とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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(変更点)

・特にはなし。
・しかし千香のある片鱗が見られる


第三十二話 この世に絶対はない

 

 

 どこか曇り空な天気。今日は一雨が降ったり止んだりする天気である。

 

 ロッテ、アリアの目的はどうやら『闇の書』の封印らしいとわかった。『闇の書』には完成したら全てを破壊し尽くし、さらには転生機能で主が死んだ後に他の主に乗り移る尻軽機能がついていた。

 

 浮気性な本である。というか破壊神なのか? ハーゴンだったのかこの本は。

 

 そして壊れた彼女達の心に漬け込んで尋問するなんて、ほむらマジ策士。

 思わず、戦慄したわ。

 

 まあなんにせよ。

 

「ややこしくなってきたなぁ」

 

 闇の書をはやてごと封印するのと、闇の書を破棄してシグナム達を殺すこと。

 

 どっちが最善なのかねぇ……。

 

 そう思いながらぼんやりとまどか達と昼食をとっていると、オリ主くんとたかま………………なんだっけ?

 

「高町なのはなの!」

「おぉっ、思い出した。高松なのぽだな。うん記憶した」

「微妙に違うから! 高町だから! なのはだから!」

「なのは、早速ペースをとられているぞ……」

 

 それが安定のオレクオリティである。呆れながらオリ主くんは話を続ける。

 

「今度はなに企んでいる?」

「なーんにも。今どん詰まり状態で悩んでいる最中なのよねー」

「嘘つけ踏み台野郎。どうせ天道を利用して、はやてを手込めにしたいと考えているのだろう?」

「そうなの!? 妻として浮気は許さないよソラくん!」

「いつからまどかはオレの奥さんになった。というか、おあいにくオレは人の大切な人に手を出すほど外道じゃないから」

 

 くだらないと言わんばかりに半目でオリ主くんに返した。オリ主くんは完全にこちらを敵意している。

 

 しょーもない……。

 

「神威、お前の野望は俺が必ず止めてみせる」

「野望ってなに? ハーレムウハウハ帝国とか言うなよ。つくったらつくったらでまどほむコンビがデストロイしてくると思うからつくる気なんてさらさらない」

「がーん!」

「なんで千香がショック受けるの?」

「みんながソラのハーレムパーティなら、その一員としてボクが被写体として撮ってあげるのに」

「R指定になりそうだから却下」

 

 千香の写真は全年齢対象ではないはずである。しかし、最後まで高町は微妙な顔をしていたな。昔あった敵意はどこいった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日、八神が入院した。

 

 急展開すぎるかもしれないが、闇の書の魔力吸収が増加したらしい。ロッテリア姉妹の暴露で空気読んで吸収のレート上げたな。

 

 オレとさやかと千香はその御見舞いに病室に向かった。

 

「はやてー御見舞いにきた……よ?」

 

 八神の病室にいたのは、月村と…………えっと……なんでいるんだ。

 

「オイこら。なんで私の名前が言えないのよ」

「ソラ、確かバーニング竹田だよ」

「違うわよ。確か竹田バーニングよ」

「どっちも違うよ! 何よその竹田とバーニングを合わせた芸名!? バニングスよ。アリサ・バニングス!」

「「「アリさんマーク?」」」

「引っ越し業者でもないわー!!」

 

 うなーと手を振り上げ、目をつり上げて怒るバニングス。

 

 うむうむ、いつも通りである。

 

「バニングスと月田さんはなんでここにいるの?」

「今度のターゲットは私!?」

 

 この漫才は永遠に終わらないでござる。

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 バニングスと月村は八神の知り合いのようだった。

 

 ということはいずれにしても高町達に気づかれる可能性がある。

 

 ロッテリア達は帰したが写真で黙らせることができる。

 だが、八神の友人となると記憶を消すかしないと高町達に闇の書の主が誰かバレてしまう。

 

「厄介なものだ……」

「そだね……」

 

 公園のベンチに座って、オレと千香は憂鬱そうに嘆息を吐く。白い息が空に舞い上がる。

 現在、オレ達はさやかに八神の護衛を任せてこれからすることに対しての話し合いをしていた。

 

