「……もうやだ。なんでオレがこんな目に合うの? 神様はどんだけオレに試練を与えるの」
「……ねぇ。ソラが壊れてるんだけど、いいの?」
「私は一向に構わん」
「なのは、ホントに変わったね……」
フンスッと鼻で息を吐く高町にフェイトは嘆息を吐いた。
豹変した彼女のファーストコンタクトに「なのはが不良に!?」と大変狼狽したが、なんやかんやで受け入れた。
……いや諦めたのだろうなぁ。高町なのはは元からこういう人なんだって受け入れたんだろうな。
それはさておき、オレは縛られた状態でキアラ達はレジスタンスのベースコンテナに招待された。
アオの背中に「にぱー☆」とニコニコした高町がいたので、冷や汗と強ばった顔が生じていた。
……高町桃子の娘だけあるわ、この子。
案内し終えると、高町は元の高町に戻った。それにホッとしているとフェイトと騒ぎだした。
「スゴいよなのは! まるで地球防衛軍の基地みたいだよ!」
「確かに格好がそれっぽいよなぁ……。てか、フェイト。お前、ウルトラマン見ているの?」
「ティガの映画は泣けた」
あー……誰にでも光になれるアレね。逆に言えば誰にでも闇に染まれるってことになるけど。
雑談しているうちにシエルさんの工房までたどり着いた。扉が開くとそこにはコアらしき球体が数々あった。
そしてその中心には紫に輝くコアがシリンダーの中に浮いていた。
「あ。アオくん、おかえり」
「ただいま帰りました。……すみません。管理局の皆様を招待しちゃって」
「仕方ないよ。見つかるのも時間の問題だったし、それにアオくんが信頼できる人だから大丈夫だよ」
うわ……とてもいい人だ。
ホントこの人見ていると心が癒されるのはなぜだろうか……。
「くっ、ほむらちゃん。新たなライバルだよ! ヒロインだよ!」
「落ち着きなさいまどか。彼女はあのアオという少年のヒロインよ。ソラのヒロインにはならないわ」
「そっか! じゃあ、今夜計画していた『ソラくん貞操奪取プロジェクト』に支障はないんだね!!」
「そうよ。あと厳密には『ソラペット化計画』よ。貞操はついでよ、ついで」
「なんつーことプロジェクトしてるんだお前ら」
油断も隙もない。今夜のトラップは外せないなこれ。
てか、シエルに癒される理由って、ヒロインが性的にドS的に歪んでるだからではないだろうか……。
そう思う今日この頃である。
それからキアラはシエルに今後どうするか聞くと、彼女は現状をどうにかしたいと、ネオアルカディアの事情を説明した。まあ、今のネオアルカディアはエネルギー問題に直面しているし、その問題を解決しようとしたら上層部に狙われたわけだしな。
……かく言うオレもまだ管理局を信頼してないが。
「……つまりネオアルカディアの上層部をどうにかしたい。そういうことなのかね?」
「はい」
「ふむ。ではわたし達が得られるメリットとは? なければわたしとしては協力したくない」
キアラの言葉に高町とフェイトはムッした表情になる。一方で、古宮は冷静に思案していた。『名前を忘れた男』と比べて現実を見た上で、理想を目指そうとしている。
『ありがとう』と言われるだけの感謝の言葉だけでは骨折り損になる。当然、キアラの部下達の間に不満が生まれる。
それは古宮としても良きとしない。この男は相手にも利益があるようにしたいと考える。
「……シエルさん」
「わかってる。私が提供するとすれば、疑似リンカーコアしかない」
キアラはニッと笑みを浮かべる。狙いはそれか。
まあ、確かに人工的にリンカーコアがあれば簡単に魔法が使える衛兵の完成だ。兵力増強と考えれば、彼女のメリットは大きい。
「では協力しよう。まあ、管理外世界とは言え、あの老人を逮捕したいがね。わたしのソラに手を出したからな」
「いつからお前のものになった」
「そうだよ! ソラくんは私達の嫁だよ!」
「そっちも違う」
朱美妹のスタンダードさに嘆息が止まらない。
フェイトが何やらキョロキョロし始める。「何か」聞こえると呟いている。
何事かと高町が聞こうとしていると地鳴りが起きた。
全員、膝につくほどの揺れだ。
「な、何!?」
『大変です! ネオアルカディアの軍勢がこちらに――――ぎゃっ!』
通信越しから銃声と破壊音が聞こえる。戦闘が起きてるのか……!
地鳴りが治まるとオレと古宮が先行して廊下を走り回る。
すると青い機械兵が基地にいたレプリロイド達を破壊していた。阿鼻叫喚の絵図だ。
悲鳴と断末魔のメロディーに、シエルは膝についた。
「やめて、やめてよォォォォォ!!」
耳を塞いで彼女は涙を流す。それに応えたのは古宮とキリトだった。
その顔は修羅のごとく目を開いていた。古宮でさえ、優しさを感じさせないくらいの怒りを見せていた。
機械兵の一人を蹴りで首をもぎ取り、『神器』で真っ二つにする。
「てめぇら……!」
「よくも……!」
「「人の仲間に手を出したなァァァァァ!!」」
ぶちギレた二人の剣戟。まさに台風のごとく、機械兵をバラバラに引き裂き、部品や液体を飛び散らした。
「なぜ、ここにネオアルカディアが……」
「ッ……高町なのは。じっとしていろ!」
高町がキアラの言葉に従うと、彼女のリボンから何かが飛び去ろうとしたところをキアラの『支配』で動きが止められた。
これは、発信器……?
