とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

59 / 122
『緊急事態緊急事態……。謎の改変により世界が混乱』
『天宮草太を害ある存在として排除――――失敗』
『彼の背後に我々に対応できる存在を確認』
『これより、最終段階により世界――――……謎の反応を確認。これは……?』

(by抑止の存在達による会話記録)


第五十五話 最凶の死神

 

 

 

(??side)

 

 

 『無血』の由来はソラの『神器』から出会った。

 ゆけに多くの戦いで彼は敵に血を流すことなく、勝利へ導いた。されど、その『神器』が効かない、または使えなかったとき、彼はどうしたか?

 

 答えは簡単。普通に戦う。

 

 剣で、槍で、弓で、彼は様々なものを使って武器にしてきた。そして身体を『鮮血』に染めながら、勝利へ導いた。

 

 

 これが『鮮血』の起源。

 

 『無血』がまだ良心的だったとキアラが言っていた理由――――それが明らかになる事件が起きた……。

 

 

 

(ソラside)

 

 

 

 とある医務室にて、キアラはベッドの上に横になっていた。オレはずっと彼女の看病をしていた。

 スライド式の扉が開き、クロノ少年が入ってきた。彼はオレを見るなり、怪訝な顔をした。

 

「君はいつまで彼女の看病をしているつもりだい」

「……状況が動くまで」

 

 オレの答えにクロノ少年は嘆息を吐いた。そんなとき、天気からラインが届いた。

 それと同時にクロノ少年のデバイスから何かのメッセージが届いた。それを見たクロノ少年は目を見開いてオレを見てきた。

 

 やっぱり、か……。

 

 天気のメッセージは、『みんな血眼でパパを探している。軍隊みたいなモノもいるよ』だ。

 オリ主くんはオレをキアラを襲った犯人として仕立てあげたのだ。

 

 信用あるオリ主くんと信用のないオレではどちらが信用されるのかは明白だ。

 クロノ少年を除いてだが。オレがそのキアラをここに連れてきて看病をしていたのだ。命を奪おうとしていた人間が、敵の本拠地にわざわざ助けを求めようとするわけない。

 

「さて、と……行くか」

 

 オレは席を立ち、扉に手をかけようとしたときクロノ少年が待ったをかけた。

 

「君は、ホントに何者なんだ……? キアラの友人なのはわかるが……」

「ただの踏み台さ」

「そんな答えではない。君の背中を見ていると……僕の父親がいなくなるような感じと似て……」

「オレが死ぬとでも?」

「そんなわけあるか!」

 

 オレの言葉にクロノ少年は噛みつく。そんな彼にオレは聞いた。

 

「クロノ・ハラオウン――――人生は尊いと思う? 友人や家族は大切だと思う?」

「それは、もちろんとも。人生は確かに尊い。僕は思う」

「オレも人生は尊いものだと思う。人って簡単に死ぬし、大切なものも簡単に失う。現にオレは家族を失ったし、大切な人も失ったよ」

 

 かつてまどかに聞いた質問。それがどう意味するかは、オレ自身しか知らない。

 

「……君は」

 

 オレは彼の手を払って言った。

 

「もう、誰にも頼らない。信じない。オレは一人で戦い続けるよ――――それがたとえ、絶望に続く道だとしても」

 

 自嘲した笑みを浮かべて、クロノ少年に背中を向けて、歩み出す。行き先は決めてない。

 ただオレはヤツと決着をつけるために、あそこに行くだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレが向かったのは自宅だ。リュックサックを取りにという建前があるがなんとなく、何かありそうだと思ったからだ。案の定、その通りだ。

 オレの家は半壊していた。写真だけ無事でそれ以外は、オリ主くんと軍隊らしきものによって破壊されていた。

 破壊されてる途中で、オリ主くんはオレに気づき、破壊をやめる。

 

 軍隊は大隊だ。部隊は空中にいるのを合わせて千人くらいだな。

 

「よくもヌケヌケと来たものだな」

「…………」

「お前の居場所はもうないから、この家を破壊させてもらった。まあ、それで邪魔が入ったが」

 

 ……邪魔が? オリ主くんが指差したのは隊員に羽交い締めされて動かなくなった天気だ。

 

「『パパの家を壊さない』ってうるさいから大人しくさせてもらった。どうせ、お前が洗脳した子どもだろ? そうだろ!」

 

 デバイスから放たれた魔力弾が身体に当たる。まだ非殺傷だから痛い程度だ。オレは後ろによろめきながらも耐えた。

 そして次々に部隊の魔力弾がオレに当たる。

 

「だんまりか。なら、俺が解放してやる。さやかを救ったように、な」

 

 オリ主くんが天気に近づく。天気は目を開けて泣き始める。

 

「嫌! パパを忘れたくない!」

「大人しくしろ!」

「離して! パパ、助けて! 助けてよぉ!!」

 

 彼女の声にオレは答えない。耐える。怒りを抑えたいから。

 これを解放したら、オレはもう戻れない。

 

 あの優しい世界……。

 あの穏やかな世界に……。

 

 耐えたかった。でも……もう、

 

「安心しろ。お前はあいつに操られているんだ」

「操られてない! 嫌い。君なんか嫌い!!」

「かわいそうに……。よしよし、今から俺の手で」

 

 『神器』が天気に降り下ろされそうになる。そのとき、オレは天気に言った。

 

「天気! 目を閉じてろ」

 

