【完結】PERSONA3 Re;venger   作:清良 要

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第三百九十四話 選ぶことの意味

12月5日(土)

放課後――ポートアイランド駅前広場

 

 アイギスと綾時が戦い、綾時が自身の正体と世界の滅びについて語ってから二日が経った。

 あれから綾時は学校には来ておらず、携帯に連絡を入れても繋がらない。

 学校には家庭の事情でしばらく休むと連絡があったそうだが、それは湊が裏で手を回しただけらしい。

 綾時自身は大晦日に特別課外活動部のメンバーたちに会って、その後は彼らの選択によって死ぬか、あちら側に還って己という偶然生まれた自我は消えると考えているのだろう。

 どちらを選んでも結果は同じだ。望月綾時という“人間”は消えてなくなる。

 であるならば、少しでも自分たちが苦しまずに済む方を選ぶのが正しい選択と言える。

 あの場で綾時の話を聞いた誰もがこの世界の迎える結末に絶望を覚えた。

 訪れる滅び、どう足掻こうとも倒せない敵、避けられない自分たちの死。

 そんなものを聞かされて冷静でいられる方がおかしい。

 自分たちにとって絶対的な力の象徴である湊から、ニュクスは戦ってどうにかなる相手ではないと断言された事も大きいだろう。

 少なくとも七歌にとって彼は神にすら届き得る力を持った存在だったのだ。

 そんな彼の口から諦めとも取れる言葉が出たことで、少女もどうすれば良いのか分からなくなって街中でボンヤリとしながら空を眺めていた。

 

(綾時君を殺せば私たちは苦しまずに死ねる……か)

 

 駅前の花壇のところにあるベンチに座って七歌は空を見上げて考える。

 空は生憎の曇天、いつ雪が降ってもおかしくない寒さで、これなら考えすぎて頭が茹で上がりそうにならずに済むとここで悩むことに決めた。

 まず、自身の置かれた立場を考えて選ぶのなら、七歌は迷わずに綾時を殺す方を選ぶ。

 彼女はチームの指揮官だ。仲間たちの事を誰よりも考えて動く必要がある責任ある立場にいる。

 だからこそ、どうやっても避けられない死がやってくると分かっていれば、残された時間を精一杯幸せに生きて欲しいと考えてしまう。

 メンバーたちはただの学生なのだ。ラビリスとアイギスは元対シャドウ兵器という特殊な生まれだが、その心は七歌たちと何ら変わらない普通の少女である。

 今では人としての肉体を手に入れ、死を身近な物として理解できるようになったからこそ、ある意味彼女たちは七歌たち以上に死を恐れる可能性だってある。

 一方で、彼女たちにとっては対シャドウ兵器だった自分たちがシャドウと戦うことは当然かもしれない。

 自分たちは元々そのために作られた。影時間を終わらせる事は使命であると考え、最後まで諦めずに戦う事を望む事だって十分にあり得る。

 しかし、そうであるならば、七歌は尚更彼女たちを戦わせるわけにはいかない。

 今必要なのは義務感ではなく、自分の心に素直に向き合う事なのだ。

 

(義務感で戦おうとすれば、きっと私たちは何も出来ずに死んでいく事になる。八雲君が戦ってどうにかなる相手じゃないって言った以上、恐らくその点について嘘はない。どうにもならない現実を前に、皆が絶望したまま死ぬなんて絶対にダメ)

 

 別に多数決で少数の意見を封殺しようと思っている訳ではない。

 勝算あるのなら、一パーセントでも可能性があるのなら、七歌たちだって滅びに立ち向かおうと思っている。

 ただ、綾時たちが言っていたように、もう何も出来ることはなく、選べるのが残された時間の過ごし方だけなのであれば、少しでも皆が幸せな選択肢を選ぶのが指揮官としての務めだと思っている。

 受け入れがたい現実だとしても、七歌がリーダーとしての判断だと皆に伝えれば、一部の者たちや湊本人はその考えを支持すると思われる。

 しかし、そこで問題になるのが綾時を殺すための手段と殺した事で払う代償だ。

 

