【完結】PERSONA3 Re;venger   作:清良 要

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第三百五十八話 計画、警戒

――桐条本邸

 

 美鶴が母の英恵と共に挨拶回りをしている頃、本邸の客間を借り、今後のグループの動きについて情報をまとめていた高寺の携帯に着信があった。

 表示された番号は警備部のチームを一つ預かっている代表者のもので、昼に頼んでいた用件がようやく済んだのかと時計を見ながら考える。

 幾月修司の私物の回収など、寮生が帰ってくる前に済ませ、後から事情を説明しても良かった。

 一応、美鶴が代表者ということにはなっているが、元々、あの寮も特別課外活動部も桐条グループの一部。

 となれば、グループの方でそういう話に決まったのだと、事後報告さえしておけば子どもたちは何も言えなくなる。

 もっとも、グループ上層部と高寺が下した判断は、裏切り者である幾月の目的を探ることだけでなく、グループを破滅させかねない組織の暗部である特別課外活動部の凍結だった。

 そこには対シャドウ兵装シリーズの姉妹の回収も含まれており、今は人間になっていようと当時の実験の情報などが外に漏れぬよう管理下に置く必要があるため、全てを一度に済ませようと警備部も寮生らの帰りを待っていたのだ。

 昨夜の戦いでは子どもたちも消耗しており、組織の頭である美鶴がいなければ判断は余計に鈍る。後は規則を持ち出して簡単に丸め込むことが出来るだろうと高寺は考えていた。

 アイギスを連行出来れば、次はラビリスの回収が待っている。

 彼女の場合は桔梗組との繋がりもあるので、寮生のアイギスよりも連れて行くには手間取る事だろう。

 その辺りの計画についても出来れば話したいが、と通話ボタンを押せば、電話からは昼間にも話した警備部の男の声が聞こえて来た。

 

《こちら第二警備部の本田。任務の報告のため連絡いたしました》

「ご苦労。それで、子どもたちは大人しく納得してくれたか?」

《いえ、それが……任務は全て失敗。幾月の私物の回収、子どもたちの説得、七式アイギスの連行、どれも妨害が入り達成出来ませんでした》

 

 言いづらそうにしながらも話さねばならないと本田が簡潔に結果を伝えれば、それを聞いた高寺は驚きのあまり携帯を取り落としそうになる。

 子どもたちも命を懸けて戦ってきたのだ。

 大人に言われたからといって、簡単に納得するとは思えない。

 桐条や裏切る前の幾月が経緯を説明して説得していたなら、渋々従っていた可能性はあるものの、今日初めて会った人間に言われたところで納得出来ないのは当然。

 だからこそ、高寺は警備部の人間に説得が失敗した場合の計画を伝えてあった。

 それがまさか幾月の私物の回収すら失敗したとなれば、向かった者たちの身に一体何があって失敗したのか気になってしょうがない。

 どこの人間が妨害してきたのか。相手の規模と人数、そして特別課外活動部との関係。全て詳細に報告しろと高寺は言葉を荒げる。

 

「妨害だと!? どこの人間だ。まさか幾月が日暮れ前から襲撃をかけてきたとでも言うのか?」

《違います。身内と言っても良いのか分かりませんが、英恵奥様の御側御用の従者が寮に現われたのです。そして、特別課外活動部とあの寮が桐条グループの管理下にはないと告げてきました》

「馬鹿な。そんなはずがあるか! 子どもたちの活動にはグループからも金が出ている。総帥が直々に手配している事もあったんだぞ!」

 

 英恵の御側御用の従者という単語が出てきて、どうしてこのタイミングでそんな人間が寮に現われたのだと苦い顔になる。

 御側御用は主の半身とも言える存在であるため、グループの人間が不当に扱うことが難しい相手だ。

 しかし、そんな相手が言った言葉だからといって、素直にそれを信じて戻ってきたのなら警備部は無能の集まりでしかない。

 特別課外活動部への援助でグループから金が出ている事を知っていた高寺が指摘すれば、警備部の本田も確認のために調べた結果を報告した。

 

