・前文あり
・変わらぬ運命……
(??side)
クロノ・ハラオウンは最年少の執務官だ。まだ幼さ残る整った顔立ちだが、彼が歴戦の戦士とは変わらない。
そんな彼が関わる事件は、彼の父親を亡くした原因である『闇の書』――最悪のロストロギアである。
父の仇、と思わなくはないが公務と私的な想いはしっかり分けて考えているつもりである。
今日、『高町なのは』がそのロストロギアの守護騎士達に襲われた。これは由々しき事態だ。民間人が、それもかつてロストロギア解決のために協力してくれた少女が襲われたことに憤りを隠せない。
彼が向かっているのは父の上司であるギル・グレアム。そしてその彼の戦いの師であるリーゼロッテとリーゼアリアがいる部屋だ。
(あのロストロギアを知る人ならば、この人以外はいない)
『闇の書』という危険な代物と関わったことがあるからこそ、クロノは早速グレアムと相談しようと考えていた。
彼が部屋に入ると、そこにはグレアム、リーゼロッテ、リーゼアリアの三人が揃っていた。しかし約一名ほど知らない少女がいる。
少女はかわいいというより凛々しさがあった。年齢からすれば高町なのはと一つか二つ上かもしれない。
背中にかかるくらいの寒色系のヘアーカラーのロング。
左目は眼帯で隠されている。
そんな美少女と言える彼女にクロノは見られていた。男の子としては嬉しいことなのかもしれないがクロノが感じたのは奇妙な気分だ。
(なんだこの感じ……。まるで神威と最初に会ったような感覚がする……?)
ソラに最初に出会ったとき、このような感じが彼女からした。クロノはわかってないが、『観察』されていたのだ。そう、この眼帯の少女に。
少女はフッと笑みを浮かべるとグレアムがやっとクロノに気づいた。
「おぉ、クロノ執務官。来ていたのか」
「はい。お久しぶりです。彼女は?」
クロノが聞くとグレアムではなく本人が答えた。
「はじめまして、ってところかな? ワタシはキアラ。キアラ・グレアム。グレアム提督の義理の娘さ」
彼女の友好的な笑みは、クロノにとってナニカを感じさせた。
――――前世の因縁。かつての、ソラの仲間が、そこにいた
(ソラside)
どんよりと曇った天気。今日は洗濯日和ではないことに残念である。その夜はとても綺麗な星空が覗かせていたが。
「管理局にバレた」
「えぇー」
そんな夜中のとある一室にて、灯りをつけずろうそく一本の会議という変な演出をしていた。原因は停電だったりする。
なんかどっかでドンパチして誰かが電柱を壊したとかなんとかと、近所のオバサン達が話していた。
そんな状況でないわーという感じにオレ達がシグナムを半目で見ると、彼女は目を逸らしてやり過ごそうとする。
オイこら。こっち見ろや。
「仕方ないだろう。ヴィータが高魔力を持つ人物を見つけて、魔が差したのか襲ってな…………」
「またお前かPS○」
「アタシはゲーム機じゃねぇ!」
ヴィータが反応する反抗する彼女に半目で睨む。
「なら改名するかなんとかしろ。お前のせいで犯罪が警察官より質が悪い組織にバレたんだから」
「うぎぎぎ……何も言い返せねぇのが悔しい」
「なら、悔やむ前に反省しろ青二才」
「うわァァァァァんはやてェェェ!!」
ついには泣いてしまったヴィータがはやてに泣きついた。
「こら、ソラくん。女の子を泣かしたらあかんで」
「泣かすもなにもこいつの自滅だ。悪い子には徹底的に反省させるのがオレのモットーなんでな」
「ちょっとひどいんちゃうん、それ」
「甘い。まどかとほむらなら、オレを反省させるどころか……青少年未満ではお見せできないことをしでかすからな……」
「ソラくん、なんでメチャメチャ震えてるん!? 何があったん!?」
ガタガタブルブル。
思い出せばベッドの上で迫る二人の鬼の恐怖。ホラーゲームをリアルで体験したような感じである。
貞操は守りきれたがあと一歩のところで全てを失うところだった……。
「泣きたい、叫びたいのにあいつらはギャングボールを用意しだして……」
「わかったから泣かんといて! メチャクチャ不憫やから!」
「はやて、ぎゃんぐぼーるってなんだ?」
「そこだけ食いつかんといてヴィータ!」
実は純粋無垢な少女、ヴィータちゃんだった。
大丈夫、それは杏子も知らない知識だから。だからいつまでも純粋無垢でいてください。
そして、誰か癒しをください……。それがオレのお願いです。
ひぐらしは鳴かない頃だけど。
