艦隊の祥、艦娘の鳳   作:瑞穂国

7 / 22
お久しぶりです。夏休み()です

夏祭り編ということになりました

普段より長めですので、ご了承ください

ほんと、短編ってなんだったんでしょうね・・・


鹿屋の夏祭り

賑やかな声が、夏の青空の下に木霊しています。行き交う人々も楽しげで、華やかな衣装を躍らせながら誰も彼もが笑顔でした。普段よりもかなり多い雑踏の中、私、祥鳳もまた、浮き立つ心にステップを踏みました。

 

ここ、鹿屋基地のすぐ近くに展開する商店街では、毎年恒例の夏祭りが開催されています。通りには数々の出店が並び、中央の広場には特設のステージまで用意されて、様々な催し物が行われていました。二日にわたって開催される夏祭りの中で、この後も御神輿や山車、盆踊りなどもあるそうです。そうそう、それから二日目の夜には花火も上がるとか。

 

去年はもれなく夏の大規模反攻作戦中で参加できませんでしたが、今年は何事もなく、嬉しい限りです。

 

夏の太陽を直に感じて、束の間の休息に私は歩を進めました。

 

 

事の発端は、夕食中の何気ない会話でした。

 

その日は私と瑞鳳が夕食を担当していて、全員分のご飯を作っていました。テーブル担当の朧ちゃんと漣ちゃんは、手狭な食堂の真ん中に置かれた大テーブルを台布巾で拭き終わり、台所の私たちを覗き込んでおしゃべりをしていました。

 

「そういえば、そろそろアレの季節じゃない?」

 

「アレって・・・もしかして夏祭りのこと?」

 

「あー、そっか。もうすぐだね」

 

合いの手を入れた漣ちゃんと瑞鳳は、うーんと唸ります。

 

「また大規模作戦とかで潰れないといいんだけど・・・。お姉ちゃんもそう思わない?」

 

「そうね・・・」

 

味噌を溶かしたお味噌汁の味をみていた私は、しばし心の中で考えました。

 

夏祭り。ああ、なんと甘美な響きでしょうか。浴衣を着て、彼と過ごせたらどんなにか。あれこれと想像が膨らんでしまいます。

 

開催は二日間。でしたら、一日ぐらいは楽しめるでしょうか。

 

「二日とは言わないまでも、せめて一日ぐらいは行ってみたいわね」

 

「それは、提督と?」

 

ニヤニヤとこちらを覗き込む、ひよこのワンポイントが可愛らしいエプロンの瑞鳳に、どうやら私の思考はバレバレのようでした。どうしてこう、妹というのは察しがいいのでしょう。漣ちゃんを見ていると、つくづく思われます。

 

「そ、そうね」

 

頬が熱くなるのをはっきりと感じた私は、それを誤魔化すために、煮物の味を確認しました。

 

 

 

もちろん、夕食の話題も夏祭りについてでした。今年は参加できるのか、彼に直球で尋ねた漣ちゃんの声に、私もそれとなく目を向けます。

 

「そのことなんですが・・・」

 

彼の切り出しに、場が落胆するのがわかりました。

 

致し方のないことだとは思います。残念ながら深海棲艦は、今も人類最大の脅威であることに変わりはありません。それを抑えるためには、少しずつ反攻作戦を展開していかなければなりませんから。夏祭り、などとはしゃいでいる訳にはいきません。

 

ですがそれでも、やはり夏祭りというものを楽しみにしていた私たちは、肩を落としてしまいます。

 

ああ、浴衣を着てみたかったなあ。祭りの喧騒の中を、彼と歩いて。たくさんの出店を回って、御神輿や山車を見て、そうして基地の皆と、花火を迎えたかった。そんな願望がないというのは、嘘に他なりません。

 

「やっぱり、ダメですか」

 

代表して口を開いた私を、彼はきキョトンとした顔で見つめます。

 

「いえ、あの・・・今年は参加できると思います」

 

・・・。

 

・・・えっ?

 

「キタコレ!」

 

真っ先に漣ちゃんが飛び上がりました。それこそ、花火か何かと見紛うばかりの勢いです。

 

「ほんとに!?」

 

「まったく・・・紛らわしい言い方すんじゃないわよ」

 

どうやら今年は、無事に夏祭りに参加できるみたいです。よかった。ほっと胸を撫で下ろすのと同時に心臓が高鳴ります。なにせ、お祭りですから。やりたいことは山ほどあります。商店街の夏祭りは、この辺りでも随分大きい部類だそうですし、出店の数はもちろん、御神輿や山車、盆踊り大会から地元出身の歌手の方までお呼びしてのライブパフォーマンスと、二日の間はまさにお祭り騒ぎだそうです。

 

「・・・あれ?でもその間、近海の哨戒任務はどうするの?」

 

「・・・あ」

 

