とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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復活。そして再来……!
ソラの物語をもう一度書きたいという願いで書きました。(すみません)

ではどうぞ。


プロローグ

 

 

 むかしむかし、あるところに一人の少年がいました。その少年は夢見るお年頃で、誰でも助けられるヒーローに憧れていました。

 そんな理想を求め、救いのヒーローになった気分だった少年はある少女達と出会います。絶望と希望の板挟みに苦しむ少女――魔法少女達です。

 彼女達は絶望たる象徴である魔女と戦い、そして彼女自身が絶望すれば魔女となる人間ではなくなった悲しい少女達です。

 少年はそうとも知らずでしたが、彼女達のために戦い、そして一人の親友を守ろうした魔法少女の願いを果たそうしました。

 

 しかしままならないのが現実です。その魔法少女の願いを否定するかのように、『抑止の存在』という審判者が彼女達と少年に立ちはだかりました。結果は言うまでもなかったでしょう。

 仲間の魔法少女達三人が無惨な死を迎え、残された魔法少女と少年は無力のまま、望まぬ形で魔法少女の親友である女の子を『概念化』という結末を迎えさせてしまいました。

 

 これが少年が救えなかった少女――『円環の理』になってしまった取り残された女の子の話です。

 

 少年は『円環の理(彼女)』を、『彼女の親友』の願いを果たすためにも強くなろうと決意し、師に呼ばれ戦争へ行きました。

 

 

 そして少年はどうなったのかは…………まあどうでもいいだろう。

 

 だってオレの黒歴史の話だし。てか、純粋なオレ=バカの結晶みたいだったものだ。

 

 まあそれはさておき。オレは今、死んで何もない空間にいる。

 

 いやマジで暗い……。世界が闇に包まれた空間。夜空色に支配された何もない世界にいる。

 そして何もないのに、海に沈むかのように墜ちていく……。

 

 ここが死の国だろうか? それとも地獄だろうか?

 

 まあどうでもいいか……。『無血の死神』と呼ばれたオレ――最低最悪な殺戮者が迎える最悪な結末なのだろう。悪魔となった彼女のために戦い、その結果無惨な死を迎えた結果がこれだ。

 

 とは言え、なぜ死んだオレに意識があるのだろうか?

 

 死んでしまえば意識なんてないのに、なぜこんなに思考がクリアなのだろう。

 そんなことを考えていると、老人の声が空間に響いた。

 

『フォッフォッ……目覚めたかのう。踏み台候補よ』

「踏み台? なんぞそれ?」

『踏み台と言えば踏み台転生者じゃぞ? それすらわからぬとはよほどの馬鹿のようだろう』

「見ず知らずのヤツに馬鹿って言われるのはなんかムカつくな。てか、お前誰だよ」

『わしか? わしは下級神じゃ』

「かきゅうしん?」

 

 神っていやありえないから。だいたい神って言えば神木の女神しか知らねぇし。

 

『喜べ人間。貴様に我が主人公のための踏み台転生者になってもらうぞ』

「マジで? 残り二人できたら『ジェットストリームアタック』してもいい?」

『その踏み台ではないがのう。まあいい。貴様には呪いとして踏み台を演じなければ周りから嫌われる呪いを与えてやろう』

 

 うわっ、いらねぇ。そんな呪いもらうこいつロクな神様じゃねぇな。

 呪いを受けたのか、身体がやや思い感じがした。

 

『ん? なんじゃその強固な肉体。そんな身体スペックなんぞ下げてやるぞ』

 

 オイ、人が鍛えに鍛えた肉体を下げんな……ってうわ、最悪。身体がめちゃくちゃ重くなった。なんか重りをつけられた感じがする。

 

『フォッフォッ! 髪も銀髪に染めてやった。お金はそうじゃのぅ、まあ最低限支給してやるぞ。ではゆくがいい踏み台くん』

「ジジイ、てめぇ……!」

 

 オレは召喚術を使おうと手を出す。召喚術とは端的に言えば魔力によって発動する呼び出し転移だ。魔力のマーキングした物体をその場で喚び出すことができるがオレが喚び出すのは、マーキングした物体ではない。

