P.I.T(パイナップル・インザ・チューカスブタ) (完結)   作:コンバット越前

15 / 89
劇場公開!フリーザ様復活!という嬉しさからコミックを読み直し、そのまま勢いのまま書いたアホ話。
時系列、その他ツッコミどころ満載の部分は敢えて無視してください。




メタ酢豚
ヒロイン達のごちゃまぜチューカ定食 ~天津飯~


「ついにこの時が来ましたわね……」

セシリア・オルコットはそう呟くと、この場にいる二人の少女に顔を向けた。

 

彼女からの視線を受け、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒの両名は頷き合うと、その目に強い力を宿して視線を彼女に返した。

どこか緊迫した空気が流れ、少女達の額に汗が滲み出る。

 

「箒さんと鈴さんは?」

「分からない。二人にもここに来るように言っておいたんだけど」

「全く幼馴染コンビは危機感が足りないな」

 

ラウラが小さくため息を吐く。セシリアも少し顔を曇らせた。

 

「まぁいいですわ。この場に居ない人のことを考えても仕方ありません」

 

まとめるのが大好き委員長体質のセシリアはそう言うと鼻息荒く立ち上がり、座っているラウラとシャルロットを見る。何故か見下されているような気がして、シャルロットは少しムカついた。しかし当のセシリアはそんなものは微塵も気にせず両手を華麗に広げてポーズを取る。お嬢様は人の気持ちなぞ分からない。

 

「では先日正式に発売が発表された『超ヒロイン戦記』における、私たちの在り方についての議論を開始致しますわ!」

 

そして力強く宣言した。

 

 

『超ヒロイン戦記』とは作品の垣根を越えたキャラが一同に集う、言わば『スパロボ』の亜流モノだ。この度めでたく我らが『IS』も参加する運びとなったことに、彼女達は喜び、自身の活躍への期待に胸躍らせることになった。

 

しかし、ここにある一つの問題があった。こういうお祭り的要素の集合作品では避けては通れないもの、スパロボをプレイしたことがある人なら分かるであろう、要はキャラの出番の問題である。

 

当然ながら特定の作品のキャラだけを活躍させること、輝かせることなど出来はしない。作品それぞれに強い愛着を持つファンが存在しているからだ。特にこーゆーヒロイン人気の高さがそのまま人気に直結している作品は……。

まあ、とにかくある作品だけ贔屓しようものなら、ピュアな青少年の(勝手な)怒りの鉄槌が会社に下される恐れがいつも存在するのである。故に冒険は出来ず、どの作品も出来るだけ平等にしようとするのが当然といえる。

 

だがそれは結果的に一つの事実に帰依してしまうのだ。

それはキャラの出番の削減、そしてそれ以上に恐るべきこと……。

 

 

それは『リストラ』である。

 

 

 

「私たちISのヒロイン枠は5。他作品と比べても決して少なくは有りません。故に何が起きるかは分かりませんわ。出番の削減のみならず、もしかして……」

セシリアは言葉を切ると、辛そうに言いよどむ。

 

「……リストラも充分あり得ると?」

シャルロットが彼女の続く言葉を補うように呟く。ラウラはゴクリとつばを飲み込んだ。

 

「ええ。その通りですわ。私たちの誰かがその憂き目にあったとしても決して不思議ではありません」

 

シャルロットとラウラはその恐るべき事実に黙り込む。

 

リストラ……それは彼女たちヒロインにとっては『死』を意味する。ヒロインという一身に脚光を浴びる存在から、一気にその他モブへの転落。最悪そのままフェードアウト。少女達はその恐るべき考えに恐怖した。

 

「わ、私は大丈夫だぞ。当初は危険な敵キャラだったし。こういう存在は物語的に『美味しい』はずだ!』

ラウラが自らの黒歴史を持ち出して吠えた。

 

「ラウラ……」

「そうだ。私は大丈夫、大丈夫なのだ。決してモブなんぞに……」

「ラウラさん……」

「それに私は自分で言うのもなんだが、ヒロインの中でも人気がある方だろう?割を食うのなら私よりふさわしいのがいるはずだ!幼馴……」

「それ以上、いけない」

 

シャルロットが親友を諌める。

 

「フフフ……ラウラさん、貴女も本当は分かっているのではなくて?」

セシリアが妖悦に微笑む。

 

「何だと!」

「気高き軍人である貴女のそのうろたえ様、思い出しているのではなくて?先日の『あの事件』を」

「セシリア!」

「申し訳ありませんシャルロットさん。今この場においては私も鬼になりますわ」

 

セシリアがキリッ!とした表情を作り発言する。自分もモブなんぞ真っ平御免だからだ。そしてこれは唯の議論に在らず、己の存在価値をかけた闘いでもあるのだ!

