ファ! なにがあった!?
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どうもこんにちは。七歳になっても相変わらず友達が薫だけの川平啓太です。
親戚の子供たちからは化け物認定を受けたため、アクションを働きかけてもビクつきが返ってきます。解せぬ。
女の子とは比較的良好なんだけどなぁ。よくおままごととかで一緒に遊んでるし。
それでも友達ではないんだけどね。そこにいるから人数合わせで入れてあげる的なニュアンスがピンピンするし。
さて、いま俺は薫と寂しく二人鬼ごっこをしている。
薫のほうで人を集めてくれようとしたけど、参加者に俺がいると知った途端に回れ右をする人が続出したため二人きりだ。
二人だけだと盛り上がりに欠けるから、勝負は一本限りで敗者は勝者の言うことを可能な限り遂行するという罰ゲームを設けた。つまり逃走者は鬼から逃げ切れば勝ちということである。
これならちょっとは楽しめるだろう。
「じゃあ鬼を決めようか」
「ん。その前に飴あげる」
「ありがとう?」
ポケットから取り出した飴を握らせる。
右手で握ったのを確認してすかさず、じゃーんけーん、ぽん!
「あっ!」
「ふふふ……」
薫が出した手はグー。そして俺はパー。
頭の回転が速い薫でも流石にこれには引っ掛かったか。
「啓太くんずるいよ~!」
「ずるくない。飴をあげただけ」
引っ掛かるほうが悪いのだよ!
むすー、と頬を膨らませる薫を放って数歩分距離を開ける。
「というわけで、薫が鬼。制限時間は十分」
「はぁ……わかったよ。範囲は裏庭だけだよ?」
「ん。委細承知」
物分かりが良くて大変よろしい。
ほどなく十秒数えた薫が勢いよく駆け出す。
距離はあまり離れていないため、すぐに追いついた。
「啓太くん、つかまえた!」
「おっと」
一直線に伸ばしてきた右手を避ける。
脇を通り過ぎた薫はすかさず手を伸ばしてくるが。
「ほい」
それもするっと逃れる。
手を伸ばせば届く距離を維持しながら上体の動きと足捌きだけで避け続ける。
「くっ、この!」
近距離なのに捕まえることが出来ないことに業を煮やしてきたのか、段々とむきになってくる。
しかし、いくら薫といえどそう簡単に捕まるわけにはいかない。
日々鍛錬を重ねてきた俺が同い年の子供に遅れを取るなど許されない。
そう、これはプライドの問題だ。
「もう! なんで捕まってくれないんですか啓太くんっ!」
「無茶言うな」
至近距離での攻防。
当事者は真剣だが、外から見ればさぞ可笑しな光景かもしれない。
あっという間に十分が過ぎる。もちろん俺は捕まってなどいない。
「時間切れ。薫の負け」
「はぁ、はぁ……け、啓太くん凄すぎ。なんであれだけ動いて平気なの……?」
そういう薫は膝に手を当てて息を切らせている。
基礎体力の差がこんなところで顕れたのだった。
「お待ちかねの、罰ゲーム」
なににしようかな?
「お、お手柔らかにね」
引き攣った顔で釘を刺す薫。なに、出来ないことは言わんさ。
「じゃあ、大道芸の定番、ジャグリング。いってみよう」
ばっちり宴会芸、仕込んでやるからな!
1
「ほれ、王手」
「うー……!」
暖かな日差しが窓辺から室内を照らす中、ぐぬぬと盤面を睨むように見下ろす。
薫の罰ゲームが終わり、今はお婆ちゃんの部屋で将棋を指している。
お婆ちゃんやはけとはたまに将棋を指すことがある。
途中まではいい感じだったのだが、気がついたらウチの王が追い詰められてるし……。
「…………根性で逃げる」
「なに堂々と反則してるんじゃ!」
ひょいっと何気なく王様を遠くに逃がそうとしたらお婆ちゃんに頭を叩かれた。流石に無理かぁ。
「……これが、年の功……か」
「まだまだ若い者には負けんよ」
「むぅ……。なら、今度は五目並べ」
これなら前世で散々やってきたから多少自信があるぜ。
某オンラインゲームでは神様の称号を掴んだことすらあるしな!
「随分とマイナーなものをチョイスしたのぉ」
そうかぁ? 俺的に碁盤で遊ぶゲームっていったら囲碁か五目並べだぞ。
脇においてあった碁盤を持ってきてさっそく遊ぶ。あっ、俺白ね~。
……あー、このパチン!ていう音と感覚。やっぱイイわ~。
囲碁といい将棋といい、癖になるよねコレ。覚せい剤とかより中毒性あるって。なにより安全かつ合法で脳にもよさそうだし。
そうこうしているうちに、早くも五分が経過する。
「むぅ……!」
盤上を今度はお婆ちゃんが難しい顔で睨む。
パッと全体的に見た感じだと、黒が固まり、白が分散している。
一見お婆ちゃんが優勢に見えるが……。
「ここに置くと、禁じ手になる……だが、置かないと上がりに……。お前さん、意地が悪いぞ」
そう、禁じ手である三・三になるように誘導したのだ。
ぽっかりと空いた空間を埋めれば三・三の禁じ手で負け。逃すと白が四になるのでこれまた負け。
これを、つむと言うのだよ!
「俺の勝ちー」
アイムウイナー! と一人高く手を上げる。
俺と同じで負けず嫌いなお婆ちゃんはもう一度勝負を挑むのだった。