とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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第二十六話 開戦――――シリアスになれねぇ

 

 

 

 生き物のいなさそうな静かな世界で、オレ達は空中戦をしていた。

 オレが斬り込むと赤毛ロリもといヴィータはハンマーで防いだり、回避したりする。

 

 お返しとばかりにヴィータもハンマーで叩き込む。あれが身体に直撃したら痛いだけでは済まない。

 なので回避か受け流ししかオレにはできない。

 

 おまけにこいつ、見た目がこんなのくせに動きは歴戦の戦士だな!

 

「なんか不穏なこと思ったか?」

「直感スキルは高いロリだなと」

「なんだとテメェ!」

 

 一旦離れてヴィータは魔力で球体を数個造り出した。空中に浮かぶ赤い球体にハンマーをぶち当てて発射。

 

 それがこちらに向かってきた。

 

「ゲートボールか!」

 

 ゲートボールの魔弾をオレは右へ左へとヒョイヒョイ避ける。しかし、辛うじてという感じだ。

 

 ああくそ、なんとか避けることはできるが元々オレは空中戦が苦手な神器使いだ。

 別に浮遊魔法が苦手ではないが、神器を使ってる間に魔法はあまり使いたくなかったから空中戦の練習はしてない。むしろオレはビルや建物を使って飛んで戦うジャングルファイトが得意方だ。

 

「隙あり!」

「ゲッ」

 

 二個だけ回避できない球体がオレの目の前にあった。

 

 仕方ない。戦時以来だが――――

 

 

「『跳ね返せ(ミラーシルド)』!」

 

 防壁を展開し、球体を防ぐだけでなく――――"跳ね返した"。

 

 跳ね返した魔弾はヴィータのハンマーによって弾き出された。

 

「なんだその魔法は!? 見たことねぇぞ!?」

 

 そりゃそうだ。オレ達が使う魔法とこの世界の魔法は違う。

 

 デバイスという補助機はなく、脳裏に描いた魔法陣を展開する――――それがオレ達の魔法だ。

 

「チッ、自分の攻撃でやられて――――」

「たまるか……ってか?」

「っ!?」

 

 魔法で速さを高めたオレはヴィータの背後をとる。

 

 振り向き様にハンマーをオレにぶつけようとするが、それは既に"予想"している。

 その前にオレはデバイスに向けて神器を差し込み、封鎖した。

 

「なっ、デバイスがスリープモードにさせられた!?」

 

 パソコンで強制停止させるようにデバイスを機能停止させることができた。

 自らの相棒が停止したことでヴィータは落下していく。

 

 本来ここで落下させてミカン箱のようなスプラッタな結末にしたいが聞きたいことがあるので、クロノ少年のモノマネの『バインド』で拘束してから地にゆっくり下ろす。

 

「さあ話してもらうか。お前らの目的を」

「くっ、誰が!」

 

 

「くらえ! 『フォルテッシモ』!!」

 

 

 ズドォォォォォン!!と凄まじい勢いで地面に何かがぶつかり、砂煙が舞う。

 

 轟音と煙と共にシグナムがヴィータの前に吹き飛んできた。

 

「ガハッ!」

「シグナム!?」

 

 さやかのヤツ。最大奥義でぶっ飛ばしてきたな。

 オレがシグナムのデバイスも機能停止にしてからバインドで拘束していると、さやかが着地してきた。

 

「空に飛んだり、剣がバラバラになったりと苦労したわよ。あの人かなり強かったし」

「それでも勝てたお前はスゲーよ」

 

 空へ飛べないハンデを抱えながらも勝てたこいつに健闘を称えて頭を撫でた。

 「へへ……」と照れ臭そうに笑みでさやかはオレに言う。

 

「それじゃあ、うめぇー棒の件許して」

「だが断る」

「解せぬ」

 

 食い物の怨みは深いでごわす。

 

 きゃァァァァァ!!と絹を裂くような悲鳴が響く。それにヴィータとシグナムが驚いていた。

 

「この悲鳴はシャマル!?」

「テメェらシャマルに何しやがった……!!」

「「……………………」」

「いや、なんだその『またヤツか』って顔!? なんだよ、シャマルに何が起きたんだよ!?」

 

 懇願するかのようにヴィータは聞いてくる。その答えを出すかのようにシャマルがシグナムと同じく飛んできた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――バニーガールの姿で

 

 

 

 

 編みタイツと赤いバニーの格好をしているその姿はとても蠱惑的だ。ここがシリアスの場面じゃなかったらよかったのに。

 

「「は?」」

「うぅ……まさかこんな格好させられるなんて…………もうお嫁にいけない……」

「シャマル、なんでそんな格好してるんだ!?」

「むしろ何があったか教えてほしいよぅ……」

 

 オレもだよ。どうやったらこうなるんだよ。千香もさやかと同じように着地して彼女達の疑問に答えてくれた。

 

「よくぞ聞いてくれました。これぞ師匠直伝、名付けて『高速着せ替えアタック』だよ! ちなみにそれは師匠お気に入りのコスだよ!」

「あんたの師匠はとんだスケベオヤジだよ」

「師匠は女だよ?」

「あんたの師匠はとんだエロオヤジだよ!」

 

 さやかがツッコむ。

 

 ろくなこと教えてないなあの人。戦時中にお世話になったけど、ほとんどがギャグとノリで敵を殲滅してたな。

 

 しかもほとんどがメンタルブレイクという名の強制コスプレだったりする。

 

 ついた異名が『混沌の神器使い』である。光と闇ではなく、場を混沌させるカオスな神器使いと称えて。

 

 オレの師匠もよくそのことで愚痴とか言ってたな。

 

「ふっふっふっ……ええのうええのう。この乳に、腰、そしてヒップ。美女のコスプレは一番でゲスぅ♪」

「フラッシュするな変態。本人の意思関係なく撮るなよ」

「恥ずかしい……。でもなんでだろう…………この羞恥心に爽快感があって、新しい何かが……」

「シャマルというお姉さん、頼むから目覚めるな!」

 

 これ以上変態が感染するのだけはやめてほしい。

 

「これで一件落着だね!」

「「落着じゃねぇよ!!」」

「あべしっ!!」

 

 オレとさやかの拳骨ツッコミで千香は地面とキッスした。

 

 とんだ置き土産を残してくれたよ。

 

 オレとさやかは目覚めそうなお姉さんを正気に戻そうと奮闘するのだった。




バニーガール: お姉さまタイプならぜひ着てほしい。というか美少女全般が着てほしいのが男の欲望(千香はオヤジだが)

『混沌の神器使い』: ノエル。数々の武勇伝という名前の混沌をもたらした。例えば、とある男性が婚約者の女性を部下の女性に寝取られたり、マヨネーズを使って御飯を台無しにしたり、さらには伝説上の生き物をデコレーションしてタクシーにしたりと数々の伝説を残している。ソラが文中語っていた『メイドで冥土へ』という事件はメイド服を着て箒とハタキで敵を全滅したという……。つまり彼女はバグキャラである。

『高速着せ替えアタック』: ノエルがパンツをゲットするために編み出した謎の高等技術が発展した技。ズボンからパンツを抜き取るヤツはいったい何者なんだ……?



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