とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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知ってるか……この作品でまともなキャラは杏子とはやてだけなんだぜ……?

そして祝☆400のお気に入り!
こんな駄目な文才ながらも、読んでいただいて本当に皆様に感謝しています!

ではどうぞ!


第八十二話 フェイト覚醒! (ただし、まともとは限らない)

 

(??side)

 

 

 神威ソラは暗闇のなかにいた。意識を失い、気持ち悪い気分だった身体だが、今度はノイズによる雑音がひどい。

 目を開けたときは最悪な気分だ。ここがどこなのかわからないし、なぜここにいるのかもわからない。

 

 ただ、暗闇のなかにいた。それだけしかわからない。

 

(ノエルのヤツ……何しやがった?)

 

 忌々しいほど周りに迷惑をかけるあの変態だが、自分のような知り合いには何か意味があるようなことをする。

 例えば、とある城に攻め入ろうとすればノエルは前触れもなく、侵軍を妨害した。裏切りと考えられたが、後になってわかったことだが、その城には大量虐殺が可能なトラップがしかけられていた。

 

 まさか城そのものがトラップにされてるとは誰も思わなかった。なぜノエルがそのことを知っていたかと言うと彼女は、「ひ み つ ❤」と腹立たしいくらいの笑顔で答えてくれた。

 

 このようにノエルは何かを予知して行動していたのじゃないかとソラは考えている。

 

「……ここはどこだよ」

「お前さんの夢の中さ」

 

 女性の声が聞こえ、闇の世界が真っ白な空間へ変貌する。声がする方向へ振り返ると、そこには神々しさを感じさせる女性がいた。

 

 ソラが契約した女神――――神木ユグドラシルが目の前にいた。

 

「夢の中?」

「夢さ。ここはお前さんが失ったことで暗闇になっていた。ようやく明るくなって有難い有難い」

 

 やれやれと言いたげなユグドラシルに、ソラは今までの記憶を整理する。

 

 

 鹿目まどか達と出会い。

 戦争で絶望を知って、魔王を倒した。

 それから暁美ほむらが狂い、それを止めるために戦い死んだ。

 

 

――――これが前世の記憶

 

 辛く悲しいものばかりだったが、まどかやほむら、みんなと出会って、優しさに触れて帰る場所だって思えた。

 

 それから下級神によって転生させられ、前世の記憶を忘れ、まどか達と再会して思い出した。

 

 

 プレシアの事件。

 闇の書の事件。

 天神小学校の事件。

 

 それから――――

 

「あれ?」

 

 ソラは思い出せなかった。どうして自分は眠っていたのか、いつ頃に記憶を奪われたのか。

 

 ネオアルカディアに来るまで自分は不貞腐れていたのは覚えていたが、やはり自分が記憶を無くした軌跡を覚えていなかった。

 

「……強く絶望した記憶をとられたままだね」

「どういうことだ」

「やっこさんの狙いは端からお前さんの絶望した記憶さ」

 

 なぜそんなものを、とソラは考える。

 自分が欲しければ、魂や身体を求めればいい。

 

 しかし悪魔は『記憶』のみを求めた。それがわからない。そして『絶望の記憶』だけは手離さなかったのが気になった。

 

「ノエルの馬鹿のおかげとは言え、鹿目達を思い出せた。それでいいんじゃないのかい?」

「確かにそうだが、釈然としない」

「考えるだけ無駄さ。まあ、それよりも悪いニュースだ」

 

 悪いニュース。何か問題があったのだろうかとソラは耳を傾けると驚くことを言われた。

 

 

 

「あんたの寿命……後、六年だよ」

「………………は?」

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 フェイトとなのはは、斬りかかるアオの剣を回避する。アオは近距離戦(クロスレンジ)を得意とする。よって、距離さえあければ驚異ではないが、悪いことにフェイト達が戦っているのは広々とした実験室だ。

 

 別に問題ない。そう言い切れると誰もが思うが、考えてほしい。

 フェイトとなのはは、空戦を得意とし、遠距離戦(ロングレンジ)もまた空から行っている。

 

 つまり、部屋という空間にいるため空には飛べない上に距離もなかなか開くことができない。

 

 陸戦には問題はないが、フェイト達はまだ経験が浅い。その上、相手は空より陸を得意とする剣士だ。

 ステージからして二人が不利な状況なのだ。

 

 それでも彼女達が躱すことができたのは、シグナムや士郎、そして雷斗との模擬戦のおかげだ。

 

(雷斗くんやなのはのお父さんに比べると、斬撃はまだ遅い。けど、シグナムよりやや早い……!)

