【完結】PERSONA3 Re;venger   作:清良 要

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第三百九話 隠されていた真実

――稲羽郷土展・最終夜

 

 怪獣のような姿になったウサギを倒し終えると、湊はその背中から下りて武器をコートに仕舞う。

 敵のタックルを喰らった際、かなりの出血とダメージを負っていたはずだが、本人は気にした様子もなくコートをマフラー状態にすると血濡れになったシャツを脱ぎ捨てている。

 そして、先ほど自分が捨てた右腕のパーツと怪獣に喰われて損壊した腕の残りを一箇所に集め、フェニックスを呼び出して焼かせると、マフラーから出したペットボトルの水を頭から浴びて血を洗い落としていた。

 戦闘のダメージが残っていないのであれば構わないが、新しく繋いだ右腕がちゃんと動いているのを見た直斗は不思議そうに顎に手を当て呟く。

 

「ペルソナの回復スキルで潰れた臓器の再生や腕を繋ぐことが可能とは知りませんでした。しかし、有里先輩が持っていた予備の腕とやらは一体……」

「ああ、湊君の右腕はウチらと同じ生体パーツでできとるんよ。元々の腕は建物の倒壊に巻き込まれて千切れてしもたんやて」

 

 建物の倒壊に巻き込まれて腕を失うというのは、本来、かなりハードな出来事のはず。

 けれど、直斗に説明したラビリスがその場面を直接見た訳ではないし、湊のこれまでの戦闘などを見ていると、腕が一本なくなった程度なら軽傷だと思えるようになっていた。

 自分で胸を貫き心臓を取り出しても生きているのだから、生体パーツによって生身の腕が手に入った今では腕を失った件も大した話ではない。

 そう笑って話すラビリスを見た直斗は、いまいち納得しきれないものがあるものの、大怪我をしたはずの湊が無事なこともあって何も言わない事にした。

 血を洗い落とした湊がフェニックスの不思議な炎で全身を覆い。水気と汚れを浄化してから戻ってくると、一同は湊によって四肢と頭部を斬られ倒れている怪獣に視線を向ける。

 頭部を切り落とされた段階では動こうとしていたのだが、湊が震脚で踏みつけた後は完全に沈黙している。

 これまで自分たちのシャドウが暴走する場面を見てきた八十神高校のメンバーたちは、ここからが重要なんだと敵に近付こうとする月光館学園の者たちを制止する。

 すると、鳴上たちの言う通り、沈黙していた怪獣の身体が溶け始め、中から入院着を身に着けた玲のシャドウが現われた。

 暴走する前と違って今はどこか疲れた様子で立ち上がり、そのまま黙って視線を地面に落としている。

 一方、シャドウの持ち主である玲はというと、自分のシャドウと相対するのが恐ろしいのか震えたまま視線を逸らして直視しようとしない。

 誰だって自分の見たくない一面と正面から向き合うのは難しい。玲は特に怖がりなので、自分だけでは受け入れる事は出来ないだろうと雪子が助け船を出す。

 

「玲ちゃん、人には色々な一面がある。見たくない、認めたくない一面は誰にだってあるんだよ。だから、私たちで良ければ話して欲しいな。玲ちゃんが抱えているもの。私たちじゃ分かち合えないかな?」

 

 シャドウとして現われるのは自分がこれまで見ようとしてこなかった、認めようとしてこなかった一面だ。

 鳴上を除く全員がそうした自分の一面と戦って、相手の本心の叫びを聞くことで紛れもなく自分だと認めるに至った。

 しかし、相手を自分だと認めるというのは、そのまま自分の嫌な一面を受け止めて乗り越えたという事ではない。

 あくまで向き合う事に決めただけ。スタートラインに立ったに過ぎず、実際にそんな自分とどう付き合って行くのか、自分がどうなっていきたいのかはその後の課題だ。

 ただ、そのスタートラインに立つのが難しいと、一人で受け止めることが出来ないのであれば、仲間として自分たちも支えてゆく。

 少しずつでもいい。まずは相手も自分の心の一部なのだと認めるところから始めないかと雪子は提案した。

 すると、雪子に話しかけられた少女ではなく、少し離れた場所に立って煙管を咥えていた湊が薄い笑みを浮かべて口を挟んできた。

 

「……やめておけ、天城。ソレを簡単に受け止めるのは無理だ」

「どうしてそんな事を言うの? 確かに自分の最も見たくない部分を受け入れるのは難しいよ。でも、玲ちゃんは弱くない。怖がって、泣いて、それでも皆と一緒に外に出るために戦って来たんだよ」

「そうだ、有里。玲はペルソナを持たない身で、ここまでずっと戦って来た。臆病でも諦めず、怖がりながらも前に進んできたんだ。そんな玲を侮辱するような言い方はやめてくれ」

 