とある次元世界にて、綺麗な青空が広がる天気の下でオレはマイクを握っていた。
「遂にやってきました衛くんのデビュー戦。試合時間は六十分一発KO有り。では選手を紹介しましょう。赤コーナー『我こそ主人公。モブなど雑兵などにすぎん』。好少年のオリ主くん。青コーナー『愛ゆえに我こそ有り。邪魔する者は指先一つでKO』! 覇王を目指す少年、衛くん。実況担当はわたくしこと自称みんなの弟兼苦労人の神威ソラと解説は」
「みんなの天使なマスコット、朱美まどかが担当します。よろしくね☆」
「……君たちは何をしているんだ?」
「特別ゲストにクロノ少年ことクロノ・ハラオウンがツッコミを担当します」
「さりげなく混ぜられた! ってどこから出したそのゴングと解説席! そしてなぜツッコミ担当!?」
クロノ少年は敵でありながらもオレ達にツッコむ。そのツッコミはあっぱれなり。
なぜこんな状況になったかと言えば、いつも通りに蒐集活動していたら守護騎士達がクラナガンという都市に誘導されてしまい、待ち伏せしてたアースラ組に足止めされる。
さらにはヴィータ達に襲われた鷹松……あ、間違えた。高町とフェイト達がリベンジしたくてパワーアップして挑んできた。
オリ主くんもパワーアップしていたため苦戦というより大ピンチという展開だったため、衛くん魔改造最終段階を終わらせたオレ達にSOSをシャマル先生が送ってきた。
まさか、ラインでSOSとはさすがのオレも驚いた。次元世界共通だったのかラインって。
スゲーなオイ。
「なんで君達がここにいるんだ?」
「友人の衛くんにお願いされて協力している。今回は自分達の意思だから捕まえていいよ」
「なら――っ!? こ、これは……」
杖を取り出してこちらを捕縛しようとするクロノ少年に管理局の汚職と秘密裏に行われた人体実験が記録されたファイルを見せる。
「ただし、今回はこれを提出するから見逃してくれ。リンディ提督と交渉したい」
「そんなことできるはずがない! 君達は犯罪行為をしていたんだぞ!?」
「さっき言ったけど捕まえていいよ。でもその代わりオレ達を捕まえたら管理局は神器使い達の管理という名目でオレ達に人体実験を行うかもしれないし、このファイルだって家宅捜査という名目で処分されるかもしれない」
「くっ……」
「悔やむところ悪いけど、これが今の管理局なんだ。だから信用できないんだ。クロノ少年とリンディ提督以外はね」
取り出した杖を仕舞ったクロノ少年。どうやらしぶしぶながら納得してくれたようだ。
「今回は引き下がる。だが、いずれ君達を捕まえてみせる! 僕が変えた管理局で」
「それは楽しみだ。いつかかかってこい。オレ達『神器使い』をな」
クロノ少年は上に上がって管理局を変える目的ができたそうらしい。まあ、勝手にすればいい。
オレ達はオレ達の道を行くだけだから。
「おや、オリ主くんと天道くんの戦い始まるよ?」
遂にか。さてと、やるか♪
「それではレフリーの千香! あとは頼んだ!」
「まっかせなさーい!!」
テンション高めにバニーガールの格好で登場してきた千香。
セクシーに見えるが、ヤツからすれば今日はこれが萌える服装と思ってのことらしい。
男としてはうれしいが残念な思考の美少女である。
「なんて大胆! くっ、これはあとで私も猫耳ナースの姿にならねば」
「ここにもいたか、残念美少女が」
まどかさん、頼むから今日も自重してください。
そんな願いを込めてチョップでツッコむのだった。
ちなみにパワーアップした二人のお相手はシグナム、ヴィータにさやか、杏子とほむら達がしてる。
時間稼ぎのつもりがただいま現在進行形にボコボコだったりされているよ、あの二人。
「ところで君に会わせたい女の子がいるんのだが」
「久しぶりだな、『無血の死神』」
……え? マジで?
まさかの再会にオレは唖然となるのだった。
(衛サイド)
とあるビルの屋上というステージにて、我の目の前にはかつてにっくき敵だと思っていた少年、天宮草太がいた。
バリアジャケットを展開し、剣を持つその姿にかつての我ならば慢心しながらも足がすくんでいただろう。
だが、なぜか怖いという恐怖はなくむしろ、修行の成果が楽しみという感情がある。
「なんで君は神威達に協力する? 彼は極悪人なんだぞ!」
「我が友を侮辱するな天宮。我こそがこちらから頼んだのだ。むしろ我らが極悪人である。貶すならば我にしろ」
「信じられるか! どうせはやてをモノにするためにしたに違いない!」
はやてをモノ…………だと?