ふと瑞鳳が発した言葉に、大はしゃぎだったその場の皆が一斉に我に帰りました。恥ずかしながら私もその一人です。

 

瑞鳳の言う通りです。お祭り中も哨戒任務は続行しなければなりませんし、緊急の出撃があるかもしれません。基地を完全に空にするわけにはいきませんから、そうすると何人かでローテーションということになるでしょうか。残念ながら、基地全員で参加、とはいかないようですね。それに、任務があるとすれば、必然的に彼は鎮守府に残らなければならなくなります。つまり、二日間を通して、彼とお祭りを回る機会はないということです。

 

・・・いえ、その。ガッカリしているわけでは、その・・・。どうしようもないこと、ですし・・・。

 

はい、祥鳳は大丈夫です・・・。

 

「それも心配しなくて大丈夫です。その間は、岩川基地の方に代わってもらうことになってますので」

 

「・・・え?」

 

「どういうことです、ご主人様?」

 

全員の疑問を、そっくりそのまま漣ちゃんが代弁してくれました。

 

「実は、その一週間前に岩川でもお祭りがあるらしいんです。ですから、その時の哨戒任務の肩代わりをする代わりに、こちらが夏祭りの間の二日間をお願いすることになりまして」

 

「ああー、岩川の提督さんかー。六駆にせがまれたのかな?」

 

「そうかもしれませんね」

 

岩川の提督さんには何度かお会いしたことがあります。彼とは同期生ですが五、六つほど歳上の、剛毅と言う言葉がよく似合う大柄な方です。

 

岩川基地も、負っている任務は鹿屋とほとんど同じですので、艦隊編成もよく似ています。ただあちらには軽空母が配属されておらず、代わりに対潜能力の高い五十鈴さんと名取さんという軽巡洋艦、そして航空巡洋艦の最上さんが対潜作戦の中核を担っていました。六駆こと第六駆逐隊と合わせて、鹿屋基地に並ぶ対潜部隊です。

 

そんな岩川艦隊と提督さんですが、見ているこちらが恥ずかしくなるくらい、岩川の提督さんは彼女たちを溺愛していました。なんというのでしょう、娘に向けるそれといいますか、いい意味で提督と艦娘の隔たりを感じさせない振る舞いです。その岩川の提督さんが、六駆の娘たちのお願いを聞かないはずがありません。なるほど、納得ですね。

 

ともかくそういうことで、私たちは先日の特別休暇に続いて、夏祭りの日も思いっきり羽を伸ばせることになりました。

 

 

商店街中央の広場。正午を回ったイベントステージでは、夏祭りの主催者や参加している歌手、関係者の挨拶が進んでいます。おそろいのはっぴを着たおじさんたちがベニヤ板張りの仮設ステージに並び、マイクを回しながら二言三言言葉を述べていきます。

 

『えー、ありがとうございました。次に、自治会長お願いします』

 

司会を務める眼鏡の男性は、最近電気屋さんを継いだばかりの、商店街の中でも一番若い方です。見れば、以前の店長が、ステージの下でマイクやらなんやらの調整をこなしています。

 

自治会長さんは、私もよくお世話になっている、お肉屋さんのおじさんです。今ではすっかり顔なじみになってしまって、何かの折につけて「これ、持ってきな」とソーセージやハム、時にはメンチカツをサービスしてくれます。

 

そういえば、春の大規模作戦前にカツを差し入れてくれたことがありました。もとは軍人さんだったらしくて、基地の慌しさから出撃が近いことを悟ったのだとか。それ以外にも、クリスマスの時はターキーと別にフライドチキンをおまけしてくれたりもしました。

 

『こんにちは。今年もこの季節がやってきたわけでありますが、皆様におかれましては、くれぐれも熱中症に気をつけてご参加いただきますよう、よろしくお願いいたします。それと、本日午後二時より神輿が行われますので、交通整理と熱い声援の方もどうぞお願いいたします』

 

おじさんもお肉屋さんとして出店を担当されているそうで、普段のお店の服にエプロン、その上からはっぴを着るというスタイルで挨拶を終えて、マイクは次の方に回りました。

 

マイクを手渡された白い軍装の海軍将校は、いよいよ固まってしまいました。

 

彼です。

 

なんでも、今年は夏祭り時に出撃がないとわかった途端に、商店街の広報の方からお声が掛かったのだとか。

 

鹿屋基地と商店街は正に目と鼻の先ですから、あらゆる場面で皆さんにはお世話になっています。基地に納入される食品の類はほとんど商店街を通して発注されていますし、艦娘である私たちにも、皆さんは気さくに接してくれています。

 

ですから彼も、そうした日頃の感謝も込めて、この申し出を受けたのでしょう。ですが、よっぽど上がり症だったようで、ステージの上で目を点にしてガチガチに固まっています。

 