《和邇八尋と名乗った女が言うには、特別課外活動部とあの寮はグループではなく桐条家の管理下にあるらしく。我々も戻って調べたところ、確かにグループとは別の組織系統に組み込まれていました。自分にもしもの事があった場合、グループの人間が勝手な事を出来ないよう子どもたちを守る仕組みを総帥が作っていたとか》

「……なんだ、それは」

 

 高寺は表の仕事において桐条の右腕とも言える人物。

 影時間関係については幾月がその立場にいたが、そのくらいの地位になると表の仕事の人間であっても桐条の暗部や影時間に関わることも伝えられてきた。

 影時間の成り立ちと過去の研究内容。シャドウやペルソナがどういった存在であるか。旧エルゴ研の遺産とも言える研究物の所在と効果。

 俄には信じがたい事も多々あったが、それらが事実だと受け止めて、特別課外活動部への少なくない援助も当然と考えていた。

 だが、特別課外活動部がグループの組織系統に組み込まれていないなど初めて聞いた。

 桐条にもしもの事があれば、高確率で後を継ぐのは高寺だったというのに、そんな自分にも伝えられていなかったことに高寺は愕然とする。

 事実として高寺はグループの権限で特別課外活動部を解散させようとしている。

 グループに何かあってからでは遅いため、その前に負の面である影時間に関わるものの一つを排除する事で、グループに所属する人間とその家族の生活を守ろうと考えていた。

 だというのに、ここで桐条の考えがそれを阻んだ。むしろ、読んでいた通りの結果にグループが進もうとしていたのを狙って阻んだ形になっている。

 未だ意識は戻らぬものの生きている桐条と、代表を交代した高寺。

 どちらの権限が上かは個人の持つ影響力にもよるが、高寺の考えるリスクの排除をするには自分がトップにいる今しかない。

 今ここで止まることなど出来ないとばかりに、高寺は一つ息を吐くと本田に伝えた。

 

「アクシデントはあったようだが予定に変更はない。決行まで時間もあまりない。準備を進めておいてくれ」

《了解しました。それで、もし再び和邇八尋が現われた場合にはどう対処しますか?》

「可能であれば言葉での解決を、駄目なら実力行使で構わん」

《了解しました》

 

 いくら護衛としての技能を持っていたとしても、相手は七歌たちともそう変わらぬ身長の女性一人。

 警備部の中には過去に海外で外国人部隊に所属していた経歴を持つ者もいるため、数と実力と装備の関係からまず間違いなく制圧出来る。

 自分の側近を拘束された事に対して英恵が何かを言ってきても、その時には目的を達成しているので、誠心誠意謝るなどして話を終わらせればいい。

 警備部の失敗はとんだハプニングだったが、今後の動きを考えれば大した問題ではない。

 通話を終えた携帯を上着の内ポケットに仕舞った高寺は、今夜予定されている遺言状の開封に意識を切り替え準備を進めた。

 

――桐条本邸・美鶴私室

 

 全ての挨拶回りを終え。美鶴が自室に戻れたのは夜が更けてからだった。

 外向きの服から私服に着替え、椅子に座ってふっと息を吐く。

 御側御用の斎川菊乃は先ほどまで美鶴が着ていた服をクリーニングするために部屋を出て行っている。

 今日はずっと周りに人がいたので、こうやって一人になるとやけに孤独感を感じるが、疲れた頭でも仲間のことは気になったのか美鶴は携帯のアドレス帳を開く。

 そこから名前を探して目的の人物を呼び出すと、通話を押して携帯を耳に当てた。

 

《はい。もしもし?》

「こんな時間にすまないな、七歌。私だ」

《あ、美鶴さん。今大丈夫なんですか? 和邇さんから話は聞きました?》

 

