とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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(変更点)

・おや、リニスの様子が?
・ハヤタちゃん(※はやてです)の再会と雷斗との邂逅


第十二話 ニャン吉は裏切った

 

 

 ややじめじめし始める季節。梅雨が近づき、雨が多い日が多くなった。

 蒸し暑さのある毎日に、まどか達は薄着に衣かえし、素肌を出す制服を着ていた。

 

 まあ仕方ない。暑いから仕方ない。そんなある日、オレは図書館にて意外な再会を果たす。

 

 そう、ハヤタくんだ。

 

「はやてやって! なんでそないな貧乏執事と同じ間違いされるねん!」

「それが我が友だ」

「別名ソラくんクオリティ。イエーイ!」

「威張るな調子にのんなや!」

 

 ツッコむはやて(※覚えた)だが職員に注意されてうぅと肩を狭くする。

 そりゃ、うるさかったしなぁ。

 

「私のせいちゃうのに……」

「まあまあどんまいハヤタくん」

「ちゃうって言うてるやろ!」

「静かにしろはやて」

「ムキィィィィィ!」

 

 ヒステリック気味なはやては衛に車椅子を押され、どこかへ運ばれた。やれやれ、これで静かになったな。

 まあはやてのことはさておき、オレは猫の本を探す。

 いや一ヶ月前、猫をまどかが拾ったんだ。その猫はなんと魔力で生きてる生物らしく、喋れるというスゴい猫である。

 

 まどかとほむらは猫を飼っていたわけなので、ペットとしてかわいがられているのだが、オレはそんな猫が微妙な気配がした。

 なんというか、生きてるような死んでるようなそんなジレンマがある感じ。

 

 元々そういう猫なのかわからないがとりあえず、オレは猫の生態系、もしくは猫の妖怪などを調べることにした。

 

 最初に言っておくが霊的な存在は重要だ。この世界に霊的なモノがいるかどうかわからないが、かつての世界ではそういう霊的な存在が黒幕だったりもある。要するにオレは猫の『ニャン吉』が何者なのか気になったのだ。

 

 猫又なのか、もしくは新種の妖怪なのか判断するために……。

 

 オレが次々に本を開き、そして閉じての繰り返しをした一時間後、一人の少年が近づいてきた。

 髪は黒髪だが、瞳は金色。異国のハーフなのだろうかやや鼻が高い。極めつけに彼は顔が整っている。将来はモテモテだろうかと予想していると彼は口を開いた。

 

「あの、その本を読みませんでしたら、その……」

「あ、ワリィ。待たせたな」

「いえいえ。……あの、お聞きしてよろしいですか?」

 

 少年はオレと前に会いましたかと聞いてきた。いや彼と会ったことない。

 だが、この少年からただならぬ何かを感じた。心が落ち着くというか、なつかしいと言うべきか。

 

「会ったことないな。新手のナンパを男にするのか?」

「し、しししませんよ! なんでナンパなんですか!?」

「その質問が女性にナンパする手口だからさ。ま、次回から気を付けろ」

「あぅ……まさかノエル姉ちゃんに騙されるなんて」

 

 …………気のせいだろうか。ノエルと聞けば千香の師匠だと思い浮かんだ。

 いやあり得ないな。そもそもあの究極生命体がこんな穏やかな世界に訪れるはずもない。訪れたとしてもすぐに世界大戦とか起こして、兵士達にメイド服を着せて出兵させてるはずだ。

 

 第一次メイド大戦で町が戦火に呑まれるはずである。

 

「あ、申し遅れました。俺は五木雷斗です」

「神威ソラだ。敬語はいらないぞ。オレはまだ九歳だし」

「あ。じゃあ言葉に甘えて。神威は猫が好きなのか?」

「いや、知り合いに頼まれて調べていただけさ」

「へぇ。俺のところにも猫好きがいるぞ。……スッゲー金持ちの」

「ブルジョアか。でもモフモフできるからいいだろ」

「うん」

 

 そんな雑談を数分してからオレと雷斗は会話をやめて、別れた。また会えるといいなと彼は思っているのか、別れ際に口角が緩んでいたな。

 

 そんなこんなで家に帰る途中、何やら視線を感じた。誰かがつけているのだろうか。

 まあすぐに振り切って帰ったからもう安心だろう。

 

 

 それこそが油断とは気づかずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 曇天の空。今日はあまり出掛けたくない日である。

 だが、今日は新発売のお菓子があるのでスーパーにいくことにした。

 

「こんにちわ」

 

 ところがどっこい。扉を開けると、金髪少女が玄関前にいた。名前は確か、フェイトだっけ?

