。

 

 彼の細胞の平和的利用は、早々に諦められ、欲望のために利用しようとしていた者達ですら匙を投げた。

 

 それほどまでに使い道が見つからなかったのである。

 

 閉じ込められ監視されるにとどまった彼は、G細胞完全適応者と呼ばれる一方で、人間名として“椎堂ツムグ”という名を与えられることになった。

 

 椎堂ツムグという名前は、彼が発見された現場にあった看板などの破片から取って繋げた名前で本名ではない。

 

 時を経るごとに椎堂ツムグは、口数が多くなり表情も豊かになっていった。

 

 そうなると彼は、異常で強力な超能力を発揮し、頻繁に脱走するようなった。

 

 そして脱走するたびに戻ってきた。

 

 悪戯をするようなった。

 

 どんな過酷な実験にも、自分自身を抹殺しようとする動きにもヘラヘラ笑って応対した。しかし何をしても椎堂ツムグは、死ぬことはなかった。

 

 ゴジラを始めとした怪獣達との戦いは激化し、人間側が不利になり始めると。

 

 預言を口にするようなった。

 

 最初こそ無視していたが、その的中率は極めて高く、言う通りにすれば有利に事が進められた。

 

 しかし不吉な預言もあり、それはどう足掻いても回避できなかった。

 

 やがて椎堂ツムグへの信頼を寄せる者達が現れ始め、ツムグは、戦いの完全なる裏で人類を支え始めるようなった。

 

 しかしゴジラへの対する崇拝に似た態度は相変わらずで、椎堂ツムグがゴジラ側に回り、敵になる可能性が揶揄された。

 

 椎堂ツムグへの信頼を寄せる者がいる一方で、彼の存在を良く思わない者達が多数を占めた。

 

 それでも椎堂ツムグは、マイペースに周りを引っ掻き回したり、ヘラヘラと自分に降りかかる残酷な仕打ちにを受け止める日々を送っていた。

 

 そしてある日のこと、彼は、一人の軍人の女性に出会う。

 

 椎堂ツムグは、微笑み。

 

「初めまして、波川玲子さん。」

 

 自己紹介も無しに彼女の名前を言い、相手を驚かせた。

 

「あなたが“椎堂ツムグ”…。」

 

「そうだよ。ところでずいぶん面白いことを始めようとしてるんだね?」

 

「! 私は何もしゃべっていません。」

 

「メカゴジラ。」

 

「!」

 

「それに俺を材料として使いたいんでしょ? いいよ。好きに使って。」

 

「あなたはそれでいいのですか?」

 

「なにが?」

 

「材料にされるということが何を意味するのか…、あなたは分かっているのでしょう? それがどれほどの…。」

 

「今更だよ。」

 

「えっ?」

 

「今まで散々手足も首も胴体も切り刻まれたし、内臓だってひとつ残らず取られたり、血も全部抜かれた。毒もいっぱい盛られた。今更だよ。」

 

「…そうですか。」

 

「気にすることないよ。俺の使い道がやっと見つかったんだし、喜ぶべきなんじゃないかな?」

 

「…そうですか。」

 

「形が人間だからって気にする必要性なんてこれっぽっちもないんだから。」

 

「あなたは本当にそれでいいのですか?」

 

「ん~?」

 

「あなたの預言で救われた命は沢山あります。あなたのことを信じる者達がいるというのに…。」

 

「これだけは言っておくよ。波川さん。俺は、好き好んで人間を助けてみてるだけだから。その気にならないだけで、その気になればいつだって敵になれるんだ。それだけは忘れないで。」

 

「では、あなたが私達人間を嫌いにならないことを祈ります。」

 

「フフフ。波川さんって、将来大物になりそうだよね?」

 

「そんなことは…。」

 

「そんなことが起こるから面白いんだよ。でさ、いずれ出会うよ。」

 

「であう?」

 

「言わないでおく。」

 

「もったいぶらないでください。」

 

「そうでなきゃ面白くないじゃん。ネタバラシばっかじゃね。」

 

 椎堂ツムグは、クスクス笑い、波川玲子と対話をした。

 

 その後も、波川はちょくちょく椎堂ツムグと対話をすることになる。

 

 椎堂ツムグは、やがて彼女のことを“波川ちゃん”と呼ぶようになり、波川は、彼をツムグと呼ぶようになった。

 

 そして3式機龍の後継機に当たる、4式機龍の開発が始まった。

 

