とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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ヤバい……ネタが尽きそう。

なーんてなことをぼやきながら投稿します(笑)


第七十一話 救世主

 

 

 

(??side)

 

 

 

 次元艦にて、キアラは局員達が集めた情報をまとめていた。

 手元には『レジスタンス』に関わる報告書が多数あった。その一部に、キアラは注目する項目を見つけた。

 

(ソラと同じ『神器』……か)

 

 テロリストの中にカギが剣のようになった武器を使う『神器使い』がいる。『神器』は同名同属がなく、個人が持つ魂そのものだ。

 絶対同じとは限らない。

 

 同じ『神器』ということだろうとキアラは考える。

 しかし、『全てを開く者』が二つあるという話は聞いたことがない。

 

 前例のないことなのだ。

 

「仮に敵となれば厄介な相手になりそうだ」

 

 ソラが『開ける』ならば古宮アオという少年もまた『開ける』の名を持つ神器を使う。

 基本は開閉するものだが、相手の魂を切り離す『解錠』を主にするソラと同じくアオも可能だ。。

 

 その推測通り、彼の手にかかった『ネオアルカディア』の幹部が永遠に目覚めることがなくなり、永眠という形でスクラップになっていた。

 

「ねぇねぇキアラちゃん。この本、なぁに?」

 

 さすがに集中力が切れたのか、まどかが人の机の中にある本をキアラの前に出したのだ。

 日記ではなく、おとぎ話が書かれた本だ。一緒にいたなのはやフェイトも興味深々だ。

 キアラは「やれやれ」と呆れながら答える。

 

「あぁ。それは『ネオアルカディア』に書店にあった本さ。速読で一通り読んで見たがなかなかだったな」

「ふーん、どんな内容?」

「ふむ。どうもわたしの前世の国に似たところが舞台で、そこで内乱が起きたそうだ。反乱軍と王国軍の戦いになるのだが、王国軍が不利な状況となる。そんなときに現れたのはカギを剣にしたような武器をもつ少年だ」

「まるでソラくんみたいだね」

 

 まどかの言葉にキアラは苦笑する。確かにソラのように国を救う物語なのだが、この少年は封殺して無力化することで倒していく。

 敵味方を救う物語なのだ。

 

 人を問答無用に抹殺してきた彼と全てを助けた少年では全く違う。

 

(所詮は物語の中の絵空事。現実ではほぼ不可能……――――ん?)

 

 何かが引っ掛かった。『レジスタンス』においても永眠させられたのは、幹部なのだが彼は汚職と犯罪まみれのクズだった。

 誰かに殺されてもおかしくないのはわかっているが、殺害するにしても生ぬるいと感じた。そして、カギの『神器』とその使い手。この物語になんらかの関連性をキアラは感じた。

 

(……まさかな)

 

 自身達とソラのような存在がいるとはキアラは微塵にも思わなかった。

 

 

 

(??side)

 

 

 

 『レジスタンス』のアジトは地下へ繋がる廃墟の建物だ。倉庫だらけの施設なのでおそらく資材や資料を収めていた建物なのだろう。

 

 オレ達はエレベーターから降りて廊下を歩いていた。通り際、小さな女の子やまだ若い男にジロジロと見られた。

 

「物珍しいのか?」

「まあね。ここにはレプリロイド達しかいないから」

「レプリロイド?」

「人間にもっとも近いアンドロイドさ。見た目だけだと絶対にわかりにくいよ」

 

 確かに見た感じちょっと機械をつけてコスプレした人にも見えなくもない。なるほど機械人間というものがいる世界か。

 つまりこの世界がそれが当たり前ってことか。

 

「改造とかしてるのか?」

「戦闘用ならしてると思うけど、ここにいるのは事務と医療や開発に関わるレプリロイドしかいないよ」

「なんだよ。ドリルとかミサイルとか装備してないのかよ」

「なぜドリル? まあ、つけられないこともないけど、オーバヒートで一回しか使えないと思うけど……」

「なら、おっぱいミサイルとかもできるのか。男のロマン溢れる装備だろ」

「いや、それ女性のレプリロイドの前で言わないでね。セクハラだから!」

 