(殺せるのは八雲君だけ。彼に友達を殺させて、皆が辛い現実を忘れて最後の時を楽しく過ごせたとしても、八雲君だけは皆の記憶から消えてその輪の中に入れず。独りで世界の滅びを見届ける事になる)

 

 湊は昔から自分の友達は一人だけだと周りに言っていたらしい。

 綾時が転校してきたことで、その唯一の友達が綾時なのだと周りの人間にも伝わったが、学校ではあまり一緒に行動していないにも関わらず二人には不思議な信頼関係があるのは見ていれば分かった。

 当たり前だ。最悪と言ってもいい出会い方をした二人だが、意思疎通が可能になってから和解し、およそ十年も一緒にいてその間に彼は何度も綾時の力を借りて危機を乗り越えてきたのだ。

 事故の責任は桐条グループにあって、呼び出されたデスの暴走は岳羽詠一朗の実験中断が原因と分かっている。

 交通事故に遭えば車ではなく運転手を憎むように、湊がデスを憎み続ける理由はなかったのだ。

 だからこそ、二人はお互いを信じて強い絆を結ぶことが出来た。

 湊は綾時をただ一人の友人と認め、綾時は湊を誰よりも大切な友達と認めた。

 アイギスは湊に綾時とあまり付き合わないように言っていたが、湊は大切な少女に言われても綾時と話すことを避けたりはしなかった。

 そこまでの絆で繋がっている二人をただ引き裂くだけでなく、自分たちの勝手な都合でその手で殺させようとするなど、大した外道だなと七歌は自分の浅ましさに思わず自嘲的に笑った。

 

(本当に、本当に何一つ八雲君にはメリットがない。強いて言えば、八雲君が大切に想ってるアイギスたちが穏やかな最後を迎えられるくらい。でも、そんな彼女たちから八雲君は忘れられてしまう。多分、指輪を使って影時間を体験したおば様や桜さんの記憶からも消えてしまう)

 

 ペルソナを持っている七歌たちの記憶からも消えてしまうとなれば、桐条グループが作った簡易補整器の指輪などを使って影時間を体験した者たちの記憶も消えるだろう。

 だが、最悪を想定するならば、鵜飼や五代のように知識として影時間を知っている者にも記憶の改竄が起こる可能性がある。

 その場合、影時間の適性を失った美紀のように思い出だけが消えるのではなく、人物は勿論のこと“有里湊”という名前すら聞き覚えがないという風になるかもしれないという事だ。

 大切な少女たちが温かな光の当たる世界で生きられるようにと必死に力を求め、一般人の被害を出来る限り抑えるため彼は戦い続けてきた。

 その果てに辿り着いたのが、新たに得られた家族や信頼できる者たちの中から、己が存在した痕跡の一切の消滅など冗談にしても笑えない。

 

(……なんで……なんで、全部八雲君なのかなぁ。確かに彼の手は血で汚れてるのかもしれないけど、彼がいたから世界は続いてるっていうのにさぁ)

 

 選べない。本当はリーダーである自分が率先してメンバーたちの事を考えた選択を口にするべきなのだろうが、どれだけ非情になりきろうとしても七歌は湊だけに背負わせる選択を選ぶ事が出来なかった。

 これで湊も七歌たちと同じように影時間の事を忘れ、ただの友人として一緒に残りの時間を過ごせるという話なら簡単に選ぶことも出来た。

 しかし、結果はそうではない。自分たちが現実から目を背けている間、彼だけが独り現実と向き合って世界から取り残されることになる。

 他に選択肢がないことは分かっているのだ。

 ただ、あの事故の日から今日まで彼がどのように生きてきたかを知り、そして、その心が自分たちと何一つ変わらず弱さを持っていると気付いてしまった以上、七歌はどれほど自分の面の皮が厚くてもそれだけは選べないと思った。

