とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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うっかり、話を飛ばして投稿していました。すみませんm(__)m


第八十六話 彼女が残したもの

 

 

 春がまた訪れた。中学二年となったオレ達は桜並木の道を歩き、これまでのことを思い出していた。

 

 エピローグ的な話をすれば、ネオアルカディアは新たなエネルギー革命で、救われた。それにより、処分されるレプリロイドは救われ、レジスタンスの罪状はなかったことにされて、シエルは平和に過ごせるようになった。

 別れの際に、キアラに疑似リンカーコアの設計図と研究データのコピーを渡されており、帰還後、キアラはこの技術を使って不足している人材をある程度補充させるつもりらしい。

 まあ、おそらくしばらくは会えないみたいだが。

 

 記憶を取り戻したオレは、みんなに泣かれるわ抱きつかれるわで、とにかくムチャクチャにされた。どさくさに紛れて千香が衣服に手にかけようとしていたが、吊るすことになった。

 

 ……それから師匠に、ノエルの事件と遺言を伝えた。

 

 「目の前で死んだのか」と聞かれて、首を振ると、師匠は笑って言った。

 

「アイツは死んでねーよ。アイツが死ぬはずがない。」

「……なんでそう言えるんだ」

「アイツはいつだって俺より前にいるからさ。しぶとく、惨めに、おもしろおかしく生きて、それで最後には笑っていなくなる。そんな女なんだよ」

 

 ……師匠はそう言って、翠屋から出ていった。悲しそうに見えたのは、気のせいじゃないかもしれない。

 

 古宮ことアオはなんと高町家に居候することになった。当初、士郎さんや恭也さんに警戒されたり、模擬戦を申し込まれたりしていたなぁ。

 それでも彼が受け入れられたのは、彼の人柄によるものに違いない。

 ちなみに、驚いたことに年齢はオレ達より二歳上だったことが判明した。歳下に見えてしまうのは、童顔のせいだと落ち込んでいた。

 

 まあ、高町が管理局に入隊すれば、彼はついていくつもりと言っていた。理由を聞けば「……ナノハサマノミココロノママニ」と死んだ目で言っていたから、きっと魔女モードのなのはが何かしたに違いない。

 

 ……何をしたんだお前は。

 

 

 とまあ、エピローグ的な話はこれで以上だ。

 とにかく、オレの記憶喪失の物語は大団円なハッピーエンドでは終わらなかったが、いつもの日常に戻ったことには変わりない。

 

 ……ノエルはいなくなって、オレは記憶を取り戻した。

 

 ほんのりビターな結末になったけど、オレはいつかきっとノエルにまた会えると思っている。あの変態は師匠の言う通り、しぶとく生きて他人に迷惑かけていくオレの変態(ははおや)なんだ。

 だから、心配する必要はない。いつかまた会えると信じているから。

 

 話は変わるが寿命の話はまだまどか達には話していない。信憑性がまだないと言えるし、何より『期限までに全力で楽しむ心』というノエルの言葉を貫きたいから。

 

 あと何年かしたら症状は出るかもしれない。

 それでもオレは、全力で、楽しんで生きていくよ……ノエル。

 

 

 そう思いながら、オレは手を振るまどか達の元へ向かうのだった。

 

 

 

(??side)

 

 

 ネオアルカディアの事件から一ヶ月後の話――――

 

 

 悪魔は疲労で、椅子に腰かけた。弱体化したノエルと言っても、自分を追い詰めたことが予想外だった。

 やはり彼女は規格外だったということだろう。

 

「あの変態(ばけもの)……! 最後の最後でこの私の力を!」

「だ、大丈夫?」

「えぇ。まさか、悪魔の力を弱体化させるなんて意外だったわ」

 

 もっとも空間転移や魔女を生み出す力は失っていない。『叛逆』の力が使えなくなったのは痛いが、邪魔で厄介な相手がいなくなったことで彼女の溜飲はある程度下がっていた。

 

(……これであの変態はいなくなった。けど……)

 

 最後の彼女は笑って串刺しになって消えた。死体が残るはずなのだが、彼女はそれを残さず消えた。人間ではなかったのかと疑問に感じる悪魔だが、すぐに思考を切り替える。

 

「まあいいわ。とにかく、当面は私自身がソラと接触しないわ」

「え、どうしてですか?」

「『叛逆』の力で彼を無力化させていただくつもりだったのが、あの変態でおじゃんよ。それに記憶喪失になった彼と接触しようとしたら、あの変態と遭遇して…………」

 

 悪魔が顔を俯かせて、怒気を孕ませる。マドカはオロオロして主人である悪魔をどう宥めようと考えるが思い付かないようだ。

 涙目になったところで、悪魔に声をかける少女達が現れる。

 

「オイオイ。随分、苛立っているようだなオイ」

「相変わらずよねアンタは」

 

 ソラの記憶によって作られた使い魔の二人だ。

 ダークブルーとスカーレッドのヘアカラーで、一人は短髪。もう一人はポニーで髪を結んでいる。

 年齢は中学二年くらいだろう。肌の色が青白く、人間らしくない皮膚をしている。

 

「ふふ、悪魔ちゃんがこんなになるなんてさすがにびっくりね」

「豆腐メンタルは黙って死になさい」

「ひどい!」

 

 がーんとショックを受けて崩れ落ちる暗い黄色のヘアカラーの少女。そんな彼女に終始無言な黒髪褐色の眼鏡の少女が肩を叩く。

 そう、悪魔を含めたこの五人は、誰かに似ていた。

 肌の色が褐色だったり、真っ白だったり、青白かったりするが、彼女達はソラの記憶によって作られた使い魔だ。

 

 『カナメマドカ』。

 『ミキサヤカ』。

 『サクラキョウコ』。

 『トモエマミ』。

 『アケミホムラ』。

 

 それぞれ名は悪魔によって名付けられた使い魔(コピー)だった。

 

「そういえばお前って名前あったっけ?」

 

 『サクラキョウコ』はふと、疑問に思ったことを口に出すと、クスリと彼女は笑った。

 

「当たり前よ。悪魔なんてただの種族名よ。そうね。名乗るとしたら、」

 

 

 

 

 

 

 

――――『一ノ瀬シイ』、と彼女は答える。

 

 『一ノ瀬』。それはソラの前世の苗字。

 『前世』の因縁が、彼と巡り会うの遠い話ではなかった……。

 




使い魔達: ソラの記憶によって作られた人外達。なぜ常識的な思考

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