ふふ、彼にこんな一面があったとは、意外です。

 

『ではみなさんお待ちかね。本日は特別ゲストとして鹿屋基地の提督さんに来ていただいています』

 

おー、と拍手があがりました。その音で、彼の背筋が余計に伸びてしまっています。

 

彼や基地について軽い説明がある間、ふっと、空間をさまよっていた彼の視線を私は捉えました。苦笑するその目は、どうしたものでしょうと語っているようで・・・。

 

・・・って、あれ?どうして彼の考えていることがわかったのでしょう。彼と目が合っただけのはずなのですが・・・。

 

こちらを不安げに見つめる表情に、なんと答えたものでしょう。不器用な私にできることは―――。

 

―――大丈夫ですよ、提督。私はここから見ていますから。

 

それだけの想いを込めて、彼に静かに微笑みます。想いは伝わったのでしょうか。でも、私を見つめた彼がほんの少しリラックスした様子で、わかりましたと返してきました。

 

・・・あれ?やっぱり、目配せだけで会話が成立してますよね。不思議です。まあ、そうは言っても彼とは一年以上の付き合いですから、意外とできるものなのかもしれません。

 

それにしても、こういうのを何と言うのでしょうか。うーん、

 

 

 

相思相愛、とか・・・?

 

 

 

ちちち、違うんですこれは、その、そういうわけではなくて、えっと。も、もちろんそういう関係になれたらと思わなくは・・・じゃなくてですね。

 

ああもう、落ち着きのない私。たったこれだけのことで一人で舞い上がって、あたふたと・・・。

 

結局、勝手に真っ赤になってしまった私は夏の太陽にぐるぐると思考をかき混ぜ、やっとの思いで彼の話に耳を傾けます。

 

『お招きありがとうございます。自分は鹿屋基地で指揮を執っている者で、艦娘のみんなからは提督と呼ばれています』

 

感度のいいマイクを通して、彼の声が広場に響いています。その場の方々がはたと足を止め、彼の方を見やりました。

 

『皆さんがご存知の通り、普段彼女たちは、深海棲艦という謎の敵と戦い続けています。しかし、それは彼女たちの一面でしかないのです。彼女たちも、今日のお祭りを楽しみにしていました。無事に参加できることになって、飛び上がるほど喜んでいました』

 

彼の一言一言を、広場に集まるみなさんが静かに聞いています。かくいう私も、無意識のうちに胸の前で手を絡ませ、彼を見守ります。

 

『一人の“仲間”として、彼女たちが笑っていてくれるのはとても嬉しいことです。ですから一人の“提督”として、今日こうして夏祭りを開催していただいたこと、そしていつも彼女たちを見守っていただいていることを、心から感謝いたしまして、挨拶とさせていただきます』

 

最後に、海軍式の最敬礼で挨拶を終えた彼に、ポツポツ、会場のあちこちから拍手が上がり始めました。やがて音の波が広がり、最後には大きな喝采となって広場を包みます。温かな拍手を向けられた彼が、一瞬目をきらめかせて、もう一度深々と頭を下げました。

 

胸に迫るものがあります。少なくとも私たちの―――彼や数多くの艦娘たちがなしてきたことは、この方たちに理解されている。皆さんは私たちに、心からの想いを託してくれている。これほどの温もりが、届かないはずがありません。響かないはずがありません。

 

ようやく頭を上げた彼と再び目が合います。私はその瞳に、隠すことのない、精一杯の笑顔を向けました。

 

 

 

「祥鳳さーん!」

 

壇上から降りた彼は、下で待ち受けていた私のもとへと駆け寄ってきました。

 

「お疲れ様です、提督」

 

「いえ、なんだか緊張してしまって」

 

制帽をはずした頭を気恥ずかしげに掻く彼は、もう一度かぶりなおす前に辺りを見渡して、柔らかな笑みを口元に見せました。

 

「・・・伝わっていたんですね。自分たちの想いは」

 

「ええ」

 

それ以上の言葉は出てきませんでした。その代わりに、彼と同じように陽の下見回して、その暖かさを胸に仕舞い込みます。

 

「祥鳳さん?」

 

「あ、いえ。・・・提督と同じことを考えていました」

 

こちらを覗き込んだ彼に、誤魔化すように微笑んで、そっと手を胸に合わせます。そこには確かに感じられる鼓動が・・・。

 

「そういえば、他の皆はどこに行ったのですか?」

 

「青葉さんは、広報の方に挨拶をされるそうで、本部に行っています。七駆の娘たちは、適当に回っているそうですよ」

 

青葉さんは、鹿屋基地公式の広報誌『艦娘報』発行にあたって普段からお世話になっている商店街の広報さんに挨拶回りをしているそうです。それと、『艦娘報』に載せる記事でお話もあるのだとか。まさにジャーナリストそのものです。すでに何枚か撮られましたし。

 

七駆の娘たちは、まとまってお祭り内をうろうろすると言っていました。初めてのお祭りです。きっと今頃、大はしゃぎしていることでしょう。

 

「あれ、瑞鳳ちゃんは・・・?」

 

「瑞鳳なら・・・」

 

私は後ろを振り返ります。そこには、電柱の陰に揺れる特徴的なポニーテールが。

 

瑞鳳・・・あれで隠れているつもりなのでしょうか・・・?