 天気は言う通り、目を閉じてくれた。

 そして大人モードとなったオレは跳躍して、オリ主くんを蹴り落とし、空中にいる天気を羽交い締めしている男の片目を潰す。

 悲鳴を上げながら天気は解放され、それを抱き止めてその場から逃げ出した。

 

「パパ! パパぁ!」

「よしよし、怖かったな」

 

 天気を優しく撫でていると後ろが騒がしい。やはり追いかけてきたようだ。

 天気を抱えたまま戦えない。どこか安全な場所に、と考えているとオレの目の前にまどかに似た少女が降り立つ。

 

「よぉ、親父。天気の子守りごくろうさん」

「お前は……」

「鹿目マナミ。って言えばわかるか?」

「マナミ姉ちゃん!」

 

 天気の親族か知り合い……ということは。

 

「ま、とにかくこの時代に迷い混んだ天気を無事保護できたからアタイの任務は完了かな」

「マナミ姉ちゃん! パパを! パパを助けて」

 

 その願いにマナミは首を振る。やっぱ、無理か……。

 

「どうして……どうしてなの!」

「天気。アタイ達は未来からきたんだ。過去を改変することはできねーんだ」

「そんなぁ……」

 

 マナミの言葉に天気は泣きそうだった。オレは彼女を下ろして、その頭を撫でる。気持ち良さそうな彼女に向けて言った。

 

「天気、オレは絶対死なないよ。お前が産まれて、そして幸せになるまで死んでやらない」

「パパぁ……」

「約束する――――だから、マナミと一緒に行って」

 

 オレの言葉に天気はマナミに振り返る。彼女は頷くと天気は彼女の手を握る。

 

「親父……ワリー」

「良いってことよ。これから起きることはガキのお前らには見せられねぇもんのだから」

「……過去の親父って孤独なのか?」

「孤独さ。誰もオレを見ていない」

 

 マナミは辛そうに見つめるがオレは笑って答える。

 

「いつか、いつかきっとお前らに会ってみせるよ。それまで足掻いて足掻いて生きてやるさ」

「約束だよ!」

 

 その瞬間あと、天気とマナミは光に呑み込まれ、光の柱を立てて消えた。未来に帰ったのだ。

 オレはとにかく走る。そして結界に覆われた都市にたどり着いた。

 

「逃がさないぞ」

「ええ、あなたはここで私達が……!」

「覚悟しなさい!」

「ふふ……」

 

 杏子、ほむら、さやか、マミさんが『神器』を構える。その後ろにはどこか納得していないまどかと千香がいた。

 

「……お前ら二人は戦わないのか?」

「う、うん……」

「そだね。ボクもなーんかおかしいんだよね。君はボク達にとって敵のはずなのに……なのに」

「……わからない何かが訴えている。そうなのか?」

 

 彼女達は頷く。どうやらキアラと同じように違和感を感じているようだ。

 だけど、それは、もう……。

 

 そんなとき、オリ主くんがオレの『神器』を構えて現れる。

 

「惑わされるな! 相手はあのキアラを倒した男だ。一斉に攻撃をしかけるぞ」

「「ええ!」」

「ま、待って! まだ私は……!」

 

 まどかの声は届かず、一斉射撃がオレに向かってきた。砂煙が舞い、オリ主くんを含めて周りはやったと思っているのか、気が抜けていた。

 

 

 

 

 

――――それは、油断していることだぞ?

 

 

 

 

 

 砂煙が晴れたとき、オレは立っていた。髪はさやかと同じく青色。瞳は変わらずだが、どこか淀んでいる気がする。オレの無事に驚愕する周りに告げる。

 

「覚悟しろ」

 

 それは、英雄となった少年の話。

 

「後悔しろ」

 

 それは、絶望した少年の話。

 

「泣き叫んでも、許しを乞うても、オレは殺す。だから安心して――――とっと死ね」

 

 

 誰も救われない物語。それが再び始まる――――

 

 

 




前書き: とある前触れ……。さあ、宴の前夜祭だ。

クロノ・ハラオウン: 士郎さんに続いてオリ主信者じゃないまともな管理局員。リンディさんも彼と同じだが、某所にて彼の暴走をまの当たりにして警告したものの無視され、結界が張られて封鎖させられた

ソラの言葉: かつて暁美ほむらが鹿目まどかに問うた言葉。前世でもまどかはソラにも聞かれて答えられず、彼は自身の答えを言って背中を向けた。……それが、彼が彼女に残した最期の問いであった

もう誰にも頼らない、信じない: 孤独の果てによって得た誰かの答え。……独りぼっちなった人間は何をするのかわからないがゆえにとても恐ろしく、そして弱い存在に成り果てる

鹿目マナミ: まどかの娘。どちらかと言えばお祖母ちゃん(鹿目詢子)似である。強きで勇ましいことが取り柄

未来に帰る娘達: 実は天宮草太の世界改変の影響で彼女達はここに現れたらしく、その歪みが『抑止の存在』によって正されたから彼女達は本来の時間へと戻ることとなった

冒頭最後の言葉: 決め台詞。絶対負けない倒れない朽ち果てないという決意の表れでもある。



――――次回予告――――

千人の人間。たった一人の少年。
誰にも頼らない、信じなくなった少年のたった一人の戦いが始まった。

敵は強大。少年は弱小。
されど、彼は負けない。

――――なぜなら、彼は英雄となった少年だから……

次回、『神威ソラ』

――――その果てに待っていたもの……それは、お別れの言葉だったよ。ソラ……。




ぼけなす: という感じな次回予告。そしてお楽しみのアンケート②の参加者が……? 次回をお楽しみに

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。