やはり彼女たちのアイドル活動はまちがっている   作:毛虫二等兵

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『前回の俺ライブ!』

デン☆

穂乃果『ラブライブが再び行われることが決まり、どうするかを考えることになったμ's!さらにもう一つの問題が…!』

にこ「私は絶対反対よ!」

絵里『理事長の強いお願いにより、ことりは総武高校から男子生徒を連れてきてしまった。それに大反対であるにこと口論になってしまい…μ'sがまたしても解散の危機に!?』

比企谷「プロのアイドルじゃないんだろう?だったらもっと気楽にやってもいいんじゃないかってことだ」

海未『比企谷さんの機転によって、解散を避けることが出来た私達。しかし、肝心の穂乃果はラブライブに出場することが決め切れず…』

穂乃果「みんな巻き込んで迷惑をかけるくらいだったら、今のまま、幸せな時間を過ごしたい…穂乃果の考えは間違ってるかな?」

(・8・)『思いつめる穂乃果ちゃん。でも、そんな穂乃果ちゃんの背中を、予想外の人物が…』

比企谷「もし本当に迷惑をかけたくないって言うなら完全に縁を切って「一人」になるしかない、孤独を友とするんだな」

希『彼の言葉によって、前に進むことを決めた穂乃果ちゃん。自分のやりたいことをやればええんやで』




なにこれ書くの大変。どうも、毛虫二等兵です。
10日に投稿しようと準備したものが気に食わなかったので、書き直していたら遅くなってしまいました…orz
今月は忙しいので、もう一話分くらいしか投稿できないと思います…申し訳ない。時間があったら誤字等の修正したいと思います。





こうしてまた 比企谷八幡 は道を踏み外す

―南 飛鳥―

 

 

 

理事長の席に座り、音ノ木坂学園の理事長―南 飛鳥(あすか)―

 

 

「高坂穂乃果です!理事長にお話があってきました!」

 

「どうぞ」

 

「失礼します!」

 

橙色の髪を揺らし、高坂穂乃果が理事長室に入ってきた。彼女はデスクの前で足を止め、真剣な眼差しで飛鳥を見つめる。

 

「はい、お話があってきました」

 

「聞きましょう」

 

彼女の言いたいことはわかっている。

二年生ながら、彼女はスクールアイドルμ'sのリーダーに抜擢されている。その彼女が来た…ということは、「比企谷八幡」君のことだろう。

彼がここに来た表向きの理由は「学外交流」となっているが、本当の理由は、私の親友「平塚静」の強い希望によって行われたことだ。

 

「彼について、理事長はどうお考えですか?」

 

「…そうね、私は彼が来ることには反対なの。高校時代からの親友が、どうしても彼をここに呼びたいって言って聞かなかったから、一回だけ連れてきては見たんだけど…やっぱり高坂さん達も困ったわよね」

 

ここは女子高…男子が苦手な生徒も多いだろう。そう思うと、私は静の意見に流されるべきではなかったのだと、今更ながらに後悔している。

 

「理事長、お願いしたいことがあります」

 

「聞きましょう」

 

「私は、私達は―――」

 

 

次の瞬間、私は彼女の行動力に驚かされることになった。

 

 

 

―比企谷 八幡―

 

 

HR終了の合図と同時に教室を出て、奉仕部の部室に向かう。夏休み前から調子の悪い扉を目の前に立つと、不思議と安心している自分がいた。

 

いやいやいや、ありえないから。人間は社会によって性格がねじ曲がったり、大きくゆがんだりするもんだ。社会が性格を形作るといっても過言ではない。つまり俺は強制的にこの環境に身を置かされたことにより、順応させられてしまったのだ。

俺の居場所は家だ。そして自分の部屋だ。半径1メートルは俺のテリトリー、世界が俺と絶対の不可侵条約を結んでいる空間だ。断じてあの空間が…

 

「何をしているのかしら?不審者さん」

 

脳内で自分に総突っ込みを入れていると、雪ノ下雪乃が後ろにいた。というか今「不審者」って言ったけど、まさかお前昨日のこと知ってるの?やっぱりエスパーなの?ニュータイプなの?