 

多分、私のことを心配して見張っているのでしょうけど・・・。完全に怪しい人です。

 

「えっと・・・なにをされてるんでしょうか?」

 

「いえ、多分心配して付いてきただけですので・・・。後で声を掛けておきますね」

 

「あはは・・・。お願いしますね。自分は一度鎮守府に戻ります」

 

「戻られるのですか?」

 

「はい。まだ終わっていない書類がいくらかあるので、お昼までにやってしまおうと」

 

そういえば、朝方に中央から届いた書類がありました。結構な量だったと記憶しているのですが・・・。

 

「お手伝いしますよ?」

 

「い、いえそんな。大丈夫ですよ。せっかくの夏祭りですし、祥鳳さんは楽しんでください」

 

彼は慌てるように両手を振って、私の申し出を断りました。

 

「それに、すぐに出さなければいけない書類ではないみたいですし、軽くまとめるだけですので」

 

「そう・・・ですか?」

 

「はい。すぐ戻りますので、またお昼ご飯の時に」

 

それだけ言い残して、彼は鎮守府の方へと走っていってしまいました。今更追いかけるわけにも行かない私の右手が名残惜しげに空を切り、再び私の胸に収まりました。

 

―――あなたがいなければ、意味がないのに。

 

そんな身勝手なことを思ってしまった私は、左右に首を振って考えを打ち消すと、彼に言われた通りひとまず瑞鳳に声を掛けることにしました。

 

 

 

「それで皆は、この後どうするんですか?」

 

一通りご飯を食べ終わって、食後のお茶に一息ついていた私たちに、彼はそう切り出しました。

 

「夕食は鎮守府で、と考えてますが・・・」

 

「あたしたちは、市民会館のほうに行ってみようと思います」

 

七駆を代表して、朧ちゃんが一枚ビラのようなものを取り出しました。四人と向かい合う形の私と瑞鳳、青葉さん、そして彼がそれを覗き込みます。

 

「市民ミュージカル、ですか」

 

「毎年恒例の出し物で、参加者はほとんどアマなんですけど、クオリティーが高いことで有名なんだそうです」

 

今年の題目は『オペラ座の怪人』。オペラ座というのは確か、有名な劇場だったはずですが、どんな話なんでしょう。

 

「それじゃあ、七駆の皆で行くんですね?」

 

「はい。前から演劇というのを見てみたくて、ね?」

 

「調べてみたんだけど、これがなかなか面白そうなんですよご主人様」

 

「ま、三人がいいっていうなら。あたしは別にかまわないけど」

 

「とっても楽しみです」

 

口々に答える七駆の娘たちに柔らかな笑みで頷いて、

 

「わかりました。気をつけてくださいね」

 

いつも通りに彼はそう言いました。

 

「青葉は、取材を敢行してきます!」

 

「わたしはまだ回ってないところをぶらぶらしてる~。お姉ちゃんは?」

 

「そうね・・・」

 

ふむ、と唇に人差し指を当てて考えます。これといって何かあてがあるわけでもないので、何をしたところか。瑞鳳に付いて回りましょうか。どうせなら彼も誘って・・・。

 

「提督?私と―――」

 

「あの、祥鳳さん」

 

偶然にも、私と彼の言葉が重なってしまいました。お互いに目を見合わせて、

 

「す、すみません、どうぞ」

 

「い、いえ、提督から」

 

結局、譲り合う格好になってしまいます。それを意味ありげに見つめる六つの視線が・・・。

 

「で、では。―――その、自分と一緒に来てくれませんか?」

 

「―――え?」

 

私の思考回路が両舷停止するのと、椅子の音が六つ響くのはコンマ数秒ほどの差しかありませんでした。

 

 

 

「すみません、付き合せてしまって」

 

いつの間に買ってきたのか、よく冷えた二本のスポーツドリンクのうちの一本を私のほうに差し出して、彼は苦笑いを浮かべていました。ペットボトルを受け取って、私は首を横に振ります。

 

「いいえ、全然。むしろ連れてきていただいて、とてもよかったです」

 

私が笑顔を見せると、彼もまたよかったと微笑んで蓋を捻りました。

 

彼が誘ってくれたのは、地元を拠点に活動されている歌手の方のコンサートでした。暑さがピークを迎えた二時ごろから広場で始まったコンサートは、照りつけるような日の光にもかかわらず、会場から人が溢れるほどに大盛況となっていました。

