とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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千香VSソラ。ちなみに普通のソラでは勝てません。


第四十七話 無血と混沌のワルツ

 

 

 

 キィンッ、ギィンッ!

 

 金属音が響く。火花が散る。

 剣と盾。ぶつかり合う攻と防。それはオレと千香が作り出している。

 

 オレの斬り上げた斬撃が、千香の作り出された半透明の球体の結界により防がれる。何度もこんな攻防を繰り返してばかり。

 攻撃すれば防御されるというじり貧である。

 

「にゅふふふ! 甘い甘い甘い! まだまだもっとイケるよぉ!」

「……あれ。お前って黒い斑点あったっけ?」

 

 こう、ジーマシンなどのアレルギーのようなそういうものが出ている。ぶっちゃけ、これが千香がオレを襲う原因ではないかと考えている。

 

「にょほ!」

「ッ、あぶね」

 

 ナイフが髪の毛数本を持っていく。身体を屈めて回避してから、足払いをかける。

 千香はそれを軽くジャンプして避けたが、足払いからオレは彼女の身体にエルボーを決める。

 肺から息を吐き出し、飛ばされた千香へ追撃の一突き。しかし、それは千香の『神器』――――半透明の結界によって防がれた。

 

「君の『神器』の対象は常に一つだからねぇ。ボクを狙おうとした結果さ」

「わかってるって。なら、」

 

 止められた『神器』をそのまま押し込む。すると鍵が開けられた音と共に、千香の『神器』は砕け散る。

 対象を千香から『神器』へ変えれば、キャンセルできる。

 

 そしてそれを待っていたのか既に千香はナイフを振りかぶっていた。オレはその場を後退することで、その剣線から回避した。

 

「にゅふふふ……甘いよ。ボクの『神器』は常に絶対防御。つまり、攻撃は通らないよ」

「攻撃手段がカウンターのみくせに生意気な」

「そのカウンターに苦戦している君は何かなぁ?」

 

 なんかこのおちょくる千香が腹立つな。まあ、千香に通常攻撃――いわゆるセオリー通りやありきたりなものは全て防がれる。

 それはわかってる。けどな。

 

「オレがただ攻撃していたと思ってるのか?」

「? トラップでも仕掛けたのかい? でもその仕草はしてないし、何よりここで君が召喚できるのは『神器』のみのはずだよね?」

「まあな。何度も召喚しても喚び出されないわで困った困った。……だけどな。召喚する必要は最初からねぇよ」

 

 オレが視線を向けたのは、杏子と戦っているマミさん。そして杏子は今まさにリボンで拘束された。

 千香はオレの思惑に気づいたときには発動していた。

 

――――『団結せよ(コネクト)』。その一言でオレと杏子の魔力が繋がり、ラインができた。

 繋がったことによりオレの髪の毛が赤くなり、剣も槍状へとシフトする。変わらないのは青い瞳のみ。

 

 千香が口に出したのは問いだった。

 

「それは……?」

「『シンクロ』って言う魔法。『団結せよ(コネクト)』することで、繋がった魔力を分析し、再現する――――つまり、その人物になりきる魔法さ」

 

 もっともその魔力が尽きたとき解除されるし、肉体に負担がかかる。そのため、子どもの身体でやれば翌日、筋肉痛だろう。

 しかしそれは長期的、であったらならば……だ。

 

「『ロッソ・ファンタズマ』」

「ッ、杏子の幻惑魔法!?」

 

 分身で一斉に斬りかかる。絶対防御だから安心というわけではいかない。なぜならこの全ての分身達が『解錠』が使えるのだ。

 つまり、キャンセルできる対象が複数になった。これはもはやチートレベルだ。

 

 千香の余裕の笑みが消え、焦燥した表情になる。遂に防御壁が砕け散り、オレは蹴り込む。そして飛ばされた千香を分身達が上へ突き上げてから連撃。

 とどめに地へ叩きつける。

 

「にゅはは……やっぱり、ソラはつよ、いやぁ…………」

「当然だ。オレはもう負けないって誓ってるからだ」

 

 背負うものが違う。そう言ってオレは千香に巣食うナニカを払って、引きずってみんなと合流する。

 

「……扱いひどくない?」

「なら、こいつの顔を見てみろよ。まるで快楽にやられた変態のようだぜ」

「いや、事実変態だろが」

 

 岸沼がツッコむ。そして持田に縛られた中嶋の様子が…………言うまでもない。

 既に(千香ハザードに)やられていたようだ。

 

「サトシぃ……もっと。もっと!」

「どうしたの!? 直美らしくないよ!?」

「諦めろ吉井明久。お前は淫乱と巨乳に食われる運命なのだ」

「吉井明久って誰!? 何やら一緒にされたくない名前なんだけど!」

「馬鹿の代名詞なモナー」

「謝れ! 全国の吉井明久くんに謝れ!」

 

 やかましい。天の声からほう言えって言ってたんだよ。

 どうでもいいけど、なんかそいつの名前を聞いていたら言い様のない悔しさがあるのだが……。女難関係ではないのは確実だが。

 全員を大人しくさせることに成功したオレ達だったが、どこからかヤツの声が聞こえた。

 

