とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

23 / 122
今年最後の更新です!
ではどうぞ!

(変更点)

・杏子もいる。
・踏み台顕在。
・おや、踏み台の様子が?
・衛のカッコいい場面は次回です


第二十二話 これってフラグ?

 

 

 

 やや曇り空な天気。そろそろ夏休みが近い今日この頃な日にて、オレはさやかと杏子共に公園に向かい修行していた。

 

 昨日覚えた『神速』という技をマスターするためだ。厳密には恭也さんからコピった技だけど。

 

「あ、慣れた」

「規格外過ぎじゃね? お前、前世でオレと剣の鍛練したときあっという間に追い付いたじゃん」

「天才完璧美少女さやかちゃんには不可能はない!」

「敢えて地雷へ突っ込む欠点さえなければね」

 

 この前なんか体重のことでほむらと喧嘩したもんな。第二次ほむさや大戦は回避されたが、もうあれは勘弁してほしい。

 

「時間余ったね。どうしようかね~?」

「チラチラたい焼き屋とオレを見んな……」

「じゃあ買ってくれ!」

「お前に遠慮という文字はないのか杏子よ」

 

 堂々と言うのは美点だけどさ。ここ最近金欠なオレにはたい焼きは辛いのをわかってるのか?

 

 まあ買うけど。なんやかんや言ってオレは甘いな。

 

 オレはたい焼きが売られている屋台に足を運び、カスタードとアンコを二つずつ買った。

 

 すると帰ってきたときにはさやかが知らない金髪オッドアイ少年に絡まれていた。

 金髪少年は衛というポジションなのだが、あいつは赤目だったなぁ。

 

「貴様、俺様の嫁になに話しかけている?」

「さやか、いつの間に結婚したの? 聞いてねーぞ!」

「んなわけないでしょ! こいつがいきなり絡んできたのよ!」

 

 そうなの? てっきりそんな関係かと。プンスカ怒るさやかはオレと杏子に向かって言ってきた。

 

「あたしをなんだと思ってるのよ!」

「アホ」

「バカ」

「やっぱりかチクショウー! てか、アホじゃないって言ってるでしょ!? というか杏子にだけには言われたくない!」

「アホだからキュウべぇに騙されたのにか?」

「うん……そのせいで恭介取られちゃって…………ああなんで契約しちゃったのかな私…………」

 

 出た、鬱モードさやか。天真爛漫な彼女にとってこの話はトラウマである。タブーである。

 

 ヤベー地雷踏んだ。

 

「貴様! 我の嫁をなに落ち込ませてやがる!?」

「いやーまさか自分も地雷踏むとは思わなかったなぁ……失敗失敗」

「そのわりにはなんで笑顔!?」

「最近キチガイ姉妹にいじられる毎日でこんな愛玩生物いたら癒されるだろ普通」

「動物!? 美樹さやかを愛玩動物扱い!?」

 

 シュンッとなったさやかはかわいいなぁもう……。

 

 さてと、堪能したし。ちょっと真面目になるか……………。

 

「なんでお前がさやかの前世の名前知ってる?」

「だな。何もんだテメー」

「貴様らも転生者ならわかるはずだろ?」

 

 こいつ……まさか…………。

 

 オレが驚愕した顔になると偉そうな顔でオレと向き合う。

 

「そう我もまた転生者。名前は神条シンヤ! そしてこの世界では――――」

「さやかのストーカーだと!? 馬鹿な! こいつにストーカーついたことないのに!」

「オイィィィィィ! なに変な誤解してんだお前ェェェ!?」

 

 違ったの? シャウトされちゃったよ。

 

「いやオレの中ではもうオリ主くん決まっているし、残るはストーカーと海蘊(もずく)しかいない」

「ちょっと待て! モブという役職は!? そしてなぜ海蘊(もずく)という役職が存在する!?」

「さやかの親友兼泥棒猫さんにあった役職を踏まえて」

「ワカメか!? あのワカメことを言ってるよな!?」

 

 仁美のことも知ってるとはさすがさやかのストーカー。マジ物知り。

 

