とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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(変更点)

・月村の科学力が世界一ィィィィィ……に


第二十一話 対話する。そしてカオス!

 

 

 

 その日の夕方、オレ達三人こと誘拐に関わった組全員が月村邸に呼び出された。

 月村邸はアンティークな造りの洋館で、まあお洒落と言えばお洒落だ。庭に某宇宙戦争のドロイドを見るまでは。

 

 なんだよドロイドって……。

 

 『月村の技術力は世界一ィィィィィッッッ!』なのか? ドイツ軍に所属なのですかコノヤロー。

 

 それはさておき、豪華な洋館のとある一室にて、青年と女性に相対する形で、オレ達はソファーに腰かけていた。

 

 青年の名前は温泉で出会ったナイスボーイ――高町恭也さん。

 んで、その隣に女性の名前は月村忍さんという、月村すずかの姉である。

 

 ていうか、この人シスコンだった。バーサーカーと化したシスコンは恐ろしいと思った。

 

 ちなみにあの後、誘拐犯達は月村家の関係者によって連れて行かれたそうだ。

 

 彼らが日の光を浴びる日は来ないかもしれないと思ってたりする。

 

「話を始めよう――としたいが良いのかい? 彼女達は……」

「はい。これで良いです」

 

 友達と言えばまどかとほむらである。家に連れて行かれる前、彼女達はオレが首輪されてることを良いことにワンちゃんプレイをしようとしやがった。

 

 なので何をしたかと言うまでもない。

 

 拳骨制裁である。

 

「うぅ……頭がクラクラする……」

「あぅぅ……いつになく容赦ない…………」

 

 頭のタンコブを抑えて痛みに耐える二人の少女が絨毯に転がっていた。そりゃあ、オレの全力全開の拳骨ですから。

 

「ひどいわ……女性に手をあげるなんて、いつからそんな鬼畜になったのかしらソラ……」

「ほう? オレに今までしてきたことを踏まえての発言なんだなそれは? ならお前にはこの後にクラスメイトの前で公開オシリペンペンの刑を考えてやろうか。あ?」

「ごめんなさい! それだけは無理!」

 

 ニッコリとほむらにそう言うと土下座してきた。

 クールビューティーを貫いてる彼女でもさすがにこの羞恥と痛みは嫌なのだろう。

 

「うぅ……でもこれも試練だよほむらちゃん。そう、ソラくんをお嫁入りするにはこんな試練を乗り越えなくちゃ! さあ、カモン! 私はSでもMでもいけるから!」

「お前は全力全開のチョップな」

「ふぎゃ!」

 

 潰れた猫のような断末魔をあげて淫乱生物は地に伏した。頭のタンコブから湯気が出ているのは気のせいじゃない。

 

「オレさ……もう遠慮しないことにしたんだお前らに……。千香は究極の変態だからいつも遠慮しなかったけど、もう我慢が天元突破しちゃった。女子だろうと、子どもだろうと、老人だろうと関係なくセクハラには遠慮なくツッコミとお仕置きしてあげる♪」

「ひぅ……!」

 

 おやおや、ほむらちゃんが怯えちゃって。オレはそんなに怒ってないからねー?

 

 アハハハハハハハ!

 

「忍、どうしよう。ソラくんから般若の化身が出ているのが見えたような気がする……」

「奇遇ね……私もよ。なるべく彼はからかわないようにしないと……」

 

 二人は何を言ってるか僕わかんなーい。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 二人の説教が終わり、オレ達はなぜ月村達と一緒にいた経緯を話した。納得してもらったが、月村達をなぜ助けたか聞かれた。

 

「私は彼にお願いされたまでよ。まどかのついでよ、ついで」

「なんかクラスメイトがいなくなるのが少し嫌だったからなぁ」

「ソラ、本音は?」

「ぶっちゃけ、いなくなると恭也さんの妹さんにさらに目の敵にされそうだったし。正直、めんどいから」

「ぶっちゃけすぎだろ……」

 