 3式と違い、ゴジラの骨を使わず、それに代わる素体としてツムグの骨髄細胞を使用するというこの計画によって、毎日ツムグは、脊髄を搾り取られることになった。

 

 毎日死ぬほど搾り取ってもすぐに治ってしまうのではっきり言ってなんぼでも取れる。

 

 なので実験の材料には困らなかったと、当時の開発者達は語る。

 

 だが搾り取る側は大変だ。どれだけ搾り取っても復活するとはいえ、毎日それをやらされていた者達は精神を病んだ。それほどに凄惨な現場であったのだ。

 

 ゴジラがスペースゴジラとの戦いの後、核エネルギーの暴走を起こし、そしてデストロイアが姿を現して戦いに発展した。

 

 メルトダウンによって溶け始めたゴジラを救ったのは、ツムグだった。

 

 監視の目から脱走していつの間にかゴジラの心臓に取りつき自らの回復能力をゴジラに受け渡した。

 

 これによりゴジラは、奇跡的な回復をし、ツムグを吐きだして海へと帰還した。

 

 この時、ツムグは、本当の意味で死にかけた。回復するはずの傷は回復せず、呼吸と鼓動が止まっていないのが奇跡的なドロドロの状態だったと当時の関係者は語る。

 

 回復には数年を要した。その間、ゴジラは全く姿を現さなかったという。

 

 ツムグは、回復した自分自身を見て、酷く落胆していたという。

 

 ほぼ同じ時期にゴジラが再び現れるようなり、他の怪獣達の動きも変わらずだった。

 

 変わったことと言えば、ゴジラ・ジュニアがいなくなったことだけだろう…。

 

 そしてセカンドインパクトが起こる20年前に、ゴジラは南極での戦いで氷の中に封印された。

 

 南極を指定したのは、ツムグの預言だった。

 

 南極でゴジラを封印する快挙を成した旧轟天号に乗っていた当時普通の兵士だったゴードンは、ゴジラを封印する一手を打った者として表彰され昇格した。

 

 その後、ゴードンが人類最強と謳われるほどの男になるのは、また別の話である。

 

 ゴジラが封印された後、ゴジラがいなくなったことで怪獣との戦いに関する負担が多少は軽減された。しかしゴジラが封印されてなお怪獣の活動は活発であった。

 

 そんな中、ツムグは、ゴジラの復活を予言した。

 

 そのための備えはすべきだと言い、それを信じた者達により4式機龍の開発と共にゴジラ復活に備えた。

 

 そして…、ゴジラが封印されて5年後、セカンドインパクトが起こった。

 

 地球の軸さえ狂わせる破壊は、最大の脅威であった怪獣達を消し去った。

 

 南極の消滅でゴジラは消息不明となり、怪獣達も消えたことで地球防衛軍は、その存在価値を失ったとしてゼーレにより解体された。

 

 しかしゴジラの復活の預言を信じた波川を始めとした同志達の手により、地下に潜伏したGフォースが4式機龍の開発の続行と対怪獣兵器の温存、セカンドインパクト以降から発生するようなったミュータントという新人類達をまとめた組織を結成して密かに新しい戦力として育て上げるなどいつ成就されるか分からない預言に備えた。

 

 その間ツムグは、表向きは国連軍の監視下に置かれ、人工進化研究所で研究素材として扱われることになった。

 

 やっぱりそこでも再生力と、不老不死なところを注目され、あんなことやこんなこと、様々な実験に付き合わされたが、ツムグは、別に気にしてなかった。そして結局、何の成果も得られなかった。

 

 人工進化研究所には、4式機龍の開発に携わっている隠れたGフォース隊員である科学者がおり、ツムグから抜き取った骨髄細胞を日々タンクに詰めて運び出していた。

 

 その甲斐あり、4式機龍・フィア型が完成した。

 

 そしてセカンドインパクトから15年後、ゴジラはついに復活を果たし人類の前に現れた。

 

 ゴジラの姿を見て、ツムグは、歓喜した。密かに。

 

 数十年という時間を、ツムグは、生き続けた。変わらない姿のまま。

 

 彼の心を占めるのは、間違いなくゴジラのことだろう。

 

 ……きっと、最後の時まで。

 

 

 

 

 

 




 ツムグの容姿は、中肉中背のフツメンです。
 髪の毛だけが派手(赤毛に金色が混じっている)ですが。
 作中であんまり表現してなかったのでここであげてみました。

 波川との出会いは、だいたいこんな感じです。司令官まで出世する前の波川です。

 キャラの過去話って難しいですね。

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