 

「先日アップされたモンハンとのコラボ企画……」

「や、やめろ。やめてくれぇぇぇ!」

「ラウラ!しっかり!」

「ラウラさん!そこに貴女の姿は無かった!ニクミーさんはまぁ……察しますが」

 

セシリアはコホンと咳払いをしてから、打ちひしがれる少女へ断罪を下す。

 

「貴女は主要ヒロインの中で、私達一年一組の専用機持ちの中で唯一リストラされた存在!それは単発的なコラボ企画とはいえ、世の総意と言えるのでは?」

「ち、違う。あれは担当者に見る目が無かっただけだ……。陰謀だ!何かの間違いだ!」

「ラウラ落ち着いて!」

「私がリストラなんて、そんなこと、そんなこと……!ああぁぁ……モンハン……モブ化……」

 

セシリアは友の痛ましすぎる姿にそっと目を閉じた。

 

 

モンハンコラボ事件。

それは公開されたとき大きな議論を巻きこした事件である。

 

世界的に有名なモンハンとのコラボということで、ウキウキしながらその公開の日を待っていたヒロインたちに降りかかった人災。「武器は何になるのかなー」そんな風に和気藹々としていた彼女達の誰が想像しただろうか。

公式サイトでの明らかに足りない人数。命運が別れたことによる何とも言えない空気。

 

ラウラは思い出す。囚われた屈辱を。狩人(イェーガー)になる機会さえなかったことを。

 

そもそもニクミーはともかく、どうして自分がこんな目に?ラウラはその夜ベッドの中で一人涙で枕を濡らしたものだった。尺の都合なら諦めが付いたかもしれない。だが本来自分が居るべきポジションに、青髪の痴女が収まっていた事実が彼女の絶望に磨きをかけた。

 

 

「私は誇り高き軍人だ……ヒロインだ……決してリストラ組では……」

「ラ、ラウラ……」

「堕ちましたわね……」

 

お前のせいだろ!シャルロットが睨みつけるがセッシーは動じない。それがセッシークオリティ!

 

「このように例えラウラさんのように『大きいお友達から大人気のヒロイン』といえど、このような仕打ちが待っているのがこの人の世の常。シャルロットさん、一番人気筆頭の貴女といえども、そしてこの私にしても何が起こっても不思議ではありません。此度の闘いはそんな甘いものではないのです」

 

シャルロットは親友を優しく慰めながらも、その言葉に怯える自分を止められなかった。

どこかで安心していたのかもしれない。自分なら大丈夫だと、なんてったって自分は一番人気だと、可愛いと、良い子だと、愛されてると、それから……。

 

いやいや何を考えているんだ!

シャルロットはどこからかの悪意のある電波を振り払うように頭を振る。

 

だがセシリアの言い分も一理ある。何が起こるかなんて誰にもわからない。何せ初めての試みなのだ。スパロボでも主要キャラがリストラ、モブ化する例は数え切れないほどあった。まさか自分も……。その考えはシャルロットを恐怖に陥れた。

 

セシリアは震える二人の少女を見て沈痛な表情を浮かべた。辛い思い出を呼び起こさせてしまったかもしれない。しかし!こういう時にこそ我らがISヒロインが力を結集して立ち向かわなくてはならないのだ!『モブ化カッコ悪い』『ジークIS!』そんな想いを胸に抱いて。

セシリアは大きく息を吸うとオペラ歌手のように手を広げ、口を開こうとした。

 

 

「待たせたな!話は聞かせて貰ったぞ!」

 

そこに大きな声が響き渡った。口を半開きにしたセシリアがお間抜けな顔でそちらを見る。正気を失いつつあったラウラとシャルロットも驚いて目を向けた。

 

そこには、バックに『どん!』という効果音と砂埃のようなものを携えた一人の女性が立っていた。

 

「なんだ。ただのモッ……箒か」

「モッピ……箒さん、今更何か御用ですの?」

「モッピーに用なぞない!」

 

この畜生ども……!

箒は青筋を浮かべて睨みつける。

 

「貴様ら。『正ヒロイン』であるこの私を差し置いてこういう話題をするとはどういう了見だ?」

「何言ってますの?この掃除用具さんは」

「ごめん。モッピー語は分かんないよ」

「巣に帰れ!」

 

このクソッタレどもが!