 湊はソレと言って玲のシャドウのことを見ていた。

 八十神高校側のメンバーの記憶を読んでいた彼なら、シャドウを受け入れてペルソナを得るという一連の流れも映像として知っているはず。

 だというのに、ここで玲がシャドウを受け入れられるはずがないと断言されれば、玲のこれまでの頑張りを見ていなかったのかと鳴上たちが憤りを覚えるのは当然だった。

 複数の厳しい視線を向けられた湊は、自分に怒りが向こうが気にした様子もなく煙管を手で遊ばせ、別にそういった意味で言った訳ではないがと返す。

 

「……別に玲個人の心の強さの問題じゃない。まともな精神をしている普通の人間なら、そんな“現実”はそう簡単に受け入れられないと思うぞ?」

 

 どう見ても相手は玲のシャドウでしかないが、湊にはもっと別の物に見えているのか言葉を取り消さない。

 彼は戦闘中もシャドウの事をニコと呼んでいたり、善と玲の記憶が奪われている理由なども分かっている様子だった。

 そんな彼ならば既に玲の奪われた記憶についても把握し、どうして彼女たちがこの世界に閉じ込められているのかも分かっているかもしれない。

 だが、彼が自分だけ知っている事を話すよりも先に、自分ソックリな少女の存在に耐えきれなくなった玲がキッと鋭い視線をシャドウに向けて叫んだ。

 

「わ、わたし、こんな子知らない! あんなのわたしじゃない!」

 

 言った直後、シャドウはとても悲しそうな顔をして黒い靄に包まれ消えていった。

 シャドウが消えていく際、雪子や千枝は「待って!」と手を伸ばすがシャドウは待つことなく消滅した。

 暴走したシャドウを倒して沈静化させ、それから持ち主に向き合わせると聞いていた月光館学園のメンバーたちは、一体何がどうなっているのかと玲と消えていったシャドウのいた場所を交互に見る。

 誰か分かるように状況について教えてくれないかと七歌が控えめに尋ねる。

 

「えっとぉ、こういう時ってどうなるの?」

「現状維持って感じです。玲さんは向き合う事を拒んだので、シャドウが出てくることもないかと」

 

 持ち主が向き合う事なく否定を続け、シャドウが消えてしまった以上は何もすることが出来ない。

 小さな声でメティスがそう話せば、そういうものなのかと七歌たちも納得したように頷く。

 ならば、シャドウを受け入れられなかった玲のことは気になるが、この世界から脱出するため番人が守っていた宝物を回収しようと善が箱に向かって進んだ。

 箱へと向かう善の背中を見つめる玲の瞳には不安の色が見える。

 雪子やアイギスはそんな玲を心配して肩に手を置き、一緒になって善が箱の中身を取り出すのを待った。

 大きな石で出来た箱の名から何かを取り出した善は、取り出した物をその手に持って皆の許に戻ってくる。

 随分と小さくて薄い物だなと思った鳴上が、一体それは何だと善に訊いた。

 

「善、それは?」

「手紙のようだ」

 

 中に入っていたのは、可愛らしいウサギのイラストが描かれた薄緑の便箋。

 そこには女子に多く見られる丸っこい文字で“にこちゃんへ 安らかに眠ってね 有希”と綴られていた。

 善が読み上げた内容を聞いた者たちは、まるでその手紙が死者に宛てたものではないかと感じてしまう。

 さらに、ここで再び“にこ”という名前が出てきた。

 最初の宝箱に入っていたウサギのぬいぐるみの持ち主で、このダンジョンはその人物のための鎮魂の儀式だったという。

 ただ、先ほど現われた玲のシャドウは同じウサギのぬいぐるみを抱き、彼女の事を湊がニコと呼んでいた。

 それらの情報を統合していくととても不安な想像が頭を過ぎるが、善が自分の手の中にある便箋に視線を落としていると、顔を上げて湊の方を向くなりどこか悟った様子で口を開いた。

 

「湊……君は、最初から分かっていたんだな」

「ああ、俺は“そういう存在”だからな」

「なるほど。だが、それでは君も生きづらいだろうに」

「どうでもいい。さぁ、さっさとくだらない話を終わらせろ」

 

 お互いに何かを分かり合っていて、湊は心底つまらなそうに善に話を進めるように言う。

 善自身もそれが良いと思ったのか頷いて返し、そのまま玲へと近付きながら言葉を続ける。

 

「人には色んな一面がある。確かにそうだ。だが、だからと言って“認める”など、出来るはずがないんだ」

 

 それは先ほどの雪子の言葉に対する彼の意見。

 雪子が言っていたように人には色々な一面がある。中には見たくもない、到底認めることなど出来ないような一面だってある。

 雪子や鳴上はそれも含めて自分だからと、すぐに認める事は出来なくても向き合っていこうと言った。

 しかし、そう言った彼らの基準はあくまで自分を含めた仲間たちが遭遇した事件。他の仲間の手を借りて、暴走状態のシャドウを倒してから、何とか自分が見ないフリをしてきた一面と向き合えただけ。

 だからこそ、善は鳴上たちの件と玲の件は似ているが別物である事を強調する。

 

