やはり彼女たちのアイドル活動はまちがっている   作:毛虫二等兵

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『前回の俺ライブ!』

デンッ☆


凛『比企谷さんと親交を深めるのを兼ねて、新曲の練習をしようと合宿に行った私達。でもそこで問題が…』

「…もしかして、置いてかれてます?」

花陽『親睦を深めようにも…深い亀裂を作ってしまった私達。本当にごめんなさい!そして海未ちゃん、真姫ちゃん、ことりちゃんもスランプに…』

「じゃあ、みんなで意見を出し合って、話しながら曲を決めたらいいんじゃない?」


真姫『どうしようもない亀裂が走ったまま、曲を作り始める私達…本当にこのままでいいのかしら』



遅れてすいませぬ、風邪が思ったよりも長引いてしまってな…
あとACVDを買ったのもあります。アセン楽しいですっ☆
……本当にすいませんでしたorz




そして 彼女達 は壁を壊しにかかる

 

―作曲班 にこ・真姫・絵里 班― 西木野真姫

 

 

常に明かりがある都心部とは違い、夜9時にもなると、森の中は真っ暗だった。唯一の明かりである焚き火を絶やさないように、絢瀬絵里が定期的に薪をくべている。

作曲班である 矢澤にこ、絢瀬絵里、西木野真姫の三人は、真姫がスランプに陥った原因について話あっていた。

 

「あったかいわね~…」

「そうね~」

 

焚き火が珍しいのか、にこと絵里が火に吸い寄せられるようにゆっくりと手を伸ばしていく。パチパチッと破裂音が鳴り、ゆらりゆらりと火の粉宙を舞った。

 

「あつっ!?」

「あちっ!?」

 

宙を舞っていた火の粉が彼女たちの手に当たった瞬間、二人はビクッと跳ねて手を引っ込めた。

 

「……思ったよりあっついのね…火って。あちち…」

「ハ…ハラショー」

 

「二人ともなにやってんのよ…危ないでしょ?」

 

そんな二人の様子に呆れてため息を付きながらも西木野真姫は考えていた。自分のスランプの原因、三年生の為の曲、三年生の為に自分に出来る何かを…

落ちていた木の棒でつんつんと火を突きながら、にこが話しかけてくる。

 

「まだスランプの原因はわからないわけ?あんたらしくもない…」

「話してみて真姫、私達も手伝いたいの」

 

「…別になんでもないわ」

 

比企谷八幡…あの人は私たちを避けている。もしかして彼なりの考えがあるからなのかしら?たとえば、お互いに干渉せず、程よい距離を保つ…とか。だとしたら原因は今朝のことなの?確かに私たちが悪かったけど…やっぱり単純に怒ってるだけ?だったらはっきり言えばいいじゃない!……あぁもう!こんなこと考えてる場合じゃないのに!イミワカンナイッ!

 

言い出すべきかを悩んでいると、にこがにやぁと小悪魔のような笑みを浮かべ、こっちを見ていた。

 

「…なによ?」

 

「もしかしてもしかして!あの比企谷君のことが気になってるんじゃないの~?」

 

比企谷八幡 その言葉を聞いた瞬間、動揺を隠しきれなくなり、一瞬だけ表情が硬直してしまう。二人はその瞬間を見逃すことはせず、目を丸くしている。一瞬の沈黙の後、慌てて取り繕い、否定する。

 

「えぇ…!?まさかそうだったの!?」

「…驚いたわ」

 

「そっそんなんじゃないわよ!誤解よ!誤解!気になっているって言うのは誤解!気になってるっていうよりかは。腑に落ちないだけなの!!」

 

「…まあ、そうよね。それにしても珍しいじゃない、あんたが人の心配するなんて」

 

「そんなこと言ってるけど、にこちゃんも彼の事は気になっていたでしょう?練習中はちらちら部屋の窓を見てたし、班分けで移動したときも後ろを気にしていたじゃない」

「なぁ!?なんでしって…じゃなかった!そんなことないわよ!」

 

仕返し とはちょっと違うが、やられてばかりでは終われない。見られているとは思っていなかったのかにこはさっきよりも面食っているようだ。

 

「案内しているときはどうだったの?二人っきりだったんでしょう?」

 

「…よくわかんないのよ、あの人。不満に思っているならはっきり言えばいいのに。平気な顔してあんなことが言えるのも…それが気になって、どうにも三年生のための曲がイメージが出来ないの」

 

「比企谷君はなんて…?」

 

