ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)   作:蜜柑ブタ

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 今回でゼルエル編は終わりです。
 早って感じですが戦闘を何話も長引かせるのは、執筆力のない私には無理でした。

 今回は、ゼルエルがG細胞を取り込んだ結果を描きました。
 オルガのようでいて、オルガのようにはいかないということにしました。


第二十四話  G細胞と使徒

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼルエルは、咆哮した。

 

 いや正確にはゼルエルの声とは言い難いかもしれない。

 

 背びれ、太く鋭い爪、ゼルエルの顔を押しのけるようにして生えて来た新たな顔。

 

 変り果てた姿となってしまった。

 

 

 

『こ、これは…!』

『使徒が変異したぞ!』

『この姿は…。』

 

 ゼルエルの今の姿は、地球防衛軍の古参は見たことがある、とある怪獣に似ていた。

 正確には怪獣ではなかったのだが、怪獣となったモノ。

 

 宇宙怪獣オルガ。

 G細胞を取り込んだ結果、副作用で怪獣となった宇宙人ミレニアンの成れの果て。

 その怪獣にどことなく似ていた。

 

『G細胞の副作用か!』

『さっきゴジラを喰ったから!?』

『G細胞完全適応者の細胞では火傷して、純正G細胞だと怪獣化なのか!?』

『…完全適応者……、椎堂ツムグの細胞を溶かした水分では使徒は焼かれる。だがゴジラはどうだ? ゴジラの純粋な細胞では火傷をしていなかった。あれだけゴジラの血を浴びていながらあの使徒は平然としていたぞ。』

『…! なぜ…?』

『それは調べてみないと…。』

『なんで今更そんなことに気付くんだ…。』

『今までゴジラが使徒との戦いで出血したことがなかったからだろ。』

 

 司令部は大騒ぎとなった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「チッ。」

 ツムグは、舌打ちした。

 変異したゼルエルの姿を睨む。とにかく気に入らない。

 ゴジラはまだ倒れたまま動かない。胸の部分に先ほどまでゼルエルに喰いつかれていた傷跡があり、それがまた気に入らない。

「よくもゴジラさんを喰ったな…!」

『ツムグ、落ち着いてー!』

 怒るツムグに、ふぃあが声を掛けるがツムグは全く聞かない。

 怒りのままに操縦桿を操作しドリルを展開した腕を振るう。

 ゼルエルの変異した腕が振るわれ、ドリルを弾いた。

 ゼルエルが再び咆哮し、機龍フィアに向かって来た。

 宙に浮かず、地についている大きく肥大化した両腕を足代わりにするようにして移動している。

 くっつけた右腕のブレードを展開し、ゼルエルに振り下ろす。

 ゼルエルの元々ある顔の方が切り付けられたが、突進は止まらない。

 大口を開けたゼルエルの新しい顔が機龍フィアに喰らいつこうと迫ってきた。

 機龍フィアが横にずれて避けると、ゼルエルは、勢いのまま横を通り過ぎ、そのまま地面に顔から突っ込んで倒れた。

 よろよろと立ち上がるその姿は、最初の頃のあの不気味で圧倒的な存在からかけ離れており、恐らくまだG細胞の変異に慣れていないのだろう。

 ゼルエルの背中の背びれの横からシュルシュルと布状の体の組織が出て、機龍フィアに向かって振られた。どうやら体が思うように動かない代わりに自由が利く布状のそれで攻撃するらしい。

 細かいフットワークで布状のそれを避けると、再びドリルを展開してゼルエルの背中を狙った。

 布状の組織が阻み、ドリルが布状の組織を貫通し、止まった。

「邪魔だ!」

 ツムグが叫び、ドリルを一旦引いて、再び突き出し、布状の組織を強引に破った。

 ゼルエルの体に到達したドリルがゼルエルの背中を抉った。

 ゼルエルに生じた新しい顔が悲痛な声を上げ、振り返りざまに大きな腕を振るって機龍フィアを弾き飛ばした。

 弾き飛ばされたが、倒れず地面に着地した機龍フィア。

 ゼルエルの体からシュルシュルと布状の組織が発生し、イソギンチャクのように揺れ始めた。

 何本もある布状のそれがクルクルと巻かれ、何本もの棒状の物に変化して物凄い勢いで伸ばされてきた。

 両腕をドリルに変え、棒状の物をよけながら二、三本を引き裂き、ゼルエルとの距離を詰めようとした。

 ドリルを振りぬこうとした時、ゼルエルは片腕を前に出してドリルを腕で防いだ。ドリルが腕に刺さり肉が抉れる。

 ゼルエルに生じた新しい顔がずいっと前に出てきて機龍フィアの肩に噛みついた。

 特殊超合金に歯が擦れ、嫌な音が鳴る。

 しかし噛みついて間もなくゼルエルが口を離した。

 そして突き飛ばすように手を使って機龍フィアから距離を取る。

「こいつ…。」

 何をしようとしたのか理解したツムグは、忌々しいとまた舌打ちした。

 かつてオルガが更にG細胞を摂取しようとしてゴジラを丸呑みにしようとした時のように、機龍フィアからツムグの細胞を摂取しようとのだが、純粋なG細胞ではないと気付いて喰おうとするのをやめたのである。

