元旦ネタではありませんが、とりあえず更新!
どうぞ!
神のミスというテンプレな転生をした。いやあの老人はワザとそうしたと言っていたな。
とにかく我は最強の肉体とニコポ、ナデポという特典にされ、髪も派手にされ、『リリカルなのは』の世界に転生された。
転生される前、我はあの神により『原作キャラに嫌われる』という呪いをかけられた。この呪いは踏み台を演じないと身体を蝕み、苦しみを与えるという辛い呪いだった。
そのため我は感情を殺し、踏み台を演じた。
辛かった。
悲しかった。
苦しかった。
なんで自分はいつもと思いながら、と思いながら生きてきた。そんなある日、我は踏み台として一人の少年を手をかけようとした。
銀髪で青目の男である――神威ソラである。
罪悪感と謝罪を込めながら、我は彼と襲撃した。そうしなければ我はまた心臓を蝕まれ、苦しみと痛みの地獄に追いやられるのだ。
まあでもいっそのこともあった。彼が強ければ我は死ねるかもしれないと思ったからだ。
そして戦い、敗北した――――我の呪いを解いて。
驚いたことに、彼には呪いを解く術があったのだ。我は感謝した。
泣きながら何度も何度も自身のした行いに謝った。
それから彼のところに何度も赴き、関わった。天宮草太には怪訝な顔されていたが、神威ソラこそ我が友と呼べる盟友だった。
当初は近づきがたい雰囲気を出していたが、次第に柔らかくなり、いつの日か一緒に遊ぶ間になった。
遊んで、笑って、泣いて。
そんな毎日を過ごすうちに、我は車イスに座る薄幸そうな少女に出会う。
八神はやて。原作ではどうだったか忘れてしまったが無理した笑顔をするという印象がある少女だった。我はその顔は忘れられそうもなかった。
一目惚れ、ではなく悲しそうな寂しそうな迷子になった子どもになったそんな表情。
我はその顔を忘れなかった。
そんなあるとき、我の家がどこかの争いにより全壊してしまった。帰る家を無くし、最低限の荷物を持った我が浮浪していると、はやてと遭遇。
事情を説明したら「だったらうちに来たらええやん」という提案だった。もちろん断りはした。
いくら幼いとはいえ、婦女子のお宅に居候するのは些か気が引けた。
しかしはやては気にしておらず、まどろっこしいと思ったのか荷物を奪われて家に連れて来られた。
こうして我ははやてとの居候が決定したのだが、まさかこうなるとは思わなかった。
原作キャラの少女と居候することになるのは誰も思わないことだ。
しかし我はふと思うのだ。
――――我は、我が友と違い……特別じゃないから
強くないから。
弱いから。
ゆえに劣等感を感じるのだ。
それははやてにも対してだった。
なぜならはやては『強い』から。
☆☆☆
我とはやてはスーパーにて買い物を済ませ、少し休憩をとっていた。近くの公園でそろそろ夏が近い。
我が学校もまたそろそろ夏休みである。夏休みが始まれば遊ぶ学生は多いが、我の予定には全くない。
我が友と遊ぶという予定なら立てられるが、まあ学校には我が友以外の友と呼べるものがいない。
元々、草食系男子だったゆえにな……。
我ははやてを休ませているベンチに向かうとそこにははやてに絡む金髪のオッドアイがいた。
名は確か、神条シンヤだったか……? はやては迷惑そうに困った顔で彼の相手をしていた。
「はやてよ、そろそろ帰るぞ」
「あぁん? テメェ、何者だ」
「はやての知り合いだ。彼女の介護を請け負っている。ゆえに彼女の持つ荷物を持たねばならぬ」
「だったら荷物だけもってさっさと失せろよ。テメェには用はねえんだ」
「そうもゆくまい。冷蔵庫の中に置く位置をはやてに指示してもらわねば彼女には不服の結果を残す。ゆえに連れて帰った方が効率がよい」
我の言葉にだんだん苛立って来たのか、剣呑に睨んできた。少し怖いが、ここで引くのはゆくまい。
はやての友であるがゆえに、我が彼女を助けねばならぬのだ。
オッドアイは我の胸ぐらを掴むや否や、我を殴ってきた。
「調子にのんなよモブが!」
「ぐがっ!」
腹部を殴られた。少し後退すると追撃の拳が我に当たる。
はやてが「やめて」や「衛くん!」という悲鳴をあげる。
神条は今度は、デバイスを取りだし、セットアップして魔力弾を放ってきた。
ご丁寧に結界を張っており、周囲にははやて以外の人の気配がなくなっていた。
これでははやてがいくら助けを呼んでも届かないだろう。
我もまたセットアップしようとしたとき、はやてを『バインド』で拘束し、魔力弾がいつでも撃てるように設置していた。
「おっと動くなよモブ。テメェが抵抗すればはやてはどうなる?」
「卑怯な……!」
「関係ねーよ。テメェをボコボコにしなきゃ気がすまねーし、あのはやてはどうせテメェに洗脳したんだろ? だったらテメェを倒してからゆっくり俺様の愛で解いてやるよ」
気持ち悪い笑みを浮かべ、我に次々と魔力弾を撃つ。その上、殴打されていく。
身体中が鬱血し、腫れてきた。
痛いし、辛い。痛みと苦しみにより、自身の弱さが滲み出てきた。
ならいっそのこと倒れてしまえ。
はやてにはすまないが我が身がかわいいだろ?