「オイオイ。もう終わったのかよ」

「神条……どこにいやがる」

「焦るな。今案内してやるぜ」

 

 突如、オレとマミさんの足元から転移魔法陣が現れ、それに吸い込まれる。たどり着いたのは、どこかの玉座の間でそこには神条が玉座に腰かけていた。

 

「ようこそ。俺様の城へ」

「王様のつもりか? ふざけてるのか?」

「ふざけてなどおらぬ。今の俺様はまさしく英雄王の力を完全に取り込み、手にした王。モブごときが()が高いぞ」

「あいにくオレは王とか帝とか(こうべ)を垂れないのでな」

 

 『神器』を向けて鋭い視線を向ける。いい加減、こいつの茶番には付き合い切れない。

 

「くくく、ならば我がしもべを呼ぼうではないか。来い、システムUD」

 

 UDと呼ばれていたのはクリーム色のヘアカラーした少女だ。ゆったり系の少女に見えそうだが無表情で、機械的な印象がある。

 

「俺様が直々に洗脳した道具だ。どうだ? スゴい魔力だろ」

「最低……」

 

 マミさんが毒づくと少女の身体から突風が吹く。……どうやら魔力を出していたとき生じた風のようだ。

 永久的に生み出す魔力炉が彼女の中にあるようだ。

 

「くくく、神威。貴様を殺し、我が嫁であるまどか達の目を覚ましてみせる。この俺様のくちび――」

「マミさん。魔力貸して。ちょっとがんばりたいから」

「はーいっ。チュッ♪」

 

 マミさんが頬に口づけるとオレの中に魔力が流れる。それからオレは地に手を向けていると神条が苛立っていた。

 

「貴様! 人の話を聞け!」

「え、やだ。だってお前の話なげーし、ぶっちゃけどうでもいい」

 

 なので、と続けて言う。

 

「とっと終わらせる。夕方六時から始まる『機動戦士ガンダムダブルオー』を見たいから」

「トランザムってかっこいいわねぇ♪ こう、掛け声もいいし」

「千香も似たようなものができるぞ。『キャスト☆オフ!!』って」

「それは別の意味で諸刃の強化よ」

 

 とか言いながら召喚陣を次々に出す。神条は激昂して、剣を投擲してきた。

 それを召喚したヤツを使って防ぐ。

 

「にゃあァァァァァ!? 剣が、剣が!?」

「オラ、とっと防げ。盾」

「この人でなし!」

 

 高町が張った魔法壁のおかげでそれは弾かれ、クルクル回転してから地に突き刺さった。神条は目を丸くしながら高町を見ていたが、それだけではない。

 

 同じく高町といたフェイト。

 体育館にいた衛とはやて。

 同じく一緒にいたマテリアルズ(一名メイド服)

 

 まあ残されたメンバーはマミさんが保健室に戻るように指示したことだし、当分は大丈夫だろう。

 

「さあ、最後のお祭り騒ぎだ」

「ハロウインの始まりよ♪」

 

 トリック・オア・トリート。

 マミさんが言うと『さっさと消えないとぶちのめすわよ❤』という意味になりそうだ。

 

 

 




千香VSソラ: 普通のソラならば、まず勝てません。ソラの神器はキャンセルできるのは常に対象は一つです。
 また封印とキャンセルは同時平行もできないため、絶対防御の千香を打ち破るのは難しいです。
 おまけに彼女は戦争で戦ってきた経験があるため、バトルセンスがとても高く、攻撃すればカウンターで殺られることがあります。……彼女の神器って自身の身体なら、結界が出せるので。
 よって、ソラは切り札を使って戦うしかありませんでした

シンクロ: ソラの切り札。前世のときに編み出した魔法。もらった魔力を使って、その人物の能力が使える。なお、その魔力を取り入れた影響でもらった魔力の持ち主の髪の色になる

ロッソ・ファンタズマ: 杏子の魔法。分身や幻想をみせる魔法

千香ハザード: 犠牲者は直美。ドMになるなどイロモノ化する……

吉井明久: バカテスの主人公。バカらしいが、ただのバカではなく単に頭の回転が遅いだけ――――あれ、これも駄目だこりゃ。ちなみに彼を主人公にしたお話が多数ある模様。愛すべきお馬鹿さんなのだ。

モナー: 2ちゃんねるの語尾。作者は、実は意味がわかってない

システムUD: GODのラスボス。公式チートなのだが、こちらにはマッスルの貴公子がいる。なので、勝てることがないにしても負けることはないと思う……

機動戦士: 実はこの世界でも放送されていたという驚きの事実

キャスト☆オフ: AUO、キャスト☆オフを検索。まさかあの方が、ああもハッチャけるとは思うまい……。

高町・フェイト召喚: 予定調和。彼女達の活躍はあえて書かないのは原作通りだからという理由。手抜きではないぞ、きっと、たぶん……!(;゜Д゜)

アンケート②: 残り三話!

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