P.I.T(パイナップル・インザ・チューカスブタ) (完結)   作:コンバット越前

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久方ぶりのIS。
とりあえずえっちぃ酢豚だけは完結させよう。





更識楯無の生娘の主張

「う~ん」

「おハロー」

 

目を覚ました一夏に某魔女さんのような挨拶をかます楯無。

どうでもいいがキャラ的にビッ○扱いされやすいということで似ている二人である。

 

「楯無さん?……ハッ!」

 

一夏は慌てて自分のマイ・サンに手をやった。

何故か教師ビンビン物語な息子の様子に安堵する。どうやら種殺しは免れたようだ。

 

「……女の子の前で粗末なものをいじくらないでくれる?」

「あ、すみません!」

 

嫌悪感丸出しに言う楯無に、一夏はすぐにマイサンから手を離した。

しかしすぐにムカッと来た。いくら何でも粗末はないだろ、これでもDANよりは立派なんだぞ!

 

「全くこれだから童貞は。デリカシーのかけらもない生き物ね」

「なにィ」

 

楯無の童貞を軽蔑するような物言いに一夏は目を剥く。

 

「ヤることしか頭が無く節操も無い。こんなんじゃ世のチャラ男に女の子盗られても仕方ないわね」

「なっ……!」

「あ~ヤダヤダ童貞なんて。こっちだって大事な初めてに相手が童貞なんてお断りですわ~。オホホのホ」

「アンタって人はぁ!」

「なによ?」

「よりによってヤリチ○のチャラ男と比較するなんてナンセンスでしょうが!男はともかく、女は誰しも初めての時は相手にも初めてを……つまり童貞を求めるものでしょう!」

 

女性とは殊更愛だのシチュエーションなどを大事にする。どこの世界に初めてをヤリ○ンに捧げたいと思う女性がいるだろうか?

 

「ふふ……あははははははは!バッカじゃないのー!」

しかしそんな一夏のピュアな童貞意見は生娘の爆笑によって否定された。

 

「一夏君。世の女はねぇ、夢見る童貞が願うほど清純じゃないっての」

「ど、どういう事ですか?」

「男は初めてのときだって、ただ鼻息荒く獣のように腰振ってりゃ勝手にいい気持ちになれるかもしれないけどさ。女は違うって事」

「え?」

「女の初体験ってのは相当の覚悟に忍耐や苦痛を伴うものなのよ。だから自分のことで手一杯で、こっちの苦悩を考えもしない童貞に身体を任すよりも、女の子に手馴れてて、不安を解消し、優しくリードしてくれる大人の男に捧げたい……そういう子も多いんだよ?」

「そ、そんなバカな!そんなことあるわけない!」

 

一夏は絶叫する。

そんなの認められない。処女にとって、チャラ男>童貞なんてことが!

 

「君たち童貞は好きな子には殊更キモイ処女性を求めるけどさ、女の子からすれば経験の有る無しなんて相手に求めないってこと。いやむしろ選べるのなら、多くは経験有りのほうを選ぶわね」

「嘘だ!」

「女ってのは相手に『安心』と『余裕』を求めるのよ。だからブラの外し方も知らず、キスの前にスカートの中に手を突っ込みたがるような童貞なんてお呼びじゃないの」

「嘘だ嘘だ!お、女の子だって『はじめてどうし』に誰しも憧れを持っているはずなんや!」

「ねーよ。童貞乙」

 

楯無はキャラ崩壊とも言える口調で一夏を、童貞を断罪した。

哀れにも童貞は「うああああ!」と髪を掻き毟って咆哮する。

 

「そんなことない!チャラ男が絶対勝利するなんてのはエロ同人ゲーだけで充分だ!」

「君は普段何をプレイしてんのよ……」

「『はじめてどうし』だからこその喜び、哀切、快楽、そして愛!これでしょう!それが一番大事!」

「お前は何を言っているんだ?」

 

一夏の崩壊具合に楯無は呆れ帰る。

本当に童貞と言うのは堪え性がなく、夢見がちなものだ。

 

「女の初めてに愛はともかく快楽なんてあるわけないでしょ」

「えっ?」

「えっ」

 

一夏の呆けた様子に楯無の方が驚いた。何驚いてんのこの子は?