 

「母が彼女のファンで、その影響で好きになったんです」

 

彼によると、地元では熱烈な指示を集める方で、素朴でありながら情感溢れる歌声が人気なのだそうです。

 

「知りませんでした。こんな歌を歌われる方がいらっしゃるなんて」

 

「全国区ではあまり有名ではないですよね。それよりも地元での活動を大事にされてる方のようですので。母が知ったのも、たまたまこちらを訪れた時だったそうです」

 

「そういうことだったのですか」

 

彼女が歌い始めるとき、広場の空気が一瞬にして静まるのを感じました。かくいう私も、たちまちにその歌声に引き込まれ、聞き入っていました。

 

澄んだ歌声。ゆるるかなメロディー。打てば響く歌詞。そして、私たちを捉えて話さない迫力。

 

汗とは違う水滴が、私の頬を伝いました。

 

―――まだ、ドキドキしてる。

 

三十分ほどの公演が終わった今も、胸のうちがジーンとしています。

 

「生で聞いたのは初めてでしたけど、やっぱり違った味がありますね」

 

「普段は何で聞かれているのですか?」

 

「えっと、一応CDもいくつか持っているんですけど、ほとんどこっちで聞いてますね」

 

そう言って彼がポケットから取り出したのは、最近はやりの携帯音楽プレーヤーでした。防諜仕様が施されたことを示す海軍のマークが貼られた以外、特に飾り気のない手のひらサイズのプレーヤーは、綺麗にまとめられたイヤホンに繋がっています。

 

「お風呂上りとか、寝る前とかに聞くと、とても落ち着くんです」

 

わかる気がします。こんな歌を聞きながらだったら、きっと心地のよい眠りにつけることでしょう。

 

―――ちょっと、図々しいかな?

 

キラキラとした目で語る彼の右手をちらと見て、私は口を開きます。

 

「提督―――その、もしよかったら、今度聞かせていただけますか?」

 

彼はほんの少し目を見開いてから、

 

「ええ。もちろんいいですよ」

 

心底嬉しそうに笑顔を浮かべました。

 

 

「祥ちゃん、どーおー?」

 

「あ、後もう少し待って」

 

「潮、これ後ろ大丈夫?」

 

「ちょっと見せて。・・・うん、大丈夫だよ」

 

「提督?」

 

「おおー、皆さん似合ってますねー」

 

「ねー提督、一回落ちつこ?」

 

「あ、はい、すいません・・・」

 

「漣、祥鳳さんのはどんなの?」

 

「んー?むふふ、見てのお楽しみ」

 

「なんだろ・・・。急に嫌な予感がしてきたんだけど」

 

「青葉さん。あの・・・その手に提げてるのは・・・?」

 

「金魚です!!」

 

「祥鳳さん?大丈夫ですか?」

 

「は、はい。これで―――よし、終わりましたよ」

 

「それでは!お披露目と行きましょう!!」

 

「おおー」

 

「いきますよ?せーの、」

 

 

 

カーテンが開かれると、華やかな光景が私の前に現れました。色とりどりの浴衣に身を包んだ鹿屋基地の艦娘たちと彼が、布の覆いを掃った私を見て感嘆の声を漏らします。

 

―――似合ってる、かな?

 

改めて気になった私は、昨日の私服とは違う、自分の全身を挙動不審に見回します。

 

昨日、彼が鎮守府に戻っている間に、漣ちゃんに連れられて入ったのは、商店街の呉服屋でした。もう、ほんとになんでもありですね、この商店街。

 

ともかく、この呉服屋さんと言うのが、夏場には浴衣の貸し出しをしていました。というわけで、せっかくですから皆で借りてみようと、採寸のために立ち寄ったのです。漣ちゃんと顔見知りの女将さんは、「一日待ってくれれば、皆に似合うのを用意できるよ」とのことで、今日に至ったわけです。

 

「さっすが祥ちゃん!」

 

「写真、写真撮らないと・・・!!」

 

「とってもお似合いです!」

 

「そ、そうかな・・・?ありがとう」

 

こ、ここまで言われてしまうと、照れてしまいます。

 

女将さんが着付けてくれたのは、瑠璃色を基調として、随所に花を散らしたものでした。帯は全体を締めるような淡いピンク。髪をアップにセットして、小さな銀の簪を挿します。

 

「似合ってるねえ。あたしの若いころを思い出すようだよ」

 

奥から出てきた女将さんはそう言って上品に笑いました。

 

「女将さん、お世話になりました」

 

「いいのいいの。しっかり楽しんで行っておくれ」

 

「それで、提督。お姉ちゃんの浴衣は、どう?」

 

「え?」

 

彼と目線が重なり、一瞬目をそらしそうになってしまいます。

 

―――勇気を出して祥鳳!!

