とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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(変更点)

・特にはない


第二十四話 運動会はガチの争い

 

 

 夏休みは終わって始業式。

 あんなに暑かった夏も残暑となり、身を潜めた。

 

 え、展開が早い?

 

 いやだって、あんま話すことないじゃん。主に馬鹿やらかしたのは千香とかだし。宿題もみんなで協力して終わらした。

 

 杏子とさやかが全く手をつけてなくてオレが徹夜するはめになったがな。そのときぶちギレて涙目になった二人は忘れない。

 

 そして、季節は秋。紅葉が舞うこの季節にはいろいろな催しがある。

 

 食欲の秋、読書の秋、それから――――

 

 

 

 

 

 

「第四十六回! 聖佯小学校運動会の幕開けです! 司会は私、三年四組の早乙女和子と!」

事嶺儀礼(ことみねきれい)だ」

「ハイ、そんな事嶺さん。今日みなさんに一言お願いします!」

「なるべく物品と施設を壊さないでほしい。あとなるべく安全に競技を行ってほしいものです。ぶっちゃけ事後処理がめんどいです」

「はい、リアルで生々しい大人の事情を知って士気が高くなったところで最初の競技に移ります! ゆけ、若人達!!」

 

 士気高くならねぇからな早乙女先生。つーか、この先生テンション高いな。

 

 何か良いことであったのかい?

 

「なんか彼氏できたみたいだよ」

「どうせ別れるだろ」

「確かに」

「何気なくひどいわね。まどかと、ソラ」

 

 ちなみに通算二十の失敗例があったりする。早乙女先生の失敗談のせいで大半の女子生徒が男性恐怖症になったりしないよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある程度の競技を終わった。

 千香がバレーリーナしながら一位をととった。こんなヤツに負けるとは哀れである。

 

 大玉転がしではさやかが下敷きになった。張り切っていたのに、最後の最後で自分の大玉で自滅するとはいと哀れ。

 

 二人三脚ではまどかとほむらがイチャイチャと走っていた。世の男子が血涙流していたのは同性に負けたからである。

 

 杏子はパン食い競争で全てのパンを食らった。当然、失格になったがなんか幸せそうだった……。

 

 マミさんはリレーで一位をとった。一緒に走っていた男子が途中から減速した理由は少し揺れるお乳に目に入ったからである。

 

 まあ眼福だった。目をまどかに潰されたが。

 

 とまあ、前半の最後の競技である騎馬戦となった。その代理としてオレは参加することになった。

 

 まさか中沢くんが怪我して欠場というアクシデントが起こるとはな。

 

 おのれ、石ころ。たった一つで中沢くんを戦闘不能にさせるとは。

 

「はっはっはっ! 現れたわねソラ! ここで雌雄を決してやるわ!」

「テンション高いな、さやか」

「ぶっ潰してやる! オラァァァァァ!!」

「お前は単純に怖いよ杏子」

 

 やる気と殺る気満々な彼女達を尻目に馬役である名も知らない彼らに激励をかける。

 

「とりあえずあいつらに遭遇しないよぉー頼むわ」

「俺らタクシーじゃねぇよ!」

「ちなみに遭遇したらいけに――じゃなかった。緊急脱出するから各自備えてろよ」

「いま生け贄って言ったよな!?」

 

 さあ、なんのことやら?

 

 ピストルが鳴り、競技が始まった。

 最初に襲ってきたのは名も知らない別クラスのとある少年。そいつが帽子をとろうする。

 

 これを取られたら当然負けが確定する。

 

 オレはそいつの手を掴み、こちらに引っ張る形で馬ごと崩した。

 

「死ねや! 優男ォォォォォ!」

「うぎゃァァァァァ!?」

 

 どこからか凶悪な掛け声に思わず反応するオレ。

 

 あ、オリ主くんが杏子の凶手に倒れたんだ。思いっきり殺意が込められてた拳だったと思う。

 

 何がそんなに気に入らないのかは少しわかってたりはする。杏子って口先だけのヤツは嫌いだしな。

 

 高町も心配するような声をあげるが、さやかは心配して気を取られた月村とバニングスを倒した。

 

 必殺仕事人ごとくシュバッと帽子を奪った。

 

 ……てか、ヤバい。杏子とさやか以外は倒せたけど、残りはオレを含めた三人しかいない。

 

「あとはテメーだけだぜソラ?」

「ふっふっふっ、この美少女コンビに勝てるかな?」

「自分で美少女とか恥ずかしくない」

「……ちょっぴり恥ずかしい」

 

 じゃあ言うなよ。

 

「隙あり!」

 

 って、杏子め。予想通りにオレの馬は崩しに来たか。

 馬は完全に崩れて、身体が地面に近づく。

 

