とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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前半コメディ☆

後半――――ザザッ(ノイズ音)



――――なんで、早く気づいてあげれなかったの……私達は

(by朱美まどか)


第九十四話 ピンチと秘密

 

 

 

(??side)

 

 

 衛と幸太は打ち込みをしていた。幸太の武器は長槍だ。先端は十字の形をしており、突くだけでなく、払うことで斬撃を引き起こさせることが可能な得物だ。

 それをバトンのように駆使して、相手を接近させず、自身の間合いで倒す。それが幸太のバトルスタイルだ。

 

 衛のバトルスタイルは言うまでもなく拳だ。魔法と拳を使って戦うどこぞのZ戦士と同じバトルスタイルだ。ゆえに、幸太との戦いははっきり言えば不利だ。一般的に言えば、拳で槍に挑むことの勝率は低い。

 

 一般人同士が戦えば軍配は、槍に上がるのは自明の理だ。

 

「せいっ!!」

 

 それをわかっている幸太は、衛との挑戦を引き受けた。確かに衛はレジェンドクラスを倒した化け物だ。

 しかし、拳と言えば限界はある。自分にはスピードと手数があるからパワーファイターである衛と良い勝負ができるはず……と考えていた。

 

 

――――しかし、彼の考えは甘い

 

 

 なぜならこの男は常識を、もはや超越した変態(ばけもの)なのだから。

 

「ヌッハァァァァァ!!」

「えぇ!?」

 

 まただ。幸太の五度目の鋭い突きが、両腕の盾によって彼ごと吹き飛ばされた。着地をしたとき、衛は既に踏み込んでおり、拳を放つ準備に入っていた。

 幸太は棒高跳の用法で、彼の拳を回避した。幸太は衛から離れた後方へ着地し、『召喚術』で捨てた槍を手にとる。

 

(ふ、普通……槍で突かれたら貫通するだろ。なんで弾かれるんだよ……!)

 

 幸太の冷や汗は止まらない。何度も身体に当てているのに、貫くことなく全て肉体で弾かれているのだ。

 おまけに反撃に移るスピードも早く、距離をとらないと逆に危ないことが多かった。

 

「ヌゥゥゥゥゥハァァァァァ……。なかなかやるではないか。その曲芸師のごとく軽やかな動き。我も学ばなければならぬ」

「いやいやいや! これアンタもできたらマジで不気味だから!」

 

 巨体が軽やかな動きすればそれはもう不気味である。「フシュゥゥゥゥゥ……」と息を吐き捨てる衛の姿に、幸太はどこの超人生物だと内心ツッコんだ。

 こんなが敵同士だったとしたら、間違いなく明日はない。

 

「まだまだゆけるな? 逝くぞ!!」

「いや、もう無理ッス! 逃げたいッス!!」

 

 幸太の目からタパーッと涙が流れていくが、お構い無く衛は駆け出す。そんなとき、はやての「ごはんやでー」と呑気な声が聞こえると、ピタリと彼は制止した。

 

「ヌゥ……まさかここまでか。仕方あるまい。今日はここまでにしよう」

(ホッ……)

「だが、明日も頼むぞ!」

(ぎゃァァァァァ!?)

 

 世の中理不尽だと幸太は今日この頃思う。目をつけられたが最後、模擬戦こと『衛のドキドキ筋肉対戦』は避けられないようだ。それほど、幸太は強くなると衛自身が思うゆえに、鍛えていたりするのだが。ありがた迷惑な話なのは、本人の知らぬことである。

 

(うぅ……なんでこうなるんだ。リッカさんの微笑みがほしい……)

 

 最低なことをした女性だが、彼女の本質はとても良い。過ちを犯した罪を償おうと必死になってるその姿に、幸太は心打たれていた。

 

(……でも、なんか怪しい写真を朱美姉妹に渡していたような。というか赤髪の娘なんて、餌付けされていたし)

 

 ちなみにさやかの場合は「ま、いいんじゃね? それよりもなんかソラの面白い話ない?」と呑気に話しかけていたりする。……ソラ自身、まさか黒歴史が既に変態達に知られているとはつゆに思うまい。

 