 そうして、七歌は仲間たちと彼のどちらを犠牲にするか寒空の下で悩み続けた。

 

 

――ボクシング部・部室

 

 期末試験が迫り、テスト期間で休みになっているはずのボクシング部の中からサンドバッグを揺らす音が響く。

 そこにいたのは今年受験生ですぐ寮に帰って勉強をしていなければならない真田だった。

 普段から勉強しているからこそ、少し息抜きで叩いているだけと言い訳する事も出来るが、実際は数日前聞いた話のせいで集中できないから普段通りの行動を取っているだけだ。

 絶対にやってくる滅び。そして、自分たちよりも遙かに強大な力を持つ青年ですら、戦ってどうにかなる相手ではないと断言するほどの力を持った神が敵だという。

 湊の話によれば敵は月にいるという事なので、どうにか月を破壊出来ないかと考えてみたが、そんな事をすれば地球にも多大な影響を及ぼす事になるだろう。

 最悪、砕けた月の破片が地球に降り注いで、それが原因で地球上の生命が死に絶えるかもしれない。

 そうなっては意味がないので、もっとマシな作戦を考えようと思ったがろくなアイデアが思い浮かばなかった。

 

(戦えない相手に勝つにはどうすればいい。本当に、そんな最後を受け入れるしかないのかっ)

 

 左右の拳を素早く交互に繰り出し、段々と息が上がってくることにも構わず激しく殴り続ける。

 自分やその仲間の力が綾時と湊に遠く及ばない事は分かっている。

 けれど、そんな自分たちでもアルカナシャドウたちを倒してここまで来る事が出来たのだ。

 格上だったはずのストレガとも戦えるまでに成長し、シャドウなどの余計な邪魔が入らなければ玖美奈や理とだって戦えるかもしれない。

 滅びを求める人類の敵とは戦えるというのに、その滅びを齎す存在とは戦えないなど誰が想像できるだろうか。

 綾時という新たな仲間を得て、蘇った湊も同盟のような立場に着いた事で、このままストレガと幾月たちと決着を付けるだけだと思っていたのに、その敵がただの通過点に過ぎないと知った時の衝撃は凄まじかった。

 

(望月を殺せば俺たちは穏やかな最後を過ごせる。影時間の記憶を全員が失って、そして、何の苦しみもなく一生を終えることが出来る。だが、またあいつから人との繋がりを奪うのかっ)

 

 全身の捻りも加えて撃ち込んだ左ストレートでサンドバッグが大きく揺れる。

 肩を大きく上下に揺らしながら手を止めた真田は、傍に置いてあった水を飲みながら窓の外の暗い空を見上げた。

 大切な妹を助けるためとはいえ、真田は湊の人との繋がりを一つ奪った事をずっと後悔していた。

 何年も一緒にいた相手に他人のように接されるというのはどんな気持ちなのだろう。

 もし、美紀や荒垣に忘れられてしまえば、きっと自分はその現実に耐えられないという確信が真田にはある。

 自分がどれだけ相手のことを大切に想っていても、相手にすれば知らない人間だ。

 そんな人間が馴れ馴れしくしてくれば鬱陶しいし、酷ければ恐怖を覚えるかもしれない。

 妹の命の恩人にそれだけの代償を払わせておきながら、一度は何も出来ないまま彼を死なせてしまった。

 

(何も出来まま、一つもあいつに返せないまま死なせてしまったのに。再び救われておきながら、どの面下げてあいつから繋がりを奪えると言うんだ)

 

 湊が蘇ったのは彼自身の力と、可能性に賭けたエリザベスの行動が起こした奇跡。

 真田は何一つ彼のために出来ておらず、いくら妹や荒垣のためだろうと、そんな状態でまた彼から人との繋がり奪おうなどとは考えられない。

 しかし、現状で打てる手がないのも事実。

 美鶴も桐条グループの方で色々と調べて何か出来ることはないかと探っているようだが、綾時と湊が言ったからには自分たちに出来る事など本当にないのかもしれない。

 