「やられた。まさか、シャドーという輩は死の間際にこれをつけたのか……!」
「そんな、じゃあ……私……が」
「なのはのせいじゃないよ! 悪いのは襲撃している敵だから!」
「あ、じゃあ気にしなくていいんだね。よかった~。これなら遠慮なくぶっ飛ばせるね!」
「あっるぇー!?」
……スゲー。オレ以上に切り替え早っ。つーか、この子元からこうだったのだろうか。(※だいたい雷斗のせい)
そんなとき、オレ達の天井から瓦礫が降り注ぐ。
キアラは『支配』で動けないシエルと高町を引き寄せ、瓦礫から回避。天井から現れたのは、風を連想させるような男と水を連想させるような女性だ。
髪も服装も緑な男が、シエルを視線に向ける。
「……見つけました。エネルギー開発最高責任者シエル様」
「あなたにはお戻りしてほしいと上からお達しよ」
強ばった顔でシエルは後ずさる。オレと朱美姉は、前に出て遮ると緑の男はフンッと笑う。
「救世主がここに身を潜めていたとはな」
「救世主は古宮のことか? あいつはその話をしたらやたらと反応していたし」
「そうだ。古宮アオは
現地人かよ……! つーか、ベルカってあのベルカだよな?
ヴォルケリッター達が使う魔法だったよな……。
「かつて世界各地に起きた戦争の中で、内乱で混沌に陥った国があった。そしてその国を太平し、平和に導いた者がこの男だ」
「へぇ。で、なんでこいつが眠らされていたのか知らねぇんだけど」
「知らんな。……それよりも貴様の存在が気がかりだ。なぜ救世主と似た『神器』を持つ?」
んなもん知るか。
オレの態度に髪も服装も青い女は言う。
「わかってないようね」
「どのみちこの男もシエル様同様、捕縛対象だ。連れていくぞ」
まるでオレが罪を犯したかのような言い方に反応したキアラは口を開いた。
「待て。ソラが何をした。彼がなんの罪を犯したというのだ」
「フレイアの殺害およびテロリストの協力関係という容疑だ」
「なんの証拠がある」
「廃墟の都市にて彼が半壊したフレイアを殺害した現場を写した映像がある。見るか?」
デバイスのウィンド画面には確かにオレとフレイアが撮された場面だ。しかし、この映像はフレイアが自爆する前のときだ。
「……オレは殺ってない。つーか、襲ってきたのはフレイアだろ」
「事情なら別室で聞こう。上からはそうお達しだ」
……つまり、連れてこいってか?
その答えにオレとキアラは口を歪める。
「何がおかしい?」
「いんや。あからさまにオレに罪を擦り付けてくる輩がいようとは思わなくてな」
「『名前を忘れた男』以来だな。ここまで愚かな者がいるとは」
「貴様らぁ……ふざけて、」
刹那、キアラは空気を『支配』して押し出した。それにより起きたソニックブームで、緑の男は後方へ飛ばされた。
青い女はそれを見て肩をすくめる。
「ひどい人達。そっちから手荒真似するなんて」
「あいにく、堂々と攻められたら徹底的にぶち壊せというのがうちの軍のモットーだ」
「経済、社会、精神、肉体的に徹底的にぶち壊せというスタンスなのさ」
「おっそろしい思想ね……」
女はそう言って槍を構える。両先端に十字の形の矛先を持つ変わった武器だ。
オレは『神器』を構えるとキアラは眼帯を外して、『神器』の姿を見せた。
「さあ、『救世主』の力。いただくわよ」
「堂々と寝取るぜ宣言したぞこの女」
「「ぶっ壊す」」
朱美姉と朱美妹がうが~と攻めていく。銃弾と弓矢によって青い女は冷や汗を流しながら回避していた。
「おいおい。キミのせいでまどか、ほむらが殺る気マックスになったじゃないか」
「別に問題ないだろ。それよりも、早いとここっから抜け出さないとまずいだろ」
青い機械兵達がワラワラと天井から降りてくる。おそらく物量的に攻められたら、防衛戦に持ち込まれて確実にこちらが敗北する。
「無事なレプリロイドを連れていく。キアラ、サポート頼む」
「埋め合わせを頼むよソラ」
「合点承知」
青い機械兵達の群れへとオレは飛び込み、蹂躙していった。
高町なのは: 雷斗のせいである意味外道に……。根は良い子なんですぅ!(泣)
ウルトラマン: 我らの巨人。ティガの映画にはフェイトも号泣だったらしい
ソラペット化計画: 嫁ーズが企画している。……大丈夫。まだ貞操が奪われるまでの期間までの猶予がある。それまで逃げればいいのだ(byソラ)
古宮アオ: なんと古代ベルカでも活躍していた救世主。しかし文献にはあまり残されていないので、戦乱には出ていない模様。彼がなぜこの時代にいるのかは、彼の過去話から判明する予定
黒幕: 実はある女が関わっています