 

「あっ…すいません」

 

心を読み取られないように一歩後ろに下がると、雪ノ下は何事もなかったかのように部室の中に入って行った。「アホか」と自分に一喝し、俺も雪ノ下に続いて部室入ることにした。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

部室に入った後、俺はいつもの椅子に座って読書を始めた。雪ノ下もいつもと変わらず読書をしている。

遺憾だが、これが俺の日常だ。昨日はたまたま外出しただけで、もうあの場所に行くことはないだろう。

 

静かな教室の中で、本のページをめくる音、カーテンが風に揺られる音が聞こえる。由比ヶ浜がいればもっと騒がしいはずだが、今はいないことに感謝したい。誰にだって心の安らぎは必要だ。

ただ気になることがあった。なんとなくだが、雪ノ下が纏っている雰囲気がいつもと違うような気がする。「こっちくんな」オーラを放っているのはいつものことだが、今日は何かがおかしい。俺は恐怖に近い何かを感じながら、話しかけることにした。

 

「な、なぁ……雪ノ下」

 

「なにかしら?」

 

俺が話しかけると雪ノ下は鬱陶しそうにページをめくる手を止め、こっちを見た。いたっていつも通りの雪ノ下だ。整っている凛々しい顔立ち、すらっとしたボディライン。社交性を身に着け、口を開かなければものすごい美少女の雪ノ下雪乃だ。

 

「いや…なんか言いたいことであるのかなぁ~って」

 

「何もないのだけれど?もしかして比企谷くんは昨日のことを言っているのかしら?だとしたら気にしなくていいわ。あなたが音ノ木坂に行ったとしても何もかわりはしないのだから、むしろ迷惑をかけてしまったりしなかった?警備員さんに謝った?あと生まれてきてごめんなさいって私にも謝りなさい」

 

なんか思いっきり自分の意見が入ってるし。それにその「~~しなかった?大丈夫だった?」みたいな言い方やめろよ。なんだよその言い方、まるで俺が誰かに迷惑かけたみたいな言い方じゃないか、本来その言葉の使い方は被害者をいたわるためのはずのものだろ。

というか雪ノ下ってこんなに攻撃的だったか?夏休みの間になにがあったの?薄い本みたいに見知らぬおっさんに出会ったりとかしてないよね?わずか二週間の間に性格変わっちゃったりとかあるの?なんか超怖いんだけど。

 

一通りの罵声を言い終えた後、雪ノ下は呆れたようなため息と共に、パタンと本を閉じた。

 

「はぁ……図星みたいね、一応言っておくけれど、その卑猥な妄想はやめなさい。本気で殺すわよ」

 

最後の 殺すわよ だけ本気の殺意が籠っていた。ごめんなさい

 

「エスパーだろお前、なんでわかっちゃうんだよ」

 

「あなたの気持ち悪い笑い方をしている顔を見て察することくらいは出来るわ。昨日のことだけど、もとより期待はしていなかったから、こういうのもおかしいのだけれど…はっきり言って失望したわ。ぼっちは迷惑をかけない存在なんじゃなかったのかしら?」

 

攻め継、圧倒的な攻め継だ。俺に休む間を与えてくれない。

 

 

「いや…というか事情くらいはお前も知ってるだろ?俺が行きたくて行ったんじゃなくて、平塚先生が無理やりに行かせたんだ、不可抗力だ」

 

少し間をあけて、小悪魔的な雰囲気で雪ノ下雪乃は微笑む。

 

「ふふっ…冗談よ。昨日は大変だったみたいね」

 

なんだよ冗談かよ、本気で傷ついちゃったよ。今すぐ泣き出したいくらいだ。

 

「…冗談にしては傷ついたぞ、慰謝料を請求してもいい」

 

「それじゃあ今まで私が受けた分の慰謝料も払ってもらわなければならなくなるわね。「生まれてきてごめんなさい」の辺りは確かにひどいことを言ってしまったわ。つらいのはきっとご両親でしょうに」

 

さりげなく追い打ちをかけてくるのも、いつもと変わらない。何かあったんじゃないかってお兄さん焦っちゃったよ。

 

「…夏休み開けて早々、俺のメンタルを削るんじゃねーよ」

 

「そうね、ところで外が騒がしいのだけど…見に行ってくれないかしら?」

 

確かに騒がしい。さっきまでの静かな空間はどこかへ行ってしまったのか、外からは「きゃー」とかいう無駄に甲高い黄色い声が聞こえてくる。

 

「って俺かよ……仕方ない、見てくるか」

 

椅子から立ち上がり、部室の扉を開けようとした時…俺の目の前で勢いよく扉が開いた。

 

「え…」

 

俺より少し背の低い身長、明るい橙色の髪の毛、同い年とは思えないくらい整った顔立ち…本来ならこの場所にいるはずのない女の子。だが、俺は彼女のことを知っている。

 

「やっと見つけた!」

 

なぜならそう…目の前にいるのは、何故か総武高校の制服を着ている「高坂穂乃果」なんだから。

 

「比企谷くん!こっちこっち!」

 

