ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)   作:蜜柑ブタ

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 続けて十六話目です。

 今回は、バルディエル編。


 使徒戦をもっと長引かせようとがんばりました。
 うまくできたか心配です。


第十六話  BARDIEL その1

 

 

 

 

「あー、すっきりー!」

「買いましたね…。」

 音無に付き合ってと言われたシンジは、外出届を出して音無とショッピングセンターに来ていた。

 ストレスにまかせて色んなものを買った音無。シンジは、カートを押しながら顔を引きつらせていた。

 何があったのかは知らないが、なんとなく尾崎絡みではないかとシンジは思っていた。当たっている…。

「じゃっ、そろそろ帰りましょうか。」

「は、はい…。」

 音無の車に荷物を詰め、二人は帰路につくべく車に乗った。

 その車を追いかける黒い車がいた。

「ごめんね、シンジ君…。」

「なにがですか?」

「買い物、付き合ってもらっちゃって、今日は本当にありがとう。」

「た、大したことはしてませんよ。音無さん、なんだか普通じゃなかったような気がして…。」

「……。」

「あっ、すみません、変なこと言っちゃいました。ごめんなさい。」

「尾崎君のことよ…。」

「えっ?」

「最近倒れてばっかりだからカッとなっちゃって。ああいう人だって分かってたはずなのに。」

「音無さん…。」

「シンジ君、レイちゃんのことどう思う?」

「はっ? へっ!? な、ななななな、なんですか!? 急に!?」

 明らかに動揺するシンジに、音無は意地悪く笑った。

「仲良いな~って思って? 違ったかしら?」

「ち、ちちちちちち違いますよ! 僕と綾波はそんなんじゃ…!」

「顔真っ赤かよ?」

「うわわわっ!」

「ごめんごめん。可愛いからつい。」

「かかかかか可愛いって…。」

「うふふ。…っ!?」

「うわっ、なんですか急に?」

 急にブレーキを踏んだため、前のめりになりシートベルトが食い込んでシンジは顔を歪めた。

「…シンジ君。捕まってて。」

「えっ? う、うわああ!」

 音無が警告するが早いか、音無はアクセルを踏んで横の路地を爆走し始めた。

「お、音無さん!?」

「舌噛むわよ!」

「ふひゃ!」

 音無は、見事なハンドルさばきで道路が悪い路地を走っていく。

 音無が操る車の後ろの黒い車が数台、追いかけて来た。

「くっ、しつこいわね。」

「あ、あの音無さん…。前!」

「! はっ!」

 道を曲がったところで目の前にトラックが荷台の扉を開けており、急に止まれず車はトラックの中に突っ込むことになった。

 トラックの中で止まると、窓ガラスが割られた。

「シンジ君!」

「音無さん!」

「動くな!」

 音無は、シンジを庇い、音無の頭に銃が突きつけられた。

「…何の真似かしら?」

「言う通りにしてもらうぞ。」

 覆面を被った男に脅されたが音無は動揺することなく男を睨みつけた。

「この子には乱暴しないでくれる?」

「用があるのはそちらの少年だ。それは聞けない。」

「なんですって。」

「えっ、ぼ、僕?」

 他の覆面の男達が、シンジを音無から引き剥がした。

「うわあ!」

「やめて!」

「おまえはついでだ。碇シンジ、この女の命が惜しかったら大人しく従うんだ。」

「っ…。」

「シンジ君ダメよ!」

「で、でも…。」

「余計なマネはするな。」

 男は音無を縛り上げながら言った。

 

 そして二人は目隠しをされ、どこかへ連れて行かれた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「美雪とシンジ君が帰ってこない?」

 尾崎はそれを聞いて目を見開いた。

「何か聞いていないか?」

「いいえ…。」

「二人とも外出届を出していて、音無博士の携帯に連絡しても繋がらなくって…。」

 音無の同僚が携帯を片手に心配そうに言った。

「何か知ってるかもって思ったんだけど。」

「すまない。俺は何も聞いてないんだ。」

「そうですか…。お泊りだとしても事前に連絡ぐらい入れてくるはずなのに…。」

「……。」

「尾崎少尉?」

「…嫌な予感がする。」

 