「ふざけるな貴様。はやてはモノではない! はやては人だ。我が恩人だ! 貴様のような何も知らぬ人間が語るな!」
「踏み台の言うことなんか信用できるか! お前ははやての友達かもしれないが関係ない! 間違ったことは必ず止めなきゃいけないんだ!!」
天宮は中段の構えをとる。
もはや舌戦は無意味か……。ならば我も拳を固めるまで。
「ならば止めてみせよ。我はもはや慢心せぬ。見下さぬ。ただ弱者として、強者たるものに立ち向かうのみ……!」
真のヒーローとは弱者のために拳を振るう。たとえどんな状況だろう、どんな環境だろうと彼らはそれをやめない。
なぜなら『ヒーロー』だから。人を救ってこそ『ヒーロー』だ。
「礼を言うぞ天宮。我は貴様と出会い、我が友と出会い、自身の本来の夢と目標を思い出せた。そして無力な弱者と知り、一から鍛え直した」
杏子殿の槍術、さやか殿の剣術、マミ殿の銃、そしてまどか殿の弓術を教授させてもらったとしても我はその戦い方が合わなかった。
才能がないと自覚していたとしてもここまでとは思わなかった。絶望もした。
しかしまどか殿の紹介で我は生涯の師となる者に出会うことができた。
そして極めることが遂にできた。
「天宮よ。貴様は力の源はどこにあると思う?」
「? 心だろ。そんな簡単なこと」
「そう力の源は心と言える者もいる。しかしそれは人それぞれである。我が友、ソラならば力の源はここと言うであろう」
我は自身の胸を軽く叩く。
天宮が「俺と同じ」とほざいたが否定した。
神威ソラは答えた。
――――力の源は魂である、と。
折れない。
屈しない。
たとえ絶対的なモノが立ちはだかることになろうと最期の一瞬まで挑み続ける
無論、彼に慕う少女達も同じ考えである。ゆえに彼女達は強いのだろう。
「しかし、我は我が友と貴様の考えとは違う」
「それじゃあお前の力の源はなんなんだよ!」
「よくぞ聞いてくれた!」
我は師から教わって、一つの真理にたどり着いた。
我は未だバリアジャケットを展開していない。否、最初から必要ない。
バリアジャケットなどただの動きやすい服装に変わる程度の認識でしかない!
あの謎の剣士タイプから一新したのだ!
「刮目せよ! 我がたどり着いた一つの境地を! 今こそ答えよう我の力の源とは!」
そのとき、我は師と最初に出会ったときのことを思い出した。
走馬灯のように。そう、師は言う――――
『見よ、我が輩の芸術的肉体を!!』
――――芸術的な『筋肉』こそ真理であると!
「そう我の力の源こそ! 『筋肉』である!!」
そう叫んだときバリアジャケットは展開され、肉体が普通の小学生から大人になり、一般人とは思えない位に筋肉が盛り上がった。
これは大人モードと言われる変身魔法である。
そしてバリアジャケットも変化した。
上半身は開いた学生服でズボンはレギンス。我が動きやすいように改良したのだ。
そして両手には、それぞれ手の甲に魔法陣が描かれた掌を開閉できるグローブがはめ込まれていた。
「スピード、パワー、そしてテクニックの全てが必要なのは筋肉である! それが我がたどり着いた一つ真理なりィィィィィ!!」
「いったい何があったんだお前に! いつもなのは達に付き回っていたお前はどこにいった!?」
「そんなもの筋肉の前では無意味! マッスルパワーの前では性欲、食欲、睡眠欲のあらゆる欲は抑制できる!! 見よ、この芸術的肉体を!
ふっっんぬゥゥゥゥゥ!!」
「見たくないし、服着ろ!」
せっかく見せているのに、ツッコまれたのが解せぬ。しかし、この芸術的筋肉を隠すなど笑止千万である。
「うわー、スッゲー筋肉……」
「やっぱりアームストロング少佐を紹介して正解だったね! ようこそイロモノワールドへ!」
「何があったんだ彼に!?」
「落ち着けクロノ執務官。……まさかこの世界でも筋肉至上主義と合間見えるとは」
ふふん、それぞれ開いた口が塞がらないようだ。では行くぞ天宮!
愛と筋肉の戦士の我の前にひれ伏せ!
「ゆくぞ、強者! 筋肉の貯蔵は充分か!」
「そんなもん貯蔵できるわけ――――って、はやァァァァァ!?」
こうして我と天宮との戦いは始まった!
キアラ・グレアム: 十歳という年齢で提督まで上り詰めたチート少女。前世の記憶という体験から彼女がバンバン活躍した結果である。元はグレアムの同僚の娘で平凡な暮らしをしていたが、ある日を境に父を失い、母を心労で亡くす。そこから這い上がるために文字通り身体を使っていたという噂がある。……非処女なのは、おそらく? ソラを求めているのは本心から。恋した乙女はとことん手強いですぞ~。
ロッテリア: リーゼアリアとリーゼロッテの略称。後に出てくる単語です(笑)
ひぐらしは鳴かないけど: ……そういえば、梨花ちゃんの中の人って魔王様だったよなぁ。ちなみに圭一がキラさんだと知ったのは今日この頃。
アームストロング: 鋼の錬金術師と同じ容姿。この人ってスゴいのは、マッスル以外ないかと……。そしてキアラはマッスル至上主義者に会ったことがある模様
天道衛: 知ってるか? 運命から逃れられないのさ……。違いは錬金術から魔法にシフトしているところのみ。さあ、筋トレの時間だ諸君!!