ノリで考えたら彼女が変な方向に進化しちゃった(笑)
「唐突だが、義妹という属性を知ってるだろうか。血の繋がりがない。別に結ばれても医学的に問題がないが、家族との間に生まれる禁断の愛のため、背徳感を感じさせてくれる。そう、ボクが言いたいことはこうだ。
――――もうヤッちまえよyou」
「するかァァァァァ!!」
翌日、お姉ちゃんにイイコトをされて、朝早く目覚めると金髪巨乳ポニテ美少女がキリトに迫って、顔を押さえて抵抗している光景が目に入った。
なんか、オレがまどかや千香にキスされることを阻止するかのようなことをキリトもしていた。
スタイルはキュッとしてボイーンとした美少女なのに、ひょっとこ顔にしてキリトに迫ってるその姿で、台無しである。
何事か聞くと、どうやら彼女はキリトの義妹らしい。名前はリーファ=キリタニ。
キリトと同じ剣士であり、刀を使っている。
そんなリーファさんがここにいる理由は大好きなお兄ちゃんの手伝い――という建前(本人暴露)のお嫁さんから寝取るぜ!と言った肉食系全開の欲望である。
この子はいったい何があってこうなったのだろうか。そう聞くと幼い頃のリーファは母親の知り合いのお姉さんに賜った英才教育で別の意味で進化しちゃったとか。
……なんでだろう。そのお姉さんを知ってる気がする……!!
「別に結ばれてもいいじゃない! 血縁的にモーマンタイだし!」
「いや俺、妻帯者! 明らかに浮気じゃんかこれ!」
「大丈夫! それそれでなんか燃えてくる!」
「お前はそんなキャラじゃないだろ!? てか、いい加減に諦めろよ!」
「諦めたら、そこで試合終了ですよ……?」
「いやもう試合終了してるから! 俺はゴールインしてるからね!?」
静かなキリト氏がこのままでツッコミキャラになるとは。というか、千香よ。なぜ写真を撮っている。
「キリト氏のお嫁さんにこれを渡して修羅場に持ち込む」
「鬼かお前は」
「じゃあ、私は噂を広めておかなくちゃ~♪」
「マミさんも乗らないの」
事態が治まったのは、衛が騒がしい朝のあいさつをしたときである。なぜあいつはあいさつをする度に、いつもポーズをするのだろうか。
町を出て再び森の中。しばらく歩き続けると草原へ出ることに成功した。
オレ達の旅は変わらず続く。まあ、さっさとキリトの奥さんのいる領地までいけば良い話だが、『全てを開く者』は知っている場所でなければランダムに訪れてしまう。
空中やら水中だったりするパターンは当然ある。というか高確率でそういう場所と繋いでしまうわけで。
『全てを開く者』のデメリットは命がけであることに変わりないのだ。
「というか、さっきからジロジロとなんだこの変態義妹は」
「へー。この人が父さんが言っていた死神さん? 普通だね」
「お前の父さんが何者か知らないんだけど」
「魔王。そして母さんのしもべ」
「お前の母さんが何者か知りたいんだけど!?」
魔王をしもべにする母上とはなんぞや。というか、キリト氏もガタガタ震えて何やら思い出している模様。
「あの笑顔でのアイアンクローは……!」と呟いてる辺り、キリトの母上の必殺技はアイアンクローだと思えた。
「んで、妹さんもついていくわけなの。危なっかしいこのクエストに」
「当然! お兄ちゃんの貞操をこの手にとるまで私は戦い続ける!」
「諦めて帰ってくれ。というか別の意味で俺が危なっかしい旅になるよね……」
疲れた顔で身体を沈み込むキリトに、はやてが肩を叩いて「どんまい」と慰めている。どうやらシンパシーを感じているようだ。
「みんな、あれを見て!!」
マミさんが指をさした方向に、驚きの存在がいた。そう、そのモンスターは首がなく、焼き色に染まったボディ。そして香ばしいにおいを辺りに散らしている――――
「焼き鳥が飛んでる!!」
「いや、なんで焼き鳥が生きとるねん!」
全くその通りだ。というか、羽毛はないのによく飛べてるよな。どんな仕組みだよオイ。
「あれは『数々の争いの末に焼き色となった七面鳥 バード太郎』というモンスターだ!」
「え、それが名前なん!? てか、ネーミングセンス無さすぎやん!!」
「そもそもなんで焼き鳥が飛んでるだよ!」
「名前を聞いてる通り、数々の争いの末に戦いそして人間の食料に成り果てる前に、怨念でモンスターとなった焼き鳥だ。食うか食われるかの世界に反逆して生まれたモンスターさ」
「いろんな意味でよーわからん!!」
全くその通りですはやてさん。
「そういえばあれってレジェンドクラスって言われてるモンスターだよね」
「ああ。たった一匹しかいない代わりに鬼強いモンスターだ。どうしようかリーファ」
「え、あれ強いの?」
信じられないと言った目で『バード太郎』を見ていると、首跡からどす黒い炎を吐き出してきた。それから全員退避することになった。