 魂の一部を武器にしたモノ――――【神器】だ。

 【神器】とは最古の英雄『ギルガメッシュ=アーティファクト』が開発した魂の一部を兵器にした魔法武具だ。かの英雄たる彼はあらゆる【神器】の使い手として君臨し、そしてたった一人で王国を立ち上げ、世界を支配したと言われている。

 彼が開発したその【神器】は後の世に広まり、その使い手を『神器使い』と呼ばれるようになった。

 

 まあ昔話はさておき、オレはその『神器使い』だ。そして英雄と言われた男だ。

 その英雄の証であるオレの神器は――――召喚されなかった。

 

(なんでだよ……! 召喚術が使えないって…………まさか)

『なんじゃい。今さら気づいたのか? そうじゃよ。貴様の力は全て封印したのじゃよ』

 

 ホントムカつくジジイだ。オレの専売特許を封印し、あまつさえ最低な呪いをかけるとはどこまで腐ったジジイだ。ギロリと睨み付けると面白くなさそうな声が響いた。

 

『ふんっ、生意気じゃ! とっと転生しろ!』

「がっ……!」

 

 腹部に痛烈な痛みを感じ、そしてオレはものすごい勢いで落下して意識が次第に遠くなっていった…………。

 

 

 

(??side)

 

 

 銀髪となった青年が転生した後、彼を転生させた神は高笑いしていた。

 

「ククク……せいぜい楽しませてくれ。わしのおもちゃよ」

 

 頭がハゲており、なおかつ枝のようなシワクチャで醜い存在。

 人間とは思えないくらい下卑な笑みを浮かべて、他人の不幸を楽しむ最低な存在。

 それこそこの下級神である。もっとも下級神と言っても、神と言っても彼らを『管理者』と呼ぶ者もいる。

 彼ら彼女達の目的は世界のバランスなのだが、この老人はさっそく崩してしまった。

 

「しかしなぜじゃ? 銀髪オッドアイにしたつもりじゃが、なぜ髪が銀髪しかできず、瞳は青いままじゃろうか……。おまけにヤツの力を取り除こくこともできなかったしのう……」

 

 まあよい、と切り替え。下級神は水晶玉を浮かべた。銀髪となった青年――転生した少年が家の中で目覚めた映像が水晶玉に映し出された。

 

「ふむ、周りを不幸にする呪いをかけてやるのも悪くないのぅ。ククク、そうと決まれば」

 

 下級神が水晶玉に手に触れたとき、水晶玉が光の矢によって粉々にされた。その矢はピンクに輝く変わった魔力矢で、下級神は水晶玉を破壊した少女を睨む。

 その少女は背中に天使のような光る翼を広げ、服は長いワンピースのような衣装。そして容姿は背丈よりも長いライトピーチの髪の色と金色に輝く瞳を持つ少女だった。

 

「貴様、何者じゃ! ここは『管理者』のみ許された場所じゃぞ。いったい誰の許しを得てここにおる!?」

「アタシさ」

 

 少女の後ろから現れたのはギリシャ神話に出そうな服装をしたそれは美しい女性だった。長い紅い髪でプロポーションは抜群。誰から見ても美しい女性がいた。

 

「貴様……ユグドラシルか!」

「神木、ユグドラシルちゃんと呼びなさい」

「女神さんの名前ってそうだったの?」

「うん。ぼけなす(作者)の野郎がやっとつけてくれたのさ」

「メタいね」

「なんの用でこの小娘をここに連れてきた!」

 

 ギャーギャーと喚く下級神――もとい老人にユグドラシルは「はぁ……」と嘆息を吐いた。呆れた眼差しを彼に向けていた。

 

「アタシのお気に入りに手を出しといて何様よアンタ。てか、何勝手なことしてんのよ。転生者を好き勝手に異世界に放り込むじゃないわよ」

「わしの勝手じゃわい。貴様なんかに指図される必要はないわい!」

「……一応、これ警告だけど。今すぐ彼の呪いを解きなさい。出ないとヤバいわよ?」

「はん、貴様の脅しなんか怖くないわい!」

「いやアタシの脅しじゃないっての」

 

 ユグドラシルはその続きを言おうとしたとき、老人の肩に誰かが掴んできた。気安く触れたその者に老人は裁きを下そうと杖を出し、向けようとした――――が、できなかった。

 

