話の流れ的に限界がきたのかも……。
ではどうぞ!
目を開けるとオレは仰向けになっていた。
女神から聞かされた話を聞いて、気分が最悪だが、オレは切り替えて、冷静に分析する。
『六年後、神威ソラは死ぬ』
彼女の予知は夢から得たものらしい。よって根拠がないので信憑性が薄いと見てもいい。
「寿命……か」
人はいつかは死ぬ。そしていつかは今じゃない……。
誰かが言っていた言葉だ。
考えても仕方がない。病で死なないと知ってよかったということでいいじゃないか。
それに猶予は六年ある。それまでに死因を探るか、楽しく生きていけばいい。
「そうだよねー。タイムリミットを気にするより、おもしろおかしく生きていけばいいよねぇ~♪」
「……ノエル。お前、女神の予知を知っていたのか?」
「うん。そして、彼女の予知は当たっているよ。夢から予知なんて、何億の確率であっても当たるのは難しい。普段の彼女からする夢から得た予知も、絶対に外れる――――そういう認識なんだけどねぇ~」
そうか。その未来は確定しているんだな。そして、わかったことがある。
「ノエル、お前――――」と続けて言う。
「――――
「…………」
「根拠はお前の行動はいつも先回りしている感がある。しかも予測を大きく越える範疇で、だ。相手からすれば、お前の行動はいつも予想外だが、お前自身にとって予想通りということだろ」
「…………」
ノエルは答えなかった。なぜノエルが『予知』が使えるのかは気になるが、大まかな予想では『円環の理』という概念で証明される。
『鹿目まどか』の願いは過去も、今も、未来も。全ての時間軸から『魔女』を無くした。それは過去を見る『既知』や未来を見る『予知』をしていたということになる。
つまり、ノエルは過去も、未来も
ノエルはニコニコしながら、答える。
「そうだねー。ワタシは『知っている』よん♪」
「『全て』か?」
「yes! ワタシという存在は『概念』でもあり『人間』でもあり『神器』でもあるんだよ。まあ、要約すれば『第三者』という感じかなぁ」
ノエルが言うのは、『自分』や『相手』ではなく『傍観者』。
例えばこの世界を物語として見る。
『神威ソラ』という主人公に、様々な登場人物が出てくる。彼の視点から物語が展開されたりするが、ノエルの場合は『個人』ではなく『読者』から見る視点だ。『第三者』=『読者』、そうとらえてもいい。
つまり、ノエルが『既知』と『予知』を行う場合、それは物語のページを捲ってあらかじめ『その出来事』を『知っている』ということだ。
「つまり、お前はもう何百、何億の年ことも知っているのか?」
「まーね。まぁ、『概念』となれば未来や過去も既に『知っている』ことになるんだよね。だから、ワタシは『おもしろおかしく』するのは在り来たりで、つまんないから『台無し』にしたくなるのさぁー♪」
ここがこうなる。何度も見たから知っている――――だから、つまんない。ノエルが言っていることは『読者』の感想だ。
それもそうだ。何度も同じ光景を見ていたら飽きてくる。ノエルが人間らしいと感じるのは、こういうところがあるからかもしれない。
「『二次創作』ってあるじゃん。正史に介入して自分の歴史にしちゃうって創作物。ワタシがしているのはそういうことさ。
――――どこに介入すれば悲劇は喜劇に変わるのか。
――――どこに介入すれば喜劇が悲劇に変わるのか。
要は干渉することでこの世界を楽しませている――――そういうことさー♪」
前提からして何もかもめちゃくちゃだ。『正史』――――つまり、本来そうなるはずだった歴史を知っている。
仮に、彼女が聖人君子ならば、悲劇を喜劇にしてくれる。逆に言えば、悲劇にして不幸を楽しませるということでもある。
この女は面白いと思う結末へ導く。
正しい歴史を『台無し』にしていく。
「『抑止の存在』も黙っていないけど、ワタシがその理も『ねじ曲げて』ある程度許してくれるようになったよん♪」
「『抑止』と……」
「あ、でも抑止さんってある程度感情あるみたいだよ。『もうやだこの変態』って涙を流していたし」
「そんな抑止初めてなんだけど!?」
スゲー。この女はある意味化け物じゃん。そう思っていると、もう一人のノエルと、ほむらとまどか、キアラ達がフッと現れる。
彼女達はノエルに武器を向けていた。
「ちょ、どうしたんだよ」
「どうもこうもないわ。もういい加減にしてちょうだい。あんな空間に閉じ込められて堪忍袋がプッツンよ」
「どんな空間に閉じ込められたんだよ」
「ギャル語しかない世界」
「それは腹立つわ」
別にギャルに対して非難はしないが、あの言葉はよくわかんない。というか、なんでわざわざ肌を茶色にするんだよ。
「ヌフフフ、いいねいいね。このワタシに挑むつもり? それは楽しみだよ。ホント――――
――――
ゾッと背筋が凍る感じがした。その刹那、キアラは上に手を向けると、ビルがこちらに落下していた。オレはすぐにシエルをドコでもドアで突き飛ばし、どこかへ避難させ、『支配』でそれを受け止めようとしていた。
キアラの足場がビルの重さでクレーターを作り出した。彼女の腕に亀裂が起き、から血が流れ始めていた。
「ぐ、ぅ……!」
「キアラ、投げ捨てろ!」
「簡単に、言う、なぁ! ビルの重さ……そのままなん、だぞ!」
キアラの言う通りだ。これを投げ捨てろというのは、不可能。なら、粉々するまで!
