とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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スカさんは仲間だが、他のナンバーズ(一部除く)は敵対です。
六課? ……だいたい変態がいるのでご安心を♪


第百一話 機動六課(ただし『変態』がいる)

 

 

(??side)

 

 

 

本局遺失物管理部「機動六課」。四年かかけて立ち上げた組織である。その目的とは、ロストロギアの回収および使い魔と戦うことにある。

 

 聖王教会のトップ、カリム・グレシアが来るべき破壊の運命を予知し、それ避けるためだけに設立されたのだ。

 

『古い結晶と無限の欲望が集い交わる地、死せる王の下、聖地よりかの翼が蘇る。

 

 死者達が踊り、なかつ大地の法の塔はむなしく焼け落ち、

 

 それを先駆けに数多の海を守る法の船もくだけ落ちる』

 

 これが二年前から出た予言。しかし、その予言は変わり、新たな項目ができていた。

 

『古い結晶と叛逆の魔が集い交わる地、死せる王の下、聖地よりかの翼が蘇る。

 

 異形なる者達が蹂躙し、なかつ大地の法の塔はむなしく焼け落ち、

 

 そしてその果てに終焉を迎える英雄が幕を降ろす』

 

 

 スカリエッティが敵対していないためか、ところどころに変化が見られており、全くもって理解不能だった。

 

 『終焉を迎える英雄』とは誰か。そして『異形なる者達』とは何か。

 

 現在進行形に調べている。この予言は正しいかどうかはわからないが、現にジェイル・スカリエッティではなく、悪魔が騒ぎを起こしている。

 

 ソラ達の周囲を巻き込み、災厄をもたらした悪魔を倒すために、はやてはこの組織を立ち上げた。

 

 ここに集まるスタッフははやての知人はもちろんのこと優秀だ。エリートというわけではないが、とても役に立つ人材だ。

 しかし、この組織には欠点がある。まず地上本部と折り合いが悪い仲だ。

 

 使い魔がよくミッドに現れるため、治安維持の仕事を奪われている上に使い魔という未知の存在に対抗できているため、嫉妬の視線を向けられてもおかしくはなかったのだ。

 

 そして、はやて自身が特に問題としているのは教導官だ。

 

 教導官のメンバーは優秀だ。しかし、やはり変態ばかりだ。

 

 例えばなのは。残虐性を持ち、論理的な反論なければ力付くで黙らせる上にとりあえず心が折れるまで砲撃でいじめる。……かつての彼女はどこにいったのだろうかと遠い目をしていた頃がなつかしくなる。

 

 そんなことがあるため、未来ある若者達が変な方向に進まないか不安なのである。

 

 元に最初の犠牲者はなんとキャロだったりする。彼女は筋肉フェチになっていたのだ。

 キャロと衛に出会わせ、そして彼の模擬戦を見せたのが間違いだった。彼女に憧れを持たせる対象を間違えたのだ。

 

 そのため今のキャロは非力な召喚術師ではなく、肉体言語で語る魔導士となった。

 召喚獣と共に戦う術者など、どこの聖杯戦争のマスターなのだ。

 

「不安や……まごうことなき不安や」

 

 こうして史上最強の問題児教官を抱える部隊が出来上がった。もっとまともか部隊がほしいで……ミゼットおばあちゃん。とはやては内心愚痴り出す。

 三提督の一人であるミゼットは行方不明になっていた。そして最高評議会のメンバーも謎の死を遂げていた。なんと、彼らが脳だけとなっていたことが驚きだったが三人のうち一人がいないため、おそらく何者かが持ち去ったのだろう。

 

 今の現在、動いているのは残りの提督達だ。互いにカバーしあい、悪魔側だけでなく次元世界の犯罪者達を牽制していた。

 

 はやてはそんな現状に嘆きながらも、そろそろ始まる開設会の会場であるアリーナへ足を重く進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スタッフと隊員が綺麗に並んだ開設会ではやては台上に上がった。マイクを口元へ合わせ、マイクテストを行ってから彼女の挨拶の言葉が始まった。

 