「違うと言ってるだろう! ストーカーから離れろ! 美樹さやかと佐倉杏子のことはアニメ原作で知ってる!」

「ハハハ、何言ってるのだコイツ。アタシとさやかがアニメの住人なわけねーだろ」

「だな。てか、あっても『寝取られ少女 さやか☆エンド』だろ」

「それぜってーアニメ化しちゃいけないヤツだろ。てか、『ねとられ』って知らねーが不穏な単語使うな」

 

 杏子さんがお怒りだ。ロッキーを与えねば。

 

 与えると小動物のように食べ始めた。

 あらやだ。かわいい。

 

「くそっ、もう許さん!」

 

 なんかストーカーくんの背後から槍やら剣やら武器がたくさん出てきた。『召喚術』というわけでもなく、黄金の穴から武器が飛び出すというものだ。

 

「王の財宝の前にひれ伏せ!」

 

 そして一斉に射出。一見逃げ場なしかと思われるが、バラバラなタイミングで発射されているため、僅かな隙間があるのでまだ回避できる。

 

 というかこれと似たビームバージョンの神器使いと戦ったことある。

 

 あのときは神器をマジでバットのように打ち返すしかなかったなぁ。まあそいつはもちろん惨殺したが。

 

 そんなことを考えていたオレはヒラリヒラリと回避し、さやかの元に近づく。

 

「バイオリン壊すバイオリン壊すバイオリン壊すバイオリン壊すバイオリン壊す……ブツブツ」

 

 トラウマでさやかに眠るバイオリン破壊症候群が再発したようだ。そんな彼女の耳元にオレは呟いた。

 

「あいつ、バイオリンをたしなんでいるらしいよ」

「ブロークン・オブ・バイオリィィィィィィィィィィンッッッ!」

 

 覚醒。

 

 説明しよう!

 

 さやかちゃんは過去のトラウマにより発症したバイオリン破壊症候群でバーサーカーと化し、バイオリンをたしなむ者及び持つ者を殲滅する能力があるのだ!

 

 つまるところ…………計画通りである。ニヤリッ。

 

「グルァァァァァ!」

「何いィィィィィ!? 全ての王の財宝を掴んで投げ返しているだと!?」

「ユルサンゾォォォォォ!」

「み、見えなくなっ――くぺ!?」

 

 さやかがストーカーくんの背後を取り、背中に飛び膝蹴りを決めた。

 

 こうかばつぐんだ!

 

 ストーカーくんはそのままゴロゴロ転がり立ち上がる。

 

「おのれ……このオリ主である我が……我が…………」

「うーん、このまま帰すのもなんか厄介そうだし。よし、いきなり襲ったお前さんには罰を与えよう」

 

 オレはニコニコしながら神器でストーカーくんの身体に差し込む。

 グッと苦痛に苦しむがそのまま神器を回して、ガチャリと閉じた。

 

「馬鹿め! 近づいたのなら串刺しに……あれ?」

「お前の……王の財宝だっけ? あれと残りものも使えなくしたから」

「な、なんだと!? くそっ、ホントかよ!」

 

 ストーカーくんはオレの胸ぐらを掴んで抗議してきた。

 

「さっさと解除しろ! でないと――」

「でないと……どうする?」

 

 オレは手でゆっくりとストーカーくんの掴む指を一本一本服から離していく。

 

「今のお前はなにもないただの人間だろ? そしてもう特別でもない」

「っ……!?」

「しかもモブとたいして変わらない、一般人とたいして変わらないただの普通の子ども。そんな子どもが能力を封印した化け物を脅すなんて…………随分無謀で勇敢だねぇ」

 

 三日月を描いた笑みをしてやるとストーカーくんは尻餅ついて後ずさる。ブルブル怯えた彼にオレはさらに追い撃ちをかけるつもりで、神器の剣先を彼に向けた。

 

「これって封印だけでなく、肉体から魂を切り離せることもできるんだぜ? つまりリアルな幽体離脱ができるんだぜ?」

「あ、あああぁ……」

「んじゃ、一回――――シンデミル?」

「うあぁァァァァァあァァァァァ!!」

 

 恐怖に歪んだストーカーくんはオレから逃げ去った。別に殺すつもりは最初からないので追わない。

 

 転生者とはいえ、あれはトラウマは確実だな。本物の化け物と出会って改心することを祈ってやろう。

 

「グルルル、おのれ…………バイオリンめ……あたしから初恋奪ったバイオリンめ……!」

 