(これが、『救世主』と呼ばれた男の子……!)

 

 数々の争いを治め、数々の人を救ってきた理想のために戦ってきた戦士。

 味方だったらどれだけ安心できたことだろうか。フェイト達には逆に不安と畏怖しか感じられない。

 

 なのはがスフィアの魔弾を射出。アオは全て最低限に回避し、なのはの懐に飛び込んだ。

 

「ヤバッ!」

 

 彼の間合いだ。直撃は避けられない。

 なのはに斬撃が放とうしたとき、アオの『神器』に黄色に輝く鎖が絡み付き、彼の斬撃を妨害した。

 

「なのはぁ!!」

「よしきた! くらえェェェェェ!」

 

 『神器』を鎖のバインドでいつまでも止めることはできないが、一瞬……いや、約五秒は止めることはできる。

 そのインターバルがなのはの砲撃チャージタイムだ。完了した砲撃魔法がアオを至近距離から呑み込んだ。

 

 呑み込まれたアオは天井を突き破る――――ことはなく、砲撃の射線から逃げ延びて、地面を数回バウンドする。なのははそれに対して苦虫をかんだ思いになった。

 

「……非殺傷設定のせいであまりダメージ受けてないよね」

「確かに。まさか人の命を守る設定が、邪魔になるときが来るなんて……」

 

 非殺傷設定。魔導師が人を殺さないようにするという設定なのは誰もがご存じなことだろう。

 その設定があるおかげで、魔法は今日も不殺を貫いている。

 

 しかし、『神器使い』――――雷斗やソラのような化け物染みた精神力と耐久力の持ち主の前には無意味だ。

 『死ぬほど痛い』魔法を受けても、すぐに立ち上がってくる。おまけに何度もやっても黒い生物の生命力クラスの精神力なので、向かってくる。

 

 よって、彼らを倒せるのは『殺傷設定』した魔法なのだ。それならば簡単に消し炭にできるのだが、フェイトやなのは達はそう易々と殺人犯になりたくはない。

 甘い考えかもしれないが、彼女達はまだまだ子どもで、命の重さを知っている女の子なのだ。ゆえに、問答無用に『さっさと殺す』という考えは容認できない。

 

「何回殺れば倒れるのかな」

「……なのは。ちょっと言葉が」

「あ、ごめん。『憑依召喚』の代償かな? あれ、使うとその人に染まりやすいからなぁ」

 

 憑依召喚の代償で、人格が抜けきれないこともある。フェイトにとってそれは初耳だが、今はその『憑依召喚』できるか聞きたい。

 

「……もう一度できる?」

「難しいね。魔力や体力を大量に消費するし、何より『ベルンさん』を喚ぶと、アオくんが剥製になるよ。……まぁ、見てみたいけどねぇ。クケケケケ」

「なのは、なのは。染まってる染まってる!」

 

 邪悪な笑みを浮かべる親友が遥か遠いところに行きそうなところを身体を揺すって正気に戻す。

 

 どちらにせよ。なのはの強化は頼れない。

 フェイトは心の中である決意をする。

 

(仕方ないよね……。こうなったら、私も覚悟を決めなきゃ!)

 

 あの雷斗も膝につかせた(・・・・・)切り札をフェイトを使う覚悟を決める。この覚悟を決めればもう自分は普通に戻れないかもしれない。それほどの変化を彼女を見せるつもりなのだ。

 

「『バルディッシュ』、モード――――『ボルテニック』」

 

 紡ぎだされたキーワードにより『バルディッシュ』は是と答えて、彼女の服装が変わる。

 際どい水着のようなモードから、白い祭儀礼のマントと普段のバリアジャケットと言った衣装だ。バルディッシュは戦斧の状態になっている。

 

 太剣のスタイルに比べれば、健全である。

 

「『ボルテニックモード』って、あんまり普段と変わらないんじゃ――」

「あ、なのは! 触れちゃダメ!」

 