 そうとなれば次にゼルエルが狙うのは…。

 

 倒れているゴジラの方に、ゼルエルが目を向けた(新しい顔の方が)。

 

 ゼルエルが咆哮し、獣のように両腕を使ってゴジラの方へ進んだ。

 機龍フィアがゴジラとの間に入り、その突進を受け止めた。

 押し合いへし合いになり、やがてゼルエルが布状の組織を機龍フィアの背中に突き刺した。

 背骨の破損個所を塞いでいたツムグの細胞組織が剥がれ、再び赤黒いモノが噴出し、それがゴジラに降りかかった。

 ジュウッと音を立てて、ゴジラの体にかかったツムグの体の組織が蒸発して染み込む。

 するとゴジラの体にあった傷が物凄い勢いで再生を始めた。

「ゴジラさん…。」

 今だ起き上がらないゴジラをちらりとツムグは見る。

 ゼルエルの手が機龍フィアの顔を掴んだ。

 とにかく行く手を阻む機龍フィアをどかそうと躍起になっているようである。

 これ以上ゴジラを喰らえばゼルエルは、間違いなくよりゴジラに酷似した怪獣に変異するだろう。

 今のゼルエルには、もはや本来のゼルエルとしての意思はほとんどないのかもしれない。あるのは、ただよりゴジラの細胞を摂取してゴジラに近い存在に変異することだけだろう。

 ゼルエルのコアの方を見ると、コアは、ひび割れ、今にも砕けそうになっていた。

 つまり使徒ゼルエルは、すでに死にかけているのだ。“使徒”としては。

 変異が完全になった時、そこに残るのはゼルエルではなく、元がゼルエルだった怪獣がだけが残されることになるのだろうか。

 邪魔だと言わんばかりにゼルエルが布状の組織をやみくもに振り回す。そのたび機龍フィアから火花や装甲が剥がれたりして傷ついていく。

 機体ダメージの過多を知らせる警報音が操縦室に鳴り響きだした。

『つ、ツムグ…、イタイ、イタイよぉ…。』

「くっ。なら…。」

 ツムグは、ふぃあの悲鳴を聞かずリミッター解除のスイッチを押そうとした。

 その時。

 

 機龍フィアの背後で、ゴジラが立ち上がった。

 

「ゴジラさ…、ブっ!」

 

 ついに復活したゴジラの姿に歓喜したツムグだったが、機龍フィアの頭部を後ろから掴んだゴジラによって機龍フィアは、ゼルエルに頭を叩きつけられたため舌を噛み最後まで言葉を紡げなかった。

 ゴジラの怪力で叩きつけられた機龍フィアの頭部の一撃で、ゼルエルは怯み、距離を取った。

 ゴジラは、ぺいっと機龍フィアを横に放り棄て、雄叫びを上げた。

 その目はギラギラと怒りに満ちており、血で汚れた口元を大きくゆがめている。

 機龍フィアという障害がなくなったことで、ゼルエルがゴジラに迫った。

 伸ばされた大きな手をゴジラが掴み、そのまま持ち上げて、投げ、地面に叩きつける。

 それを何度か繰り返す。

 コアに入っていたヒビがますます増える。

 放り投げられて地面に叩きつけられ、ヨロヨロと起き上がろうとしながら、シュルシュルと布状の組織を出す。

 また棒状に変化させたそれが伸ばされ、ゴジラを攻撃するがゴジラは、棒状のそれを掴み引き千切って捨てた。

 使徒ゼルエルとして死にかけている今のゼルエルの力は、最初の頃と違いかなり弱ってしまっているのだ。

 更にゴジラは怒るとパワーアップする性質があり、弱体化したゼルエルの力をますます霞ませる。

 ゴジラが雄叫びを上げながらゼルエルに接近すると、ゼルエルは、素早くゴジラの腕に噛みついた。

 噛みついた端からゴジラの細胞のエキスを吸い取ろうとする。だがそれを黙って許しはしない。

 ゴジラは、ゼルエルの新しい顔の方の上顎と下顎を掴んだ。

 ギリギリメキメキと、ゴジラは、怪力でゼルエルの新しい顔の方を上下に引き裂いていく。

 引き裂かれたことで出血をし、新しい顔の横にある元々あるゼルエルの顔が血で汚れていった。

 そしてついに下顎を千切り取ったゴジラは、更にゼルエルの腕を掴んでへし折った。

 バランスを崩し前のめりに倒れかけるゼルエル。更にゴジラは、足をゼルエルの肩辺りに乗せて、折れた腕を引っ張り、引き千切る。引き千切られた腕は、その辺に放り棄てられた。