 美鶴が電話をかけた相手は特別課外活動部でリーダーを務めている七歌だった。

 寮には荒垣と真田という三年生が残っているが、育ちも含めて考えると七歌が一番冷静に大人な対応が出来る。

 部長ということになっている美鶴自身、いざという時には自分より七歌の判断の方が的確だと認識しているのだ。

 だからこそ、屋敷に戻ってきた和邇から真田たちの伝言を聞いた彼女は、その話をするつもりで七歌に電話をかけた。

 

「ああ。夕食の前に話は聞いた。その件についてなんだが……君は戦いをやめるつもりはないか?」

 

 以前、幾月の死亡を聞いた時には桐条グループは動きを見せず、代表だった桐条がグループとの調整役として元研究員の栗原を新顧問につけた。

 あの時は明確な敵がストレガだけであり、グループの意思決定を下す桐条も無事だったのでそういう措置で済んでいた。

 しかし、今回は死んだとされていた身内が裏切り者として現われ、さらにトップの桐条が相手に撃たれて意識不明の重体。

 こうなればグループとしても出来る限り敵の情報を探る必要が出てきて、理事長室に残っていた幾月の私物の回収と解析に忙しくなる。

 影時間について知っているグループの人間は限られているため、そちらに人員を割けばしばらくは特別課外活動部のバックアップを担当出来ないかもしれない。

 美鶴自身、父親が倒れたことで精神的に弱っており、そこにグループが万全な支援を約束出来ないと聞けば、これ以上大切な者らが傷ついて欲しくないと考え戦わない道を選ぼうとしても不思議ではない。

 そうして、これ以上戦わない事を選んでも良いんだぞと、いくらか自身の気持ちを乗せて七歌に尋ねれば、返ってきたのは一切の迷いない言葉だった。

 

《ないですね。他の皆もその点については同意してます》

「だが、目的は既に失われた。理事長時代の幾月の言葉は全て嘘で、今後の活動における見通しも立たない。そんな状態で悪戯に君たちを危険に晒す訳にはいかないだろう」

《それを言うなら最初から桐条グループは大したことしてくれてませんよ。裏で隠蔽とかしてくれてるのかもしれませんけど、基本的には金出して終わりでしかないですよね。現場の人間からすれば、目の前に危険があるなら、とりあえずでも解決すべきなんじゃないですか?》

 

 何故、相手がそこまではっきりと戦い続ける事を宣言出来るのか美鶴は理解出来ない。

 桐条は一歩間違えれば死んでいた。いや、今回は奇跡的に助かっただけなのだ。

 戦い続ければ、今度は自分や他の仲間が同じ目に遭うかもしれない。

 それが堪らなく恐い美鶴は、冷静に考えるんだと七歌を諭そうとする。

 

「しかし、君たちの貴重な学生生活を犠牲にし。さらに命を懸けて戦い続けろとは私もグループも言うことは出来ない。昨夜だって一歩間違えれば死んでいた。目的もなく、そんな危険に君たちが関わり続ける必要なんてないだろう」

 

 影時間を消す方法も分からず。今後いつまで戦い続ければ良いのかも分からない。

 元々、美鶴とアイギス以外の人間は素質があったから頼んで力を貸してもらっていただけだ。

 なら、今後の活動が不明になった今だからこそ、そんな状態で貴重な学生生活の時間を犠牲にし続ける必要などない。

 七歌たちはこれまで十分に戦った。今後は元の平穏な生活に戻っていい。

 相手を思いやって優しい声色で美鶴が言えば、それを聞いた七歌はしばらく沈黙し、ようやく返ってきた声は恐ろしく冷たい響きを含んでいた。

 

《……そうやってまた桐条グループは八雲君に押し付けるの?》

「な、何を言っている?」

 