 

 

 っと、その時。基地が揺れるほどの爆発が外で起こった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ゴジラの襲来を知らせる警報が鳴り響いた。

 海からまっすぐに……地球防衛軍・日本基地に向かってきていた。

「なぜゴジラがここ(基地)に?」

「理由を調べるのは後にしろ! 総員、戦闘態勢に入れ!」

「防衛ラインを突破させるな!」

 第三新東京を目指さず、基地に向けて進撃してくるゴジラに地球防衛軍はすぐに戦闘態勢に入って応戦した。

 

 ゴジラの雄叫びが基地まで届くほど響いた時。

 戦艦を収容しているドッグから爆発が起こった。

 そして煙の中から、火龍がゆっくりと浮上した。

 

「火龍!? 出動許可は出ていないぞ!」

「待て! ドッグを爆破させたのは火龍なのか!?」

「船員は誰も乗っていません!」

「なんだと!? じゃあ、なぜ動いて………まさか…。」

 

 いきなり動き出した無人の火龍が、砲塔を出して、基地に攻撃を行った。

 その砲塔にはネバネバとした筋のようなものが張り付ていた。

 

「パターンブルーを検出しました! 使徒です!」

「今度は戦艦を奪われたのか!!」

「全軍に通達! 火龍…、いや使徒を迎撃せよ!」

「ゴジラが基地を狙ったのはこのためだったのか!」

 

 ゴジラは、いち早くそれに気づき使徒が潜んでいる場所、つまり地球防衛軍の日本基地に向かって来たのである。

 

 宙に浮いた火龍からの砲撃が続いている。

 地球防衛軍が応戦して砲弾を撃ち込むと、火龍の周りにATフィールドが発生し防がれた。

 火龍が撃ってくるミサイルに弾切れがないのかどんどん撃ってくる。これも使徒のなせる業なのだろうか。

 ミュータント部隊が超能力を使いミサイルの弾道を曲げて防いだり、撃ち落とすなどでして基地への被害を抑えようとした。

 

「機龍フィアの出動はどうした!?」

「椎堂ツムグがヘロヘロで操縦ができんらしい! こんな時にあのバカは!」

「轟天号を出します。」

「し、しかしまだ修理が終わったばかりでは?」

「一刻を争います、急ぎなさい。」

「は、はい!」

 

『おい、いつまで待たせる気だ?』

 

 通信が入り、ゴードンの声が響いた。

「準備は万端なようですね。」

『あったりめーだ。さっさと発信許可を出しな。』

「ゴードン大佐、許可もなく轟天号に乗り込んだのか!』

「轟天号出動。目標は、使徒に乗っ取られた火龍の殲滅。徹底的にやりなさい。」

「波川司令! 火龍を完全に破壊するのですか!?」

「それ以外に方法がありますか?」

「う…。」

 波川にじろりと見られ、司令室の人間の一人が言葉を詰まらせた。

「科学部から使徒の名は、バルディエル、粘菌型の使徒だというデータが届きました!」

 なお、使徒の名前とタイプの情報をもたらしたのは、機龍フィアのDNAコンピュータ・ふぃあである。

「微生物の次は、粘菌…。まったく同じタイプの使徒はいないのね。」

 波川は、これまで現れた使徒がどれも被っていないことについて、息を吐いた。

「…気味の悪い存在だわ。」

 怪獣のような生物らしさというか、そういうものが感じられず突然現れ、何を目的に行動しているのかも不明で、倒さなければ世界が終わるという曖昧な情報だけしかない謎の生命体。