 コアが今にも壊れそうな状態なせいか、あの異常な再生力も失われてしまったらしい。

 もはや、このままゴジラに惨殺されるのだろうかと戦いを見守っていた者達が思った。

 ゴジラがゼルエルの元々ある顔の方を掴み、引っ張ると、まるでゴムのように伸びる顔。

 その時だった。

 ゼルエルの口から、ゴジラを喰った時に使った器官のような物が飛び出し、それが思いっきり広がって、ゴジラの顔から上半身辺りまで飲み込んだ。

 飲み込んだヒダの部分からゆらゆらとエネルギーを吸い取っていることを示す光が発生している。

 この光景は、かつてオルガがゴジラを丸呑みした光景とよく似ている。

 その証拠に、ゼルエルの体から生じている背びれがますます発達し、ゴジラの背びれにより近いモノになり、尻尾が生え、足の方もゴジラのようにごついモノに変異しつつあった。

 その変異によってコアがビシビシと音を立てて、ついに崩れた。

 と同時に、ゼルエルの動きが止まった。

 へたり込むように上半身を前に倒れさせ、ゴジラは、自分を丸呑みにしようとしていたゼルエルの口から出て来た。

 動かなくなったゼルエルを、ゴジラが見下ろす。

 そしてゼルエルの体がドロリと溶けるように崩れ始めた。

 溶けた体がどんどん地面に広がっていく。

 やがて黒っぽい灰色の液体だけが残り、ゼルエルは形を残さず溶けてしまった。

 

 

 地球防衛軍のスーパーコンピュータのパターン判別機能が、パターン青の消失を示した。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「死んだか…。」

 ゴードンは、轟天号の中で中継を見ていてそう呟いた。

「これがG細胞の副作用なのか…。」

「馬鹿な真似をしやがって。」

 ゴジラを喰わずにいれば、ゼルエルは、勝利していただろう。使徒として。

 だがゴジラを喰った代償にゼルエルは、変異に耐えられなかったのかコアが砕け、ドロドロに溶けて死んでしまった。

「艦長。発進しますか?」

「発進させろ。ゴジラを撃退する。」

「了解。」

「機龍フィアの方はどうなさいます?」

「あの状態じゃあれ以上は動けないだろう。放っておけ。」

 機龍フィアは、地面に転がったまま動かない。時折火花が散っているので機能はまだ生きているらしい。

 

 

 ゴジラとゼルエルの戦いは、ゼルエルの自滅によって幕を閉じた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 相変わらずの、どこだか分からない薄暗い場所で。

 