「闇の書を消すか、はやての死を待つか……か。どちらも嫌だねー」

「かと言ってオレの『神器』を使えば八神から闇の書の呪縛を切り離せば、闇の書は転生する可能性がある」

「どこが悪いかわかればソラの専売特許が使えるのにね」

 

 オレの解錠は対象がわからないと発動しないし、闇雲使ったとしたら八神に悪影響が及ぼすかもしれない。だから今は迂闊に手は出せないのだ。

 

「ソラ……」

「わかってる。やられたな」

 

 いつの間にか結界に覆われており、オレ達は孤立していた。空から飛び降りたのはオリ主くんと高町か。

 

「なんのようだ? こちらはちと虫の居所が悪いんだが」

「お前をここで止める。原作をこれ以上めちゃくちゃにされてたまるか」

「原作原作って、ここは物語の世界とは違うって何度言えばわかるんだお前」

 

 もはや呆れたため息しかでない。オレは『神器』を召喚し、戦闘準備に入る。

 

『神器』を召喚した千香も高町に飛び込んでいき、スタンロッドを降り下ろす。

 あれが戦時中の千香の戦い方だ。本来、スタンロッドじゃなくてナイフだけど。

 

「はァァァァァ!!」

 

 遅い。ぬぶい攻撃をオレは避けて、飛び上がる。

 

「かかった!」

「んー?」

 

設置された『バインド』に身体を捕らえられたようだ。うーん、別に驚異じゃないし、早く解錠――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュッ。

 

 

 さてみなさん。このとき、オレならば負けない。勝てると思っていたはずだ。

 だが、残念ながらオレも人間だ。油断する。慢心もする。

 

 オレは甘く見すぎていた。ヤツは殺人という愚行は犯すことはないと、そんな小心者ができるはずがないと、油断していた。

 

 その結果、

 

「コフッ……!?」

 

 ナイフがオレの腹部に突き刺さっていた。オリ主くんが投げたモノで……まさか、あいつ……!

 

「お、前殺すつもりで……!!」

「これもはやてのためだ」

 

 何が八神のためだよあのヤロー。

 

 『バインド』を解錠し、ナイフを抜いた。しかし身体が痺れて上手く動けなくなっていた。

 

 ……神経毒が塗られたナイフか!

 

 くっ、飛んでいたら落下する。高度を下げようと気をとられていたとき、オリ主くんの剣が降り下ろされた。

 

 キィンッ

 

 『神器(全てを開く者)』でそれを防ぎ、金属音が鳴り、オレは地面に叩きつけられた。

 オレは肺にあった息を吐き出されてしまった。

 

「このデバイスは殺傷設定にしている。神威、お前だけは絶対に仕留める」

 

 そう言ってオレを見据えるオリ主くん。

 

 本気のようだな…………。

 

 そうくるならこちらも答えたいところだが、毒で身体が上手く立てない。

 オリ主くんは四つん這いとなったそんなオレを見下ろし、剣を振り上げた。

 

「死ね」

 

 断罪の剣はオレの元に下ろされる。

 

 ああくそ、こんなところでオレは……。

 

 そう思い、目を閉じる。走馬灯を思い出していると金属音が鳴り響く。

 

 

「千……香……?」

 

 無表情な千香がオリ主くんの剣をオレを苦しめたナイフで防いだ光景を最後にオレは気を失った。

 

 

 

(千香サイド)

 

 

 

 高町なのはとの戦いをどう面白おかしくしよう画策していた中、ソラが刺された。

 

――――そのときボクは目の前の小娘のことなんかどうでもよくなった。

 

 ソラを殺そうとしてきたあの男に、ボクの全てが冷え込んだ。

 

 感情も頭も全て。

 

 オリ主くんの剣を受け止めたとき、ソラの意識がなくなったのか目を瞑った。

 ボクはオリ主くんの剣を弾き返して、殺意込めた目でみた。

 

「くっ、天ヶ瀬さん! そこをどいてくれ! こいつは殺さないと全てをめちゃくちゃにする!」

 

 めちゃくちゃにする?