 なのはがフェイトに触れるとバチッと静電気が起きて、落下して思わず悶絶していた。フェイトは「やっちゃった」と言った感じで、説明する。

 

「このスタイルは全身に電流が流れているんだよ。だから不用意に触れたら危ないよ」

「……こ、これがリアル『アタイに触れたら火傷するぜ』なの」

「火傷じゃなくて感電死するから」

「もっと危ないよ!?」

 

 「冗談だよ」と舌を出して、悪戯っ子な笑みを浮かべる。『非殺傷設定』のため、死ぬことはないが『死ぬほど痛い』に『死ぬほど痺れる』というオプションがついてる。

 

 フェイトとなのはがそんなやり取りをしていると、アオの堪えが切れたのか斬り込みにかかってきた。

 フェイトはマントを盾のようにして、斬撃とぶつかるとアオの斬撃が弾かれた。

 

「!?」

「このマントは磁力の斥力がかかってるバリアジャケットの一部だよ!」

 

 「加えて」と続けて言って、フェイトは手からボールサイズの電気の弾を撃ち込む。直撃したアオは光始め、そのまま実験機材に突っ込んだ。

 

「『引力の力』は私には使える」

 

 磁力の力。金属という物質が近くいればいるほど、この力は真に発揮する。

 なのはは勝利を予感し、ガッツポーズをとって視線をフェイトに向ける。しかしフェイトは首を振って、否定した。

 

 ガチャリとアオが『神器』を自身に射し込み、身体にあった磁力の力を消した。

 

「……『全てを開く者』の前では、状態異常は無意味だよ」

「えぇー。せっかく無力化したのにぃ!」

「大丈夫。まだ私には手札があるから!」

 

 今度は視認できるほど身体に紫電を帯びるフェイト。アオは問答無用に斬りかかり、フェイトはその白い剣線を回避する。

 次にきた拳に、彼女は受け止め、電撃を流すとアオは飛び退いた。いくら『救世主』とは言え、人間だ。

 電撃をくらえばひとたまりもない。

 

「いくよ! 『バルディッシュ』!」

『Yes sir 』

 

 バルディッシュをバトンのように回してから大振りに構えて、フェイトの身体が電撃により金色に輝く。そして、その電撃がバルディッシュへ収束され、大きな大きなマサカリヘ変貌した。

 

「くらえ。五木雷斗、直伝――――『デビルキラー』!!」

 

 遠心力を利用した大きな斬撃を飛ばしてアオにぶつけてくる。

 その斬撃が、アオの『神器』とぶつかる。アオの『全てを開く者』に前では、『構成された物質』を使った大魔法や必殺奥義は『無効』にできる。

 フェイトの必殺奥義も、当然無効化される。しかし、『全てを開く者』のデメリットは『燃費の悪さ』――――つまり、どんな大きな魔法や小さな魔法であっても『平等』に大量の魔力を消費する。

 

 今のアオはフェイトとなのはの魔法によって魔力が限界に近づいていた。よってフェイトの奥義で、彼の身体がフラフラと揺れていた。

 

 ここで疑問に感じるのは、なぜフェイトはわざわざ大きな奥義を使ってきたのだろうか。答えは簡単。

 

 

――――大きな電撃であればあるほど、その閃光は眩い

 

 

「目眩まし、成功!」

 

 フェイトはアオの背後をとり、拳を構えていた。あとはぶつけるだけ、フェイトの拳はアオをとらえる。

 電撃を込めた強烈な一撃だ。これで終わり――――と思い気や、アオはフェイトにカウンターをぶつける。

 

 肺から空気を出され、壁に叩きつけられる。フェイトの身体がここで限界にきていた。

 

(あ……そっか。『ボルテニック』は魔力を消費しやすかったんだ……)

 

 早さを追求することで装甲板の面積を薄くするように、フェイトのこのスタイルは常時魔力が『全身』へ流れている。常時の電撃の肉体強化のおかげでソニックモードと同じような動きができた。

 しかしその代償にフェイトの身体はしばらく筋力を失う。電撃で強化したことにより、自身の身体もマヒするのだ。

 

(どうしよう……このままじゃ。私……)

 