 古宮は赤く染めてツッコむ。

 いいじゃん。誰だってロボット×人だったら考えるだろ。

 

「何を言ってるのよソラ。そんな皮下脂肪ミサイルとか下品なこと言わないでちょうだい」

「生々しいよそれ……。でもほむらさんの言う通りだよ」

「そうよ。だから猫耳メイドモードのレプリロイドを捜すわよ」

「どうしてそうなるの!?」

 

 まさかの予想を斜め上をいく。

 

「あら、猫耳メイドをナメないでちょうだい。ロリでも猫耳ならば必ず萌える少女となれるのよ」

「ナメてるつもりはないよ!」

「なら、視姦ね。やだ。古宮アオってケダモノなのね」

「僕は無実だ!!」

 

 ……前から思ってたけど、記憶を無くす前のオレってよくこんなヤツと仲良くできたな。

 そうこうしているうちに食堂へとたどり着く。講堂で、レプリロイド達は皿に乗せた水晶体を食べていた。

 どうやら彼らのエネルギーはあの水晶体からなのだろう。

 

 そんな中、一人の少年がうどんをズルズルすすっている。黒髪でやや耳が尖っているところが特徴の黒いコートを着た少年だ。

 少年はオレ達に気づいたのか視線を向けてきた。

 

「紹介するよ彼はインプのキリト=キリガヤ。僕と共に戦っている仲間だよ」

「キリトだ。よろしく」

「朱美ほむらよ。そして隣にいるのは私のペットの神威ソラよ」

「いい加減人権くれよ」

「だが断る」

 

 解せぬ。つか、苦笑いするなコラ。

 オレ達と古宮達はそれぞれ情報をまとめて交換した。

 

 古宮はオレの話を聞いて、心当たりがあるのか食いついてきた。

 

「……おそらく『ネオアルカディア』の総帥ヴァイルの仕業だね」

「もばいる?」

「携帯みたいな名前ね」

「ヴァイルだって。俺達二人が戦っている相手の黒幕だよ」

 

 キリトの言葉に古宮は頷く。なんの目的があってオレに襲いかかってきたのかわからないが、とにかくネオアルカディアの連中は信用できないということになるだろう。

 

「ネオアルカディアは今エネルギー問題がおきていてね。その問題を解決するために、いらないレプリロイド達を処分しようとしているんだ」

「エネルギーってあの水晶体のこと?」

「そう、あのエンゲル水晶体がレプリロイドの動力源さ。エンゲル水晶体は鉱石でね。昔は鉱石とかでよく採れたんだ。だけど……」

「不足している……と」

 

 朱美姉の答えに古宮は頷いた。……まるでオレ達の済む地球と同じだ。今まで当たり前だった資源が不足し、いずれ使えなくなる。

 石油などが良い例だ。車が使えなくなることにより、新たな燃料となるエネルギーを探している。

 

 つまり、エンゲル水晶体の代わるエネルギーをネオアルカディアが求めているということになる。

 

「世間一般なら僕達は悪だけど、実際は処分されそうになるレプリロイドを助けているのさ」

「でもそんなことしたら、ここにあるエンゲル水晶体は……」

「尽きるだろうね。でもレジスタンスのリーダーさんがその問題を解決するために、新たなエネルギーとなるものを開発しているんだ。だから、後もうしばらくお世話になると思うよ」

 

 エンゲル水晶体に代わるエネルギー……か。どんなものだと聞くと、今度はキリトが答える。

 

「レプリロイドの動力源に新たなパーツを組み込む。そのパーツは空気中にある魔力を吸収するシステムで、それをエネルギーにするのさ」

「リンカーコアみたいなもんだな」

「まあな。それがモデルだからな」

 

 疑似リンカーコアを開発するということは、つまりそれは即席魔導士を生み出せるということになる。これはある意味、スゲーもんに巻き込まれそうだな。

 