「というか、なんか遅いな……。神威と友江長女は昼には帰るとか言ってたよな」

「ぬ? 確かに……。そういえばリッカ殿もいないし。ヌゥ……」

「捜して来ようか?」

「頼むぞ。成功したらご褒美に我が筋肉を触れる許可をやろう!」

「いらねーよ……」

 

 誰が男の筋肉を触れて喜ぶのだろうか。そんなことを思いながら幸太はソラ達を捜しに向かった。

 裏通りは既にいないと考えて、もしかするとリッカと合流して、観光していたりするのではないか? と幸太は考える。

 友江マミはおっとりしているし、天然のリッカも同じくどこか抜けている。

 唯一のまともなソラだが、そんな天然おっとりコンビの勝手な行動力に振り回されるか、またははぐれるのか二択だ。

 

 幸太はまずマミとリッカを見つけようと、足を進めていくと何やら騒がしい。

 騒ぎがする方向へ向かうと、これまた綺麗なメイド少女二人とお姫様が走っていた。黒髪のメイドはお姫様を抱き上げており、金髪のメイドは涙目で彼女をついていた。

 

 なんだあれは。と考えていると、彼女達が何から逃げていたのか判明した。

 『キラー●シン』みたいなモンスターがストリートお構い無しに、彼女達を追いかけていたのだ。

 

「ぎゃあァァァァァ! なんでキラーがいるの? 作品違うよね!?」

「知るか! オベイロンのヤツが購入したんだろ。とにかく逃げろ。捕まったら、まず殺されるぞ!」

「大丈夫よキリトくん。あのキラーマシ●は『ジャパニャット』で通販で購入したものよ。非殺傷タイプだから死にはしないわ!!」

「「どのみち危険だろが!!」」

 

 ……どうやら知り合いじゃないようだ。うん、他人のふりしとこ。そう考えた幸太だが、彼が三人を見つけた時点で運命は決まっていた。

 キリト達がこちらに向かっていたのだ。

 

「ってなんでこっちィィィィィ!?」

「ざけんな! 逃げようたってそうはいかない!」

「道連れだコノヤロー!!」

「テメェら後で覚えてろ!!」

 

 四人はキラーから逃げる。しかし、このままでは体力が先に尽きる。戦わなければ、止まることなさそうだが、如何せんここは人が多い。

 ドンパチし始めれば、巻き込まない保障はできない。

 

「くそっ! なんとかしねーと!」

「どうするんだよ!」

「キリトくん。私に考えがあるわ!」

 

 唯一のまともそうな美少女。アスナが挙手する。全員が彼女に注目する。

 彼女が袋から取り出したのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで相手の動きを」

「無理だろ! どうやっても縄で縛って止まらないだろ!」

 

 平常運転なアスナにキリトはツッコむ。

 

「大丈夫! 私の緊縛スキルはレジェンドクラス。縄を持たせれば確実に縛れるわ!」

「縛ったところで引きちぎられるオチしかないんだけど!」

「ついでに快感も与えられて一石二鳥よ! イェイ☆」

「そんなオプションいらねーよ! てか、あれモンスターだけど機械! 快感ないだろが!!」

 

 ここで夫婦漫才するなよ。と幸太は内心呆れていた。そんなとき、前には捜していたマミとリッカがいた。

 マミはいつものように微笑みながら、大きな砲撃でキラーに標準を向けていた。

 

 「え、ちょ、まっ」と四人が呟いたときには既に遅し。『ティロ・フィナーレ』がキラーに向けて発射され、爆発した。

 吹き飛ばされた四人はちょうどリッカの前へ滑走していき、彼女の前で止まった。

 

「あら~、どうしたの? 花火でテンション上がっちゃったの?」

「上がってねーよ!!」

 

 キリトのみ意識があり、残りは髪型がアフロになっていた。爆撃で、どこぞのギャグ漫画よろしくの髪型になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、我らの主人公はと言うと――――

 

 

 

 

「この程度ですか?」

 

 

 傷だらけになって壁にもたれいた。頭から血を流し、片目は瞑っている。

 彼の手には『神器』はなく、彼女の背後に突き刺さっていた。

 ソラは痛む身体に耐えながら、立ち上がり、『召喚術』を使って『全てを開く者』を手に取ろうとした。

 