 スカートがめくり上がっていることに気にせず、ただ俯いたままのアオが近づく姿をじっととらえていた。

 ごめん、みんなと目を閉じて覚悟を決める。

 

 

 アオはフェイトを斬ろう――――としなかった。

 いや斬れなかったと、なのはは見た。そして彼はどちらかと言えば、フルフル震えて何かに耐えていた。

 

 そして、俯いていた彼は――――ツッコむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで履いてないの!?」

 

 

 …………………………。沈黙が流れる。

 フェイトはスカートの中身のことを言われて、カァッと紅くする。

 そう、フェイトは『履いていなかった』。『履いていないのだ』。

 

 ……何を、と聞かれてもこれはどうしても察してほしい。

 

 アオはフェイトの変態さにさらにツッコむ。

 

「なんでノーパンなの!? スカートだから一番ヤバいじゃないか!」

「え、だってこうした方がスースーして気持ちいいし、プレシア母さんも寝るときも裸で寝ていたよ」

「寝るのはいいよ!? でも路上で下着を着けないのはどうよ!? 新手の露出狂か君は!」

「う、うーん。なんでそう言われるのかわからないなぁ。 というか、千香がこうした方がより早く動けるって言ってたよ?」

「気づいてほしかった! その子も変態だってことを!」

 

 ……なお、『ボルテニック』に至ってから彼女は早さが少し遅くなったことに対して落ち込んでいたときに、千香のアドバイスで解決した。

 

 『脱げば早くなるぜガール!』とサムアップされ、雷斗の稽古で実戦してみた。スゴく早くなった。

 そして雷斗に膝をつかせた。

 

 フェイトの図式に『脱げば脱ぐほど早くなる』。『下着をつけなればより早くなる』という謎の公式ができた。

 

 科学的根拠はないが、これは心理的な面に関わっていたりする。別に脱いだところで早くはならないが、彼女の心理的な作用によってより早く感じたのだろう。

 

 そして雷斗が膝についたのは圧倒したのではなく、「どうしてこうなった」という哀愁である。……ここに変態化が感染したことに愕然としていた。

 

「だから私は宣言するよ――――『パンツ はかない』!!」

「履けよ。着けろよ!」

「ちなみに異性に見られたとき、ちょっとスッとして気持ちよかった……。この気持ちなんだろう……?」

「露出狂の気持ちだろォォォォォ!!」

 

 脱ぎ魔が露出狂に進化した。立会人となってしまったアオは愕然として膝についた。

 これにより、フェイトは勝負に負けて、何かに勝った。いや、ホント何に勝ったのだろうか……。

 

「まあまあ、アオくん。そんなことよりこっち向いてよ」

「ん? …………え?」

 

 振り向いたアオに待っていたのはレイジングハートを構えたなのはだ。彼女は青筋を立てて微笑んでいた。

 

「今までやってくれた分のお返しだよ」

「ちょ、まっ、」

「にぱー☆」

 

 至近距離から砲撃を浴びて、アオの断末魔が部屋に響く。

 フェイトはそんなアオを見ながら、

 

 

 

「……うん。とりあえず、私のアレを見た責任をとらせよう。やったね。義母さん、お婿(えもの)さんゲットできそう!」

 

 …………という恐ろしいことを言ってた。

 




ソラの寿命: なぜ短いのか後々わかります

高町なのは: ベルンさんに染まりかけているため、躊躇なく恐ろしいことする女の子に……

フェイト・T・テスタロッサ:

まともな女の子だと思った? 残念。天然の変態でした! ちなみにノーパンキャラがフェイトになったのは元から脱ぎ魔だったからである

ボルテニックモード: 雷斗の神器をモデルにしたスタイル。祭儀礼用のマントは手足のように動かすことができ、シールドがなくても斥力であらゆる攻撃を防げるというチート使用。磁力と電撃を備えたスタイルである。なお、燃費がとても悪いため長期戦には向いていない。……ちなみにこれを思い付いたのは『金色のなんちゃら』という漫画だったとか

デビルキラー: 悪魔殺し。モデルは鎌職人伝統の大技から。魔女狩りってかっこいいよね(笑)

古宮アオ: フェイトのノーパンキャラ化にまともに反応した男の子。なお、これを気に責任を追求されて大変なことになったらしい(笑)

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