「え…ちょっとまっ…!」

 

気が付いたときには、俺は高坂穂乃果に右手をしっかりと掴まれ、俺は奉仕部の部室から引きずり出されていた。彼女は集まっていたギャラリーと、黄色い歓声の中を颯爽と駆け抜ける。まるで世界が倍速で再生されてるみたいに動いている。学校の中で自転車に乗っている気分だ。

人の群れを振り切って、一気に階段を下っていく。教室前の廊下に差し掛かると葉山、三浦、海老名、戸部、大和、大岡…と、葉山に群がる女子2人が、2年F組の教室の前でたむろしていた。

 

「どいてくださ~い!」

 

彼女が大きな声で叫ぶと、それに気づいた葉山たちは驚き、廊下の隅に移動して道を開けた。

 

「ありがとうございます!」

 

凄い…なんてことを考えている余裕はなかった。取り残されないように、転ばないように、彼女の手にしがみつく。

破裂するんじゃないかってくらい早くなる鼓動、ろくに運動もしていなかった足は鉛みたいに重くなり、身体全体が悲鳴を上げて、「もっともっと」と酸素を求める。話している余裕も、考えている余裕もなく、俺は彼女についていくのに精一杯だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

どのくらい走り回って、どのくらい時間が経ったのだろう。校内を走り抜け、ようやくたどり着いた場所は校門だった。額からは大粒の汗が流れ、必死に息を吸って、吐く。

駄目だ…眩暈と吐き気がする。学校の体育でもこんなに本気で走ったことないぞ。体育祭のクラス対抗の学年リレーの時だって最初の方に回されて、俺の次に早いやつが走ったんだからな。いやまて…よく考えなくてもこれって俺を踏み台にしてたってことだよね?まじかよふざけんなよ、今度見かけたらジェットストリームアタック仕掛けてやるから覚えておけよ。

 

「ふぅ…昨日ぶりだね、比企谷さん♪」

 

死にかけの俺をよそに、高坂穂乃果が笑顔で話しかけてくる。見たところ、ほとんど呼吸も乱れていないし、さほど疲れている様子もない。さすがアイドル、余裕の笑顔だ。馬力が違いますよ

 

「はぁ…はぁ……はい…?」

 

「理事長にお願いしちゃったんだ、総武高校の制服をくださいって」

 

「え…?」

 

 

~高坂穂乃果 回想~

 

 

「私は…私達は、彼を受け入れたいと思います!」

 

私たちが話し合い、決めたことを伝えると、理事長は目を丸くして驚いていた。

 

「……本当ですか?」

 

「お願いっていうのは…総武高校の制服を貸してほしいんです!一着でいいんです!どうしても行かなくちゃいけないんです!」

 

 

「比企谷君に連絡が取れればいいんですけど、昨日は連絡先を交換せずに帰ってしまって……もしかしたら理事長なら何とかしてくれるんじゃないかってことりちゃんが…!」

 

「高坂さん、少し落ち着いて」

 

「あっ…ごめんなさい!」

 

理事長の顔が目の前にあることに気づき、2歩後ろに下がって深呼吸する。

 

「一応確認したいの、これはあなた一人の意志?それともμ'sの意志?」

 

「私達9人、全員の意志です」

 

「……わかりました。すぐに制服を手配しましょう。ですが、連絡先は個人情報なので教えることは出来ません」

 

「うぅ…ですよね……」

 

「静…いえ、彼の居場所をよく知っている知り合いがいるので、彼女に案内してもらってください」

 

もう一度彼に会える。そう思えるだけで、何かが少しだけ気分が晴れたような気がした。

 

「……はい!」

 

「それじゃあ少し連絡する必要があるから、部室で待っていてくれるかしら?」

 

「はい!」

 

