・孤独で自殺しようと考えてない
・ソラが記憶喪失
・生田ミカという悪女
・両親がいる……だと!?
・悪夢は実は未来の正夢
・虐待され、周囲から虐げられた彼はもう誰も信じてない
僕の名前は神威ソラ。どうも転生者らしい。
神様に転生させられ、普通に生きてきたのだが周りには嫌われ、僕を産んでくれた両親も僕に暴力を振るう毎日だ。
身体はアザだらけで至るところに父親から受けた煙草の火傷があった。誰も僕を助けてくれようとは思わなかった。むしろクラスからにも虐められていた。
極めつけにこの前、公園で泣いていた子を慰めようと思ったら、その子に泣かれ、知らない黒髪の少年に誤解され、ボコボコにされた。
世界はいつだって残酷で最低だ。こんなことじゃなかったばかりなことだらけだ。
僕はこの世界が嫌いだ。生きていたいとは思わない。
だけどそんな絶望の中でも希望は確かにあった。
生田ミカ。僕の幼馴染みだ。僕がいじめられ、虐待され、苦しみの中で僕に手をさし伸ばしてくれた少女だ。
彼女がいたからがんばれた。
彼女がいたから生きようと思った。
彼女がいたからまだ絶望しなかった。
だから僕はいつか彼女を守れるヒーローに、テレビで見る心優しい救いのヒーローになりたかった。
だけどね……僕は知らなかった。今の僕は『紛い物』で、本当の僕はそんなものになりたくないひねくれものであることを、ね……。
☆☆☆
春。海鳴市にある聖佯小学校の始業式が終わり、小学生になってからの僕はいじめられる毎日だ。周りから避けられて、殴られる無邪気な悪意がいつも僕に襲いかかる。
今日も机に花瓶が置かれ、死んだことにされているいじめを受けていたがもう慣れた。
二年生になっても憂鬱な毎日は変わらないが、このクラスになってから僕には希望がある。そう、ミカちゃんもここのクラスなのだ。
一年生のときは彼女とは別クラスだったのだが、なんの運命か彼女と同じクラスだ。
僕はそれにはとてもうれしく、顔をニヤける――――が、なぜか違和感を感じた。
なんというか、「ありえない」とか「目を覚ませ」とかそういう違和感が。
(僕はどうしてしまったのだろうか……。ミカちゃんと同じクラスなのに)
まあ気にすることじゃないだろうと思い、僕はミカちゃんに話しかける。
しかし彼女は僕の声を無視してさっさと行ってしまった。
次の日も声をかけたが無視された。
その次の日も、その次の日も……。
声をかける度にいじめはエスカレートしていった。靴を釘だられけされたり、教科書をびしょ濡れされたり、極めつけにガラスを割った罪を擦り付けられたりされた。
どうしてミカちゃんは僕を助けないし、声も聞いてくれないだろうか。
僕は悲しくなり、涙を流す夜を過ごしていたある日、下駄箱にミカちゃんらしき手紙が書いてあった。放課後に屋上に来てほしいという誘いだ。
「行くな」「罠だ」と頭の中で嫌な考えが浮かぶ。だけど僕は真相が知りたくて、放課後。屋上に来てしまった。
そこで待っていたのはミカちゃんと、僕を特にいじめるクラスメイトがいた。そのリーダーである工藤マサキは僕を殴る蹴ることを重点にするヤツだ。
心の中でトラウマが植え付けられた人物がニヤけていた。
「ど、どういうことなのミカちゃん……?」
「気安く私の名前を呼ばないで」
彼女らしくない冷たい態度だった。いつも気にかけてくれる優しい顔はそこにはなく侮蔑と軽蔑した目を向けた彼女がいた。
「知りたい? 知りたいかぁ?」
「こいつほんっっっと馬鹿だよな! 今まで生田が気にかけてる素振りを見せたのはこのためなのにな!」
どういうこと? どうしてなの?