だって仕方ないだろ?
我は弱い。弱いから助けられない。
結局、人間は自分のことしか考えられないのさ。
我の弱さ――小心の自分がそう呼び掛ける。
何度も倒れそうになっていた。なら倒れるか……?
否……我は倒れるわけにはいかない……!
我が倒れてしまえば……倒れてしまえばはやてがあの男に何をされるかわかったものではない。
二度と会えないようになるかもしれぬ。
何度も何度も意識を失いそうながらも、倒れてやらなかった。
我のそんな姿勢に神条はムカつき始める。
「なんでだ? 弱いくせに、モブのくせになんで倒れねえんだよ!」
その叫びに我は嘲笑した。滑稽だ。なんと滑稽だ。
「もうやめて衛くん! もうええから……お願いやから」
「たわけ……我ははやて。貴様を家に帰すまで倒れぬ」
「だからって衛くんがそんな無茶する必要ないやん! 衛くんが死んで悲しむ人がおるやで!?」
悲しむ人……か。我はその言葉に答えた。
「我にはいない、そんな人……」
「えっ……?」
「我の家族はな…………両親が既に離婚して、引き取った父親も女遊びばかりするクズみたいな男だったんだ…………。おかげでクラスからいじめられるわ、借金で働かされるわで散々だった…………」
なんで前世の話をはやてに話しているのだろうか?
……いや話したくなったのかもしれぬな。
その話は事実だ。今も両親はいない。いなくてもトラウマで甘えることはしなかとった思う。
「親戚に引き取られた後も、身内から疎まれて、引きこもったさ。だが……だけど、そんなときに我は見た。あるゲームをやって、我は感動した」
ありきたりな物語と記憶に残っている。ヒロイン達と共に戦い、そして悪を滅ぼす姿が憧れた。
いつかそうなりたいと夢を見ながらもう一度がんばった。
結局、交通事故で死んで転生したが。
「転生した後、この世界でそうなろうと何度も考えて――――ああ……そうだ。思い出した……我は……
――――誰かのヒーローになりたかったんだ」
そう呟いて理解した。なぜこの少女のためにがんばろうとしたのかを。
モテモテじゃなくていい。
お金持ちじゃなくてもいい。
家族がいなくてもいい。
誰かに見てほしかったんだ。
誰かに認めてほしかったんだ。
誰かに理解してほしかったのだ。
ただ純粋になりたかったんだ。そんなヒーローに…………。
「だが、所詮は神条の言う通りか……。所詮、我は特別じゃない。だから……」
「…………れるやん」
「?」
「ヒーローになれる!」
はやては涙を流しながら言った。それは夢を諦めないでと叫ぶ少女のように。
「ヒーローはな、特別じゃなくてええねん。無力でええねん。その人の心が救われたならソイツはヒーローやねん!」
「でも……だけど…………」
「誤解してるねん衛くんは。ヒーローは完全無敵じゃなくてもええねん。人間でも、普通の人でもヒーローにはなれるねん!!」
「あ…………」
前世で言ってたヒロインの言葉と同じだ……。
主人公は自分の弱さに嘆き、悲しみにくれながらもその言葉を思い出して立ち上がった。
心が脆く、精神的に大人になりきれず、何度涙を流したことか……。
その言葉を聞いて我は、気力が沸いた。力がみなぎってきた。
「我には……もう力がないぞ」
「力がなくても大丈夫。守れることができる!」
「我には……悲しんでくれる人はもういない」
「なら私が悲しんだる。思いっきり泣いてやるで!」
「我は……我は……」
「うん…………うん…………!」
――――生きて……いいのか?