 

ですがその衝動を、なけなしの感情が必死にとどめました。せめて今日は。しっかりと彼を見つめていたい。

 

「そうだねえ。お兄さんがどう思ってるのか、感想を聞かせとくれ」

 

女将さんもニコニコと笑顔のまま、状況を静観する姿勢を見せました。なんでしょうこの、既視感。なんだかいつも見ているような・・・。

 

「ほらほらご主人様、おば様もああおっしゃってることですし」

 

わかりました。もう、何を言うまでもなくわかりました。女将さん、漣ちゃんにそっくりなんです。いえ、漣ちゃんが女将さんそっくりなのでしょうか。

 

興味津々、という四字熟語をありありと浮かべる七つの視線に、彼は一瞬たじろぐと、なぜか微妙に視線を泳がせて答えました。

 

「えっと、その・・・。紫の上みたいだな、って・・・」

 

「・・・」

 

流れる沈黙。次の瞬間、

 

「例えがわかりにくい!!」

 

七つのツッコミが彼に猛然と襲い掛かりました。

 

 

 

カラン。コロン。

 

夜の土手に、八つの―――いえ、もっと多くの、下駄を鳴らす音と笑い声が涼やかにざわめいています。商店街から少しばかり離れた川原は、まもなく始まろうとする花火大会の見物人ですごいことになっていました。

 

「それでねー」

 

「あはは、なにそれ」

 

今日は二人ずつに分かれて行動していた七駆の四人が、それぞれの話を楽しそうに聞かせてくれます。金魚すくい、射的、たこ焼き、カキ氷。大阪と広島、どちらのお好み焼きがおいしかったか、大激論になっています。

 

「しっかし、すごい人ね」

 

結論の見えない議論を誤魔化すようにして、曙ちゃんが辺りを見渡します。確かに、歩いていくにつれて人の波がより多くなっていきます。この先に何かあるのでしょうか。

 

「確かこの先が、一番よく見える場所なんだって」

 

「なるほど、それで」

 

「え?土手で見るなら、どこでも同じじゃないんですか?」

 

話を聞いていた彼が、不思議そうに尋ねました。

 

「何言ってるんですかご主人様、全然違いますよ!」

 

「そうですよ提督。花火は見る場所が大事なんですから」

 

「知りませんでした・・・。奥が深いんですね」

 

私もその辺りはよくわかりません。ですので、彼と同じように頷いていました。

 

「たく、これぐらい調べときなさい。クソ提督、もし彼女とかエスコートすることになったらどうするつもりよ」

 

「すみません・・・。自分、そういう経験が全くなくて・・・」

 

「・・・そうだろうなと思ってました」

 

青葉さんの相槌に力なくうなだれる彼。少し可愛そうです。

 

でも、そっか・・・。

 

 

 

彼女がいたことは、ないのですね。

 

 

 

なぜでしょう。彼女は作らない、ということなのでしょうか。それとも、何か別の理由で?

 

うう、なんだかこんな事で一喜一憂している自分が恥ずかしい・・・。彼への気持ちを自覚したのに、それを伝えずにいる今の私は、なんだか甘えている気が・・・。

 

で、でも、告白なんてその・・・。よく、わからないのです。

 

「・・・祥鳳さん?」

 

「ひゃっ!・・・あ、提督、すみません」

 

「いえ、何か考え事をされてたみたいで・・・大丈夫ですか?」

 

「は、はい。なんでもありません、ちょっとボーっとしてしまって」

 

言えない!あなたのことを考えてましたなんて言えません!

 

悶々としたまま、私は皆について人の海を渡ります。ちらほらと見える手を繋いだ男女が、今日は妙に意識されてしまいました。

 

漣ちゃんに誘導されるまま、私たちは土手を進んで、一ヶ所で止まりました。人混みのピークから少し離れた短い芝の生える土手からは、花火大会の会場がよく見えました。

 

「いやー、穴場を聞いといて正解でした」

 

額の汗を拭う青葉さんは、そう言って爽やかな笑みを浮かべています。どうも、商店街の広報部の方から、花火大会を見るのにいい場所を教えてもらったのだそうです。確かにこの位置は、人も少なく、私たちのように人数が多いとこれぐらいスペースのある方が、楽しめそうです。

 

「そろそろですね」

 

手首に巻いた時計を確認した彼が、ふっと空を見上げて呟きました。見れば回りも、なんとなくそわそわとしだしました。

 

「マジで?ほらほら、前の方行こ!」

 

「ちょっ、漣待ちなさいって」

 

「ま、待ってください~!」

 

「青葉さんたちも、行きましょう?」

 

「ちょーっと待ってくださいね・・・よし、ではでは行きましょう!!」

 

「わわ、みんな待ってよ~!」

 

身軽な七駆に続いて、青葉さんと瑞鳳も行ってしまいました。その後姿を保護者の面持ちで眺めて、彼と苦笑します。

 