「そして、なぜゴジラは、その使徒を敵と認識しているのか……。」

 波川は、ゴジラがなぜ使徒を敵視しているのか、その理由を知らない。

 ツムグが何か知っていそうなのだが、喋ろうとしない。

 ツムグは、色んなことを知っているはずだ。だがあえて喋ろうとしない。

 ツムグの力を最大限に使えば、すべての物事を自由にすることができるだろう。

 だがそれは望まれぬことだ。そんなことではダメなのだ。

 ゴジラは、人間が生み出してしまった。これは人間が立ち向かわなければならない問題だ。

 すべてを見聞きできるツムグの力を使うことは人間が受けるべき試練を台無しにしてしまう。それは成長を妨げ未来を台無しにすることに繋がる。

 機龍フィアのシンクロシステムを普通の人間でも操縦可能にしようとする試みもそのためだ。

 本当ならツムグを乗せて戦わせたくはない。だが現状はツムグを戦わせなければゴジラの迎撃が難しいのだ。

 使徒を迎撃する時もあまりの得体の知れなさから意見を求めなければならない時だってあった(レリエルの時)。

 ツムグが知っていることを喋らないのは、波川のその心中を知っているからだろう。だが急を要することは伝えてくる。おかげで大惨事を防げるわけだ。

 ツムグは、いつか自分が必要とされなくなることを望んでいる。

 いつか自分が死ぬことを夢見ているのではないかと思われる。

 だからああも悟ったような口ぶりをするし、何をされても受け入れるのだ。

 ツムグがいない世界…。

 波川はそれを想像するが、想像できなかった。

 それほどツムグがいる日常が当たり前のようなっていたのだ。

「彼のいる日常が、いつの間にか普通になっていたのね…。」

 波川は、そっと微笑んだ。

「轟天号と火龍の戦闘が始まりました!」

「ゴジラが熱線を吐きました! なっ…。」

 ゴジラが防衛ラインの途中から遠距離で熱線を火龍・バルディエルに向けて放った。

 しかしバルディエルのやや上の方に命中したかと思うと、熱線は緩やかな斜め方向に弾かれた。

「あれはATフィールド!? しかしゴジラの熱線はATフィールドでは防げなかったのでは!?」

「あの使徒のATフィールドがこれまでの使徒の中でトップクラスに強固だということか!?」

 確かにバルディエルのATフィールドは固い。

 しかしゴジラの熱線を完全に防げるほど固いのではない。

 ATフィールドを一点に集中強化したうえで、ATフィールド斜めにし、船体も斜めにすることで熱線を受け流したのである。だから斜めといっても緩やかなものになったのである。

 使徒なりの対ゴジラ対策であった。

 ゴジラもそれには驚いたのか、鼻を鳴らした。

 するとそこへ、若干ふらついているように見えなくもない機龍フィアが登場し、ゴジラと相対した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 火龍・バルディエルを前にした轟天号は、敵の出方を待った。

 バルディエルが轟天号が来た途端に砲撃を止めたからだ。

 まるでこちらを観察しているような…、そんな感じがする。

「粘菌型とはまた…、気味の悪い使徒ですね。」

「……風間! 来るぞ!」

「はっ!」

 次の瞬間、バルディエルからミサイルが数発発射された。

 それを間一髪で後ろにずれることで避けた。

 ミサイルは、追尾式でないはずなのに、轟天号を狙って飛んできたので撃ち落とした。

 撃ち落すと爆発とともに粘菌のようなネバネバが燃えるミサイルの残骸に張り付いていた。

「野郎…、轟天号まで乗っ取る気だな。」

「ま、まさか、そんな! それはマズイのでは!? このままではこちらまで。」

「接近し過ぎんじゃねぇぞ。」

「ラジャー。」

「艦長!」

「倒せりゃいいんだ、倒せりゃな。」

 そう言って豪快に笑うゴードンに、副艦長は溜息を吐いた。

 再びミサイルを発射してきたバルディエルだが、そのミサイルをプラズマメーサーで焼き落とす。

 バルディエルは、ブレードメーサーを展開し、轟天号に急接近を試みようとしてきた。

 風間の操縦で絶妙な距離を保ちながら、轟天号は応戦するべく砲撃を開始した。

 メーサーが弾かれるのを見て尾崎が驚愕したが、すぐにATフィールドの向きやバルディエルの船体の向きが関係しているのを見破り、高出力のメーサーを撃って弾かせた隙をついて、他の向きから攻撃を加えた。すると防がれることなくバルディエルに命中した。

