・特になし。強いて言えば前文
(??side)
ヒーローと英雄。
この二つには英訳、和訳関係では同一だが、何かが違うと考えている。
ヒーローは仮面のライダーやパンの正義の味方のような『生かす』を志す存在で、怪人は爆殺ことはありますが人を殺すことはまずない。
しかし一方、英雄は神話で出てくるように化け物や強大な悪を殲滅し、滅ぼすような『殺す』を追求する存在だ。大義名分で人を殺すことを問わない人を指す。
ゆえに彼らは相容れない。
現実と理想。水と油のように混ざることはない。
どちらも正しい。そしてどちらも間違っている。
神威ソラは理想を求めすぎたあまりに、大切な人を失った。しかし現実を求めても彼は大切な人を失った。
どちらも失う結果だった。しかしダメージが大きかったと言えば、理想を求めすぎたという点である。
夢を求めた人間が挫折すれば、とても落ち込むことである。
まあとは言え、夢を求めるからこそ目標が生まれる。そのことを理解してほしいと思う。
今の彼の夢? そんなの決まっている。
彼女達と過ごすこと。平和で馬鹿馬鹿しく笑える物語をつくることだ。
(ソラside)
まず結論を言わせてもらおう。オレ達も蒐集活動することになった。
八神はどこか納得していなかったが、最終的には衛の熱意に負けて、魔力を持つ生物ならば、蒐集していい許可をもらった。
まどか達を八神家に呼んで事情を説明すると予想通り、協力してくれると言っていた。
まどかやマミさんというお人よしがいると思えるが、ほむらまで乗り気に賛成したのは意外だった。
なんでもジュエルシードの事件で余った取引材料がまだあるからであるらしく、いつでも脅せる武器らしい。
「お主もワルよのう越後屋」
「いえいえ、お代官様ほどではなく」
「知ってるのが意外」
「病院でよく水戸黄門見てたから」
まさかの意外な事実である。ちなみにオレ達のあくどい顔を最初に見た八神は少しドン引きだったとか。
失礼な。この美少年と美少女にドン引きとは見る目がなさすぎる。
まあ、どうでもいいエピソードだが。
すると、魔法陣が現れる。
衛がオレ達に鍛えてくれと言ったので、とある無人世界では衛くん魔改造計画を開始した。
彼にはこれと言った武器がないので、槍の杏子、剣のさやか、マスケット銃のマミさん、弓のまどかという風に相手したり、教授してもらっている。
名付けて『経験値を高めようぜ作戦』だ。
え? ネーミングセンスない?
文句があるなら命名したまどかまで。『グロック17』と『デストロイアーチャー』でおもてなしします。
普段はボロボロになって帰ってくるのが毎日な彼であるが、今日は疲労困憊だがボロボロではない。
成長している証拠だろうな。
「まどか、どうだったかしら?」
「うーん、なんか弓を使うのはしっくりこないとか言ってたね。やっぱりザフィーラさんみたいな拳で戦うのがしっくりくるらしいよ」
「
「うちのところにはないタイプよね……」
拳で語る神器使いはここにはいないしな。まどかが「そうだ」と呟いて、携帯を取り出す。
「拳で闘うことを得意とした最近知り合ったオジサンにお願いしよう」
「まどか、まさか援交じゃないよな?」
「許せない……まどかを汚したその男を始末するわ……」
重火器を取り出すほむらにまどかは「違うから仕舞って」とお願いした。
ちょっとホッしたりする。そこまで彼女は間違っていないようだ。
「その人は女の人に興味ないよ」
「なら、オレみたいな男なのか? こんな美少年を狙うオッサンなのか!?」
「ソラくんはイケメンじゃないし、男が好きなホモじゃないから安心してよ」
「さりげなく傷ついた。ほむら、胸かして。泣きたい」
「どうぞ」
胸に抱きついてさめざめと泣きます。こやつもノリノリである。
あ、いいにおい。女の子のにおいと柔らかさに至福のときである。
「あとでソラくん、お話しね♪」
「解せぬ」
「とにかくその人はね――」
まどかがその人についてオレとほむらにヒソヒソ話した。
……………………うん、その…………なぁ。
オレ達二人は衛に向けて一言を言った。
「衛、ファイト」
「あなたのこと忘れないわ」
「貴様らいったい誰を紹介するつもりだ? そしてほむら殿、それ相手が死ぬ間際の一言だからな!?」
ツッコむ衛にオレ達は彼がそのオジサンのようにならないように祈った。
フラグじゃないよなこれ?