 

 というかいつの間にオレの家を調べた。そう聞くと彼女は、

 

「アルフの嗅覚です」

「どんなもんだい」

 

 犬を使ったか。なんてこったい。まさか敵かもしれない知れないヤツに拠点が知られるなんて。

 

「一緒に来てくれませんか? お母さんがあなたにお話が」

 

 オレはそのまま扉を閉めようと――――

 

「なにスルーしてんだい!」

「離せ! ただでさえ管理局という労働基準を無視した鬼畜組織にバレたってのにこれ以上面倒事はノーサンキュー!」

「グググググッ!」

 

 ギギギギギと力と力のぶつかり合い。この勝負引けば負ける!

 負けてたまるかァァァァァ!!

 

「なにしてんの?」

 

 さやかが現れた。ソラは協力を求めた。彼女は目を光らせて、

 

「面白そう!」

 

 スカウト成功! すると金髪少女まで参加してきた。

 ぐっ、ならば――いでよ杏子たん!

 

 召喚術でリビングにいる杏子を召喚した。まあただの転移だけどね。

 

「おっ、なんかおもしろいことしてんじゃん! 負けるなよさやか、ソラ!」

「わかってるわよ!」

「おう!」

 

 オレ達神器使いの友情パワーで徐々に閉まる扉。どうだ参ったか!!

 

「くっ、このままじゃ……!」

「誰か…………誰か……助けて!」

 

 

 フッ、甘いな。そう簡単に天は彼女を――――

 

 

「諦めないでフェイト!」

 

 

――――――――見放さないかい!?

 なんかナースキャップを被った女性が助っ人にきた!?

 

「えっ? リニス……え、あれ?」

「前を向きなさいフェイト! これを逃したら機会はありませんよ!?」

「はっ、そうだね! わかった。がんばってみる!」

「その意気です!」

 

 徐々に閉まっていった扉が再び開け始めた。魔力感知して見ればこの女性はまどかが飼っていたニャン吉だった。

 人間の姿になれるとは聞いてない!

 

「おのれニャン吉。裏切るか!」

「私は元からフェイトの味方です! あとその名前なんかヤです!」

「なんだと? オレのお気に入りの名前だぞ? メスオスにも付けられるお得な名前だぞ!?」

「だからってニャン吉はないでしょ、ニャン吉は! これからはリニスと呼んでくださいソラ!」

「嫌だ! ニャン吉はニャン吉だ! こうなったらこれが閉まればニャン吉! 開ければリニスって呼ぶことを賭けた勝負じゃァァァァァ!」

「望むところです!」

 

 綱引きもといドア引きが始まる。負けられない…………この戦い!

 

「あれ? なんか主旨が変わってない?」

「気にするなさやか! あの猫の名前を賭けた一世一代の勝負だぞ。気を抜くな!」

「そうね! わかった! ちなみに本音は!!」

「アタシも実は気に入ってる名前なんだァァァァァ!」

 

 熱血要素を交えた勝負は白熱する。オレは、絶対、負けない!

 

 

 

 

「なにこの熱血展開」

「まどかさん、お茶できたわよ。あら、お客様?」

「うん、どうしようかコレ」

「そうね……………………よし! 殺っちゃって♪」

「オッケー!」

「最近のマミさんは私達に毒されてきたわね」

 

 

 ピンク色の地獄がオレ達に降り注いだのが、この直後だった。マジで死ぬかと思った。

 てか最近、容赦ないねマミさん。……なんかシビアです。

 