 

 なにわけの分からないことを言ってるのこの男は?

 

 そんなことでボクのソラを傷つけたの?

 

「君は……許さない。泣いても、許し請おうとも、ボクは君を潰す……!」

 

 ボクは毒のナイフを構える。

 戦時中に愛用したナイフは今は持ってないけど、刃を神器(守護神の盾)で纏った毒のナイフなら非殺傷設定にできるし、毒もまわらないはずだ。

 

 ソラならたぶんこんなヤツでも許すだろう。

 だけどボクは違う。立てないようにしてやる。

 

 うん、そうしよう。

 

「だから安心してとっと死ね。クソザコ」

 

 かつてオークに向かって言った言葉をオリ主くんに向けていい放つ。

 ボクはオリ主くんの目の前まであっという間に接近した。

 

 ボキィ!!!!

 

 彼は剣で応戦する前にボクは彼の腕を掴み、その間接技でへし折る。

 

「がァァァァァ!」

 

 利き腕を破壊された後にボクはそいつの鳩尾に蹴りを放つ。

 

 空気を吐き出され、後方へ飛んだ。

 

「まだだよ。まだ終わらさない」

 

 また失ってたまるか。ソラを失うなんてもう嫌だ。

 

 思い出すのは暁美ほむらの世界。そこでたどり着いたとき、彼は満足した顔をして倒れていった。

 

 なんで。どうして。彼が死ななければならない。

 大切な恩人。愛しい人。そんな彼は目を閉じて、身体が冷たくなっていった。

 

 ボクは冷たくなったソラの手を握った。

 

 何も言えなかった。

 何もできなかった。

 何も返せなかった。

 

 だから…………。

 

「ボクはソラの敵を排除する。それでソラが生きていけるならボクは人形でもなんでもなってやる」

 

 起き上がるオリ主くんにまた接近した。オリ主くんは今度は、すぐに剣を降り下ろしたが、ナイフで受け流した。

 

 毒のナイフは脆く砕け散った。安物だねこれは。

 けれどどうでもいい。後は打ち込むだけだから。

 

神器(守護神の盾)』で纏った拳をオリ主くんの鳩尾に打ち込む!

 

「がはっ!?」

 

 浸透剄という中国拳法の奥義を打ち込んだ。その打撃はバリアジャケットという防護服を貫通するし、内部も破壊する。

 

 血を吐いて、オリ主くんは白目を向いて事切れた。

 チッ、動けたらもう一回ぶちこんでやるのに。

 

「草太くん!」

「別に心配する必要ないよ高町なのは。内蔵に攻撃したけど命の別状はないよ」

 

 ボクはそう言ってソラの『神器』を拾う。うん、まだ使えるみたい。彼の『神器』はボク達のような親しい少女達に使えるようになっている。

 

 さてと。すぐにシャマルに見せれば大丈夫かな。

 

 ボクはそう思い、ドコでもドアを展開した。

 

 すると、高町なのはに呼び止められて振り返る。

 

「千香ちゃん、その私……」

「君は悪くないよ。悪いのはそいつだから。あと、そいつに伝えておいてね。次にソラを殺すつもりなら――――」

 

 

ボクは一息入れて言った。

 

 

「――――君の大切な者全て殺される覚悟してね」

 

 凍えるような一言を最後にボクは高町なのはを背を向けた。

 そのときボクは笑っていた。かつての『魔女』という化け物になった頃と同じように。

 

 

――――歪み、穢りきった笑みを浮かべて

 




天宮草太: オリ主くん。今回は完全な悪役。もはや、コイツが死んでも誰も悲しまないと思う

穢れきった笑み: 『それは とても きれいな 微笑』。要するに妖しくも綺麗な笑み。ほむらがすると男女問わずに見とれる。前提として邪悪で最悪と言える存在でないとできない

守護神の盾: 千香の神器。防御専門なのだが、応用すれば強度が最強の武器になる

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