「にぎゃあァァァァァ! 焼き鳥の分際で黒炎吐きよったァァァァァ!?」
「おぉー。やっぱスゲーモンスターなんだぁ」
「てか、神威くん。なんでそんなにのんびりなん!? 焼き鳥やで。焼き鳥が炎を首から吐いたんやで!?」
「そんなもん受け入れられることができるだろ。オレの師匠曰く、『全てを受容しろ。……出ないとノエルである意味死ぬぞ。はぁ……』ってありがたーいお言葉を頂いてるから」
「師匠、めっちゃ疲れてるやん! てか、知り合いにもっと非常識がおった!」
「ヌハハハ、はやてよ! 我が友が非常識なのは当たり前だ!」
「って言ってる側から、なんで炎を素手で受け止めれるんねん!?」
衛が炎を右手で止めていた。見えない壁が彼の腕に生じているのか、炎がこちらに来ない。
「見よ! これぞ、なのはの『プロテクション』を学び、そして創造せし、魔法――――『マッスルシールド』なり!!」
「どんなシールドなん?」
「筋肉が多ければ多いほど防御力と範囲がスゴい」
「どんな仕組みやねん!!」
全くである。筋肉で防げるシールドって……。
そのうち魔法(物理)少女が登場したらどうしよう。
『グワ!? グワグワ!』
「え、何言ってるの?」
「ぬ? 『くっ!? 愚かなで生意気な人間共よ。焼き鳥なればいいものの!!』と言っておるな」
「なんで言葉わかんねん!」
「というか、元から焼き鳥のヤツが焼き鳥言うなよ」
と反論するとまた炎を吐き出した。しかし衛の鉄壁(意味深)の魔法により無傷。
マミさんがニコッと微笑むと、焼き鳥に向けてマスケット銃を発砲。焼き鳥の(香ばしい)翼を貫く。
「あ、落ちた」
「ならば我の全力全開の一撃をくらって、愚かな人間かどうか見極めるがよい!!」
衛が地を駆けていき、そして拳をつくって、踏み込む。
「『マッスルゥゥゥインパクトォォォォォ』!!」
衛の拳が焼き鳥の身体を打ち抜く。
……結論から言えば、かつて結界をぶち壊した強烈な一撃がまた進化していた。
たった一撃で焼き鳥の身体が鳥のミンチへと変わり、受け止めきれなかった拳の衝撃が、約十メートルくらいの範囲まで及び、草原を吹き飛ばした。
「ヌゥゥゥハァァァ……。我が筋肉に敵無し……!」
「最近、衛くんがノエルさん並みに手に負えなくなってるやけど……」
「……もう僕達には敵わないかも」
……はやて。アオ。
そんなのもう当たり前だからな……?
ちなみに焼き鳥の落としたアイテムは軟骨の唐揚げだった。
……おいしかったけど、なんで軟骨で唐揚げなの?
さて、草原を抜けてオレ達がたどり着いたのは、集落である。猫耳族の集落と呼ばれるところで、まあなんというか猫耳の人間がいるのだ。
……密かな夢である猫耳モフることが実現できるのかな。
「にしてもレジェンドクラスのモンスターをワンパンなんてスゴいね、お兄ちゃん」
「そういえば管理局には『鬼畜な悪魔』と『痴女の死神』と『筋肉拳王』がいたとか」
「どんな異名だよオイ」
つーか、フェイト。お前の異名が一番ひどい。
「さて、今日はここで宿をとろうか」
「賛成。つーか、なんか騒がしいんだけど。誰が」
「サンマは醤油だろ!? なんでわかんねーんだよ!」
「ポン酢に決まってるじゃない! あのさっぱり感がいいじゃない!!」
「あの、もう塩でいいじゃ」
「「シリカは黙ってて(ろ)」」
「ぐすん……いいもん。シノンちゃんと一緒に塩をかけてるもん」
「あ、ごめん。もう食べ終わってるから」
「がーん!!」
……なんか知ってる声が聞こえた。キリトも同じく「シリカにシノン……なんでお前がここに」と言っていた。知り合いのようだ。
シリカは茶髪の猫耳。シノンは水色の猫耳だ。
……猫耳族なのか?
「やんのか!?」
「上等! さやかちゃんの力を見せてやる!」
……杏子、さやか。ここでキャットファイトしないでくれ。後で合流するときが恥ずかしい……。
「猫だけに」
「お前は黙ってろ」
千香を小突いて、二人をとりあえず落ち着かせるために行動するのだった。
リーファ=キリタニ: キリトの義妹。なぜこうなったのは全てヤツ(変態)の仕業。……ソラの言う通り、その変態を知っている気がする
リーファの母親: 元聖女。名前はミランダ。おっとりしているように見えて、怒ると怖い奥さま。夫のデウスを尻に敷くお母様である
バード太郎: ネーミングセンスの壊滅さを定評にしたレジェンドクラスのモンスター。……そもそも既に食べ物。モデルはアニメ『人類は衰退しました』の最初に出てきた焼き鳥達。高熱の黒炎を吐いてくるため、危険と言えば危険
天道衛: 最近、バグキャラになっている筋肉戦士。ノエル並みに手に負えなくなっているらしい(諦め)
マッスルシールド: 筋肉が多ければ多いほど防御力があがる。……なにそれ(-_-;)
シリカ&シノン: 猫耳族。通称キャットシー……だっけ? 原作のアルブでは。