 確か地についたら負けだよな? やれやれ…………。

 

「なっ!?」

 

 誰かが驚愕した声を出した。そりゃそうだ。

 

 オレは他の騎馬戦選手の騎馬に飛び乗ったからな。

 

「くらえや!」

「甘い!」

 

 オレが乗ってた騎馬戦選手は崩されたが、杏子の騎馬を崩すことができた。

 オレは最後の一人のところへ飛び乗った。

 

杏子もまたさやかの騎馬に飛び乗ったようだ。

 

「ワリーさやか。助かった」

「いいって。でもさすがソラだね。ジャングルファイトが強いだけある」

「アイツのエキスパートだからな」

 

 前世の頃の話である。幼い頃から障害物を駆使して戦うことが多かったからな。

 

 さやかと杏子の二人は体勢を立て直したか。そして、周りが静かになる。緊張が周りを支配する。

 

 冷や汗が落ちた――――――――刹那、動き出した。

 

「はァァァァァ!」

「どりゃァァァァァ!」

 

 オレと杏子は同時に飛び出し――――帽子を奪った。両方とも帽子がない。

 

「チッ、引き分けか」

「さすが杏子だな。ギリギリだったぞ」

「アタシもさ。良い勝負だったぜ♪」

 

 オレ達は握手してお互いの健闘を称えあった。周りの歓声が一斉に沸き上がる。

 

「スッゲー歓声」

「ああ……」

「そりゃそうだろ。あんだけ動きまわったらな」

 

 体育教師の円山先生が拍手しながらやってきた。

 

「お前らの戦いは素晴らしかった。小学生とは思えないくらいの働きを見せてくれた。だから――――――――失格」

「「は?」」

 

 先生の一言に歓声も静まった。

 

「いやなんでって顔をされてもルールには殴る蹴るもしくは他人の馬に乗ることを禁ずるって書いてあるからな」

 

 マジで~……? オレと観客達はガックリしている中、杏子は挙手。

 

「先生、それじゃあ屋上で決着つけていいですか! アタシの熱いハートが冷めてない!」

「冷めろ。頼むから」

 

 お前まだ元気だな……。ちなみに騎馬戦はうちが負けた。

 

先にさやかからやればよかったなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し太陽が隠れた天気の中にて、昼食を終わらせてから後半戦。

 

 白熱したオレ達の応援合戦が終わり、借り物障害物競争という種目が始まろうとしている。

 借り物競争と障害物リレーを混ぜた競技である。

 

「ちなみに封筒に入っているお題の変更は無理です。何か質問は?」

「先生ー、なんであそこにいかにも危ないですと言えそうな刺が生えているのですか?」

「レプリカです。リアルではありませんが死ぬほど痛い罠なので綱をしっかり渡ってください」

「そんな罠しかけるなよ!」

 

 思わずツッコんだオレは悪くない。

 

 なんだこの配管工事のオッサンが挑むステージは!?

 しかも最後の坂道なんかヌルヌルテカテカしたもので濡れているんだけど!?

 

 何これ、どこの芸能界!?

 

「まどか、あなたこの競技参加するのかしら?」

「ううん。ローションが出ると聞いてやめた。ヌルテカちょっと苦手だから」

「ショボーン……」

「でもソラくん出るよ!」

「さあソラ! その濡れた姿を私達に見せてちょうだい!」

「見せるつもりないし、カメラ構えるな!」

 

 ほむらは一体何を撮るつもりだったんだ? つーか千香も準備するな!

 

 ツッコミ終えたオレはスタートラインに立つ。ピストルの合図で一斉に走り出す。

 

 そこそこな速さで走って封筒を手にした。

 

「さてとお題は?」

 

 

 以下がお題。

 

『やあやあ、この封筒を開けたというラッキーボーイは君だね? 君は運がよい。思えば私の伝説が始まったのは十二世紀…………いや十六世紀だったかな? とにかく私は』

 

 うん、これは…………はっきり言おう。

 

「うっっぜェェェェェ! お題読むのにどんだけ時間かけるんだよ!?」

 

 他のヤツもそうだし! ええい、二枚あるからさっさと二枚目を読む!

 

 

『ギャルのパンティー』

 

 

「誰だァァァァァ!! これ書いたバカはァァァァァ!?」

「ちなみに今回封筒のお題を考えてくれたのは天ヶ瀬千香くんだ」

「千香テメェェェェェ!!」

 

 テヘッと茶目っ気ありありな顔で目を逸らす千香。

 あとであいつ絶対シバく!

 

 くっ、とにかくギャルのパンティーを誰かにお願いしないと。

 

「だ、誰か…………その…………女性の中に…………えっと」

 

 言えるかァァァァァ!! 公衆面前で言えるもんじゃねェェェェェ!