 なぜなら彼を掴んでいたのは人間でも神様でも少女のような形ある概念ではない。

 

 『ナニカ』だった。

 

『ルール違反』

『かの者は管轄外の契約した存在を貶めた』

『余分な力を一人の転生者に与え、その他を貶めた』

『呪いを私的に使用。それゆえ罪を重ね重ね』

『よって処分が妥当』

『『処分処分』』

『『『処分せよ、処分せよ』』』

 

 女のような男のような。

 子どものような老人のような。

 少年のような少女のような。

 

 そんな混ざった声が『ナニカ』の出した言葉だ。人型にとどめた影を老人は杖で押し飛ばした。

 

「なんじゃいこの気色悪いものは! 消えよ!」

 

 老人が強大な火炎の球体を影に投げた。しかし球体はパッと消え、老人の杖が弾けとんだ。

 それには老人は驚愕せずにはいられなかった。

 

「なんじゃこやつは!? 神であるわしの力を無効にできるはずが……!」

「思い上がるなよ『新人管理者』。アンタは目をつけられちゃいけないヤツを敵にまわしたのさ」

 

 ユグドラシルは威厳ある声で老人に言った。

 

「ヤツこそが世界の審判者、そしてお前が言った小娘を概念化に追い込むことに導いた絶対に勝てない存在――――『抑止の存在』さ」

「そのような存在が……い、いてなるものかァァァァァ!」

 

 老人は目を血張らせ、必死になって『管理者』の力を集めようとしたとき、彼の腹部が消失した。

 影が向けた手によって消滅したのだ。腹部が最初で次に消し飛んだのは、手足だ。

 胴体だけ残された老人は狂ったように繰り返した。

 

「嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ! 消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたく――――」

 

 影が合唱したとき、老人はブチュリッと潰れるように消滅した。残された二人の女性を『抑止の存在』はペコリとお辞儀して煙のように消え去った。

 

「『抑止さん』、ホントに強いねぇ~」

「アイツは強い弱いの話じゃない。『正しいか間違い』かで決める存在さ。ヤツの敗北はヤツが現れないということさ」

 

 ユグドラシルは頭を掻きながら、ピンクの少女に問うた。

 

「んで、アンタはどうするんだい? どうやらアタシのお気に入りはどうやらその世界に転生して固定化しちまったみたいだけど?」

「大丈夫です。私達もそこに転生して彼を支えますから♪」

 

 ピンクの少女の答えを現すかのように、魔方陣から二人の少女が現れた。一人は黒い髪のロングの少女で、もう一人は白髪の密編み少女だ。

 

「にゅふふふ……遂に、遂にショタ彼をあんなことやこんなことができるんだね!」

「そうね。あぁ、早く彼に会ってしたいわ…………束縛を」

「もう……そんなことしたら彼が泣くよ~? ……そんな彼を見たいけど、ティヒヒヒ♪」

 

 なんというか実は欲望に忠実な三人の少女だった。それを見た女神ことユグドラシルさんは思う。

 

(…………最初に転生させる(送り出す)人選ミスった?)

 

 こうして彼――――『無血の死神』の憂鬱な日々が約束された……。

 

 




神木の女神:名前はユグドラシル。ソラに人外ボディーを与えたお方

謎の美少女三人組:一人は魔法少女の神様、一人は理を覆した悪魔、一人は混沌の魔女。要するに人外だけど人格が変態な女の子達

下級神:抑止さんに目をつけられ消滅。結局この一話で出番終了

抑止さん:審判。世界を裁判所と例えるとこの存在が判決を下し、ギルティだと死刑

ソラ:本名は一ノ瀬ソラ。まどマギ世界ではオリ主で、幼い頃は純粋で真っ直ぐな少年だったが、戦争を経て絶望を知り、リアリストとなった。なお、転生後記憶が忘却されている。次回で彼の絶望します。

(変更点)
・抽象的ではない(たぶん)
・セリフが少し違う!
・なんと呪いが追加。身体が弱いが次回で解けます(ネタバレ)
・断罪したのはやはり抑止さんでした……。殺し方が怖い。




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