とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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お久しぶりです!!
すみません。お待たせしました。再開します。

ではどうぞ!!


第六十五話 とりあえずテメェはぶちのめす

 

 

 

(ソラside)

 

 消えていく……。

 消えていく……。

 

 自分の思い出が、大切な何かを見失っていく……。

 

 闇の道を進む度に何かが損失していくのを感じる。誰かの声が聞こえてきていたが、『彼女』はいったい……。

 

 オレはこのままいなくなる……。

 オレはこのまま消えていく……。

 

 ……それでも闇の道を進むのはやめられない――――

 

 

 

(??side)

 

 

 戦況は逆転した。召喚者達の活躍により悪魔と魔女側が不利となった。

 

「なぜだ……なぜこの俺の使い魔が!!」

『一人一人があなたに匹敵にするのに。クスクス……ああも、あっさりと殺られているなんてねぇ』

「黙れ! こんなの何かの間違いだ! いや間違いに決まっている!」

 

 草太(魔女)は苛立ちを隠せていない。一方で、悪魔は不利にも関わらず愉快そうだ。

 

(そろそろ潮時かしらね。私の『目的』は既に果たしたし)

 

 見つめるのは手にあるソラの魂だ。この魂は『目的』の中には含まれていないがどうせならいただいても問題はないだろう。

 欲を出せばその肉体もいただく気でいたが、草太(魔女)が使い魔に勝手なことをしてくれたおかげでそれができそうにもない。

 

(さて、そろそろ行こうかしら。どうも天宮草太は怒りで周りは見えてなさそうだし、何より負けそう――――)

 

 と思った刹那、彼女はその場から後退した。彼女がいたところに落雷が落ちてきたのだ。

 ホッとするのも束の間、悪魔は背後にバチバチ!!という電撃のはしる音を聞き取り、右へ逃げた。手にあった魂はその電撃を使っていた者によって強奪された。

 

『レディーにいきなり攻撃するなんてひどい人』

「うるせーよクソ悪魔。その薄汚い手でいつまでも人の息子に触れてるじゃねーよ」

 

 雷斗の背後には謎の隙間があった。そこから出てきたということは、誰かがここへ手引きしたということだ。

 

『なるほど、あの小さい男の子かしら?』

「さあ? ソラの知り合いみたいだけど、ついでに知らない女もいたが」

『そう。でも安心するのは早計よ』

 

 雷斗が視線を写すとそこには、大きな腕が迫ってきた。生体電気で肉体の信号受信速度を上げ、凄まじい早さで回避に移る。伝達速度を上げたことで、神経の伝達速度を高めたからだ。

 

「背中から腕? しかも宙に浮いてる五本の槍もあるし」

「その魂を渡せ」

「ヤだね。テメェの言うことなんか誰が聞くかよ」

「そうか、ならば――――コロス!」

 

 地を蹴り、迫る斬撃。雷斗はジャックナイフを取りだし、高圧電流を流し、ぶつける。

 剣とナイフの勝敗はおそらく剣の方が分があるはずだ。しかし雷斗のナイフはただの金属ではなく、よく電撃が流せる金属でできた特注品である。

 電撃による高熱には融解することはなく、また頑丈である。

 

 よって草太の持つ剣は融けた。ただの剣では雷斗のナイフを越えることはできない。

 

「オノレ!」

「くらえ」

 

 雷斗は高圧電流を草太に流し込む。バチチチチチ!!と音を立て、目や口から電撃を吐き出すその姿は埴輪に火を入れたかのようだ。

 

 雷斗はその場から後退し、様子を見ていると草太は大したダメージを受けてなさそうだ。

 

「この程度で俺は死なない!」

「完っっ全に人間じゃねーなぁ。よっし」

 

 雷斗はナイフに電撃を更に流し込む。それをナイフの中に循環させるようにして留めていき、そして圧縮させる。

 すると、バチチチチチと大きく音を立てて、荒々しく流れていた電撃が、静かにそして穏やかな流れていた。

 おまけに刀身も刀くらいに伸びており、それは電撃の刀と言っても差異はなかった。

 

「なんちゃって千鳥刀の完成」

「そんな刀で!」

 

 草太の背中から伸ばされた腕が雷斗に迫る。雷斗は下から上へ振り上げると、その腕が真っ二つになった。腕は消えてなくなり、黒い塵となった。

 

「馬鹿な! そんな刀で俺の魔力アームが!?」

「マジックアームでいいだろ。ネーミングセンスねーな!!」

 

 シュバッと草太の側面へ移動した雷斗は今度は横一閃を描く。すると刀が五メートルくらいまで伸びていき、雷斗を捉えようしてきた。

 彼はその場を屈んで『マジックアーム』を斬られるだけで済ませた。

 

「デタラメな……!」

「じゃなきゃ、あのバカ(ソラ)の師匠をしてねーよ」

 