「ドアが壊れるでしょ」

「壊れましたよ、まどかのせいで」

「ティヒ♪」

「まどかさん、ドアを壊しちゃ駄目でしょ。めっ」

「いやマミさんが指示したことじゃん」

「私は殲滅して良いと命じたのはドアで争うあなた達のみよ。だから私は悪くないもん」

「うわ……完全に責任逃――――なんでもないですよ。うん、マミさんはワルクナイデスヨ」

 

 マスケットを眉間に押しつけられたので誤魔化すことにした。まどかに足をグリグリ踏まれたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレ達は金髪少女の住居に来ていた。ラスボスのラストダンジョンっぽいのでさやかが宝物を探そうとしていたが、リニスに止められた。

 

「ニャン吉って名前気に入ってたのになぁ」

「諦めてください」

 

 ここに来るまでフェイトとその犬になぜリニスがここにいるのか聞かれたので答えた。

 

 なんでもまどかがさやかと出かけていたときに衰弱した彼女を発見。魔力の枯渇による衰弱だったので優しいまどかはそれを助ける。

 しかしヤツはいたずらっ子だ。

 魔力を与えすぎるということで、起きて早々魔力酔いをさせるという鬼畜所業を行って、しばらく寝込ませた。

 

「反省している……でも後悔してないよ!」

 

 サムアップした彼女にヘッドバットしたことは悪いと思っていない。そのせいでリニスが記憶の半分を喪失したらしい。

 まあその後、回復して喋る猫と判明したが、まさか記憶を取り戻したら、あら不思議。金髪少女の親族だったとは。

 

「あの……金髪少女じゃなくてフェイト・テスタロッサですよ」

「ごめん。オレは知り合い以外の金髪の女に私怨で名前を呼ばないことにしてんだ。諦めろ」

「ひどッ!」

 

 そうは言ってもお前さんさっきからリニスの後ろに隠れて怯えた顔してんじゃん。そのせいでオレのハートもダメージ有り。

 

 くっ、これが呪われた身体の運命か!!

 

「厨二くさいからやめなさいバカ」

「容赦ないなーほむら」

「当たり前よ。……厨二に恥ずかしい目にあったことがあるのよ」

 

 数あるループした世界の一つのこと言ってるだろうなぁ。

 ちなみにマミさん。「ひどいわねその人」って言ってるけど、たぶんあなたのことを言ってるのだと思うから。

 

「そろそろです。準備はいいですか?」

 

 とリニスに聞かれて、それぞれが答えた。

 

 「OK。いつでも殺れるわよ」とほむらはグロック17を構え。

 「先手必勝だね♪」と魔力矢を装填するまどか。

 「ふっふっふっ、このさやかちゃんの実力を見せるときだね」とさやかもサーベルを構えていた。

 

「オイ、お前ら何と戦うつもりだ?」と唯一何も持たずに杏子はツッコんだ。この中で一番まともなのは杏子だった。

 

 やる気ではなく、殺る気満々な彼女達を止める杏子は彼女達に武装するな、と言い聞かせる。

 あと千香なんか鼻の下を伸ばしてなに考えているんだ?

 

 まあ手にある写真がロクなことじゃないって証明してるけど。

 

 

 

(プレシアside)

 

 

 

 フェイトを使って神器使い達を招待することに成功した。

 彼と彼女達の力があればアリシアが生き返るかもしれないという希望的観測をもって招待したのだ。それが駄目でも他に方法を知っているかもしれない。

 

 神器使い。そう、彼女(・・)の話を聞けば彼らには不思議な力があるそうだ。その力があればもしかすると私の願いが叶うかもしれない。管理局とも交遊関係はないため、協力者になるかもしれない。

 

 そんな期待を胸に私は顔をあげる。扉が開いたからだ。

 

 やっときたようだ。私はそこで見たのは――――

 

 

 

「みんなお姉さん、友江マミ!」

「元気百倍、正義の味方! 友江さやか!」

「じょ、情熱少女……友江きょ、杏子…………」

「天使な笑顔であなたを魅了、朱美まどか!」

「シスコンで何が悪い? クールビューティ朱美ほむら参上」

 

「「五人!」」(マミとさやか)

「「「揃って!」」」(まどかとほむらと杏子)

 

 

「「「「「ピュエラ・マギ・ホーリー・クインテット!!」」」」」(全員)

 

 

………………………………。何を言えばいいのかしら……。

 