「みんなで夕食を作るっていったら、「自分の分は自分で作る」って言ってたわ。それだけならいいんだけど…なんていうか…私たちを拒んでいる感じがするの。壁っていうか…なんていうか…」

 

「壁…」

 

そういうと、絵里は何かを考え始めた。彼女はメンバーに加わる前、μ'sの活動に対して反対していた時期があったからだ。きっと何か心に引っかかるものがあるんだろう。それはにこちゃんも同じように見えた。

 

「…呆れた。要は、私たちといるのが嫌なんでしょう?今朝のことを根に持ってるのよ。まったく男のくせに情けないわね~」

 

不満そうな顔をしているが、にこは彼を突き放そうとはしない。

今はこうしているにこちゃんもμ'sを目の敵にしていた時期もあった。希の話だと、1年生の頃にスクールアイドル結成したもののうまくいかなかった。という苦い経験があるからだ。

 

「…やっぱりやさしいのね、にこちゃんは」

 

聞こえないくらいの小さなつぶやきが無意識にこぼれる。

 

「なに?何か言った?」

 

「別になんでもないわ」

「にこ、それに関しては私たちが悪いんだから、彼が怒るのは当然なの。問題はそこじゃない」

 

「なによ?どういうこと?」

 

「話を聞いた限りだと…… みんな って言葉を彼は否定してるんじゃないかしら?今朝のこともあるけど、私はそこ以外に問題があると思うの。たとえば昔に何かあったとか…そう、きっと何かあった。それで、問題はそこにあるのよ。このままの状態が続けば、いつか必ず破綻するわ。そうなる前に、私たちは手を打たないといけないの。今回の合宿は、彼を正式にメンバーに受け入れるための合宿でもあるんだから」

 

「真姫よりめんどくさい男じゃない…まったく…」

「なっ!?にこちゃんだって面倒くさい時期があったんだから、人のことは言えないじゃない!」

「どういうことよそれ!?」

 

真姫とにこは視線で火花を散らした後、腕を組んでそっぽを向いた。

 

「「ふんっ!」」

 

「明日には手を打たないといけないわ。……ねっねぇ…このままだと…火を消したら真っ暗よね?」

 

絵里の声からリーダーっぽさが消え、一気に怯えたような声になった。

 

「なに?まずいの?」

「何よ?怖いの?」

 

火はこの焚き火だけ、消えたら真っ暗になる…当然のことなんだけど。もしかして…

 

「まさか~……待っててね、ちょっとだけ待ってて」

 

恐る恐る周りを確認しながら、絵里はテントに入ってライトをつける。

 

「ふふっ…絵里にこんな弱点があったなんてね」

 

「この年にもなって暗いのが怖いなんて」

 

「まったく~…こんな三年生のために、曲を考える方の身にもなってよ」

 

「ちょっと待って!さっきも気になってたんだけど、三年生の為にって言ったわよね?」

 

 

 

―衣装班 穂乃果・ことり・花陽―  南 ことり

 

「あったか~い…」

「疲れが取れる~…」

「おばあちゃんみたいだよ、穂乃果ちゃん」

 

テントの中で目を覚ますと、辺りはすっかり夜になっていた。服のデザインも浮かんでこなかったので、私たち三人は近くの温泉に入ることにした。

 

「でも…寂しいな~…」

 

「何が?」

 

「比企谷くん、どうして私たちを避けるのかな…ことりちゃんと花陽ちゃんはどう思う?」

 

「それは…」

 

穂乃果の真っ直ぐな言葉に、私達二人は言葉を失ってしまう。

この話は私もずっと気になっていることだった。直接的ではないけど、私がスランプに陥った原因の一端は彼にあるのかもしれない、そう考えていたからだ。巻き込んだのも私達で傷つけてしまったのも私達。

もしあの時、電車の中に置いて行かれたのが自分だったとしたら…仲良くしようなんて思えるんだろうか。

 

「…どうしていいか、わからない」

 

「…うん、私もことりちゃんと同じ」

 

そういうと、二人は俯いた。相手は学校も違えば、性別も違う。性格なんてまだまだわからないことだらけだし、このまま気まずい関係が続くのであれば、今回彼を連れてきた意味もなくなってしまう。

 

「ふぅ…」

 

私たちを見かねたのか、軽く為維持を付いて穂乃果は立ち上がった。巻いていたタオルが取れ、彼女の腰から下の部分が露わになる。

 

「「穂乃果ちゃん!?」」

 

「私もわからない。でも、このままなんて絶対に嫌だ。せっかく来てくれたのにご飯も一緒に食べれないし……それに、みんなに置いてかれて、穂乃果が怒ってないって、二人は本気で思ってる?」