「まどか! 破壊できるか?」
「今やろうとしてる!」
まどかが地面から魔法陣を浮かばせながら弓を引いていた。そしてピンクの光が最大に高まった直後、発射された。
ビルを一閃するような射線を描き、大きな物体を破壊した。粉々と言っても大きな瓦礫となって今度は降り注ぐ。オレ達は手を繋ぎ、ほむらの時間停止で今すぐ安全地帯へ向かう。
「逃げちゃダーメ❤」
「がはっ」
キリトが蹴り飛ばされ、時間停止の世界に取り込まれた!
オレはキアラの手をほむらに繋がせ、ノエルに向かって斬り込む。振り抜かれた一閃で呆気なくノエルは真っ二つに――――いや、なんで真っ二つになる!?
『全てを開く者』は概念攻撃だぞ。人を傷つけるような真っ二つにできないはずだ!
その違和感の答えを出すかのように、ノエルだったものがペラペラになる。紙だ。オレが斬ったのはノエルを写した変顔ポスターだ!
オレが『ノエル』と認識していたことを錯覚していた!
「そりまー」
「うっ!」
「くっ!」
「きゃあ!」
気の抜けそうな掛け声で、ノエルは三人の少女をコマのように回した蹴りで、飛ばして、ほむらの時間停止が解除される。再び瓦礫の雨が動き始めたのだ。
「全員その場で対応! 背後は警戒!」
キアラの言葉に従ってそれぞれ、降り注ぐ瓦礫を破壊しながら合流しようと足を進める。
オレは内心、舌打ちした。ノエルは考えてないようでしっかり策を働かせている。
瓦礫の雨のせいで死角ができやすくなっている。おまけにこの瓦礫の雨が必ずしも正しい視界とは言えない。さっきのように『錯覚』で、遠近が間違えてることもありえる。
そうしたら、瓦礫によって下敷きだ。そうならないためにも、遠距離から破壊していくしかない。
オレとキリトは近距離の武器しかないため、魔法で瓦礫を破壊していた。そうしていくうちに、目の前にノエルが現れる。
――――いや、全員の目の前にノエルが現れた!
ありえない。こんなことが!
さっきの錯覚? いや幻術?
ノエルが複数いることがオレ達は信じられず、驚愕で足を止めてしまった。
「ヌフフフ……」
「信じられない?」
「まあそれが『普通』さ」
「健全な反応さ」
四人のノエルは「ヌフフフ」と嗤っていた。
とても不気味に、妖しく、艶やかに。
「……忘れていた」
そうだ。ノエルは常識が通用しない。
『究極生命体』。『変態の中の変態』。そして――――
「『最凶にして最狂』――――あらゆる理をぶち壊す女だったよお前は!」
ノエルが複数になったのは『分身』――――ではなく、既にノエルが複数いたと、ねじ曲げられた理になったということだ。
オレ達が戦おうとしていたのは、型破りにして掟やぶり。
全てのルールを自分勝手に違反してくる『抑止の存在』の天敵だった。
「「「「さあ、遊ぼうよ! ボク/ワタシと楽しい愉しい
抑止さん: 感想欄に住んでる苦労人。だいたい変態やきちがい達の被害にあってます(笑)
ギャル語しかない世界: 男女共にギャル語しかしゃべらない世界。……だんだん腹が立ってくるのはまともな話をしないから。ちなみにまどかの弓で次元の穴を開けるくらい住民もろとも滅ぼした
ノエル: 最凶の裏ボス。分身ではなく、全てが『本体』。よって一人一人が予測不能な行動に出てくる。やはり彼女の存在は規格外である
ノエルの神器: 既知予知ができる。おそろしいことに世界を一つの物語として捉えることができ、これから起きること全てを知ってしまう。なので、もう一つの能力である理のねじ曲げを行うことでルール無用の行いができてしまう……