(……俺も、美紀も、シンジや他のやつらも死ぬのか。何も出来ないまま、訳の分からない滅びなどによって)

 

 真田が視線を向けていた空を覆う灰色の雲から小さな白い粒が降り始める。

 雪を見るのはいつぶりだろうかなどと暢気に考える余裕などなく、白い帳が街を覆い隠していくような光景は、自分や大切な者たちの死について考え始めた真田の心に余計な孤独感を与えた。

 二度も妹を失いかけ、自分も仲間と共に斃れそうになったからこそ、真田は失う怖さも死が迫る恐怖も理解出来る。

 一度味わうだけでも十分で、再びそれと向き合う事になった時には悪い夢だと現実から目を背けたくなった。

 

(ふざけるなと大声で叫びたい。全部夢で、本当はただ俺の頭がおかしくなって浮かんできた妄想なのだと思いたくなってくる)

 

 ゆかりやアイギスが綾時から話を聞いて強気な態度を見せていたが、真田は彼女たちのように嘘で自分を鼓舞することなど出来なかった。

 もし、そんな事をすれば僅かにでも気が緩んだ瞬間、弱い自分の本心が言葉として出てきてしまう。

 自分たちはここまで十分にやった。世界が滅ぶのは自分たちのせいじゃない。だから、今まで頑張ってきたご褒美に最後くらいは自由に過して良いんじゃないか。

 そういった自分たちにだけ甘い言葉がずっと頭の片隅にあるのだ。

 綾時を殺せるのは湊だけで、敵のことをよく知っているのも彼だけ。

 自分たちに出来る事は一つもないのだから、後は全て彼に任せてしまっても良いはずと、自分に都合の良い心の声が聞こえた真田は愚かな考えを振り払うように自分で自分の頬を殴りつけた。

 

「くそっ!!」

 

 ここまで世話になっておきながら、返しきれない恩を受けておきながら、まだ湊に甘えようとするのは自分の心と身体が弱いからだと己を叱責する。

 ペットボトルを床に置くと、再びサンドバッグの前に立って、余計な事を考えないよう拳を繰り出す。

 いくら心が恐怖に押し潰されそうになろうと、用意された恐怖から逃れる手段に誘惑されようと、それだけは絶対に選んではいけないのだと、真田は迷いを断ち切るためサンドバッグを打つ作業に没頭し続けた。

 

 

夜――EP社

 

 それぞれが用意された選択肢を前に悩み続けている頃、湊はEP社の奥に用意された自分専用の区画で椅子に座って液体の中で培養されている細胞を見つめていた。

 アイギスとラビリスを人間にした以上、もう生体ボディは必要ないはずだが、何があるか分からないからと彼は今も生体ボディの研究を進めていた。

 そして、青年が研究に精を出していると、二つのコーヒーカップを持った少女がやってきて、手に持っていたカップの一つを青年に手渡した。

 

「……湊様は彼らがどちらを選ぶと思っているのですか?」

 

 長い銀髪を揺らしながら彼の座る椅子の肘掛けに腰を下ろし、視線を培養液の方へと向けながらソフィアが尋ねる。

 本来、この区画にはソフィアですら普段は立ち入らないようにしているのだが、今の湊や特別課外活動部の置かれた状況を考えると湊を独りにするのは拙いと考え、彼女は邪魔でなければと共にいる許可を得たのだ。

 湊とソフィアはかつて敵としてお互いを憎み殺し合った。

 けれど、お互いに少し特殊な生まれだった事でどこか通じあう部分もあり、“協力者”という最も事務的でありながら唯一隣に立てるパートナーになる事が出来た。

 青年は大切な少女たちには綾時やニュクスの事を伝えていなかったが、ソフィアは仕事上の付き合いでしかないパートナーだからと事前に伝えていた。

 だからこそ、他の者たちが知る時が来たタイミングで、しっかりと湊の心を守るためのフォローに動くことが出来たのだ。

 今の彼は普段通りの平然とした様子だが、心の奥底では友達である綾時を手にかける事への葛藤や、何もせずにチドリたちが絶望に飲まれていく事を想像して不安に思っているかもしれない。