 

 ガク……もう駄目だ。こんなのオレにはできないよ……。

 

 オレは膝について愕然としていると誰かが肩を叩いて励ましてくれた。その人は――――

 

「お困りみたいね」

「ま、マミさん……」

「お姉ちゃんが力を貸してあげるから元気出して♪」

 

 微笑を浮かべて、彼女が励ましてくれる。

 

「でも……これは!」

「ソラくんが何に苦しんでいるかわからない。けれどお姉ちゃんはソラくんの味方だから。どんなソラくんでも受け入れるから、ほら。言って見てちょうだい♪」

「ま、マミさん……」

 

 

 勇気が出た。希望が沸いた。あとは根性を見せるだけ!

 

「マミさん、お願いします」

「はい、なんでしょう?」

「その…………あの――――

 

 

――――い、一緒に来てくれませんか?」

 

 

オレが出せたお願いはこれが最高である。

いや普通に下着貸してって言ったら、変態じゃん。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ぎゃァァァァァ!」

「ママァァァァァ!」

 

 綱渡りの障害を乗り越えたが、オレの後ろには未だに阿鼻叫喚な世界がある。

 よく乗り越えたと言いたいオレである。

 

 てか、スネちゃまいた気がする? ああさっき落ちたヤツね。

 

 どうでもいいだろ。

 

「んで最後の関門のローション坂道か」

「なんで最初は普通なのに、最後の二つの関門だけハードなのかしら?」

 

 いや、マミさんのツッコミ通りだけどさ、中間もかなりしんどかったよね?

 

 なんで配管工から巨大な食虫植物が出てくんだよ。

 まあ、それはさておき。これを乗り越えなければ勝利はない。

 

「だけど、越えられないことはないけど」

「へ?」

 

オレはマミさんをお姫さま抱っこして坂道を飛び越えた。あまり長くなくて助かった。

 

「そ、ソラくん、降ろして! は、恥ずかしいわ!」

「無理。拒否。とっと行かないと杏子が来やがる」

 

 振り返るとそこにはカツラを手にした杏子がいた。

 

「追い付いたぞソラ!」

「くっ、ヤバいな! …………ていうかそのカツラ、誰のだ?」

「教頭先生から拝借したぜ!」

「だから泣いてるのね教頭先生……」

 

 マミさんの言う通り、三角座りでさめざめ泣いてる教頭先生いと哀れ。

 

 とりあえず忘れてやるのが優しさだ。

 

「この勝負もらった!」

「オレを足で勝とうなど笑止千万。小学校の頃の疾風の異名を見せちゃる!」

「お前いまも小学生だろ!?」

 

 杏子にツッコまれた。

 

 だよねー。そうこうしているうちにラストスパートである。最後の全力疾走である。

 

「うォォォォォ!」

「どりゃァァァァァ!」

 

 そしてゴール。勝ったのは―――――――

 

 

 

 

 

 

 

―――――――オレだ。

 

「はぇーなソラ…………はぁはぁ」

「伊達に駆け抜けてないからな」

「いい加減降ろしてくれないかしら。……ものすごく恥ずかしい」

 

 マミさん真っ赤になった顔を覆い隠している。そんな萌え萌えなマミさんに千香のカメラが光を出す。

 

 歓声はやはりすごい。特に女子の。やはりマミさんのお姫さま抱っこが原因かもな。

 

「次は勝つ」

「望むところだ」

 

 オレと杏子。親友であり、悪友であり、ライバル関係のようなオレ達。

 

 そんなオレ達はニシシと笑い合うのだった――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソラくーん? 帰ったらちょっとお話しよーねー?」

「……………………」

 

 まどかは死刑宣告を、ほむらが重火器を並べて帰りを待っていた。

 

「解せぬ……」

 

 思わず空を見上げる。改めて、オレは今の光景を見て、思う。

 

 千香に写真を撮られて、ついに恥ずかしくなって逃げ出すマミさん。

 

 腹減ったとぼやく杏子。サクサクとチョコ棒を食うさやか。

 

 良い笑顔で待ち迎えるまどかとほむら。

 

 

 うん、いつも通りに――――――――

 

 

 

 

「カオスだなオイ…………」

 

 その感想は騒がしい雰囲気の中に消えていく。

 

 

 

――――まあ、これがオレ達の日常だ。

 




事峯儀礼: 外道神父と同じ容姿のオリキャラ。実は大人の事情の苦労人

配管工の植物: 食中植物。害はないが若干トラウマに残る

教頭: ヅラを取られた哀れなオジサン。大丈夫。良いことあるさ

※なお、衛はある事情のため参加していないらしい

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