 とりあえずこのバーサーカーを止めるか。ちなみにアンコとカスタードのたい焼きを食わせたら元に戻った。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 本日は晴れなり。そして訪れた夏休み前の初夏にダルそうに学校に来たオレはボーと空を眺める。クーラーがガンガン効いていたことに密かに喜んだりする。

 ちなみに昨日出会ったストーカーくんもとい神条シンヤくんは今日は休みらしい。

 

 女子には人気らしかったのでがっかりしていたと杏子は語る。

 

 あいつ、どっかで見たような…………ま、いっか。

 

 今はこのユートピアを楽しもう。あークーラー気持ちええー。

 

「ソラ、海にいくわよ」

「唐突すぎますな、ほむらさんや」

「そう、私の名前は朱美ほむら」

「また始まった……」

「唐突と理不尽という名の元にソラを生き埋めにするお茶目な女の子」

「お茶目という次元じゃねぇだろそれ!?」

「好きな人ほどいじめたい乙女心よ」

「お前の乙女心は重すぎる!」

 

 いつも通りなオレ達である。ということで明日は夏休みである。

 

 明日は海に行くことなった。

 

 さてさて、どうなることやら。

 

 

「まどかがアダルティなビキニに挑戦させようかしら」

「よろしい説教だ」

 

 ほんっといつも通りだなオレ達って。

 

 なお、その日。またストーカーくんが衛をボコってはやてをナンパしていたところを遭遇したので、徹底的にぶっ潰したが。

 

 

 

 

(??side)

 

 

 

 

 神条シンヤは病室にいた。あの化け物――神威ソラにボコボコにやられ、なおかつ腕や足を折られたのである。

 

(おのれおのれおのれおのれぇ……この俺様があのモブなんかに遅れをとるなんてぇ……!)

 

 憎い。悔しい。妬ましい。

 

 原作キャラとの邂逅が遅れ、それを取り戻すために八神はやてと遭遇したがすでにはやては見ず知らずの男と仲良くなっていた。

 邪魔だと思い、その男がはやてを洗脳していると勝手な解釈をして、その男――――天道衛を殴って蹴った。

 

 普通なら倒れてもおかしくないのだが、衛は何度も何度も立ち上がり、はやてを守ろうとしていた。いい加減に鬱陶しくなってきたのでデバイスの魔力刃で殺そうとしたが、そこにやってきたのが神威ソラ。

 

 彼は素手でシンヤを無効化し、そして徹底的にやられた。

 

 友達をやってくれたお礼だと言わんばかりに。

 

 腕、足、歯、肋骨、指という骨という骨を殴打で折った。もちろん、はやては衛の手により『見せられないよ!』をされていたため、悲鳴をあげることなく、ただブルブル震えていた。

 

 BGMが苦痛の断末魔と痛々しい打撃音なので無理もない話である。

 

 それはさておき、神条シンヤは怨めしく思っていた。神威ソラにより、自身の一番の特典が『封印』されてただの人間され、しかもただの人間とも言える男すら倒せなかったという自身の不甲斐なさ。

 

 ゆえに彼は黒い炎を胸中に燃やしていた。

 

(殺す……いつかこの手でヤツを……ヤツらを殺す……!)

 

 その想いに答えるかのように病室の壁からヒョッコリと黒いローブを着たモノが現れた。

 その者は彼を見てただ口角を上げ、見ていた。

 

 

 

 翌日、神条シンヤは消えた。行方不明となった彼を心配する者はいなかった。

 

 

――――ゆえにその異変にソラ達は気づかない。

 




『寝取られ少女 さやか☆エンド』:はっきり言おう。寝取られ系エロゲー。……なんかもう悲恋の結末しか思い当たらない。きっとヒロイン堕ちてく場面しかない作品である。ちなみに自分は寝取られ系エロゲーは嫌いじゃないが見たいとも思わない……。

王の財宝:ギルさんだったら、スゴく強い特典。彼が王様なのは周囲が認める事実

さやか(バーサーカーモード):失恋のあまりに狂暴化。fateだったら聖杯奪い合う前にバイオリンを破壊することに集中しそう。

神条シンヤ:典型的な踏み台。行方不明になった理由はヤツの仕業。


では良いお年を!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。