 そんな風に悩むのであれば、最初から特別課外活動部の人間たちに選ばせなければ良いのではとも思えるが、彼女たちに考えさせる事に意味があるのかもしれないとソフィアは考えた。

 故に、彼女は少しでも湊の気を紛らわせる事が自分の役目と判断し、ちょっとした雑談で彼の張り詰めた気を緩めようと思ったのだ。

 彼女の手からコーヒーカップを受け取った湊は、視線は培養液の方へ向けたままコーヒーを一口飲みつつ答える。

 

「……別にどっちとも思ってない。あいつらがどちらを選ぼうと気にしない」

「結果によって湊様の背負う苦労が大きく変わるのですよ?」

「別にあいつらに背負わされる訳じゃないからな。選びたいなら好きな方を勝手に選べといった感じだ」

 

 話題自体に興味を示していない湊にとって、ここもあくまで通過点に過ぎないのだろう。

 最初からニュクスとの戦いを想定して力を付けてきたのだから、綾時を殺してニュクスの力が僅かに削がれようが削がれまいが気にしない。

 既に引き返せないところまで来てしまったのだ。どれだけの代償を払うことになろうとも彼は自分の望んだ未来を手に入れるつもりでいる。

 他の者たちは二つの選択肢の間で悩んでいて余裕を失っているようだが、今の湊を見たソフィアからすれば湊と彼らでは置かれている立場は逆に思えた。

 何せ彼らは二つの選択肢で悩める“余裕”があるのだ。

 一方の湊には悩むだけの余裕がないせいで心が一切ブレなくなっている。

 追い込まれてこうなっているのか、自ら自分を追い込んでいるのかは分からないが、どう考えても七歌たちよりも湊の方が精神的に拙い状態にあると思っていい。

 何か切っ掛けがあれば湊は自分の心を殺し、望んだ未来を手に入れるためだけに動く機械のように再びなってしまう。

 そうはさせないと彼の顔に手を添え、自分を見上げた相手と視線を合わせたソフィアは口を開く。

 

「湊様、敵はシャドウたちを生み出した存在。つまりは途轍もない精神エネルギーを持った外宇宙から来訪した異なる理に守られた神です」

「……そうだな」

「はい。だからこそ、貴方はその心を失ってはいけません。対抗出来るのは同じ心の力だけです。理が違うのはお互い様です。貴方にはベアトリーチェがいる。彼女と共にあれば力は届きます。故に、最後に勝負を分けるのは心の強さです」

 

 己の全てを犠牲にしてでも望む結果を得ようとする湊の心は強い。

 そうあらねば壊れてしまう脆さを持っていたからこそ得た歪な強さだが、滅びを求める人々の呼びかけに応えて降臨するだけの神にはない強さだ。

 持っている力の総量は敵が上でも、湊はそれに対抗出来るだけの質を持っている。

 だから、絶対にその心は無くしてくれるなと真剣な瞳を向けて言えば、湊は小さく溜息を吐いて立ち上がった。

 

「……状態も安定したようだし。しばらく放置しても大丈夫だろう。少し休むために上にいくぞ」

「フフッ、では、お背中をお流ししましょう」

「勘違いするな。普通に休むだけだ」

「気分転換も大切なことです」

 

 飲み終わったコーヒーのカップをソフィアに押し付けて部屋を出て行こうとすると、片手に自分と湊の空になったカップを持ったソフィアが反対の腕を湊の腕と絡めてくる。

 青年と過ごせる時間は残り少ない。それが分かっているからこそ、彼女は敢えて明るく振る舞って彼とスキンシップを取るようにする。

 他人の心が読める湊であれば、そういった彼女の考えも分かっているかもしれないが、結局そのまま腕は振りほどかず、居住区についた二人はソフィアの望むまま長い時間と共に過した。

 

 

 


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