 そう答えると思わず手で顔を覆い隠す恭也さん。

 いやぁ~、自分は正直者ですからねー。

 

「それに君が神威だったとはね。なのはから聞いた話と大分違うが……」

「私もよ」

 

 話が違うってなんだよ。

 

 ちょっと不安になってきた。なので、どんな話ですかと聞いてみた。

 

 曰く、女の子に気持ち悪い目で見てくる。

 曰く、女癖が悪い。

 曰く、六人の少女をとっかえひっかえで侍らせている。

 

 そんな誤解をされていた。何そのクズの権化。オレはここまでひどくないはずだぞ。

 

「ちなみにソースはどこから?」

「生田ミカという行方不明になってる女の子から」

(死んでも迷惑かけるヤツだな)

 

 こう言っちゃあなんだが殺して正解だった。このまま悪い誤解を生み出し続ける存在がいたらいずれ社会的に抹殺される。とりあえず、その誤解を解くか。

 

「そんなわけないですよ。気持ち悪い視線ははっきり言えば、『邪魔、消えろ、どっか行け小娘』って言う嫌悪の視線でしたし、女癖は明らかに噂だし、六人の少女なんて勝手にこっちにくっついてくる友達ですから」

「物凄く毒を吐いたね君は。わかったことがあるとすれば君はなのは達を嫌っているのかな?」

「さあ? 無関心、と言った方がいいですかね。嫌われたらもう嫌って結構。近づかなきゃいいし、視界に入れなきゃいいと思ってます。嫌らう者がいるなら、オレもそいつのことは嫌いですから」

 

 逆に言えば好意的であればそれなりに返すが。

 ニッコリとそう言って笑顔で返すが、オレの目は笑っていない。恭也さんもそれはわかっているだろうか何も言わない。

 

「だからと言ってあなた達二人を敵と見ませんし、嫌いにはなりません」

「どうしてだ?」

「神威と言う名前と聞いて警戒はしましたが嫌悪的な目でみなかったからです。さらに恭也さんとは温泉で良好的でしたしね」

 

 オレはそう言って立ち上がる。そろそろ帰らなきゃマミさん辺りに説教されそうだ。

 

「さて、もう話すことはありませんから帰ります」

「そうは行かないわ。あなたには私達の秘密を知った。帰すわけにはいかないわ」

 

 恭也さん達と同じく廃墟に突撃してきた二人のメイドが構える。一人は小さいがもう一人は大きな女性という姉妹と思われるメイドさんだ。

やれやれ……。

 

「はっきり言って分が悪いですよねそれ。未知なる力があるオレ達に挑むなんて。それにオレはバニングスや月村すずかを先に狙わないと思ってますか?」

「っ……!」

「なんでそんな顔をしますか? それが戦いというものです。生き残るためなら、誇りや名誉なんていらない」

 

 というか戦争じゃ当たり前だった。

 そして捕まった仲間を問答無用に仲間ごと葬ることが多かった。幼い頃のオレはそれに何度も納得できず、抗議をしたものだ。

 

 結果、大切な師を失ってしまったが……。

 

「あなた達が敵対するならそれでいいですよ。こちらも全力で排除するまでです」

「まどかを傷つけるなら一族全て葬るわ」

「あの……物騒なこと言っていますけど、とにかく敵対してほしくないなぁって私は思ってます」

 

 まあ、まどかは元来から優しい少女だがほむらはマジでやりそうだな。

 それからオレ達の間に沈黙が流れる。

 

「……………………」

 

 月村のお姉さんとの緊張はしばらく続いた――――

 

「騒ぎに乗じて!」

「さやかちゃん参上!」

「助けにきたわよソラくん!」

 

 

――――時に、それを見事に空気と天井をぶち壊してくれたよこの三姉妹と変態は……!

