とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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久しぶりに更新m(__)m けど更新は不定期かも……。

ちなみに時間系列はソラが記憶を取り戻してからです。


閑話 実はこんなことがありました(笑)

 

 

(ソラ 中学一年の頃)

 

 

 ミッドチルダ。全ての次元世界を監視する組織の総本山――――管理局本部がある。そんな世界に、執務官という夢を志す青年がいた。

 その青年の名前はディーダ。ディーダ・ランスターである。普通で平凡の成績だが、銃撃戦において彼は平均より上回っていた。

 

 そんな彼は今現在、ある犯罪者を追っていた。その犯罪者――――グレゴリゴ・エスパーダは強盗、恐喝、および殺人を犯した重犯罪人である。彼を捕まえるためにディーダは袋小路まで追い込み、拳銃型のデバイスを突きつけていた。

 

「ここまでだ!」

「ケッ。しつけーな!!」

 

 ディーダのデバイス『タスラム』は彼に標準を定めている。もはや、彼に逃げ道はない。

 捕まる一歩手前。ディーダが足を踏み込んだとき、粘液を踏んだような感触を感じた。

 

 黒いドロドロしたモノが靴に引っ付いていた。その上

、壁から地面から現れる。

 

「な、なんだこりゃ!?」

 

 犯罪人の男にドロドロしたモノがまとわりつき、そして彼の身体を呑み込んだ。

 その物体からプッと吐き出された。ディーダはそれを見て目を見張る。

 

 

――――白骨化した腕だ。あの黒いスライムが呑み込んだのだ

 

 察知したディーダは靴を脱ぎ捨て、黒い物体に背を向ける。黒い物体はディーダのことを諦めていないのか、ゆっくりと追いかけている。

 

(移動速度が亀みたいだな。でも、これなら逃げ切れる)

 

 人の気配がない路地裏の袋小路から逃げ出したディーダ。そしてその出口と言える通りが見えた。光が射し込むその光景は楽園の扉と言ったものだ。

 

 しかし、予想外のことが起きた。ドロドロした黒い物体が壁のように現れたのだ。先回りされていたのだ。

 ディーダはブレーキをかけて、踵を返して逃走する。

 

「くそっ。なんだってんだよこれ!!」

 

 わけのわからないものに追われ、心身ともに疲労がたまる一方。彼は秘密の広場らしきものに足を踏み込む。

 息を吐き出し、落ち着こうとした中、グレゴリゴらしき男が黒い物から出てきた。右腕は切断されたかのように消失しており、白骨化した部分が見えている。

 何より、彼の口元は人とは思えないくらい割れており、牙が無数に生えていた。

 

「ば、化け物かよ!」

 

 ディーダはスフィアを展開して四方八方から撃ち抜く泥人形のように崩れていくグレゴリゴを見届け、彼は『タスラム』を下ろす。これで終わり。そう思った刹那、腹部に何かが通り抜ける感覚を感じた。

 

「がふ……」

 

 黒い物体の触手が槍のように、ディーダの身体を貫いたのだ。触手が抜き取られ、そこから血が溢れ出す。失血のあまり彼は意識が朦朧としていきながら倒れ込む。

 

(俺、死ぬのかな……)

 

 ディーダ・ランスター。彼は黒い物体に取り込まれ、タスラムが握られた利き腕を残してこの世から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディーダ・ランスターの葬儀が行われ、墓標の前にティアナ・ランスターは立っていた。

 兄さんは犯罪人を逃し、殉死したと現場調査ではそう下された。その犯罪者がどこで何をしているかはわからない。

 それよりも彼女は深く傷ついていた。兄であるディーダの失態を、彼の上司は心にもないことを言ったのだ。

 

『犯罪者を逃すなど管理局の風上におけん。無駄な死で余計な手間を増やしてくれた』

 

 肉親を失い傷心した彼女がいるにも関わらずそう言った。ティアナが食って掛かろうとしたとき、筋肉モリモリな男の子がその上司をぶん殴ってくれたことで溜飲は下がるが、それでも彼女の兄。彼の誇りを傷つけられたことには変わりはない。

 

「兄さん……わたし。なるよ。平凡なわたしでも、きっと執務官に……!!」

「うむ! その意気やよし!!」

 

 後ろから野太い声が聞こえ、振り返ると彼女はギョッとした。上司を殴り飛ばした男の子だ。

 歳は自分より三歳上で金髪の少年だ。

 

「貴様の兄を侮辱した愚か者は不当な発言により時機に、辞職になるそうだ。そのことを伝えにきたが、よもや兄に宣言していようとはな。なんとも美しい兄弟愛よ」

「あの……わたし、弟じゃ」

「ぬ? では姉妹か。ディーダは女の心を持つ男だったのか?」

「どう解釈したらそうなるのよ! わたしの兄は心も身体も男よ!」

 

 現に修道女がイロイロされてる絵本がベッドのしたから発掘されているわけであり、そんなことはないはず……とティアナは内心呟く。

 ……哀れディーダ。妹にトップシークレットを発掘されていた。これを知られるようなものなら、おそらく立ち直れないと思う。

 

「まあよい。このような下らないやり取りよりも、貴様に一つ聞きたい」

 

 衛の言葉に、ティアナは騒がしかった周囲が静まった気がした。彼が今から言うことは聞き逃していけない気がしたのだ。

 

「ティアナ・ランスターよ……」

「は、はい……!」

 

 重く、そして真剣な顔で彼は彼女に聞いた――――

 

 

 

 

「貴様は筋肉をどう考えている?」

「なんで筋肉!?」

 

 どうでもいいことを聞かれ、先程の雰囲気がぶち壊された。さすがシリアスブレイカーである。

 真面目な空気をコメディに変えてしまった。

 