 

きつく睨み付けるような穂乃果の瞳に、私たちは言葉を返すことが出来ない。

真っ直ぐに目相手を見つめて、強い口調で語り掛けてくる。こういう時の穂乃果ちゃんは本気なのは、みんなわかっていた。

そこまで声を張っているわけでもないのに、彼女の話す一言一言は心の刺さり、そして重たい。

 

「穂乃果ちゃん…」

「…ごめんなさい」

 

「…別に謝ってもらいたいわけじゃないよ。思ったことは全部吐き出してきちゃったから、穂乃果はもう怒ってない。でも…比企谷くんは穂乃果たちに対して一言も文句を言わなかった。バスを待っているときも、穂乃果の愚痴をずっと聞いてくれた。」

 

遠い空を見つめ、穂乃果は語り続ける。まっすぐな自分の言葉で、自分の思いを。

 

「誰かが止まっても、誰かが背中を押す。相手が男の子だからって、わからないからって立ち止まってなんかいられない。みんなで一歩一歩確実に、少しずつ進む。それが私の知っているμ's。だからきっとうまくいくよ!私はそう信じてる!」

 

「誰かが止まっても、誰かが背中を押す…」

 

俯いた顔が自然と上がって、今まで閉じていたんじゃないかって思うくらい星の光が見えた。

 

「…そうだよね、わからないからって、何もしないのはダメだよね」

 

「うんっ!だから今度は私たちの番。明日、もう一度話しかけてみよう!」

 

 

 

―希・海未・凛 班- 園田海未

 

「希ちゃんすごいにゃ~!」

 

下山した私たちは、別荘の近くにテントを建てて、三人で仰向けになって空を見上げていた。凛は元気そうにしているが、あきらかにいつもとは違う。希も今日は何かを考える素振りが多いような気がした。

彼の「気にしていない」という言葉…あれは本当にそう思っていたのだろうか?それとも嘘だったのだろうか。同じような質問が、頭の中で何回も巡っている。

希による星座の説明が終わるタイミングで、私はこの話を切り出すことにした。

 

「あの…比企谷さんについて、話したいことがあります」

 

二人はハッとした表情をしたあと、少し暗い顔になる。

 

「…そうやね。うちもずっと気になってた」

 

「凛にはどうしていいのかよくわからないにゃ。相手は男の子なんだし、それに少し変わってる感じがする」

 

関わり方が分からない という点では、全員同じ悩みを抱えているのかもしれないが、男の子が苦手な凛はもっと難しい問題のように思えるのかもしれない。

 

「変わっているのはそうかもしれませんが、メンバーに入れると決めた以上、私たちにも責任はあります」

 

「海未ちゃんがスランプの理由。きっと彼のことが原因なんやろ?」

 

「…はい。理由はどうあれ、私たちは謝るべきだと思うんです。穂乃果ならともかく…彼は知り合ったばかりなのですから」

 

やっぱり…というか、希はとっくに見抜いていたんだろう。

 

「でも…どうしたらいいかわからないにゃ~」

 

「わからないのは…みんな同じや。えりちも、にこちゃんもそう。みんな彼に対してどう接してていいのか、どこまで踏み込んでいいのかがわからない。だから会話がぎこちなくなるし、自然と距離を開けてしまう。駄目なのはわかっていても…そこには大きな壁がある」

 

「壁…ですか」

 

「人と人の繋がりを探すのって、本当に難しいことなんだよ。μ'sのメンバーが全員が穂乃果ちゃんみたいに一期も踏み込んでいくタイプだったらよかったんやけど、そうはいかないだろうし」

 

「それはそれで怖いにゃ~」

 

「人と人の繋がり…」

 

「あっ、流れ星!」

 

希が空を示すと、凛が釣られて流れ星を探し始める。私も空を見上げたが、流れ星なんて流れていなかった。

 

「え?どこどこ!?」

 

「南に進む流れ星は、物事が進む暗示」

 

「希…」

 

「一番大事なのは、本人の気持ちよ」

 

「流れ星見損なったにゃ~」

 

「いえ、もともとなかったですよ。流れ星なんて」

 

「?」

 

「自分を信じて、彼と出会った出会いを信じるしかない。一応聞くけど…うちのカードで占っておく?」

 

「…いいえ、大丈夫です。自分を信じます」

 

私の隣にいるではありませんか、私の親友で…好きなものを好きと言って、前を向いたら

諸突猛進な親友が。悩んでもしかたない、悩んだきはひとまず行動。そう、そうすればよかったんですよね、穂乃果。

 

