奉仕部の3人と紅茶を飲んで団欒している風景が広がる。
先輩に軽い冗談を言いながら構ってもらうと、2人の目が少し苛立ったように私を睨む。
私は軽く受け流しながら先輩にちょっかいを出し続けた。
どうして私に振り向かないんだろう。
そりゃ、これだけ美人で可愛い奉仕部の先輩達が近くに居たら、目が肥えてしまうかもしれない。
でも、私だって負けていないはず。
ねぇ、せんぱい。
もっと私を見てください。
せんぱいだけなんですよ?
本当の私を見てくれるのは…。
……
…
.
「…………。ほぇ?」
重い瞼を開けると知らない天井。
私が寝ていたであろう部屋を見渡すが、何も心当たりがない。
「……頭痛い。ここどこよ…」
「……俺ん家だよ。バカ後輩」
夢の続きが始まった。
6年前に終わってしまったあの続きが。
手を伸ばせばそこに彼が居た。
「な、なんだよ。ほら、まだ寝てろ。おまえひどい熱でぶっ倒れたんだぞ。覚えてないか?」
私の手を鬱陶しいそうに払いのけ、ベットの近く置いてあった椅子に座った。
先輩の冷たい手が私のおでこに触れる。
「……ぁぅ」
「んー、39度くらい?」
離れていく先輩の手を名残惜しく見つめる。
冷たくて気持ちよかったなぁ。
「ほら、これ食って薬飲め」
「……はい」
先輩におかゆを手渡され、私はスプーンを握り少し固まる。
少し、ほんの少しだけ我儘を言ってみようと。
「……食べさせてください」
「……、今日だけだぞ。普段は小町にしかやらないんだからな?」
いやいや、その年齢でシスコンとか……。
相変わらずですね、先輩。
ちょっと引きます。
なんて……。
そうゆう変わらない先輩を見ていると落ち着いてしまう。
先輩がスプーンに載せたおかゆを私の口前に運ぶと、私は何も言わずにそれを食べた。
「……ん。おいしいです。普通に」
「……なら、もっと旨そうに食えよ」
「すみません」
いつもの調子が出ない。
やっぱり先輩の前だから?
違う。
現在の私と過去の私がこんがらがっちゃってるんだ。
「……すみません」
何度も謝って、何度も泣いて、やっぱり今の私は先輩の知ってる私じゃありませんか?
「……はは。本当に変わらねぇな」
「……っ!?」
「で?どうするよ、おまえ。帰れるか?」
「…え、あ、あぁ。すみません。迷惑でしたよね」
「んー、迷惑じゃねぇけど。まぁ、好きにしろよ。俺は下の喫茶店に居るから」
先輩は私の食べ終わった食器を片手に扉を開ける。
どうやらここは喫茶店の2階だったらしい。
下に続く階段が見えた。
私は重い身体を起こし先輩の後を追う。
自分の服装がダボダボなワイシャツだったことに少し照れながら、私は喫茶店の扉を開けた。
「寝てなくていいのか?」
「……いえ、まだ頭が痛いですけど」
「ここ、俺の喫茶店なんだわ。いろいろ聞きたいことがあるかもしれんが今は寝とけ」
「……あ、はい」
喫茶店にはチラホラとお客さんが居たが、特に先輩が積極的に接客をしている様子はない。
「これ、レモネード。喉が痛くなる前に飲んどけば予防になるぞ」
「……ありがとうございます」
「暖かくして寝ろよ?……、まぁ、落ち着くまで居ていいから」
ぶっきらぼうな優しさが懐かしい。
私の本当を知っても態度を変えなかったあの頃と同じ。
今も先輩は私をちゃんと見ていてくれるんですか?
そんなことを考えながら、私は暖かいレモネードを飲んでベットに潜り込んだ。
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