とある休日。ほむらとデパートに向かった。
買いたい本が今日発売という理由もあるが、こいつと久しぶりに出かけたいと思ったからだ。
「どういう風の吹き回しかしら。ソラが私のような完璧で最高の美少女を誘うなんて」
「お前って相変わらずだな。ボッチの原因じゃねそれ」
「あら、私をボッチ扱いとは失礼ね。許せないわ。その無礼の報いとして差し出しなさい……指を」
「折るのか? 指を折るつもりなのか!?」
オレのリアクションが面白いのか微笑を浮かべる自称美少女。その微笑は、イタズラ成功した子どものようないい笑みだ。そのうえ、文字通り周りを虜にするほどだ。
現にほむらの微笑に周りの男と女も虜になっていた。
「ふふ♪ やっぱりソラのリアクションはいいわ。いじめがいがあるわ」
「歪んでるなお前」
「ええそうよ。私は歪んだ女で面倒な女よ。構ってくれないとイタズラするわよ」
「ハロウィンは先月やったからな。はいはい、さっさといくぞ」
「冷たい男ね。昔は熱血だったじゃない」
「……青くさい覚悟はもう捨てたんだ」
頭に?浮かべてほむらはしばらくオレを見る。
やれやれ、話しておくか。そう思ってオレは会話を続けた。
「オレはさ。いろんな人と出会って、いろんな人を助けて、まるでテレビのヒーローのようになったと錯覚していたんだ。誰でも助けることができる正義の味方みたいにな。けど、まどかの概念化という悲劇は阻止できなかった。そのときの教訓で『救えない人もいる』を学んでいたはずだったんだ」
けどオレはそれを理解せず、戦争では意味のない不殺ばかりしか行わず、『神器使い』達を殺さなかった。
師匠とはそのことでぶつかったこともあった。
『オレは人を殺さず、戦争に勝つ』
そう言って師匠の耳を貸さず戦い続けた。師匠も半場呆れた形で、オレの意思を尊重してくれたけど。
なのに…………、
「それが間違いだったんだ。戦争はなんでもありの殺し合うものだ。だからオレはもう戦えないと勘違いして放っておいた神器使い達の報復にあった。そして――師匠はオレのせいで死んだ」
あのとき師匠はオレを庇って戦死した。瀕死だったと勘違いして死んだフリをしていた敵がオレに攻撃してきた。
その致命とも言える攻撃から庇って、胸を貫かれて……。
敵にとって師匠はかなりの猛者で名声を得たと思って歓喜の声をあげた。
オレはただ泣き叫んだ。そして聞きたくないものを聞いてしまった。
『こいつはラッキーだ! あの閃光を討ち取れた』
『しかもガキを守って死ぬなんてバカにもほどがあるぜ!』
…………その嘲笑を聞いたとき、オレのナニカがキレた。
怒り、憎悪の赴くままにオレは敵を殺した。皆殺しにした。
一人残らず、魂を肉体から切り離した。
血を一滴も流さず、残されたのは――魂を失った人形と師を失って泣く一人の子どものみ。
だが、その子どもの心には少年らしさの夢も希望はなく、ただこの悲劇をなくすために敵対者に対する怒りしかなかった。
「だからオレは『救いのヒーロー』と青くさい不殺の信念を捨てて、敵をただ抹殺し、蹂躙する『英雄』になろうと思ったんだ」
ヒーローと英雄はどこか違う。
ヒーローは周りから頼られ、誰もが親しみを持てる存在だ。
しかし英雄は違う。周りから讃えられ、誰もが畏怖を持つ存在だ。
どちらも憧れるものだが何かが違う。
「………………」
ほむらはオレの話を聞いて地雷を踏んだと思っているのか気まずい表情になった。