 

「まさか天井から侵入するとはソラくんマジびっくり」

「どうしようほむらちゃん! 見るからに高そうな天井壊しちゃった!」

「落ち着きなさいまどか。こういうときはソラのお小遣いから差し引けば全て解決よ」

「なるほど!」

「納得するな! なんでオレ小遣い減らされるんだよ!?」

「まどかを泣かせるつもり?」

「真顔で『グロック17』構えるなよ」

 

 解せぬ。これ以上小遣い減らされたら、金欠どころじゃすまん。拙者はお小遣いを所望する。

 

「まあなんにせよ。お前ら今更来ても――」

 

 そう言いかけたとき、オレの直感が危機を告げた。

 すぐに神器を構えたが時すでに遅し。恭也さんがまどかを人質にとった。

 

「心苦しいが……その武器を収めてもらおう」

 

 恭也さんはまどかの首辺りに小太刀を向けてそう言った。

 チッ、見破られたか。この中で一番非力なのはまどかだ。

 

 いくら殲滅力最強の神器使いでも彼女は物理的で殴り合うクロスレンジが苦手だ。こうなってしまえば、まどかは人質にされたままだ。

 

 当の本人は呑気に「うわぁ~、本物の刀だ~」と言っていた。余裕だなオイ。

 いやオレも心配してないけどさ。

 

「はいはい、みんな神器を」

 

 なんせここにいるのは『神器使い』――人間のくくりを越えた猛者達。

 

 要するに、甘いですよ恭也さんってことだ。

 ここにいる神器使いの中で一番役に立つ神器がある。オレはそいつとアイコンタクトをとり、合図した。

 

 

――――カチリ、とスイッチが鳴った。世界は白黒になり、そいつ以外は止まり、そいつはまどかを助けて、再び『神器』を鳴らした。

 

 カシャリ、ブゥーン

 

「やっぱ出しておいて、警戒して頂戴」

 

 その音が鳴り終わり、オレがそう言ったときには、まどかは既に恭也さんの手の中にはなく、まどかはほむらによってお姫様抱っこされていた。

 

「何をした!?」

「ほむらが『神器』を使ってまどかを助けただけですよ」

「『神器』……だと?」

「魂を武器にした物。特殊な力がある武器です」

「…………」

「まだやるつもりですか?」

「……いや、このまま戦えば明らかにこちらが不利だ。そうだろ忍?」

「ええ……まさかこんな化け物染みた力があるなんてね……」

 

 やや呆れ気味に戦意損失してくれたようだ。

 

「私達の秘密を喋らないほしい。これは警告であり、お願いよ」

「周りからしたらイタイタしい人と思われますから承りました。ちなみに夜の一族が吸血鬼ってのも些かオーバーだと思いますしね」

「どういうことよ?」

 

どういうことって……。

 

「本物にも会ったことありますよオレ」

「えぇ!?」

「あ、私もあるよ」

「まどかと私が幻想卿に迷い混んだときにね」

「いやーあれはかわいい見た目で攻撃がめちゃくちゃエゲツなかったなぁ」

 

 そんな吸血鬼いたんだな。ポカーンとなぜか恭也さん達は呆然としていたが。

 

「んじゃ、帰るか」

 

オレ達は『ドコでもドア』を展開してその場から去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜、自宅にて。

 

「見て見て。さっきのイケメンさんの技!」

「おぉ、スッゲー! あっという間に消えた――……あれ? どうしたのさやか」

「ものすごく……頭が痛いです杏子先生、ぐおおお……」

「さやかちゃんの規格外に開いた口が塞がらない」

 

 恭也さんの技を一目見てコピるこいつやっぱ天才だよ。アホだけどね。

 




ドロイド: 「ワレワレハ、ツキムラシノブノシモベデアル!!」

さやかのコピー: 剣の素人だったが戦えるようになったからにはこんな天性の才能があったからでは?


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