 

~~~回想終~~~~

 

 

ようやく呼吸が落ち着きを取り戻し、眩暈も大分収まってきた。

 

「つまり、俺に会いに来たってことでいいのか?」

 

この言葉、口にするとすごい恥ずかしい。「自意識過剰気持ち悪い」って思われてたらどうしよう。俺死んじゃうかもしれない。

 

「うん♪」

 

某ハンバーガーチェーン店もびっくりするくらいの悩殺smileによって、収まりつつあった鼓動がフルスロットルになった。助けてくださいハート様、俺の心臓がピンチです。

 

「お…おうっ…!」

 

やばい、惚れそう。まじで危ないところだ。俺じゃなかったら一発でノックアウトだったね。戸塚への愛がなかったら「集え!大宇宙パワァァァ!」とか言ってアストラルヒート決められてプラネット・クラッシャーされるところだったよ。

だが俺は同じ過ちを繰り返さない。人は過去の失敗を学習し、次に間違うことがないようにその失敗を糧として進化する生き物だ。よって俺は間違えない。彼女はスクール「アイドル」、学生とはいえ「アイドル」だ。「アイドル」とはむやみやたらに笑顔を振りまき、多くの人々を「お金」を糧として成り立っている。そんな彼女たちの笑顔は嘘であり、特定の個人に向けて使われることはない。いわば「嘘」の笑顔、営業スマイルというやつだ。

 

大きく深呼吸をして、高坂穂乃果は俺の眼を見て話し始めた。

 

「いくら一緒の時間を過ごしても、お互いがお互いを完全に分かり合って、理解し合うなんて言うのは出来ない。比企谷さんはそう言ってた」

 

「あぁ、そうだな」

 

「比企谷さんのいうことが本当で、私の考えが間違っているのだとしても、私はそうは思いたくない。理解できないからって諦めたくない。理解できないんだとしても、手を繋げばいい、それで思いがぶつかってしまったとしても…もう一度手を繋ぐことが出来たなら、それはお互いを理解しあえた時なんだと思う…これが私の答え」

 

「……手を繋いでどうにかなるなら、世界はとっくに丸くなってるよ。出来ないから困ってるんだろう」

 

「でも、私たちはそうやって来た、だから、私は私を信じて、みんなを信じる」

 

「探しましたよ!」「穂乃果~!」「みつけたにゃ~!」

 

高坂穂乃果を見つけたのか、彼女を除いた8人が学校の方から走ってきた。これで晴れて9人が集合することになる。

彼女の理論は破綻している。そんなに簡単に世界が、人間が出来ているのだとしたら、俺みたいな人間は生まれていない。この世界は他人を貶めあい、自分の保身のために他人を犠牲にすることで成り立っている世界なんだから、いくら自分が世界を変えようとしても変わらない理由がそこにある。ソースは俺と雪ノ下雪乃だ。

 

そんな世界を否定して、高坂穂乃果は俺に向かって手を差し伸べる。まるで下の世界から救いの手を差し伸べるように、無垢な笑顔で。

 

「比企谷さん、あなたの力を貸してください」

 

真っ直ぐで、折れない心を持っている彼女。一方で、もう取り返しがつかないくらい醜く、歪になってしまっている俺。光と影の関係のように、真逆の存在あるはずの彼女を見て…俺は心の隅で―憧れ―に近い思いを抱いてしまっていることに気付いた。

 

―いや、やめよう―

 

俺は心に芽生えた「光」を踏みつぶした。

 

明日の希望を持ったものだけに絶望がある。何かを信じたものだけに裏切るがある。世の中はそうやってできていて、彼女の言葉はこの世界では―間違っている―。だからこそ俺は「期待」も、ましてや人を「信じる」こともしない。一人で生きていくために、選択肢を間違えたりしない。

 

握手するふりをして、手を払ってやろう。底辺の俺に出来る、精一杯の抵抗だ。

 

「いいか比企谷。こういう時は、こうするんだ」

 

聞きなれた女性の声がすると、俺の手の甲に誰かの手が触れた。その手は強引に俺の手を動かし、高坂穂乃果の手と、俺の手を重ねる。

こんな強引で、横暴なことばかりするのは…俺が知っている人物の中では一人しか知らない。

 

「平塚先生、いっときますけど俺は…」

 

いつの間にか真横に立っていた平塚静が、俺の言葉を遮って話し始める。

 

「君は人を信じることを覚えるんだ。あの場所が、きっと君を変えるだろう」

 

「みつけたにゃー!」「穂乃果!」「ホノカチャン!」「見つけたわ!」

 

そんなことはありえない と反論しようとしたとき、俺はもうすでに9人に取り囲まれ、逃げ場を失っていた。

 

 

 




最後まで読んでくれてありがとうございます!

南 飛鳥(あすか)…アニメではことりのお母さんのことです。名前がないと書きにくかったので、それっぽい名前にしてみました。 

感想・お気に入り・評価など、本当にありがとうございます!

まだ忙しい時期はまだ続いていますが、二月に入れば落ち着きます。出来る限り二週間のローテは守っていきたいですけど…今回みたいに忙しかったり、急遽書き直したりとかした場合は遅れるかもです。そこの辺りも、温かい目で見守ってくれると助かります。


今回は行間を詰めてみました。読みにくかったらご指摘してくれるとうれしいです。
公式で確認してきましたが「南 ことり」であってるみたいですよ。


それでは次回は二週間以内に!ノシ


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