「はじめまして、機動六課課長ならびに総部隊長の八神はやてです。新人でまだまだ可能性に満ちたフォアード陣。豊富な専門知識を持ったメカニック、バックヤードスタッフ。そして、実績と実力とともに申し分のない指揮官陣。私はこの部隊で一緒に仕事が出来ることをうれしく思います。がんばっていきましょうという最後の言葉で私の演説は終わります」

 

 スラスラと噛むことなく言えたことに密かにほっとし、はやては次に出てくる隊長に視線を向ける。

 そして、やや絶望した顔になる。なんとなのはの挨拶なのだ。

 

 彼女は一、二年から教導を行っており、まだまだ浅い先生なのだが、隊員達には彼女の武勇伝は知れ渡っていた。

 

 曰く、強固な魔力無効化バリケードをぶち壊す破壊神。

 曰く、機動戦士並の精密さと問答無用さ。

 曰く、危ない女性ナンバーワン。

 

 この三つが隊員達に知れ渡っていた。一部、彼女と接点がない者達はいるのだが彼女の教導を受けた隊員達の顔色は青白い。中には立ったまま失神している者もいた。

 

「スターズ分隊長の高町なのはです。フォアード陣のまたをみんなには頑張って指導していこうと思います」

 

 ……あれ。思ってたのと比べて普通? とはやてが考えてたときに彼女は言った。

 

「ちなみに逆らう人はドンと来てください。理由がはっきりなければスタラ。はっきりしてもスタラするつもりなので、ドンドン刃向かって来てくださいね。私としてはスタラを撃てる快感が得られるのでハッピーなのです、にぱー☆」

(やっぱり言いおったァァァァァ!)

 

 内心でシャウトするはやて。やはり彼女は危ない女性ナンバーワンだ。

 これから彼女の部隊に配属になる者達の不幸さに同情せざる得ないはやてである。

 

 次に出てきたのは、フェイトだ。

 彼女は普通に挨拶をし、そして普通に終わらせた。

 彼女に向けられる羨望と尊敬の視線が集まる中で、ヒラリと彼女のスカートが揺れる。

 

 そして生尻がやや見えた。周囲の空気が凍りついた。

 フェイトは何か思い出したのか振り返り、言った。

 

「あ、私はパンツを履かないことに関しては追求しないでください。そういうスタンスなので」

(どういうスタンスやねん!!)

 

 内心全員がそう思っているに違いないとはやては思う。今さらながら「ちょっと恥ずかしかった」と照れるフェイトだが、なぜか萌えない。

 「……変態宣言したからだろうな」となのはと並ぶアオは呟いていた。

 

 それから次々と挨拶が行われた。その中にはアオはもちろんのこと民間協力として、まどか達や縛られて芋虫になっている雷斗もいた。

 

 ……なぜ雷斗が芋虫になっているのかは割愛させてほしい。白い悪魔の仕業なのだ。

 

 そして最後に、台へ上がるのはある意味取りをとる青年だ。

 輪郭の整った爽やかそうで、金髪のオッドアイ。それが不気味とは言えず、カッコいいとも言わせるほどの顔立ちだ。服から見れば始めは弱そうだったなぁとはやては思い出す。

 今は、ホントにとてもすごい。脱いでもスゴいと言えるくらい筋肉がムキムキのダイナマイトボディ。

 

 そんな彼が演説する。最初に言っておく。

 彼は普通に演説をするつもり――――はない。

 

「はじめまして諸君。我こそ、マッスル部隊隊長。八神衛である! さあ、さっそくだが筋肉について語ろうではないか!」

「「「「マッスルマッスルぅぅぅぅぅ!!」」」」

 

 掛け声が響き渡る。ビリビリとアリーナを揺らぐほどの士気である。

 衛の信者――ではなく共に筋肉を鍛えぬく野郎と少女の軍団である。中にキャロがいるのは当然であった。

 

(……これいつ終わるんやろ)

 

 それからはやての旦那様の演説が軽く三十分過ぎたところでなのはちゃんがイイ笑顔で砲撃を撃った。

 ナイスと心の中で呟いたはやてだが、なのはが乱心したと勘違いした衛が無傷のまま彼女を『マッスルホールド』で宥めようとした。当然、それはアオという犠牲で開設会の幕を降ろしたが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 隊員達の自己紹介も終わり、なのはやフェイトが直々に教鞭を振るうチームも結成された。その力を知るために、なのはと模擬戦をすることなった。