 

「あ、あの……無いんスか?快楽?」

「ないわよ」

「だって、AVとかじゃ処女の触れ込みの女優さんが、おっぱい揉まれているだけで快楽に絶叫したり……」

「そんなの全部演技に決まってんでしょ。バカ」

「そんな!」

「胸触られても痛いかくすぐったいだけよ」

「だってAVとかえっちぃ本の中じゃ……」

「そんなの全部童貞に都合のいいまやかしの事実でありまーす」

「そんな馬鹿な……。俺の信じていた世界は……虚構だったと言うんですか?」

 

一夏はガックリと頭を垂れる。今まで信じていた世界が淡くも崩れ落ちた瞬間だった。

 

 

 

童貞の掟その八 童貞はAVとエロ本を基準にS○Xを考える。

 

 

 

「おっぱいさえ制覇すれば女性を満足させられると……そう、信じていたのに……!」

「んな分けないでしょ。アホですかアンタは」

「俺はこれから何を信じたら……」

 

楯無はAVを絶対視し、今その幻想が砕けてしまった哀れな男を見て思う。

死ねばいいのに。

 

「無知ってのは怖いわね。女の子のことを何も分かってない」

楯無はやれやれと首を振った。全く理想だけご大層な童貞はホント救いがない。マジ死ねよ。

 

「……違う」

「え?」

「そんなの間違ってる」

 

しかし今楯無の前にいるのは、童貞は童貞でも世の有象無象の童貞ではなかった。

傷つき倒れても、何度でも立ち上がる不屈の男。天下のイケメン、織斑一夏その人なのだ!

 

「そんな考え楯無さんだけだ!楯無さんがおかしいんだ!」

「ふーん。その根拠は?」

「こ、根拠って……そう!だってシャルやセシリアや、それから……えっと、クラスの皆!誰も楯無さんみたいなエグイ事言っているのなんて聞いたことないですよ!皆『恋人欲しい』とか『付き合ってみたい』とかそんなピュアな事を言う可愛い子ばかりなんです。それが普通なんです!楯無さんがおかしいんだ!この処女エロ年増!」

 

一夏はそう反論する。怒りとパニックのあまり、後で確実に殺されるようなセリフを口走りながら。

 

「ハッ、君はどうしようもないバカだな」

しかし楯無は動じない。

 

「一夏君さー。老婆心で言うけど、女の子に、特に身の回りの子にそんな幻想抱いていると、後で大きなしっぺ返し喰うわよ」

「んなことない!」

「君ファミレスとかで隣の席に座った女の子グループの内輪話とか聞いたことない?年頃の女の子ってどんなエグイ話してると思う?男の下ネタよりヒドイわよ」

「違う!女子はそんな話なんてしないんだ!お花畑と蝶々をバックに、『うふふ、あはは』と言った天使の囀りのような会話しかしないんだい!」

 

楯無は急に目の前の少年が可哀想になってきた。

姉に対する過度の思慕といい、この子は女性に幻想抱きすぎじゃないのか?

 

「一夏君。現実を見なさい。そんな女の子なんていないのよ?」

「だって俺、皆とよくお茶したりするけど、そんな話になったことなんて一度もないですよ!」

「キミの前でそんな話するわけないでしょーが。君IS学園に慣れきったせいで忘れてない?YOUは男だよ?男性の前でも全く素の姿を見せられる女の子がいたら、逆に怖いわ」

「じゃ、じゃあ楯無さんは箒に鈴。セシリアにシャルにラウラ、簪に至っても!俺が知らないだけで、そんな耳をふさぎたくなるような話をしてるって言うんですか!」

「……うん」

 

楯無が少しの逡巡の後頷いた。別に一夏の勢いに呑まれたわけではない。ただ一瞬想像してしまったからだ。愛しの妹が「あたしの彼氏ちょー最悪なんだけどー。メッチャ早漏だしー」とか言っちゃう場面を。

 

これはひどい。

 

「ウソだ……。セシリアが、ラウラが、皆が。……俺の大切な子たちが、俺の居ない所ではそんな頭の悪いギャル会話を……」

「女は怖いのよ」

「もしや俺が童貞だと言う事もネタにされてるってことですか?『一夏ってさー童貞なんだよねー。ちょっとマジ勘弁して欲しいよねー。一緒に居るの恥ずいからさっさと風俗でも行って卒業しろってかんじー。キャハハハハ、マジきもーい』……なーんて会話をしているって言うんですか。くそったれ!」

「えー?……えっと、どうなのかしらね?」

 

それはギャルどうこうより人間としてどうなんだろう?