 五人の少女がそれぞれ衣装を着てポーズをとっていた。どこかのテレビに出そうな女の子向けの戦隊ヒーローのように。

 

 あ、そういえば、昔アリシアもテレビでよく見ていたわね~。確か、プリプリでキュアキュアな少女戦隊を。

 

「リアクションが薄い!?」

「くっ、何が悪かったのかしら……」

 

 青髪少女と金髪ドリル少女は悔しがり、

 

「は、恥ずかしいわ……」

「よくがんばったよほむら。アタシがアンタを褒めてやるから泣くな。ていうかアタシが泣きたい」

「涙目なほむらちゃん…………スゴく萌える!!」

 

 羞恥に苦しむ赤と黒の少女。それを見て鼻息を荒くする桃色の少女。

 

 うん…………何このカオス。責任者呼んでよ。……いないと思うけど。

 

「恐らく萌え萌えパワーが足りぬからじゃ」

「「「「は、博士!」」」」

「いや博士って誰だよ。つーか千香かよ」

 

 博士と名乗る白衣を着て、ちょび髭つけた少女に赤い少女はツッコむ。

 

 そんな博士の傍らには死んだ目をした犬耳をつけた少年がいた。哀れ見えたのは気のせいではない。

 

「ポチ、例のモノを」

「わかったワン。……お前後で覚悟してろよゴラ」

 

 ポチは最後に物騒なことを言いながらカバンからジュエルシードを……って!

 

「なぜジュエルシードがここにあるのよ!」

「ちょっと深海から一つとって来ました!」

「さりげなくすごいこと言ったわね! な、何に使うつもりなの!?」

「ふっふっふっ…………聞きたいかい? そこの紫ガール」

 

 寒気がはしる。嫌な予感がして一歩下がる。

 

「喜びたまえ紫ガール! このジュエルシードを使い、今日からピュエラ・マギ・ホーリー・クインテット一員となるのだ!」

 

 とんでもなく恐ろしいことを言い出したよこの子ったら!

 

「グフフフ…………熟女のコスプレは一部のマニアでは高額品。そしてその一人である私にはご褒美!」

「ここまでゲスい女子は初めてみた」

 

 少年から呆れの嘆息が吐かれた。私もそう思うわ。ここまで親父くさい女の子はいないわよ……。って、止めるつもりはないみたいねあのボウヤ。

 

 とにかく。に、逃げないと! 主に貞操と大人の矜持を保つために――ってリボンに縛られた!?

 

「ふふ、ようこそ。ピュエラ・マギ・ホーリー・クインテットへ!」

「歓迎するわ後輩」

「じゃ手始めにパシリからだね」

「最近親友のまどかの豹変の愚痴を聞いてもらうよ」

 

 ただの子どもじゃなかった。こいつらは魔王の団体だったのよ!

 私は今となってとてつもなく後悔した。

 

「と、止めないのリニス?」

「ええ、これも天命。仕方ありません。というか今までの怨みを晴らすチャンス」

「リニスって意外に黒かったんだねぇ」

 

 味方に助けを求めようにもリニスがそれを邪魔してくれた。生きてたから謝ろうと思ってたけど、やっぱり謝らないわ! というかシバきたい!

 

「あ、千香。もしその写真できたら一枚くれ。近所のおばさんに見せたい」

「んじゃ、オレもクラスのネタとして」

「あんた達は鬼か悪魔よ!」

 

 思わず涙を流してそう言ったが現実は無情。博士が徐々に近づき願った。

 

「さあジュエルシードちゃん! 歪んだ願いを叶えてちょ!」

 

 ジュエルシードが正常に作動し、私の服装がだんだんとフリフリの少女の服装に…………イヤァァァアアァァァァァァァァァァァァ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここから先は本人の矜持のためにカットします

 




五木雷斗: 苦労人(予定)。何気なく重要人物

ニャン吉: ソラと杏子のお気に入りの名前。ネーミングセンスのなさこそソラクオリティ

ピュエラ・マギ・ホーリー・クインテット: ソラ曰く、「ないわー」である。小さな子どもなら微笑ましいが大人がやると双方共ダメージがくる


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