 ティアナ・ランスターもまたその一人である。彼女は自他共に認める凡人である。

 その凡人なりにも天才達へ届かせようと足掻き、努力した果てにここにいる。

 

 ティアナは作戦を伝える前に、メンバーの顔を確認した。

 同僚のスバル。後輩とも言えるエリオとキャロ。

 そして――――

 

「いや、ホントなんで魔導師でもないガキんちょもいるのよ」

「ガキんちょじゃない。ソラだよ!」

 

 プンスカ怒るエリオよりもやや小さい少年。名前は神威ソラなのだが、どうもここにいない参謀の名前と容姿がパンフレットの写真とそっくりだ。違いがあるとすれば年齢と身長である。

 

 まあそれはさておき、なぜソラがここにいるのか疑問に思った人がいるので回想に移ろう。

 

 

 

 

 

(回想 一年前)

 

 遂にソラは車イス生活することなった。下半身が動かなくなり不便だと愚痴りながら、玄関に向かう。

 彼の『弱体化』の進行がもしかすると止まるかもしれないという、はやての情報を知り、無駄でも試してみようと、リッカとまどか、千香を連れてある科学者の元の住居に向かう。

 

 その住居のインターホンを鳴らすとこれまた知的美人な女性が応対する。はやての知人とその証明となるデバイスのウィンドをかざすと女性――ウーノ――はスカリエッティという科学者を紹介した。

 彼が何をしていたかと言うと研究ではない。かと言ってアニメを見ているわけではない。

 真剣にあるものを作っていた。

 

「ウーノ、少し待ってくれ! 今、まさに機動戦士のプラモが完成しそうなのだ。だから客人に待って」

「そんなプラモにまどかちゃんダイブ!」

 

 べきょ! プラモはまどかダイブで粉々になった。

 

「ぎにゃァァァァァ! 私の夢とロマンがァァァァァ!」

「うごぉ……ヤバい。プラモにダイブするんじゃなかった。結構刺さって痛い……」

「いや普通大ケガするからな? 痛いだけで済まないからな?」

「君達は何者だ! は。さては組織のものだな。ならば私のバトルモードを見せてあげよう! スカウター装備!!」

「戦闘力わかるもの装備して何になるの?」

「聞いて驚きたまえ。このスカウターは『スリーサイズ』がわかるスカウターなのだよ! これぞ男のロマンなのだよ少年!」

「確かにそうだけど後ろの美人さんが修羅になってますよ」

 

 「ドクター、これ没収です」と言ってウーノは取り上げた挙げ句、握力で粉々に砕いた。スカさんまたもや膝について絶望する。

 

 悶えるまどかを看病するリッカ。

 スカさんを説教するウーノ。

 

 一人残されたソラは呟く。

 

「なんだこのカオスは」

「見て見てソラ! ボクのおっぱいDを越えてるらしいよ!」

「まだあったのかスカウター!」

 

 ちなみにまどかはD。リッカは測定不能という数値が出た。

 ……なぜ測定不能なのだろうかと謎が残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。それで弱っていく身体をどうにかするために私を尋ねてきたのだね。任せなさい! 私はこう見えて生物学も詳しいのだよ!」

「私を含めた『ナンバーズ』の生みの親ですしね」

「『ナンバーズ』?」

 

 ソラの疑問にウーノが代わりに答える。機械を人体に融合させた生物兵器で、だいたいは拒絶反応で早死にする運命らしい。非人道的と思う一方、なんでそんな生物兵器がここで穏やかに暮らしているんだと言い返した。

 

「その『ナンバーズ』のメンバーが悪魔側についちゃいまして、魔法少女になりました」

「それはまた……。正気に戻ったら確実に黒歴史だな」

「ええ。そのために様々な画像を撮って記録しています。帰ってきたときには楽しみですよホント……」

「黒い……黒いよこの人」

 

 暗い表面に目がギラギラ光らせるウーノに冷や汗を流すソラ。そんなときスカさんが一錠の薬を手渡す。

 