「科学部からの報告! 動力炉付近に動力炉とは異なる高エネルギー反応があり、そこにコアがある予想されるとのことです。」

「船の中心か…。」

「中心に攻撃を届かせるとなるとやはりドリルのメーサー砲でしょうね。しかしあのATフィールドの張り方と使い方では、弾かれてしますよ? かと言ってドリルアタックは…。」

「できるわきゃねーだろうが。奴に乗っ取られる。」

「ですよね。」

 そんなやり取りをしている間にもバルディエルがまたミサイルを飛ばしてくる。

 どうしても轟天号を乗っ取りたいらしい。

 それを撃ち落しながら攻撃は続いた。

 バルディエルは、ガバッと口を開くように縦に割れ、轟天号に向かって来た。

「! 見えた!」

 その口の奥にコアらしきものが見えたのを見逃さなかった。

 轟天号がバルディエルを避けると、バルディエルは、旋回して轟天号の後ろから噛みつこうとまた襲って来た。

 轟天号が逃げるとそれを追いかけてきた。

「後ろから追ってきますよ!?」

「右に回れ!」

「えっ!?」

「いいからやれ!」

 ゴードンの指示で右に舵を取ると、その直後、轟天号を掠るように…。

 

 機龍フィアのミサイルの流れ弾が通り過ぎ、バルディエルの口の中に入った。

 

 口の中、それでいてコアのところで爆発したことにより、バルディエルは悲痛な鳴き声を上げ、地面に落下した。

 

 

 バルディエルが地面の上でもがいていると、バルディエルの周りに放水車が集まってきた。

 

「放水開始!」

 その合図により放水が始まった。

 

 G細胞完全適応者(椎堂ツムグ)の体液入りの水を…。

 

 バルディエルは、声にならない叫び声をあげた。

 もうもうと煙が上がり、ブスブスと焼け焦げていく。

 4分の1くらい焼け爛れたところで、グググッとバルディエルの内部から盛り上がってきたものがあった。

 それはコアだった。

 バルディエルは、コアを出すと、粘菌状の身体を残してコアを上空に超高速で飛ばした。

 その上空には轟天号がいた。

 コアから蜘蛛の巣のように粘菌が噴出され、轟天号のドリルに張り付いた。

「艦長! 使徒が! 轟天号が乗っ取られる!」

「尾崎、撃て。」

「ラジャー!」

「えっ、尾崎! 待て!」

 副艦長が止める間もなく、尾崎が兵器の発射スイッチを押した。

 轟天号からミサイルが発射され、コアが張り付いたドリルに命中。

 粘菌が散り、コアがプラプラとドリルに引っかかっている状態になった。しかしそれでも意地でバルディエルは、轟天号に張り付こうとした。すでにコア近くに当たった機龍フィアのミサイルとツムグの体液でかなり弱っている。