そう呟くと彼女は太陽のような笑顔で、
「もちろんや……!」
彼女の言葉が我を救ってくれた。もう絶望しない。
我の心は救われたのだ――――――――彼女というヒーローに。
――――何か成さなくてもいい。
――――何も力がなくてもいい。
――――誰かを救う意思と根性――――そして優しい心があればヒーローになれるんだよ。
かつて、言っていた我が友の言葉を思い出し、我は最後の力を振り絞り突っ込んだ。
神条は魔力弾を撃ってきた。だが、気にせず突っ込んだ。
魔力弾が当たろうがお構い無く、ただ前へ走る。神条は我のその特攻姿勢に焦燥したが、もう既に拳が届く距離。
我の拳は神条の顔面を――――とらえることがなかった。
理由は障壁だ。魔力でできた障壁が我が拳を塞いだのだ。
我はズルリと身体が倒れ始めた。もう力が湧かない……。疲労と痛みで身体が限界だったのだ。
「モブの分際で、調子に乗りやがって!」
神条は魔力刃を出し、我を突き刺そうとした。もう動けない我にはそれを防ぐ手だてはない。
その魔力刃が迫る中で、我は神条の背後に何かいたのを見た。
その者は神条の腕を掴み、こう言った。
「よくがんばったじゃねぇか、衛」
我が友だった。我が友――神威ソラは普段から見せない獰猛な笑みを浮かべ、言った。
「あとはオレに任せろ。ヒーローの役目は終わりで、
――――こっからは
我が最後に見たのは『バインド』から解放されたはやてだった。
(はやてside)
わけのわからないヤツに傷つけられた衛くんに急いで近づいた。勢いのあまり車イスから飛び出してしまったところを、白髪の少女に受け止められた。
「あんたは……?」
「天ヶ瀬千香ちゃんよん。まあ、あそこでぶちギレてる少年の奴隷だよ」
「オイ、いつからオレはお前を奴隷にした?」
金髪のオッドアイから目を離さず、背中からツッコむ。彼女はそんな彼をスルーして、衛くんに光を当てる。
「それはなんや?」
「ボク達が使う治癒魔法だよ」
「そんなファンタジーなんて……あ、ごめん。前にあったわ。衛くんに気をとられ過ぎて思い出せなかったわ」
「でしょ?」
あのとき『魔女』という得たいのしれない化け物に追われて、謎のマッチョが戦っていたときのことや。あれ、一応ファンタジーやったわ。
異論は認めへん。
「てか、ソラくん一人で大丈夫なん? あのファンタジーな力なんか、あの金髪オッドアイにも使えておったし」
「あー、大丈夫大丈夫」
千香ちゃんは衛くんの治癒に集中しながら言った。
「ソラってね、敵と認めた相手やぶちギレさせた相手になるとね。
――――それはそれは怖いほど強くなるんだよ」
その通りだった。丸いエネルギー弾が放たれる前に、ソラくんは金髪オッドアイの顎を蹴りあげ、空中に飛ばした後、四方八方へ殴る蹴る頭突きで飛ばした。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!
ヒイィィィィィハアァァァァァ!!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァ!!」
金髪オッドアイから聞いてはいけない骨の音が何度も聞こえた。
やり過ぎやないやろかと思ってると千香ちゃんは、
「うんうん、テンションが天元突破してるね。まああれはまだまだ甘い方だね。腕を打撃でねじ切るくらいはやると思ってたけど」
「まだ上があったん!? てか、打撃でねじ切るってどんだけ殴れるねん!」
「いやでも『無血の死神』だったり『鮮血の断罪者』とか言われる英雄だからね~。これより上の場合は約五メートルくらい陥没させるつもりで何度も何度も殴るかも」
「その前に人体がもたんわ!」
お、おっそろしいこと言っとるでこの子。というかソラくんが縄跳びで金髪オッドアイの身体を縛り、引き寄せる。
「なんちゃってシリーズ。『夕像』『夕像』『夕像』ォォォォォ!!」
一瞬、像の足が浮かび上がったとき、金髪オッドアイの骨が『ボキボキボキィ!!』と砕ける音と共に地面に叩きつけられる。
いったいどうなったかみたいところやけど、おそらく『見せられないよ!』と妖精さんがプレートで覆い隠してる光景やろな。
「『NARUTO』最高ォォォォォ!」
「『螺旋丸』かっけェェェェェ!!」
「ここで別作品宣伝すんなやァァァァァ!!」
ソラくんと千香ちゃんのメタ発言についツッコんだのは無理のない話やで。
(衛side)
そんな事件から数日後、我は無事完治し、学校を終えてから我ははやての家に帰ってきた。
神条はもう立てないくらいやられたそうで、まあ死んでないから大丈夫だよね!と我が友は言っていたが、いつ慰謝料を追求されてもおかしくないからな?
それはさておき、今日ははやてにお知らせがあったのだ。
「あ、おかえり衛くん」
「ただいま、はやて」
我はカバンを置いて、はやてに聞いた。我が友に誘われた海水浴というのが、今回のお知らせだ。
それを伝えるとはやては「よっしゃあ! 水着の姉ちゃん拝める!」と親父発言をしながら喜んでいた。
(元からこういう少女だったっけ? …………いや元からか。うろ覚えだがなんか原作キャラではこんな感じだったな)
後におっぱい星人の誕生やもしれぬ。まあいいか。
我が微笑を浮かべているとはやては意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「ほほう、この美少女と共に住むことがうれしいやな?」
「そうだが?」
「ふぇ!?」
自分で言っておいて顔を紅くするはやて。何を紅くしているというのだ?
事実だろうに。
ま、こんな幸せいつまでも続いてほしいものだ。
――――我の名前は天道衛。はやてを『護る』ヒーローだ。
『夕象』: マイト=ガイの技。鬼畜的な物理攻撃