「お前は騙されてたんだよこの俺様の幼馴染みに」
そんな……嘘だ。信じたくないよ……。
「そうそう! その顔が見たかったんだよ! その絶望した顔が。弱いヤツが自失顔が見たかっただよな!」
「「ぎゃははははは!」」
信じたくもなかった。嘘だと言ってほしかった。
だって、だって、僕は――――
――――悲しくなかったのだ
絶望した。でもなぜか「ああ……やっぱりか」と納得した自分がいた。
人間なんてこういうものだと納得した自分がいたのだ。
工藤は僕が絶望したと思い込み、子分の二人に指示を出して僕を屋上フェンスに突きだした。
「もう苦しいのは嫌だろ? なら楽になれよ。そこから飛び降りてな」
ピシリとフェンスが腐っていたのかガシャァンと音を立て、僕の身体は押された勢いで後ろから倒れていった。それにはミカちゃんや子分もヤバいと思ったのか、反射的に手を伸ばそうとしていた。
でもそれは虚空を掴み、僕はそのまま落下していった。
最後まで工藤は笑っていた。最低最悪な笑みを浮かべて。
身体が落ちていく。この感覚はもう二度目だ。
二度目? あれ、僕はまた体験したのか?
そもそも僕は誰だったのだろうか? 僕はなんだったのだろうか?
わからない。もうわかりたくもない。
世界に絶望し、僕は『魔女』になるのだろうか? いやそもそも『魔法少女』でもないから無理か。
いや、そもそもどうして『魔女』や『魔法少女』などの単語を浮かべた。どうして僕は『魔女』という絶望した『魔法少女』のことを知っていた?
ピシリと僕の中にナニカが亀裂がはしる。その亀裂が徐々に大きくなり、そして遂には砕けた。
そのとき『僕』は思いだし、『オレ』となった。
思いだしたくなかった。こんな一人ぼっちな世界で思いだしたくなかったよ、前世を。
落ちていく身体は遂に地面に激突した。ベチャリと潰れたカエルのように、ザクロのようになるはずだったのだが、なんの拍子かオレの身体の呪いは解除され、前世と同じ体質になっていた。
つまりあれだ。ダンプカーに跳ねられても無傷な身体だ。衝撃を受けて「ぐぇっ」と声に出したが、まあでも無傷だ。
「……思い出すべきじゃなかったのになぁ。『神威』くんや」
『神威ソラ』という来世の自分は今ここで死んだ。ここにいるのは前世で敵を皆殺しにした英雄、『無血の死神』が生まれ変わったのだ。
屋上から落下したオレは何事もなかったかのように家に帰った。まあ家には穀潰しの父親とパートをしてる母しかいない。
やるなら今だと思い、魔法で変声した声で児童相談所に助けを求めた。結果は言うまでもない。親権を失い、挙げ句の果てには刑務所に入れられた神威夫婦は最後までオレのことを忌々しそうな目で見ていた。
なお、オレは親権を魔法で作り出した幻影の自分(青年ver)にさせ、誰もいない家を手に入れることができた。
(呪いは身体能力のみ解除できた……か。【神器】も出せるようになったし)
おそらく【神器】が助けてくれたのかもしれない。オレはこれまでの戦いの日々を過ごしてきた相棒をこの手に召喚した。
その剣は黒く輝くカギのような剣。『開ける』と『閉める』という概念を与えることに特化した最高の武器――――『全てを開く者』。
こいつのおかげかもしれないな。
「ありがとな……」
転生した今でもこいつはオレのもう一人の相棒であることには代わりがなかった。
『にゅふふふ……ショタモードのソラ、ハァハァ!』
『いじめたいいじめたいいじめたいいじめたいいじめたいいじめたいいじめたい』
『ティヒヒヒ、さあ。ソラくん、一緒に寝ようよ! もちろん生まれたままの姿で!』
『お姉ちゃんと一緒にお風呂に入りましょう♪』
『ゲームしようよソラぁ~。え、お菓子? ソラのはさっきあたしが食べた』
『まあ、そのなんだ……元気出せよ』
…………その夜。オレは会いたかった少女達の夢を見た。
もちろん、悪夢で。なんだよこれ……。何があってこうなるんだよ……。
工藤マサキ:転生者ではないオリキャラ。踏み台。
神威夫妻:育て親失格。刑務所に入り反省しないまま出所。これが何かのフラグではなかろうか?
生田ミカ:悪女。しかし幼馴染みがいないと何もできない。なお、転生者であり、特典で彼女の身体は将来美人となることを約束されている
青年モード:ソラの大人バージョン。つまり前世の容姿。細マッチョでイケメン
神器:ソラの武器。魂の一部でできた武器
まだまだ続くシリアスかと思われ――――てたけど、実は次回はギャグだったりします。