とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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実はゴッド編ですよ、これ。


第四十四話 マテリアルズ

 

 

 

 

(??side)

 

 

 雷斗とすずかは廊下を歩いていた。ノエルとはぐれて、二人ぼっちになった彼と彼女は変態である彼女を捜していた。

 

「いないねー」

「そ、そうだね。というか、全然怖がってないね雷斗くんは」

「なんとなくだけど、こういう体験したような気がするんだ。それも何度も」

「何度も体験したって……」

 

 彼がそういう体験したのはおそらくかなり昔の前の話なのだが、今は放っておいていいだろう。

 それよりも雷斗は内心焦っていた。孤独が理由ではなく、ノエルが他の誰かに毒牙をかけていないかの焦燥である。

 

(ノエルお姉さん、誰かに迷惑かけてなければいいけど)

 

 実はもうかけていることを知らないのが仏なのか、彼は曲がり角にさしかかると誰かにぶつかって尻餅をついてしまった。

 

「いたた……ごめんなさい。考え事していたもので」

「いえ、こちらこそ焦っていたので気がつきませんでした」

 

 雷斗がぶつかったのは見覚えのある茶髪の少女だ。ダークネスカラーの制服のような衣装を着ており、無表情な顔つきをしている。

 彼女を見たすずかは目を丸くしていた。

 

「な、なのはちゃん? なんでここに?」

「わたしは『ナノハ』ではございません。申し遅れました。わたしはナノハの魔力によって造られた理のマテリアル。『シュテル・ザ・デストラクター』です」

「シュトロハイムさんだね」

「それはドイツの軍人さんです」

 

 『ドイツの化学力は世界一ィィィィィ!!』と豪語する軍人さんと間違えた雷斗に対してややムスッとした顔でツッコむ。

 雷斗は言いようがない申し訳なさに頭を下げると彼女は「気にしていません」と答えた。

 

「それでシュテルさんは何をしにここへ?」

「エクザミアというものを求めてここにやって来ましたが、何やらわからないブラックホールに吸い込まれてここにいます。同じマテリアルの二人とはぐれてしまいましたし……」

「そうなんだ。ねぇ、一緒に捜さない? 私達も知り合いを捜しているから」

「そうですね……。わかりました。共に行動しましょう」

「よろしくな、ミシュラン!」

「シュテルです。三ツ星レストランではございません」

 

 クールな少女シュテルは雷斗の両頬を引っ張るというお仕置きを無表情で実行する。その光景を見たすずかは安心感があって緊張がほぐれるのだった。

 

 

 

 

(ソラside)

 

 

 

 

「はやて。お前いつから銀髪になった。反抗期ですかコノヤロー」

「違うわ塵芥!」

 

 目が覚めたさやかを連れて、オレ達は再び学校の散策を始めた。まさか、クッションになってくれたお陰で鈴本繭という少女が助かったのは驚きである。

 

 しばらく廊下を歩いていると教室からはやてらしき少女が出てきたのだ。さやかと杏子が気軽に声をかけるが無視したのでオレは銀髪化したはやてに対して先ほどのように言うと、噛みついてきたわけである。

 

 彼女が何者か聞くと、なんとマテリアルという種族らしい。うん、わからん。

 わからないから、とりあえず納得してくれたのかフンスッと嘆息を吐く。

 

「全く……王である我を放っておくとは」

「まあ、そうカッカするなよジミー」

「ジミーとは我のことか!? 我のことを言ってるのか!?」

「おぉ、さすが変態のマテリアル。ツッコミが鋭い」

「変態ではなく『王』だと言ってるだろう!」

「『乙』? 変な名前だなDHAプロテイン」

「ディアーチェと言ってるだろうがァァァァァ!!」

 

 シャウトするディアーチェ。はやての複製版らしいが、ツッコミ属性が引き継いでいるようだ。

 

 オレのボケに対して中嶋や篠原は呆れている。いつもこんな調子なのかと言わんばかりに。

 安心しろ。これ以上にボケる変態と淫乱乙女がいるから。

 

「とりあえずお前はエクザイルを探しているわけだな?」

「エクザミアと言っておる! はっ。さては貴様らもそれを狙っているのだな!? 渡さぬぞ!」

「いらねぇよ。厨二(笑)」

「素でひどいこと言われた!」

 

 事実だから仕方ない。オレ達の漫才はしばらく続くと思われたが、するといきなり空間の裂け目が現れる。そこから出てきたのは見覚えのある金髪の男だ。

 

 アインスを殺し、バッドエンドに導いた外道。そしてオレが今まさにぶっ殺したい男が現れたのだ。

 

「久しぶりだなモブ――――」

 

「えい」

「死ね」

「くらえ」

 

「うぎょォォォォォ!?」

 

 オレとさやか、杏子は問答無用に『神器』を投擲した。ヤツのいた場所には剣や槍などがぶっ刺さっていた。

 チッ、逃げられたか。

 

 中嶋と篠原はそんなオレ達に言い出す。

 

「ちょっ、いきなり何してるの!?」

「敵だ。害虫だ。ぶっ殺せ。それ以外何がある?」

「意味わかんないですけど!」

 

 説明している暇はない。とにかく神条という害悪をぶち殺したいオレは手元に『神器』を召喚し、床を蹴る。

 

 その身体に斬り込もうとしたが、回避される。超能力ではなく、今度は斑模様に紅く輝く目だった。

 

「写輪眼で見えてるぜ!」

「チッ、易々と避けられるのが腹立つな」

「ふん、そもそもモブごときが俺様に当てようなど片腹痛いんだよ!」

 