 粘菌の体には、液体が染み込みやすかったらしい。

「メーサー砲用意!」

「ラジャー!」

 ドリルにエネルギーが集約され、メーサー砲の準備が整った。

「発射!」

 尾崎がメーサー砲の発射スイッチを押した。

 ドリルに集約されたエネルギーが放出され、バルディエルの中心を撃ち抜いた。

 撃ち抜かれた中心、つまりコアは、砕かれ、要をであるコアを失ったことで粘菌状の身体を維持できなくなり硬質化したバルディエルの体の組織はボロボロと崩れていった。

「パターンブルー、消失。」

「使徒の殲滅を確認。」

 轟天号のオペレーター達が使徒の殲滅を伝えた。

「……あっけねぇな。」

 ゴードンは何か腑に落ちないと言う風に呟いた。

「そうでしょうか? 十分厄介な敵だったと私は思いますが?」

「ゴジラは?」

「機龍フィアと交戦中です。」

「エヴァンゲリオンはどうなっている?」

「? エヴァンゲリオン参号機は、いぜん東京湾に…、……!? 参号機の反応消失!」

「ちぃっ! 面舵いっぱい! 第三新東京を目指せ!」

「艦長、一体何か!?」

「火龍はデコイだ! 本物の奴は参号機の方だ!」

「馬鹿な、エヴァンゲリオンが!?」

「本部からの通達! 轟天号は速やかに第三新東京に急行せよと!」

「ゴジラが機龍フィアを振り切って第三新東京を目指し始めました!」

「今回は騙されたぜ…。」

 ゴジラも地球防衛軍も、使徒バルディエルに騙されたらしい。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 バルディエルは、邪魔者がいない状況で、悠々と第三新東京(もはや荒野状態)に侵入した。

 ゆっくりと生気のない雰囲気を漂わせる歩き方は、不気味以外の何者でもない。

 やがてバルディエルは、ネルフ本部に侵入するためのハッチを見つけ、こじ開けようと手をかけた。

 しかしその手を不意に止めた。

 じろりと見た先には、射出機が上がっており、そこに真紅のエヴァンゲリオンが佇んでいた。

 バルディエルは、口の金具を引きちぎって吠えた。

 

「行くわよ!」

 

 エントリープラグ内のアスカは、初戦闘による緊張から若干引きつった笑みを浮かべ、弐号機を操ってプログレッシブナイフを構えた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「なぜ、出動させたのですか!?」

 リツコがゲンドウに抗議した。

「地球防衛軍にエヴァの有用性を知らしめるためだ。」

 叫ぶリツコにゲンドウは、淡々と返した。

「まともな武装も無しにあの使徒に敵うはずがありません! 即刻弐号機を回収してください!」

「却下だ。」

「勝手な真似をしては地球防衛軍の怒りを買うだけです!」

「問題ない。」

「司令!」

 リツコがいくら言ってもゲンドウは、弐号機を止めようとはしない。

 唇を噛んだリツコは、踵を返し、司令室から出ていった。

「…ユイ……。」

 ゲンドウは、今は亡き妻の名を呟いた。

 

「準備が整いました。いつでもいけます。」

 そこに顔を覆面で隠し、上から下まで黒い衣装の男が入ってきてゲンドウにそう伝えた。

「そうか。」

「しかしあなたも悪い父親だ。実の息子を妻を呼び戻すために利用するなんて…。」

「それぐらいしか使い道がないからな。」

「本当に酷い人だ。」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「今すぐ弐号機を下がらせて!」

「何言ってんのよリツコ!」

「いいから下がらせなさい! 勝てるはずがないわ!」

「そんなのやってみなきゃ分かんないわよ!」

「弐号機、使徒と接触! 戦闘に入ります!」

「やめなさい、アスカ!」

 

 

 第三新東京の上で、弐号機と使徒バルディエルに乗っ取られた参号機の戦闘が始まった。

 