 何故、七歌たちが平穏な生活に戻ることが湊に押しつける事に繋がるのか。

 本気で相手の言っている意味が理解出来なかった美鶴は戸惑う。

 七歌たちが戦いを止めたなら、彼や彼の家族とも言える少女たちも一緒に平穏な生活に戻っていい。

 湊はしばらく学校にも行っていなかったので、これを機に復学するのも良いだろう。

 けれど、そんな風に考えていたのは美鶴だけだったようで、七歌はあくまで自分の想像だがと言いつつ確信に満ちた様子で言葉を続ける。

 

《私たちが戦いを止めたらどうなるか考えましたか? 影時間は存在して、シャドウは増え続けていく。そうなったら間違いなく八雲君は動きます。戦って戦って戦って。一般人に犠牲が出ないように、被害が広まらないように戦い続けて、きっと幾月やストレガとも戦うと思う》

 

 最後のアルカナシャドウを倒した事で、ここ一月ほどで無気力症になった人間は大勢回復した。

 ただ、それからまた新たに無気力症になっている者も確認されており、これから一月の間にどのくらいのペースで無気力症患者が増えるかはまだ分かっていない。

 もし、仮にこれまで通りになるとすれば、特別課外活動部が活動を休止した時点で桐条グループに被害の拡大を防ぐ方法はなくなる。

 となれば、そのしわ寄せを受けるのは間違いなく湊になるだろう。

 

《もし、相手を殺すような事になっても、八雲君はそれを自分だけで抱え込んで私たちには話しません。それを分かっていて、桐条グループが出した裏切り者を被害者に処理させる。これが桐条グループの意思で良いんですね?》

「違う。私はただ君たちの安全と今後を考えてっ」

《でも、結果的にはそうなるんでしょう? まだ足りませんか? 役目を終えてもまた戻ってきてくれたのに、どこまで八雲君に背負わせれば気が済むんですか?》

 

 湊は一度死んだ。チドリを最期まで守るという契約を果たし。魂が肉体から離れ、間違いなくこの世を去ったというのに、自分にもまだ出来る事があるからと再び戦うために戻ってきてくれた。

 七歌たちにすれば、自分を、仲間を、大切な人を救ってくれた恩人。

 自分たちの身内から裏切り者を出しておきながら、恩人である彼にこれ以上の業を背負わせるのが桐条グループの総意なのか。

 七歌が責めるように相手の真意を尋ねれば、そんなつもりで七歌たちを戦いから離れさせようとした訳ではない美鶴は上手く言葉を返せない。

 

《美鶴さん、恐らく桐条グループは数日以内にこの寮へ襲撃をかけてきます。グループの暗部に深く関わっている以上、今後を考えたら排除したいと思うのが当然ですし》

「待て、七歌。滅多なことは考えるな。もし抗戦する事になれば、君たちも危険分子として認識されてしまうぞ」

《なら、戦いにならないようにしてください。桐条グループはアイギスを連行しようとしてました。これ、八雲君にしてみれば宣戦布告受けたようなもんですよね? なら、私たちが徹底抗戦しようがしまいが関係ないです。今回は和邇さんのおかげで未遂で済みましたが、次に桐条グループが動いた時点で八雲君も動くと思います》

 

 七歌たちも美鶴もグループの人間の発言から、グループでは湊の帰還を把握していないのだと考えている。

 もし知っていたならば、少なくともアイギスを拘束しようなどとは思うまい。

 ずっと行方を眩ませている彼は英恵たちとは連絡を取っているので、御側御用である和邇八尋から巌戸台分寮での出来事を聞いているはず。

 となれば、次に桐条グループが動いたが最後、名切りの力によって組織は壊滅に追い込まれる事だろう。

 

《美鶴さん、あなたがどの立場にいようと桐条の人間である事は変わりません。止めたいのなら身内を止めてください。今の桐条グループはおじ様とは別の思惑で動き始めています》

「お父様とは別の思惑?」

《自己保身かそれともグループの人間の生活を守るためか。私には分かりませんが、少なくとも世界平和やら人々の平穏を守るためって感じではないと思います》

 