 しかし、光は起きたが『神器』はその手にはなかった。

 

(やっぱり……かよ)

 

 彼は落胆する。彼の身体は今年になって異変が起きていた。

 変化の兆しを感じたのは、なのはが墜落したときだ。あのときはまだピリッと痺れることしかなかったが、今では『召喚術』が五分五分の確率で成功するようになった。

 異常な話だ。『神器使い』は、ソラはいつも、息をするように『召喚術』を使うのに、もう確率的な話になっていた。

 

 ソラの落胆には、彼女も失望していた。まさか話に聞いていたよりも、弱くなっているとは思いもしなかった。

 

「……彼女の話は偽りではないようでした。あなたに何があったのですか?」

「知るか。襲撃者が敵に同情してるんじゃねぇ」

 

 今度こそソラの『召喚術』を成功させ、『神器』を握る。立ち上がり、駆け出したソラは彼女に斬りかかる。

 彼女の剣とソラの剣がぶつかる――――が、なんと彼の手から『神器』が離れていく。

 弾き飛ばされたのだ。なぜ、彼の握力が弱いのか彼女は疑問に感じるも、すぐに切り替え。ソラの肩から腰までに斬撃を与える。

 

 咄嗟に身を引いたため、浅い切り傷で済んだが、フラフラしていた。もう限界が近いようだ。

 ソラの限界に気づいた彼女は、剣を納めて、瀕死の彼に落胆していた。

 

「……トモエマミの話にはがっかりです。買いかぶり過ぎのようでした」

「トモエマミ……。お前、あのヤローと」

「不本意ながら彼女とは協力関係です。まあ、今回は力試しのつもりであなたに挑戦しましたが……。まさかここまで弱いとは思いませんでした」

 

 彼女は何に期待していたのかわからないが、彼女自身と同等、またはそれ以上の使い手と戦いたかったのかもしれない。ソラは期待に応えられないとわかれば、もはや用はない。

 失礼な話だが、彼女もまた武人。弱い相手と戦うつもりは毛頭ない。

 

「それでは失礼します。できれば戦場に会いたく、」

 

 刹那、女性の元に弓矢が突き刺さる。一歩遅れていれば針ネズミになっていた。

 

「……不意打ちとは卑怯ですね」

「うちの旦那を襲っといて卑怯も馬鹿もないよ」

 

 ザッとソラの目の前にまどかが着地する。どうやら彼女が撃った矢のようだ。

 まどかはチラリとソラを見て、胸を押さえる。そして弓を握る力を強くしていた。

 

「……ソラくんが弱い。そう言ったね、あなたは」

 

 いつも優しい目をしている彼女の目が変わる。金色へと変わり、ギロリとした視線を向けていた。

 

「ふざけないで。あなたが彼を弱いと決めつけないで!」

 

 まどかは弓を引き、無数の魔力の矢を飛ばす。彼女は回避し、去り際にソラとまどかに言う。

 

「わたしはアルト。アルトリアルです。また会いましょう、弓兵の少女」

 

 「二度と来るな」とまどかは人差し指を上げ、ソラは眠るように意識を失った。まどかは急いで、治療を行うのだった。

 




どごぞのZ戦士: 気功波を撃つ戦闘集団

衛のボディ: 剛柔兼ね揃えた究極の筋肉! その身体を傷つけるにはAランクの英霊の宝具レベルの攻撃じゃないと傷つかないぞ☆(←もはや再生がないバーサーカーレベル)

キラー●シン: ウィーン、ガシャ、ウィーン、ガシャ(笑)

ジャパニット: テレビショッピング。司会者はスタジオにテロリストが襲撃されても、視聴者に商品の良さを売り込んだ伝説のお人らしい。なお、テロリストの首領が捕縛後。その商品を購入している辺り、テロリストにも影響を与えている……

一ノ瀬リッカ: 天然元未亡人かつバツイチな奥様。……ティロを花火と捉えますか(-_-;)

ソラの異変: ……全てにおいて劣り始めている。次回はそれが明らかになります


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