 一気に距離を詰めようと走り出した弐号機に、バルディエルが鞭のように片腕を振った。

 バルディエルによって変質した腕がしなやかに曲がり、弐号機に向かって伸びた。

 それを頭を下げて避けた弐号機は、少し減速しつつもバルディエルの懐に入り込んだ。

『でやあぁぁぁぁ!』

 アスカは絶叫し、弐号機の持つプロッグレシブナイフをバルディエルの腹部に突き刺した。

 ブジュリと粘液が垂れ、バルディエルは、もう片腕で弐号機を横に弾き飛ばした。

 弐号機はナイフを持たない方の腕で防御し、地面に受け身を取った。

 バルディエルは吠え、両腕を地面に突き刺した。

 すると弐号機がいる地面の下からバルディエルの両手が飛び出してきた。

 弐号機は地面を転がり、間一髪で避けるとバルディエルは両腕を地面から引き抜き、四つん這いで走り、弐号機に迫った。

『ちょっと、なにか武器はないの!?』

 アスカが本部に向かってそう言うと。

「あるわけがないでしょう! 武装の開発は完全凍結してるんだから!」

 マイクを奪ったリツコが叫んだ。

『じゃあどうすんのよ!?』

「アスカ、今すぐ射出機のハッチから退却しなさい! 勝てないわ!」

「いいえ、アスカ戦闘続行よ!」

「ミサト!」

『もういいわ、このままやってやる!』

 武器の調達ができないと判断したアスカは、もう一丁のプロッグレシブナイフと格闘技だけでバルディエルを仕留めようと構えた。

 襲い掛かってきたバルディエルの肩を掴んで止めると、その下顎に蹴りを入れた。

 後ろにのけ反ったバルディエルだが、すぐに体勢を戻し、口を大きく開こうとした。

 その時、バルディエルの背中に爆撃が降り注いだ。

 流れ弾で弐号機にも降り注ぎそうになったが、アスカは間一髪で後方に退いて避けた。

 前のめりに倒れるバルディエル。

『! 地球防衛軍!』

 上を見上げたアスカは、戦闘機のマークを見て地球防衛軍が駆けつけてきたことを知った。

『っ、余計なことをしないでよ!』

 アスカは忌々しそうに舌打ちして言った。

 爆撃による煙の中、バルディエルが顔を出し、口から白い粘液を吐きだした。

 避けようとしたが、左腕に浴びてしまった。

 その瞬間。粘液が弐号機の左腕に浸食した。

『キャアアアアア!』

「弐号機、左腕部浸食!」

「弐号機の左腕を切り離して!」

 リツコの指示により、弐号機の左腕が根元から遠隔操作で切り離された。

『くうぅぅぅ!』

 神経回路が接続したままなのでアスカは左腕を切断された痛みを味わった(※実際に左腕が切れたわけじゃない)。

 膝をつく弐号機にバルディエルが襲い掛かろうとしたが、凄まじい例の雄叫びを聞いてピタッと止まった。

 ゆっくりと右後ろに振り返るバルディエルは、ゴジラを見た。

 バルディエルが振り返るのとほぼ同時にゴジラが放射熱線を吐いた。

 バルディエルは、避けるために大きく跳躍し、放射熱線の射程距離には弐号機だけが残された。

「アスカ、逃げてぇ!」

 ミサトが叫ぶが、弐号機はそれどころじゃない。

『これくらい!』

 弐号機はATフィールドを張って放射熱線を防ごうとした。

 が…。

『えっ! あっ…。』

 っと言う間に貫通した放射熱線の光を前にアスカは、間抜けな声を漏らしてしまった。

 弐号機に当たる直後、銀色と赤の巨体が弐号機を突き飛ばし放射熱線をくらった。

『アチチチチ!』

 熱がる男の声が聞こえ、アスカは我に返った。

 熱線がやむと、全身から湯気を出す銀と赤のゴジラによく似たロボットが弐号機を庇うように立っていた。

 バルディエルは、もう弐号機に目もくれずゴジラに向かって行った。

 ゴジラは、バルディエルに向かって進撃を続けた。

『ま、待ちなさい!』

 アスカは、残った右腕をバルディエルに伸ばしたが、その手は空を切っただけで終わった。

 自分を無視して行くバルディエルと、バルディエル目がけて突き進むゴジラを睨みながら、アスカは、唇を強く噛んでプラグ内の内装を殴った。

 

 

 ゴジラが再び放射熱線を吐いた。

 バルディエルは、再び高く跳躍して避けると鞭のようにしならせ伸ばした腕でゴジラの顔を殴打した。

 ゴジラは、体を仰け反らせたがすぐに体勢を直して歯をむき出して唸った。

 片腕を地面に沈めたバルディエルは、ゴジラの片足を地面の下から払い、もう片腕で再び頭部を殴打した。

 ゴジラは、バランスを崩して横に倒れたところに地面の下から今度はバルディエルの両腕が伸びてきてゴジラを上へ跳ね上げた。

 100メートルの巨体が軽々と跳ね上げられ、地面に叩きつけられた。

 