『……………誰か何か言わんか。』

 ゼーレの面々はお通夜状態のように静まり返っていた。そんな中、そのうちの一人が呟いた。

『最強の拒絶型の使徒が……。』

『どう考えても自滅ではないか…。』

『なぜゴジラを喰った…。喰わなきゃ勝てたぞ、あれは。』

 文句を言ったところですでに死んだ使徒には伝わらない。

『議長、このままでは…。』

『……。』

 話を振られたキールは、腕を組み、黙っていた。

『残る使徒は三体、ゴジラにすべて退けられてしまうのか…。』

『まだ敗北が決まったわけではないだろう! 諦めるな!』

『エヴァもない、使徒も残り少ない、どう勝てと…?』

『おのれゴジラめ! 貴様さえいなければすべてがうまくいっていたというのに!』

『ゴジラさえいなければゴジラさえいなければゴジラさえいなければゴジラさえいなければゴジラさえいなければ…。』

 ついにはブツブツとそんなことを言う者さえ現れ始めるほどゼーレは追い詰められていた。

「ことは一刻を争う。」

 キールが口を開いた。

『議長?』

「もはや最終手段を取るしかない。」

『ぎ、議長! しかし!』

「ならば良い案があるのか?」

『っ…それは。』

『……。』

 黙ってしまう面々にキールは、深く息を吐いた。

「我々人類はこのままゴジラに滅ぼされるわけにはいかんのだ。だがしかし、奴を滅ぼすにはもうこれしかあるまい。」

『ゴジラを滅ぼすため…。』

『そのために我々は進化の道を捨てなければならないか…。』

『セカンドインパクトでも死ななかったのを、サードインパクトで殺せるのか? フギャっ!?』

 その疑問を出したら、もう本当に方法が無くなってしまう。これを言った構成員は、キールが電流を流してお仕置きをした。

「ゴジラを滅ぼさねば人類の進化もクソもない。我々が取るべき道はほとんど残されていないに等しいのだ。これも人類のため…。覚悟を決めよ。」

 キールの静かな言葉に、他の構成員達は見えないが深く頷いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 ゴジラは、回復したものの消耗が激しかったのか、轟天号と交戦せず海に帰って行った。

 ゴジラが海に帰還した後、轟天号が機龍フィアを助け起こすためにしらさぎや他の船隊と第三新東京に着艦していた。

 そんな中、ネルフにいるリツコのもとにある人物が訪ねた。

 

「これはこれは大佐さん、何の御用かしら?」

 ゴードンだった。

「ドイツから運ばれて来た荷物があるって聞いたもんでな。」

「あら、そんなものあったかしら?」

「とぼけるな。」

「お気を損ねたかしら?」

 ゴードンの言葉に、リツコは、クスクスと笑った。

 リツコは、席から立ち。

「マヤ、しばらく席を空けるからMAGIの方をお願いね。」

「はい、分かりました。」

 マヤにMAGIを任せ、リツコは、ゴードンの近くに来た。

「こちらですわ。ついてきてください。」

 リツコの後ろにゴードンがついていった。

 最低限しか機能していないネルフの中を歩いて、やがて辿り着いたのは総司令室だった。かつてここでゲンドウが座っていた席がある。

 司令の席に設置されているキーボードをリツコが操作する。

 すると広い司令室の中央辺りの床が開き、何かがせり上がってきた。

「これですわ。」

 それは頑丈なトランクだった。

「こいつは?」

「あら、内容は聞いていないのですか?」

「開けてみてからの楽しみだとか言ってたな。」

「そう。」

 そう言いながらリツコは、トランクのパスワードを解いていく。

 そして開けられたトランクに詰まっていたのは…。

「あの男の企みにどうしても必要だったモノ。今となっては無用ですけれど。」

「おい、どういうことだ?」

「これは、卵。かつてアダムと呼ばれていたモノが還元された姿。」

 トランクの中で胎動するそれは、半透明な殻に包まれた何かの胎児のようなモノ。

 リツコは、それをアダムだと言う。

「セカンドインパクトの元凶ってわけか。」

「あら、そこまで知っているの?」

「とある男から聞いた話だ。誰がやったのかは知らねぇ。」

 リツコは、ゴードンの言葉から、ゴードンがセカンドインパクトの事実は知っていてもゼーレやミサトの父親達のことは知らないことを察した。

「これをどうするのです?」

「預からせてもらう。」

「そう。でも気を付けてください。これがあると使徒がそちらに行きますわよ。」

「どういうことだ?」

「使徒の目的はアダム。アダムの波動に魅かれ、そこを目指す。もし使徒がアダムと接触されば…。」

「サードインパクトが起こる。」

「そこまで知っているのなら気を付けてくださいね。」

「それだと妙な話だ。」

「といいますと?」

「これが運ばれたのはあの魚みたいな使徒の時だ。だったらそれ以前の使徒は何を目指してここ(第三新東京)に来た? ここにはまだなにかあるんじゃないのか?」

「…お見通しなのね。でしたら…。」

 リツコは、観念したと言いたげに大げさに肩をすくめて見せた。

 そして、彼、ゴードンをある場所へ案内した。

 

「これで、ネルフが隠す物はもうありませんわ。」

 

 そう言って見せた物は。

 

「これは…。」

「これはリリス。黒い月に乗ってやってきた私達人類の祖先と言うべきかしら。」

 

 十字架に磔にされ、槍で串刺しにされた白い巨人だった。

 

 

 

 

 

 




 ゼルエルは、ほぼ自滅に近いです。
 G細胞を取り込まなかったら勝機はあったかもしれません。
 G細胞を取り込んだ結果が、必ずしもプラスになるとは限らないと思ったので。


 アダムとリリスをどうするか…、悩んだ結果がこれです。
 加持の情報でアダムの卵が見つかり、リリスの方はリツコが開示しました。
 アダムの卵については、次回でどうなるかを描きます。

 執筆がうまくいかず、目標の20KBまで文章が中々書けなくなっています。
 次回はいつになるやら…。

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