「何、貴様がディーダ・ランスターの死の真相を知りたければ我が部隊にきてもらおうと考えての言葉だ」

「それを言おうよ!? 筋肉だけじゃ、ただ筋肉を求める変態じゃない!」

「たわけ! 強くなるためには、筋力は必須。何事において筋力は我らの力の源である。ゆえに筋肉を求めるのは当たり前の真理なり!!」

「正論っぽいけど、納得できない!」

 

 認めたくないことだってある。衛の筋肉信仰もとい、マッスルパワーが強さの源というのは納得したくない。

 納得したら、その時点で自分の将来がボディービルダーになってしまう気がするのだ。

 

「ぬぅぅ……なぜオナゴ達はわかってくれないのだ。このままでは我の部隊は将来的に男だらけの筋肉部隊になってしまう!」

「さすがにそこに勧誘されても行く気は起きませんよ? というか女の子は筋肉を気にする方ですから。身体つきを意識する生き物だから」

「そうなのか? ふっくらとした女性とて、我は気にせぬが……。はやてが太っていても我は大好きだと言ってやったのに、やっと怒られた理由がわかったぞ!」

(あ、だから頬に紅葉があるんだ)

 

 平手打ちされた理由を理解したティアナと衛。彼女はそんな彼の鈍さというかデリカシーのなさに呆れて嘆息を吐いた。

 

「なんかちょっと肩から力が抜けましたよ」

「む? そうか。ならばそれは良いことだ」

「……どうしてですか?」

「簡単な話だ。貴様はどうも気を張りすぎる機雷がある。それは真面目で正しいあり方だが、そんなこと続けていけばいずれパンクし、壊れていく」

 

 自転車とていつまでも使えない。空気を入れたり、タイヤを修理しなければいずれはガラクタの仲間入りになる。

 どこかで彼女は気を抜いて、リラックスするような時が必要だと衛は言ったのだ。

 

「貴様がもし兄の仇討ちをしたければ止めはせぬ。されど殺すな。それをすれば貴様は仇と同じ殺人鬼となり、畜生へと成り下がる」

「…………」

「殺しはしないと考えてるか。しかし人とは先がわからぬ生き物だ。いつ、どこで、貴様の憎悪が爆発し、周りを巻き込むという可能性は必ずしもないとは限らない。人が感情を持つ限り、それは避けられぬことなのだ」

 

 衛はそう言って踵を返して背中を向ける。

 

「もし、貴様が心身共に力を、強さを、求めるならば我。いや、八神はやてが六年後創設する組織に来い。そこに貴様が求める答えと目標があるはずだ」

 

 歩き去る衛の背中をティアナはずっと見ていた。その背中は先程よりも大きく広く見えた。

 

「……天道衛、か」

 

 墓標に向き直り、ティアナは目を瞑り、未来を想像する。

 

 

――――彼を含む隊長達と共に歩む部隊。その背中達を追いかける自分とその同僚達。

 

――――遥か遠く。されどいつかたどり着ける目標。

 

 

 

 そんな未来を想像するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まーもーるーくーん?」

「ぬ。どうしたはやてよ。そのような不機嫌な面持ちで」

「さっきの子と何を話とったん?」

「勧誘」

「女の子を誘ったら、あかんって言うとるやろ! アンタが誘った女の子全員が筋肉フェチのボディービルダーに転職しとるからな!?」

 

 小部隊の隊長。天道衛が勧誘した八割が筋肉信者になっているそうだ。

 

 

 

 

《おまけ(笑) その一》

 

 

 スバル・ナカジマ。彼女は空港の火災に巻き込まれていた。

 まだ小さな彼女は臆病で、自分に自信がない大人しい少女だ。誰か助けに来てくれると思ってか、火の海に囲まれたところにとどまっていた。

 

「ひっく……ぐすん。おとーさん……おねーちゃん」

 

 とそのとき。天井が瓦解し、火に包まれた瓦礫が落下してきた。このままでは自分は下敷きになる。そんな運命を想像し、悲鳴をあげる。

 

 そんな彼女に希望の光が射し込む。ピンクの一筋の光が瓦礫を滅ぼし、光を出した主がスバルを小脇に抱える。

 

「スバルちゃんだね。うん、そうだね。そうに違いないよね」

「えっと、そう……です」

「よし言質とった! さっさとここから抜け出そう。なんか熱いし、汗がベタつくし!!」

(えぇー……)

 

 自分よりもなんか熱いのが嫌という理由に、スバルは額に三本の縦線が浮かぶ。

 しかし彼女の言うとおりには変わりない。スバルを抱えた少女は、そのまま杖からピンクの光線を撃ち出す。

 

 火が飛行している彼女達を遮ろうとすると、少女はスバルを庇うように抱き込み突っ込む。

 そのまま突き抜けたなのはは高笑いしながら、言い出す。

 

「オラオラオラなの! この程度の火なんて雷斗くんの電撃比べたら痛くも痒くもない!」

 

 なのはが普通ではないとスバルはそう思った。火の中に突っ込んでも火傷を負わずに髪の毛がちょこっと焼けた程度で済ませるこの人はもう人外だ。

 

(最初はかっこよかったのになぁ……)

 

 原作の彼女の将来がやや揺れる出来事だった。

 

 




ディーダ・ランスター: 使い魔事件の管理局最初の被害者。……彼がどうなったのかは不明

ティアナ・ランスター: 後のツッコミ役。……変態にはならないが苦労人なのは確定

天童衛: 後、八神の姓に変わり、ある意味引っ張りだこになる。エース・オブ・エースの候補として上がったが拒否したらしい

スバルたん: ……この頃はまだ可愛かったかもしれない。あ、変態にはならないよ?(目そらし)


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