「そのおかげでヴァイルに目をつけられて、リーダーさんは追われているんだ」

「マジでか。やっぱり黒幕はマリオか」

「だからヴァイルだって。というか、君。覚える気ないだろ」

「まあな」

 

 古宮とキリトは嘆息を吐いた。いや、だってオレ。人の名前覚えるの苦手だから。

 朱美姉は司令官ポーズでキリトに聞いた。

 

「……なぜソラを襲ったのかしら」

「さあな? 理由がわからないが心当たりはないのか?」

 

 心当たりは……あるな。思いっきりあるな。

 手に『神器』を召喚すると、キリトは目が飛び出そうなくらい驚愕し、古宮はポカーンと口を開く。

 

 しばらく固まったままだったが、咳払いしてキリトは言う。

 

「……コイツは驚いた。コイツの『神器』はこの世界ではあるおとぎ話に似ている」

「おとぎ話……?」

「おとぎ話って言っても、ある異世界の伝説がモデルになってるお話さ」

 

 そのお話は異世界からきた人間が伝えた伝記らしい。

 

 昔、ある世界のある国の少年がいた。その少年が住む国は、内乱によって国が危機的状況に追い込まれた。

 だが、少年はかつて人類の敵から国を救った男の持つ『神器』を発現し、そしてその国を救った。

 混迷めいた世に導きをもたらした者――――その少年は『救世主』と呼ばれたそうだ。

 

「この話で驚きなのが悪人の死ぬことがほとんどなかったってことだね」

「ホントにおとぎ話ね」

「あぁ。俺もそう思う。内乱みたいなので死人がほとんどないなんてあり得ない」

 

 「と、言っても所詮はおとぎ話だ」とキリトは肩を竦める。確かにそうだ。そんな優しい話がないのが、世界なんだよな。

 

「要するにソラの『神器』がその『救世主』のものだから、手に入れたいと? こんなおとぎ話を信じているの?」

「事実そうなるだろな。救世主の話が実際にあった、ということだな。その力を得たいって考え付く野心だろ」

 

 何はともあれ、オレの『神器』を知って狙っている……そう考えていいだろう。

 どこの誰がオレのことを教えたのかは知らないが、とにかくオレは敵対するものを倒していけばいい。

 

 

 

――――今まで、そうしてきたことだから

 

 

 

(??side)

 

 

 とある廃墟のビル。テロリストによる破壊工作で使えなくなった建物にて、ヴァイルと白いレインコートの男はいた。

 その男はレインコートのフードをとり、顔を見せる。黒髪で左目辺りが機械化している。

 ヴァイルはその顔を見て鼻で笑う。

 

「相変わらずのしけた顔だな。その顔はどうにかならないのか?」

「……オレは人形だ。記憶という記録しか持たない。ゆえに感情を表せとは無茶な話だ」

「所詮はレプリロイドということか」

 

 ヴァイルは踵を返しながら、コートをなびかせる。

 男はレインコートのフードを再び被る。

 

「まあよい。貴様を完成させ、この地より他の世界へ侵攻する計画は変わらない。期待しているぞ、『無血の死神』のコピー」

 

 ヴァイルの言葉に、男――――ソラのコピーの胸にあるコアが光って反応するのだった。

 




救世主: 文字通り救うもの。乱世に光をもたらし、導く者だと考えている。要するに恋姫の北郷一刀みたいなもの。ハーレムはなかったが、それなりにモテていたらしいと文献に残っている。

古宮アオ: 実は救世主。なぜ彼がソラと同じ神器を持っているかは後々判明

キリト=キリガヤ: ソードアートのキリトくんがオリキャラ化した人物。種族はインプらしい。我らのキリトくんが今後活躍するかはまだ不明

おとぎ話: 実際あった話をフィクションにしたお話。だいたいは救世主の話だが、英雄の話がなぜないのかは不明

エンゲル水晶: 地球で言う化石燃料。なくなったら生活できません

ソラのコピー: 謎の協力者とヴァイルの手により製作したレプリロイド。神器は使えないが、剣術がつおい


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