 そう言って印を結び、地面に手をつける。その瞬間あと、オレの足場が崩れて身体が落ちていく。それだけでなく、今度はさやかや鈴本まで落ちていく。

 

「お前……!」

「分断させてもらうぜ。お前にはまだ地獄を見てもらわなきゃならねぇからな」

 

 落ちていく中、高笑いする神条に中指を立てておいた。

 次会ったら絶対殺る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最下層に落下したが、オレとさやかは着地したことにより無事だ。鈴本はさやかによってお姫様抱っこされているが、女の子同士の王子様ごっこなんて誰得……あ、まどかとほむらか。

 

 あいつら百合だからイチャイチャしそうだよホント。オレとさやかは天へ見上げる。

 

「地下っぽいなぁ」

「地下だけに千香がいそうね」

「オイやめろ。この場面で言うとシャレじゃなくてフラグだぞ」

 

 こういうシリアスな場面ほどイロモノが発生しやすい。ソースはノエル自身なのだから間違いない。

 だってホントに真剣なときに現れて周りを混乱させたのだから。

 

「はーはっはっはっはっ!」

「な、何かいる!?」

「「…………」」

「なんで無言になるの!?」

「いやなんか千香の声じゃないけど、変な女の子が来る予感が」

「どんな予感なの!?」

 

 目を覚ました鈴本さんがツッコむ。いやだってこういうときに高笑いする女の子って変なヤツしかいないじゃん。

 オレとさやかが鈴本さんの前に立ち、守りを固めていると、バッとそいつは現れた。

 髪は水色。さやかと同じヘアカラーだが、髪型はツインテール。

 というか、フェイトだった。フェイトが髪の色を変えて現れた。

 

「ぼく参上! さあ、敵はどこだ!」

「フェイト……お前遂に壊れたか」

「ぼくはオリジナルじゃないぞ! 力のマテリアル『レヴィ・ザ・スラッシャー』だ!」

 

 またマテリアルか。どうも変なのがここに混じってるようだなぁ。というか、なんでこいつがここにいるのか聞いてみる。

 すると、

 

「壁をぶち抜いたら、床までぶち抜いちゃった!」

「アホだ。アホの子がいる。やはり青髪アホの子説があるのか?」

「青髪の子を全員アホの子にしてんじゃないわよ! 失礼しちゃうわね」

 

 いやお前が言うなよ。そうジト目で見ると首を傾げられた。はぁ、とにかくどうやって上へ上がろうか……。

 

「幽霊達と離ればなれなったしなぁ。せっかく良い手駒が使えると思ったのに」

「あんたのそういう部分がたまに恐ろしいわ」

「誉めるなよ。いじめたくなっちゃうだろ」

「どういうことよ!?」

 

 最近、いじる楽しみがわかってきた。師匠の気持ちを共有できたのはうれしい限りだ。

 そういうことを言うと鈴本さんは「お師匠さん、ドS?」って聞かれたので頷いた。

 

 なんとも言えない顔をされたのが解せぬ。

 

 それはさておき、レヴィを連れて上へ上がる階段を探すことになった。

 そもそも階段があるのかどうかわからないが、とりあえず合流するために目指すのだった。

 

 

 

(杏子side)

 

 

 

 神条がソラを落とした後、ヤツはアタシに攻撃を仕掛けてきた。ヤツの目にはチャームがあるとソラは言っていたため、とにかく目を合わさず、戦う。

 払って、突いて、がら空きになったところを拳で殴る。顔面へとらえたら、左足を軸にして、身体を回すように力一杯飛ばす。

 

「オルァ!!」

「ぐぎっ!」

 

 手応えあり。後方へ飛んだ神条へ槍を投擲する。ヤツは手から盾らしきもので出して、アタシの槍を弾く。

 

「まさか防がれるなんてな」

「どうだ? 我が嫁にならぬか杏子よ」

「お断りだね。人の知り合いを簡単に殺すヤツとなんかと結婚したくねーよ」

「そうか。まだ神威に洗脳されているのだな? 安心しろ……今救ってやる!」

 

 何を勘違いしているのか知らないが、とりあえず接近してきたヤツに足場から槍を生やした。

 身体にヒットしなかったが、手足を突き刺すことに成功し、ヤツは苦悶の声をあげる。

 

「とどめだ!」

 

 アタシは床を蹴り、一本突きを神条の身体に当てようとした。貫くはずの槍は――――謎の黒い壁によって弾かれ、アタシを後方へ飛ばす。

 

『そうはさせないわ。彼にはまだまだ動いてもらうもの』

「っ、テメーは!」

 

 黒い壁が消えた瞬間、神条はいなかった。逃げられたか……。

 息を吐いて、一息ついたアタシは後ろに振り返るとそこには中嶋と篠原が抱き合っていた。

 

「……こんなところでキマシタワーするなよ」

「してないわよ! 震えてだけだもん!」

「わたしは一向に構わん!!」

「何その男らしいセリフ!? って、どこ触ってるのよ世以子!」

 

 篠原が中嶋にセクハラしているのを呆れながら、アタシはどうやってここからソラと合流しようか考えるのだった。

 

 




シュトロハイム: ドイツの科学は世界一ィィィィィという名言を残した軍人さん

青髪アホの娘説: ガセネタ。そんな事実は一切ないが、純粋な少女ほどアホの娘ではなかろうか?

わたしは一向に構わん: バキの名言。実はラインのスタンプになっている

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