「これは細胞を若返らせる薬さ」

「細胞を?」

「劣化する細胞を真新しくするための薬さ。まあ、若返らせるのは間違いではないがあくまで若返らせるのは細胞さ。これを投与し続ければなんとか五年くらいは持てるかもしれない」

「え、完治じゃないのか?」

「細胞の劣化という病気は似たモノがあるが、どうもまだまだ完治法が見つからないのだよ。この薬はあくまでも引き伸ばすためのモノなのさ」

 

 それもそうだ。細胞を若返らせることはできても、ソラの細胞は謎の劣化現象をし続ける。完治するとなると、それは新しい肉体に魂を移動させるという奇跡の技くらいしかない。

 

「とりあえず飲んで見るけど副作用は?」

「ハッハッハッ。…………」

「オイ。目線逸らすなよ」

「いや、ね。まだ試作段階で人体の治験はまだなのだよ。動物実験で九割は成功しているのだが」

「残り一割は?」

「ムキムキのマッチョな猫になった」

「なんで!?」

 

 なぜムキムキになる。そこは普通に考えて死ぬとかそういう危なっかしいリスクだろうに。

 

「まさか二足歩行してマッスルポーズをとってくるとは私は驚きを隠せなかったよ。顔がキュートな猫なのに」

「気持ち悪いわ! てか、なんだその超人生物!」

「その猫は謎のオカマ達に導かれていったなぁ……。確か名前は『オベイロン』と『ジャンヌ』だっけ?」

「知ってる名前が出てきた!?」

 

 久しぶりに出てきた敵と味方(?)の名前に驚愕するソラ。遂にオベイロンは堕ちてしまったというやるせなさがある。

 

「さあ、選びたまえ。延命するか! マッチョになるか!」

「シリアスのねぇ二択だなオイ! もう、飲むって!」

 

 ガーッと水無しで飲み込むソラ。やや不味そうなのか舌を出して苦そうにしている。

 するとウーノが。

 

「ドクター。それ、違いますよ」

「ん? そうなのかい」

「はい。若返らせる効力は合ってますがそちらの薬はその十倍の効力ですよ」

「つまり本物はそっちなのかい?」

「はい。本物はこっちです」

 

 しーんと静まる空気。スカさんは後ろ頭を掻いて。

 

「すまない。間違えたぜ!」

「オイィィィィィ! サムアップしてんじゃねぇ……ってなんか身体が熱いィィィィィ!?」

 

 薬の効力が表れたのか、徐々にソラの視界は低くなりそして思考も低下していき、そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うにゃ? ツインテの姉ちゃんはなんでジロジロ見ているの?」

「なんでもないわよ(不安だらけだわ)」 

 

 現在に至る。『神威ソラ』は退化して『一ノ瀬ソラ』になってしまった。

 いわゆるチビソラである。

 

 そんなチビソラが首を傾げる中で、ティアナは簡単な作戦を伝える。ティアナとスバルがなのはを牽制し、残りのメンバーは隙を見てなのはに攻撃するという作戦だ。

 

「よし、行くわよ!」

「「「「はい!」」」」

 

 ティアナの声に答えて、作戦通りになのはの模擬戦が始まった。

 




予言: カリムさんがあげた予言。占い程度なのだが、恐ろしいことに外れることが少ない。予言に書かれた英雄が『無血の死神』ではないかと推測されているが、今の彼は限りなく弱っているため、別の何者なのかではないかと言われている。しかし、その別の英雄が何者なのか不明……

キャロちゃん: マジカル☆八極拳並みの物理特化している術師。エリオたんLOVE(笑)

ミゼット: 現在行方不明。シリアスな面がないが……い、嫌な予感がする(-_-;)

チビソラ: 遂に出せたぜ我らの癒し。型破りな行動パターンはリッカの血筋。

スカウター: 戦闘力を計るためのものが、なぜかスリーサイズを計るものに。男のロマンと言えばロマンだが、同時に女の敵

ジャンヌ三世: オカマの国のお妃様……? とりあえず、オベイロンが堕ちてしまったのは事実らしい

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