箒ちゃんの怒りMAX。なんだこの扱いは?エセ外人どもめ、お前らこそ本当に自分達の母国語話せるのか?

 

「フ、フフフ。だがそんな舐めた言い分もそこまでだ……!」

箒が冷たく笑う。

 

「お前らがどんなに否定しようが私が『神』によって定められた正ヒロインであることは疑いようの無い事実だ!違うか?」

 

「グ、グムー」

外人三人娘はキン肉マンに出てくるような唸り声を上げて唇を噛む。しかしこれはくやしくもまぎれもない事実であるからだ。『神』からの寵愛という意味では箒に勝てるものなぞいない。

 

「随分と小さい話をしていたな。ええっと、出番の削減?リストラ?……プッ、ククク。いやすまない、私には縁の無い話でな。つい……フフフ」

 

この野郎調子に乗りやがって!

ラウラは怒りに震える手を必死に握り締める。なんでこんなにデカイ顔が出来るのだ?民主主義の原理で言えば、真っ先にリストラされるべきはコイツのはずなのに!日本は所詮『神』による独裁国家だとでもいうのか。

 

だがどんなに憤っても神による恩恵は絶対。それは某『フェイクラブ』の作品でも顕著に見られている。

黒髪ちゃんがどんなにフラグを立てようと、神の絶対的なお力により『キムチ』『居眠り』といった悲しい出来事に変換され、結局は金髪さんといい感じになるという世界に収束するように……

それが神に愛されたる乙女の力。

 

そしてこの世界では彼女こそが、その愛を一身に受ける存在なのだ。

 

 

……彼のものは常に一人。「不人気!」「不人気!」の陰口の中で勝利に酔う。

その身体はきっと無限の(神からの)愛で出来ていた……。

 

その名は篠ノ之箒!

 

「そういう訳だ。せいぜいお前らはメインであろう私のシナリオのサブ要因として頑張ってくれ」

 

怒りに震えていたセシリアだったが、そこでようやく気付く。こういう時真っ先に怒りを爆発させる中華娘がこの場にいないことに。モッピーと一緒だと聞いていたが、何故彼女一人だけでここに?

 

「箒さん?鈴さんは……」

 

箒はその問いに眼差しを強くした。そしていつものポーズを決める。

腕を組んでの仁王立ち、『THE箒!』という立ち方。そしてゆっくりと口を開く。

 

 

 

「鈴は私が置いてきた。イベントはこなしたが、ハッキリ言ってこの闘いにはついていけない……」

 

セシリア、シャルロット、ラウラの三名は顔を見合わせると思った。全く同じことを思った。強く思った。どうしようもなく思った。叫びたいくらいに思った!

 

 

 

『お前が言うな!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続きません。

 

 

 

 

 

 




モッピーに最後のセリフを言わせたかった。それだけである。反省している。



全く関係ない人物紹介・用語説明。


『天津飯』……中華ではなく、ここではドラゴンボールに出てくるキャラを指す。主人公悟空の元ライバル。「餃子はオレが置いてきた……」で一躍ネタキャラとして有名になった可哀想なお方。
悟空の親友クリリンとは『ハゲ』『太陽拳』『鼻なしVS三つ目』と様々な共通点があるのも関わらず、最終的にはクリリンが綺麗な嫁さんに可愛い娘、更にはフサフサの髪まで手に入れたのに比べ、彼は最後まで漢らしくそのスタイルと孤高の生き方を貫いた。ランチさんとはうまくいかなかったのだろうか?
でも大丈夫。そんな彼の側にはいつも餃子が優しく笑っているから……だからきっと幸せなんだ!
私はそんな天さんが大好き……いや、まあまあ好きです。



『モンハンコラボ事件』……世界的有名なゲーム、モンハンとISのコラボ企画のこと。しかしUPされた画像は何と言うか、皆様随分とたくましくなられていて……。まあコッチの方が強そうと言われればそうですが。セシリアのミニスカート、短髪のシャルロット等、突っ込み所は多々あったが、それよりも大きな問題があった。リストラである。
ラウラ、鈴というヒロインが削除され、代わりに楯無がそこにいたのである。これは大きな議論を巻き起こした。これを「よくやった!」とスタッフの英断と見るか、「スタッフは貧乳に恨みでもあんのかよ!」とお怒りになるかは、貴方次第である……。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。