A memory for 42days   作:ラコ

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お礼は気持ちだけで

 

 

 

お客さんの入りが少ないこの喫茶店。

唯一と言っていい常連客の葉山先輩は今日も30分程の会話を済まして店を出て行く。

 

謎の封筒はを怠そうに開封した先輩は、次第に中身の紙を夢中に眺め出した。

 

 

「……それ、何なんですか?」

 

「んー?…人類補完計画の資料」

 

「まじですか……」

 

「……うん」

 

 

答える気のない先輩に、これ以上追求しても意味はないだろう。

 

お客さんの居ない店内に居てもしょうがない。

私は店前の掃除でもしようと店を出た。

 

すると、数分前に出ていったはずの葉山先輩が携帯を片手に誰かと話している姿が目に入る。

 

 

「……はい。はい。……それでは、陽乃さんによろしく」

 

「……葉山先輩?」

 

「ん?あぁ、いろは。どうかした?」

 

「いや、お店の前を掃除しようとしたら葉山先輩が眼に入って」

 

「ちょっと電話が入ってね」

 

「……陽乃さんですか?」

 

「……違うよ」

 

 

少し間のある返答。

葉山先輩は頬を掻きながら笑顔を浮かべた。

 

 

「教えてください」

 

「何を?」

 

「先輩が雪ノ下先輩のお母さんと交わした約束のことです」

 

「……」

 

 

葉山先輩はきっと知っている。

繋がっているに違いない。

 

 

「何のこと?」

 

「惚けないでください」

 

「……、詳しいことは本当に知らない」

 

「……」

 

「それに、比企谷にも口止めされてるんだ」

 

「私には……、関係のないことだからですか?」

 

「巻き込みたくないからだよ」

 

「私は巻き込まれたいんです。……一緒に…、背負いたいんです」

 

「……。それを彼は望まない。ああ言う性格だからね」

 

 

葉山先輩も知っていることだ。

先輩が1人で何でも解決してしまうことを。

そして、自らの保身を望まないことを。

知っているからこそ、葉山先輩もこうやって喫茶店に足を運び、何かと先輩に構っているのだろう。

 

 

「……。雪ノ下先輩も、結衣先輩も、私も、……みんな助けられてばっかり」

 

 

自分で自分に腹が立つ。

そうやって重荷を増やしてしまったことに。

 

 

「……彼はそんなこと思っていないよ。少なくとも、一緒に生活している君になら分かるはずだろ?」

 

「何を分かれって言うんですか?」

 

「……比企谷に聞いてみるといい。じゃぁ、俺はもう戻るよ。またな」

 

 

颯爽と、と言うには少し逃げ腰な葉山先輩を見送る。

 

分かりませんよ。

そんなこと。

 

どうしたって私は先輩の重荷に過ぎないんだから。

 

 

私は店内に戻り、大股で先輩に近寄る。

 

 

「先輩!!」

 

「え、何?」

 

「私も先輩の助けになりたいです!逃げたくないんです!」

 

「……、人類補完計画って嘘だからね?エヴァに乗らなくてもいいんだよ?」

 

「知ってますよ!そうじゃなくて、雪ノ下先輩のお母さんと交わした約束のことです」

 

「……あぁ、そっちね」

 

 

首を傾げながら、先輩は少し考え込むように目を閉じた。

 

 

「……充分助けられてるんだがな…」

 

「そんな覚えはないです…」

 

「おまえに無くても俺にはある」

 

「……私には無いんです」

 

 

コーヒーに砂糖とミルクを大量に投入しながら、先輩は眉間にしわを寄せた。

 

 

 

「……なら、少し頼まれてくれる?」

 

 

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