「行っちゃいましたね」

 

「そうですね」

 

「祥鳳さんは、どうしますか?ここで見ますか?」

 

この穴場スポットを知っている人もいるのでしょう、ちらほらと、さっきよりも人が集まってきます。早めについた私は場所取りに苦労しませんでしたが、後からついたカップルと思しきお二方は大変そうです。彼氏さんの方が、一生懸命によい場所を探そうと、彼女さんの手を引いています。なんとも微笑ましい限りでした。

 

「・・・私はここで見ます。提督こそ、よろしいのですか?」

 

「はい。自分はその、祥鳳さんと見たいな、と」

 

「え?」

 

「迷惑、でしょうか?」

 

「いえ、そんな。嬉しいです、私も―――」

 

その先をつむぐ前に、爆弾の炸裂音にも似た音が聞こえてきました。

 

・・・風情のない例えですみません。なにせ、それ以外の例えようを知らないものですから。

 

音の方を振り向けば、赤、青、緑、鮮やかに夜空を彩る大輪の花が、夏祭り最後の盛り上がりの始まりを告げます。先程まで夜の喧騒に包まれていた会場が、途端に静寂に変わりました。

 

最初の一発は、長い光の尾を引くとたっぷりと余韻を持たせて、漆黒の空に私たちの視線を釘付けにしました。

 

「・・・始まりましたね」

 

「・・・ええ」

 

感慨深げに呟く彼の言葉に、私も言葉少なに答えます。

 

やがて、二発目、三発目と、光の種が連続的に上がり、夜空に美しい花弁を開きました。一発一発が開くたびに、観衆からはどよめきとうっとりとした声が上がります。私も思わず、感嘆の声で一夜限りの光景を迎えていました。

 

芯入り菊、牡丹、銀冠菊、柳、蜂、そして型物と呼ばれる創造に富んだもの。朧ちゃんに教えてもらったいくつかの花火の種類を頭に浮かべていると、その多種多様な彩りにまた違ったものが見えてくる気がします。優しい光は、同じように空を見上げる人々の上に、ゆるるかに降り注ぎました。

 

「綺麗、です」

 

「間近に見ると、違いますね」

 

ふと、肩に触れるものに気がつきました。見れば、黄や橙に照らされる彼の顔が、私のすぐ隣にあるではないですか。花火に見惚れるうち、いつの間にやら彼の方に来てしまったようです。

 

つまり。つまりです、私の肩に触れているのは・・・。

 

花火の照り返しで、朱に染まってしまった顔の熱さを紛らわせます。

 

幸せ半分、恥ずかしさ半分で、頭が沸騰しそうです。ただ、目の前に花開く花火だけは、くっきりと私の脳裏に焼きついて離れませんでした。

 

きっと忘れない。

 

涼風が浴衣を撫で、髪が揺れます。ドーンとお腹に響く音が、熱くなった胸には心地よい。

 

「提督・・・」

 

思わず、隣の彼を呼んでしまいました。彼は顔をこちらへと向け、不思議そうに首を傾げます。

 

「どうかしましたか?」

 

花火の合間を縫って、彼の吐息まで聞こえてくるようです。研ぎ澄まされた私の感覚は、彼が瞬きするのまで感じ取って、そっと、彼にギリギリ聞こえる声で―――

 

「私、このお祭りに来れてよかったです」

 

偽りのない気持ち。彼、第七駆逐隊の皆、瑞鳳、青葉さん、今は別の鎮守府へと移った鳳翔さん。今の私が“ここ”にあるのは、皆のおかげだから。それがとても、嬉しくて。愛おしくて。

 

お互いの息が掛かるほど近い彼に、正面から向き合います。

 

夜空に輝く花火に負けないように、彼に全てが―――この想いが伝わるように、私は精一杯に微笑みます。

 

「“あなた”と出会えて、よかった」

 

今宵一番の花火が、暖かな目線で、私と彼を照らして包み込みました。

 

 

 

最後に、仕掛け花火のナイアガラが川面を彩ると、盛大な拍手と共に花火大会は終わりを迎えました。

 

「終わりましたね」

 

「・・・終わってしまいましたね」

 

自分で言っておいておいてなんなのですが、あの後これ以上ない恥ずかしさの急降下爆撃に曝された私は、彼の呟きにそれだけ返すので一杯一杯でした。それに、終わって初めて気づいたのですが、私たちの周りは、手を繋いだカップルばかりで、余計に彼のことが意識されてしまいました。

 

引き始めた人波と期を一にして、収まっていた囃子や呼子の声が盛り返して、クライマックスを迎えた祭りの余韻を花火から引き継ぎます。

 

「ず、瑞鳳たちは、どこでしょうか」

 

周囲の気温が二、三度上昇しようかという顔の熱さを、そう言って誤魔化しました。

 