「あの使徒、あの細腕でなんて腕力だ!」

 

 一見細身のエヴァンゲリオンだが、使徒が取りついたことでパワーアップしているのか、凄まじいパワーを持っていた。

 ゴジラが起き上がると、ゴジラの腹に強烈な突きが入り、ゴジラは口から唾液を吐いた。

 するとバルディエルの背中から参号機の腕より太い白い腕が生えて来た。

 ゴジラとの距離を詰めたバルディエルは、四本の腕でゴジラの顔と腹を連続で殴打しだした。

 バルディエルは、自らの性質を利用して更に能力を底上げしたのか、ゴジラの巨体が殴られるたびに後ろに後退した。

 

「お、押されてる! ゴジラが!」

「なんて奴だ! ここまで地の力でゴジラを追い詰める奴がいるなんて!」

「椎堂ツムグはどうした!? 何が起こっているのか奴に聞くのが一番だ!」

「機龍フィアがオーバーヒートを起こしかけている上に当の本人がヘロヘロ状態で話にならん!」

「どうするんだ! ああ!?」

 

 ゴジラがこのまま押されっぱなしかと思いきや、そんなはずはなかった。

 参号機の腕が顔を殴打する直後、その腕をゴジラが噛んだ。

 そして噛み千切った。

 バルディエルは、跳躍して距離を取り、噛み砕かれた腕を白い組織で修復した。

 ゴジラの背びれが光った。

 放射熱線が来ると思ったのかバルディエルがゴジラの顔を殴打しして発射を阻止しようとして…、できなかった。

 放射熱線ではなく、周囲に広がる体内熱線だった。地面が抉れ、ネルフ本部を覆う装甲の一部が溶けて変形した。

 もろに浴びたバルディエルは、地面に転がりブスブスと煙を出していた。殴打しようとして伸ばした腕に至っては肘あたりまで蒸発していた。

 内部の方も焼けてしまったのか時折ビクンッと跳ねることはあれど立ち上がる気配がなかった。

 ゴジラは、バルディエルの頭を掴みあげた。

 更に腹を掴み、引っ張った。

 バルディエルの腹が裂け、臓物が溢れ出て地面を赤黒く染めあげた。

 ゴジラは、腹から手を離し、肩部分を掴んでさらに引っ張った。

 頭が背骨と一緒に引っこ抜かれ、裂けた首部分からコアらしきものが覗いていた。

 ゴジラは、それを掴むと、そのまま握りつぶした。

 握りつぶす瞬間、バルディエルのものと思われる悲鳴が上がった。

 もはや原形をとどめていないグチャグチャになったバルディエルを地面に捨て、ゴジラは雄叫びをあげた。

 バルディエルの体液が近くにあったハッチの中に流れ込む。

 ゴジラが使徒を殺して愉悦に浸っている時。

 

 ゴジラからやや離れた位置からせり上がって来るものがあった。

 ゴジラは、それを見て気分を害されたと言う風に顔を歪めた。

 

 それは、射出機に固定された初号機だった。

 

 

 

『……た、…助けて……。』

 

 初号機の内部からか細い少年の声が響いたが、ゴジラに伝わるはずがなかった。

 

 

 

 

 

 




 ……展開がメチャクチャだなっと我ながら思う。
 いつか書き直すかも。

 弐号機を登場させた意味は…、とくに深く考えたわけじゃないんですが、いつまでも空気というわけにはいかないかな?っと思ったからです。
 でも大した武装無しで初戦がいきなりバルディエルは、酷過ぎましたね…。ごめんね、アスカ!

 そして最後の方。初号機が(一時)退場と…なります。

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