私の心の中に詰まっていた黒い何かが、一気に溶けていくのを感じていた。早く早くと急かす気持ちを抑えて、私は早足で別荘に走り出した。

 

 

 

比企谷八幡

 

 

(そうかそうか、そんなことがあったのか。君のことだ、難癖をつけてμ'sのみなさんを困らせているだろうという私の直感は当たっていたようだな)

 

「…そもそも、俺がこの場にいることを良しとしていること自体おかしいんですよ。もしかしたら不純異性交遊なんてものがあるかもしれないんですよ?」

(ないな)

 

返事はえーよ、即答かよ

 

(君のリスクリターンに関する計算だけは私は一目置いているんだ。万が一、いや垓が一…いやまて、那由他が一でもありえない。つまり自信を持ちたまえ)

 

そんな自信満々に言われると、生物学的に俺が男として見られていないということになる。それはそれですごく悲しい。さらっと億よりも上の数字出してるし、那由他とか小学校でも習わないだろ、なんで知ってるんだよ

 

「先生は俺をなんだと思ってるんでしょうか?」

 

(そうだ、この合宿が終わったあとなんだが、予定は空いているだろうな?もう日程も決めてあるんだが…)

 

「なんでもう空いてる体で話を進めているんですか?普通確認してから日程とか決めるもんだと思うんですが」

 

(なにをいっているんだ比企谷、君は私の…いや、奉仕部のために働けないというのか?)

 

「ちょっとまってください。今私のって…」

 

コンコンッ!

 

ノックの音が聞こえた瞬間、俺は携帯電話を耳から離し、アクション映画の主人公、はたまた小説か漫画の主人公のような構えを取る。

 

時間は夜の10時…こんな夜更けに、わざわざ俺の部屋に来るような人物は…はっきりいって思い当たらない。いるとしたら留守を狙った空き巣くらいだろう。それでもわざわざこんな森の中の別荘にまでくるとは思えないが…

 

「…園田海未です、起きていますか?」

 

「あっ…」

 

(待て比企谷、今女の子の声がしたが……はっ!まさか貴様薬を盛ったんじゃないだろうな!?乱暴する気だろう!え…)

 

「すいません、一回切ります」

 

勢いとはいえ何言いだしてるんだあの人。小説サイト的にこれ以上はやばい、警告タグをつけていない以上、卑猥なことを言われてしまったら凍結されてしまう危険性がある。

 

「…開けても大丈夫ですか?」

 

「あっはい、どうぞ」

 

扉を開けると、到着した時と変わらない登山用の服を着た園田海未が入ってきた。予想外の来客だが、大丈夫だ、問題ない。

 

「夜遅くにすいません。御家族と連絡を取っていたのですか?」

 

そういえば、家族から一本も連絡がないな。まじかよ……まじかよ

 

「…そんなんじゃないです。えっと…ところでどうしたんです?俺はそろそろ寝ようかな~って思ってたんですけど」

 

適当に切り上げて、とっととふかふかの布団で寝よう。わざわざこんなところに来ているわけだし、話したい事があるのは間違いないと思うんだが…

 

少し迷った後、彼女の目に決意が宿ったように見えた。

 

「あなたに、話しておきたいことがあるんです」

 

どうする…断っておくか、でもそうすると明日面倒なことになりそうだ。俺は知っている。こういう時、話を聞こうとせずに断ってはダメだ。園田海未の話は、間違いなく今朝のこと、そしてそれを謝りに来た…大方そんなところだろう。ということは「お互いにわだかまりをなくそう!」的な話になることは間違いない。そこのポイントさえ押さえてしまえば、俺も、彼女たちも嫌な思いはしないし、俺はひっそりとフェードアウトできるって寸法よ!そこにシビれる!あこがれるゥ !

 

「わかった」

 

完璧な計画の裏事情、実はあんまりにも暇過ぎて、ゲームの充電もなくなり、持ってきた小説も読み終え、携帯もとくに見る物がない、というかこの部屋電波悪いから動画見れないし……つまり、明日は一日寝ていられるということだ。

 

園田海未に案内され、俺はピアノと暖炉のあるリビングに向かった。

 

 

 




読みやすさ優先の為分割。次回で合宿は終わりにしようと思います。
そして今回はちょくちょくユメノトビラの歌詞を交えてるつもりです。

今回はいかがだったでしょうか?

さてはて次回は海未・真姫・ことりの三人が活躍する…かも!

ご意見・ご感想などなど、心からお待ちしてます!

二週間できるかわからないけど、出来れば二週間以内に(__)m

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