 

「俺はどうすれば……」

 

今度こそ膝をつき打ちのめされる一夏を見て、楯無はそろそろ許してやろうかと思い始めた。一応の復讐は果たしたし、これ以上苛めるのも可哀想だ。

 

「ま、一夏くん。顔を上げなさいな。私は……」

「このまま俺は楯無さんと同じ道を辿ることになるんですかね?魔法使いへの悲しき童貞……道程を」

 

おい。今何つった?

どーゆー意味だ?それは。

 

「ちょっと一夏君」

「分かってるんですよ本当は!所詮は経験なき者なんて誰も相手にして貰えないって!黄金体験(ゴールド・エクスペリエンス)が何より大事なんだって!……このまま俺は本気で魔法使いコースという修羅の道に逝っちまうしかないんですか?」

「あの~?」

「魔法使いという名の、異性に相手にされないボッチ人間……楯無さんのように俺もなっちゃうのかな?」

「おい」

「種族間でのボッチなんて嫌だ!誰だよ!経験の有る無しで『種』としての優劣が決まるなんて風潮作りやがったのは!ダーヴィン先生もあの世で泣いてるぞ!」

「……」

「ボッチなんてあんまりだ!このまま楯無さんみたく、知識だけ偏った経験ゼロの情けなくも恥ずい人間になるしかないなんて……ちきしょう!」

 

人生の壁に絶望した一夏は気付いていなかった。

己の発する言葉に……。己の叫びがどれだけ生娘にダメージと怒りを与えていたかなんて……。

 

そして悲劇とは、何時の世もそんな何気なく発せられた言葉から起こり得るのである。

 

 

「ハァ~。もういいや。寝よう、寝て楽になろう。つーわけで楯無さん、すみませんけど出てって……」

「フ、フフフフフ……」

「ん?楯無さん?」

 

楯無の様子に怪訝に思った一夏が彼女の肩に手を置く。

その瞬間、クワッ!と目を開いた楯無が世界一の童貞バカに迫る!

 

「この野郎ぉぉぉ!ざけた事ばっか言いやがってぇぇぇー!」

「た、たてなしさん?」

「童貞のクセにバカにしやがってよぉぉぉ!何がボッチだよ!エッチしろオラァァァ!」

「ええー?」

「こんなエロガキにまでシカトされるなんて!どうせ私なんて知識だけの経験ゼロ年増で!学園最強の設定でありながら敵には負けてばかり!そんなんだから誰にも相手にされず、親友にも先を越されたって……そう言いたいんだろうぉぉー!」

「そんなことまで言ってませんよ!落ち着いて下さい楯無さーん!」

「うがぁぁぁー!」

「や、止めて!俺の部屋がー!」

 

完全に制御不能になる楯無。暴れまわって一夏の部屋をぶっ壊していく。

それはまるで悪魔が乗り移ったかのよう。その有様はまさに破壊神シン・タテナシ。

 

もはや彼女を止められる者などいないのか……?

 

 

 

 

「うるさいぞ!何の騒ぎだアホ共!」

「あうっ!」

「ぶへぇ!……なんで俺まで……」

 

そこに颯爽と現れたブリュンヒルデによって、理性を無くしていた悲しき生娘が物理によって強制的に沈黙させられた。ついでとばかりに童貞野郎も殴られたが、まぁ些細なことだろう。

 

 

こうして童貞と処女による救いのない騒動はようやく終わりを迎えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一夏と楯無、二人の騒動で終わらせるつもりでしたが、急遽千冬大明神に登場頂くことになりました。
毎回右往左往して続きましたが、次回こそ大人の千冬お姉さまに締めてもらいます。




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