なので――――そんな彼女を乱暴に頭を撫でる。
「そんな辛気くさい顔をやめろよ♪」
「ひゃっ! い、いきなりなにするのよ!?」
「辛気くさい顔をする女に渇をいれた」
「レディの頭を強引に撫でるなんて最低よ」
「はっはっはっ♪」
「笑わないでよ! もう…………」
膨れっ面になって拗ねたほむらに悪かったと言って頭を下げた。
「神器使い達の戦争は終わった。そして、オレの子ども時代はあの戦争で終わったんだ。だから心配する必要はもうないよ」
「そういえば、心だけでなく身体も変わっていたわねあなた。ほんと一見誰だかわからないくらい……その、カッコよく……なってたわね」
「そんなによくなってたか?」
そりゃ、仲間の女の子達によく見られていたし、誘惑もあったけど、あんま興味なかったしなぁ。
戦争の世界とほむら達のいた世界との時間の流れはかなり違うらしく、十年間の時間の流れはほむらの世界ではまだ四ヶ月くらいしか経っていなかったらしい。
そのとき彼女達と再会したとき、オレが誰なのか全くわからなかったらしい。
「再会したときのお前らはあまり変わって…………いや変わっていたな。あのとき見たアレは変わったとしか言いようがない……」
「あ、アレはマミさんとまどかにのせられて、その……」
指と指をツンツンして恥ずかしがるほむらに萌える今日このごろ。
まどか曰く、これは『ほむほむモード』らしい。
昔の彼女がこういう気弱で恥ずかしがり屋だったそうらしく、たまに失敗したり、図星を付かれたりしたらなるらしい。
ほむらって冷たい勘違いされがちだけど、実は人付き合いが苦手で不器用なんだよな。
ホントは知り合った友人やまどか達に優しい少女である。
「ほむら、オレは変わったことに後悔してないよ。そりゃ辛いことが今まであったさ。けれど、今は助ける力がある。知り合いを助けることができればそれでいいと思っている」
「見ず知らずの人を助けないの?」
「知らん。その辺りはマミさん、まどか、さやかの担当さ。見ず知らずの相手を感謝されたところであんまうれしくない」
「同感とは言わないけど、わかるところがあるわ。でも、もしその人が知り合いの知り合いだったら?」
「…………助ける、かも?」
「クス、何それ。ふふふふふ……」
「笑うな!」
くそっ、一本とられたし、なんだよこいつの笑う顔。
見れないくらい……かわいいじゃねぇか……。
「あーやめやめ。さっさといくぞ!」
「はいはい♪」
「あーくそ、笑うなよもう……」
照れくさいったらありゃしない。オレはほむらの顔を見ることせず、彼女の手を握り、スタコラ目的地に向かった。
――――そのとき周りの視線は、『姉と弟と出かけている家族』を見守る暖かいものだったと思う。
「あった。湯煙殺人事件簿」
「それっていつも風呂場から推理を始める前に覗きして、独房で犯人を暴く変人探偵の物語じゃない」
「意外に面白いの。ってお前もなに買ったんだ?」
「世界の拷問のやり方シリーズ第六巻。あなたのお仕置きのバリエーションを増やしたくて」
「命の危機が増えたオレに全国の銀髪少年は泣いた」
まどかの知り合い: マッスル。もはや決定事項。さあ諸君、筋トレの時間だ!!
幼いソラ: 通称チビソラ。年相応無邪気で、そして子どものように泣けなかった哀れな少年。理想が間違っていたという答えを得て、絶望の末に今の彼がいる