 草太は槍を雷斗に数本を射出させるが、彼はそれを一本だけ焼き斬り、草太に斬撃を与える。

 草太は槍をクロスさせて防御するが、槍ごと身体を斬られた。

 

「ぐあァァァァァあ!?」

「いてーだろオイ。だけどなぁ、」

 

 雷斗は草太の首を掴み、顔面へ拳を何度も何度もぶつけていく。

 

「ソラはこれ以上の痛みに耐えていたんだぞ!!」

 

 雷斗は最後に顔面をぶん殴った後、次に狙ったのは草太の足だ。電撃の刀を左太ももに射し込み、えぐるようにして回す。グルグルと回しているので、それは皮膚に高熱の鋭利な刃物をグリグリしていることに等しい。

 

「いぎ、ぎィィィィィィ!!」

「オラオラ! まだまだいくぞボンクラ!」

 

 えぐるようにして回した刀が遂に足を切断し、今度は右腕の腕の関節を全て外してから、背負い投げ。倒れた彼の左手を砕けるほどの力で踏み抜いた。

 

「いぎゃァァァァァ!!」

「ここからが拷問劇だ」

「待ってくれ! まだつづ――――」

 

 最後まで言う前に、雷斗は切断された足を除いて、雷の極太い針を突き刺した。

 身動きがとれなくなった彼に、雷斗は召喚術から岩石を落下させて草太を潰す。

 

「ぎがァァァァァ!! いだいいだぁぁぁぁぁいィィィィィ!!」

 

 肉を潰され、骨を砕かれることを始まりに雷斗は電撃を何度何度撃ち抜く。

 黒こげになっても、失神しようとも、彼は止めなかった。

 

「き、キサマぁぁぁぁぁ!!」

 

 身体はボロボロとなり、怒り狂う草太は壊れたデバイスから魔力砲撃を打ち出す。

 雷斗は雷の刀でそれを切り裂くと、

 

「見せてやるよ。神様だって殺せる秘技を」

 

 雷斗は目にも止まらぬ速度で草太の前に移動し、彼は横構えから振り抜いた。

 

「『忘却』しやがれ! 『概念殺し』!」

 

 雷斗は草太の『ナニカ』を切り裂いた。

 草太には斬られた感触はなく、反撃に移ろうとした草太だが自分が何をするべきか『忘れてしまった』。

 

「え、あ……れ?」

 

 次に彼が『忘れた』のは『立つ』ことだ。足から力が抜けていき、立てなくなった。

 

「な、んだ、これは……。忘れてい、くぅ……?」

 

 草太の記憶から知識と経験が『忘却』されていく。戸惑う彼に、雷の刀を解いた雷斗は答える。

 

「『概念殺し』。これは『名』に『概念』をぶちこむことで『殺す』という習得方法が未だ不明な殺害奥義だ。『名前』を殺されたら、そいつは形を維持できなくなり、消滅していく――――って俺の知り合いの『切り裂き魔』の談だ」

 

 この奥義の条件は『概念』を見えるということ。そして、自身がもっとも適する『概念』を知っていることだ。

 

「お前の『天宮草太』という『名』に『忘却』をぶちこんだ。つまり、お前の『名前』は『忘却』していくことになる。あ、『名』が『忘却』していくことは『名前』を忘れていくわけじゃないぞ?」

 

 草太は雷斗の言葉を聞いたとき、今度は息が苦しくなった。

 『呼吸すること』を『忘れた』。

 

「『名』が『切り裂かれた』ら、そいつの存在は切り裂かれて消滅する。『忘却』されたら――――お前の持つ『記憶と経験』は忘れていく」

 

 草太には雷斗の言葉がわからなくなった。

 

 『言葉』を忘れた。

 『記憶』を忘れた。

 『思い出』を忘れた。

 『前世』を忘れた。

 『呼吸』を忘れた。

 『動くこと』を忘れた。

 

 そして遂には彼の生命活動も――――

 

「■、■★■■ぃ……ぁ――――」

 

 草太は『生きてる』ことを忘れた。『存在している』ことも忘れた――――

 

 草太は消えてなくなった。文字通り『忘却』の彼方へと消えていったのだ。

 

「遂に生きたいことも忘れたのか。『名前を忘れた男』」

 

 雷斗は興味をなくしたかのように、悪魔の元へ向かった。

 

 

 

 

 




前文: 明らかな地雷です(笑)

小さい男の子: ……察してくださいm(__)m

なんちゃってシリーズ: 文字通り複写した技達。

天宮草太: 屑宮。みなさんのお望み通り(アンケート通り)に世界の敵対(抑止さんと敵対)し、拷問してマミらせた。……忘却されたものは二度と戻らない

概念殺し: 概念をぶちこむ秘技。型月の『直死の魔眼』がモデルとなっている。概念が見えており、自身の持つ概念を理解していたら誰にでも使える

忘却: 忘れるという意味を持つ概念。これに当てられたら魂を含めた記憶が忘れ去られていく

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