珍しく、彼からの返事はありませんでした。

 

「・・・提督?」

 

彼の方を振り向くと、いつになく―――いえ、まるで私たちに出撃を命じるときのように真剣な眼差しに、私の心は射すくめられました。彼から、目を離してはいけない気がしました。

 

「祥鳳さん」

 

「は、はい」

 

彼の瞳に、星とは違う煌きが宿った気がしました。

 

「自分も・・・」

 

 

 

「自分も、あなたに出会えてよかったです」

 

 

 

息を呑みます。

 

 

 

「初めて会った時から、あなたに惹かれてしまいました。そしていつの間にか、どうしようもなく好きになってしまいました」

 

 

 

彼の言葉が、ぐるぐると頭の中身をかき混ぜました。

 

 

 

「あなたと、皆と過ごした日々は、私にとって掛けがえのないものです。でも、それでも自分は提督だからと―――いえ、ただ勇気がなかっただけです。あなたとの思い出を、失ってしまうのが怖かった」

 

 

 

彼の想いが、岩から流れ出る清水のように、私の中へと染み入っていきます。

 

 

 

「でも、MO作戦で気づかされました。自分が一番怖いのは、あなたを失ってしまうことだと」

 

 

 

帰投した私への、熱い抱擁。そして―――

 

 

 

「わかっています。これが、提督としてあるべき姿ではないと」

 

 

 

艦娘に求められていること、彼ら提督に求められていること。

 

 

 

「でもだからこそ、私は声を大にして言いたい」

 

 

 

不思議な気持ちです。彼も私と同じように悩んでいたなんて。

 

 

 

「軽空母“祥鳳”。自分は、あなたを愛しています」

 

 

 

夢の中だけと思っていた言葉が、よもや現実で自分に向けられるとは。

 

 

 

「至らない自分ですが、皆の―――あなたの“帰ってくる場所”にはなれます。それだけでいい。出撃のできない自分にも、あなたを暖める手も、腕も、体もあります」

 

 

 

必死に話す彼が、たまらなく愛おしくて。この胸で受け止めた彼が。その胸で迎えてくれた彼が。ひな祭りも、梅雨の雨も、夏の海も、肌寒い秋も、クリスマスも、出撃も、遠征も、夏祭りも。この体に刻まれた、大切な思い出たちは、いつでも彼と共にありました。

 

 

 

「だから、自分と―――」

 

目の前の彼を、押し倒さんばかりの勢いで、私は彼の胸に飛び込み、その温もりを“娘”の体一杯に吸い込みました。

 

「し、祥鳳さん?」

 

「―――ありがとうございます、提督」

 

背中に回した腕に、彼がきつくない程度に力を入れます。恥ずかしくて顔は上げられそうにないので、胸に埋めてしまっていることだけは勘弁してくださいね。

 

「至らないなんて言わないでください。あなたは私の―――私たちの自慢の提督なのですから」

 

彼の腕は、恐る恐るといった感じで私の背中を抱え、この“心”をまとめて包み込む暖かさをくれます。

 

「暖かいです、あなたの腕の中は」

 

「・・・そう、ですか」

 

こんなにも、幸福感に包まれて。すでに恥ずかしさが限界を超えてしまった私の心のリミッターは、きっと壊れてしまったのでしょう。直ったときには倒れてしまうかもしれませんが、今はそんなことなど関係なく、永遠にこの温もりに包まれていたい。

 

「・・・提督?」

 

「はい」

 

私はその一瞬だけ顔を上げます。その時、冷たいような、暖かいような、不思議な感覚が頬を伝い流れ、ひとしずくとなって夜に輝きました。心を落ち着かせるその一滴が、夢見心地の風景の中に、彼の―――そして私の居場所をはっきりと示しました。

 

 

 

「私もお慕いしています。どうかずっと、私の帰る場所でいてください」

 

 

 

真夏の夜気が、私たちを包みます。商店街を、広場を、川原を歩く人々の間を抜ける空気は、少しばかりの湿り気を含んで舞い踊り、過ぎ行く夏を惜しみます。その暑さは都会のようにうだるものではなく、それでいて体の芯を火照らせる、まさに夏の夜の魔法。どこかで町を見守る魔女が、その優しい瞳を細めて、祭りの終わりを告げました。




うん、過去最大級の暴走ですよね、でも後悔などありません

書いてるうちにあらぬ方向へ走り出したので「どうにでもなれ」と思って祥鳳さんたちに任せたら、案の定でした

でも、祥鳳さんと彼が出した答えなら、作者として応援しないわけにはいきませんね。いつだか元帥が言ってた事とか、瑞鳳のこととかまだまだ色々残ってますけど

ちなみに夏祭りの内容は、実家近くの祭りを参考にしております。今年も神輿だけ担いできました

さて、次回からどうなることか・・・

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