 言われて美鶴はハッとする。今日、屋敷に来るときに出会った者たちや、挨拶回りで話した者たち。

 彼らは口では桐条やグループの事を心配していたが、その言葉の裏には自分や家族の生活を守ろうとする意思が見えた。

 自分や家族の生活を守ろうとするのは当然。他人のために自分を犠牲に出来る者などそう多くはない。

 しかし、今日会った者たちは、更に良い生活をするためにはどう動けば良いかという思いが混じっていた。

 それは新たな代表となった高寺も同じ。どうすればグループの力を維持出来るかを第一に考えている節があった。

 社員の生活を守る義務があるトップとしては正しい。しかし、確かにそれは父の想いとは異なっている。

 今日の影時間に行なわれるという遺言状の開封の時には、よりそれを理解出来るかもしれない。

 味方だと思っていた存在が急に敵に変わる感覚を美鶴が覚えていると、声から冷たさが抜けた七歌が今なら間に合うと再度忠告してくる。

 

《今回の敵は桐条グループ。八雲君が動き出せばアイギスやチドリにだって止められません。復讐という大義名分もある以上、おば様も彼に敵対したグループの人間を殺すなとは言えないでしょう》

「本気で言っているのか。グループの人間が君たちの排除に動くと」

《殺されないとは思います。ただ、幽閉に近いことはされるかもしれないと思ってます。グループにとってこれ以上無いほど厄介な存在でしょうし》

 

 屋敷に戻ったことで美鶴はグループ全体の動きが把握出来なくなっている。

 実際に警備部と会った七歌がそう感じたのであれば、確かにそういった動きがあるのかもしれない。

 ただ、警備部の人間と面識のある美鶴は、誰かを守る事を仕事にしている者たちが、そんな独裁者の手先のような真似をするとは信じられなかった。

 故に、その背後にいる人間が全てを操っていると考え、全てが事実であれば、恐らくまだ相手が動くことはないだろうと七歌に伝える。

 

「……自分が倒れたときの事を考え、お父様は遺言状を残していた。生きていても指揮が執れない場合は開封するようにと言われていたようで、今夜の影時間にお父様の遺言状が開封される」

《じゃあ、それを聞いたグループの動き次第ですね。現状維持を取るなら良いでしょうけど、おじ様が遺言で爆弾を残していれば、不安材料の排除に動くでしょうし》

「ああ。もしもの時は私も全力で彼らを止める。お父様を救ってくれた手を汚させたくはない」

 

 帰ってきた青年は文字通りに父の命の恩人だ。

 そんな彼の手を馬鹿げた争いで汚させたくはない。

 名切りは名を絶つ一族。敵となった一族や組織を壊滅させることが名の由来となった恐ろしい存在だ。

 今のグループにそれに対抗するだけの力がない以上、戦いになった時点で敗北が決まる。

 湊のためにも、グループの人間のためにも、両者が争う状況にさせることは出来ない。

 美鶴がハッキリとそれを告げれば、七歌もどこか安心したように返事をした。

 

《お願いします。ま、私たちも出来れば人相手に戦いたくはないんで》

「大丈夫だ。いざとなれば彼が戻ってきた事を伝えるだけで済む。それで敵対しようと思う者などいないはずだ」

《それもそうですね。じゃあ、美鶴さんも用事が終わったらゆっくり休んでください》

「ああ。勿論そうさせてもらう。それじゃあ、もうしばらく寮を頼んだぞ」

 

 最後にはいつも通りの様子で二人は笑って通話を切った。

 ペルソナ使いである事が明かされて以降、有里湊の危険性はずっとグループ内で言われ続けていた。

 なら、それを伝えるだけでグループが止まると考えるのも無理はない。

 だが彼女たちは知らなかった。自分たちが湊の生存をグループに伝えないよう暗示が掛けられていることを。

 そうして、美鶴はその時が来ても自分に暗示が掛けられている事に気付かぬまま、影時間に行なわれる遺言状の開封に立ち会うために支度をすると、戻ってきた菊乃と共に部屋を出て行った。

 

 


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