「玲……私は全てを思い出した。私の名はクロノス、時を支配するもの。私は君を迎えに来ていたんだ」

「わ、わかんない。わたし、何にも知らないっ」

 

 番人の守っていた物に触れた事で善は全ての記憶を取り戻す事が出来た。

 彼は自分が忘れてしまっていた使命も思い出し、今こそ使命を果たそうと徐々に玲との距離を詰めて行く。

 

「君はずっと迷宮を恐れていた。七歌たちが来るまで絶対に近付こうともしなかった。それは君が迷宮の奥に隠した“真実”に触れることを恐れていたからだったんだな」

 

 記憶を取り戻した善は、どうして玲があれほどダンジョンを怖がっていたのか理解した。

 彼女がダンジョンを怖がっていたのは、ダンジョンを進む度、攻略する度に自分が認めたくない“真実”に近付いると無意識に気付いていたからだと。

 善と玲の記憶は敵によって奪われたのではない。ただ、彼女をここへ閉じ込めた存在が、記憶があっては不都合だからと封印しただけだった。

 封印はあくまで記憶を取り出す事を阻むための鍵でしかなく、彼女の記憶自体は封印されている間も彼女の中にあり続けた。

 だから、彼女は“無意識”にダンジョンを恐れ、ダンジョンを進むことを怖がり、既に自分の“真実”を見抜いていながら平然と接する湊にも懐いていた。

 

「だが、君は彼らと一緒にいたかった。一緒にいるために、君は恐れていた迷宮にも無理をして入っていった。何故なら、彼らと“同じように”なりたかったから、“同じところ”に帰りたかったから。でも、違うんだ。玲と七歌たちでは違うんだよ」

「ちがわない! 何もちがわない!」

 

 この世界にいた者と呼ばれて来た者。

 一般人とペルソナ使い。

 怯える者と戦う者。

 それぞれの持つ属性を比較すると対称的ではあるが、善が言っているのはそういう事ではない。

 彼が指摘しているのは“どういった存在か”の一点のみ。

 玲の正面までやってきた善は、とても申し訳なさそうに彼女の事を見つめながら手を伸ばす。

 

「あの時の私は間違っていた。君は私と、行かなければならないんだ」

「善、やめて……」

「君の記憶を解くよ……すまない、玲」

 

 伸ばされた善の手が震える玲の頭にかざされる。

 そして、善の手が淡い桃色の光を発すると、玲の身体が同じ光に包まれた。

 彼女の身体を包んだ光は眩さを増して暗い部屋を照らす。

 だが、その眩さが頂点に達すると光は弾けるようにして消えていった。

 自分を包んでいた光が消えると、玲はハッとした表情で覚醒して辺りを見渡す。

 

「っ……私、何して……」

 

 急に記憶が戻った事で混乱しているのか、玲は自分が何故こんな場所にいるのか分かっていない様子だ。

 しかし、その瞳の色は淡い緑色から日本人らしい漆黒へと変化しており、口調もこれまでよりもどこか大人びて感じる。

 記憶が戻ったことで大きく性格が変わっていたりはしないか。七歌たちが心配そうに見ていれば、少女の記憶が無事に戻った事を確認した善が改めて玲に声を掛けた。

 

「“時”は来たんだ。私と一緒に行こう……玲」

「い、いや……」

 

 共に行こうと善が手を差し出せば、玲は恐ろしいものを見るように数歩後退る。

 彼の手には何もなく、少女が何をそこまで怯えているのかも分からない。

 ただ、玲が嫌がっている事だけは理解出来るので、無理矢理にどこかへ連れて行こうとするのは止めた方がいいのではと千枝と雪子が口を挟んだ。

 

「ね、ねぇ、行くとか行かないとかって何の話?」

「うん。玲ちゃんも嫌がってるし。嫌なら止めてあげた方がいいんじゃないかな?」

「それはできない」

 

 少女たちの提案を善は首を振って無理だと切り捨てる。

 善だって玲が嫌がっていることは理解しているし、彼女がとても怖がっているのも見れば分かる。

 

「善、やめて……」

「玲は……ここにいてはいけない。いや、どこにも……いられない」

 

 出来れば彼女の望む形で事を進めたいが、まともな精神をしていればこんな現実を突きつけられれば誰だって玲のように拒絶する事が分かっていた。

 だからこそ、善は玲が自分を拒絶しようが目的を進める事をやめない。

 何故なら、

 

「玲は――――――死んでいるから」

 

 この事実はどうやっても覆らないのだから。

 

「やめてぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 面と向かって認めたくない事実を指摘された少女は、絶望に染まった絶叫をあげると走り去ってしまう。

 

「玲っ!!」

「玲ちゃん!!」

 

 その後を善や雪子が走って追い掛けていったが、どうせ部屋の外にある転送装置で校舎に戻っただけだろうと分かっている湊は冷めた目で出て行った者たちの背中を見送った。

 ずっと一緒にいた玲が既に現実世界では死んでいたと聞かされ、他の者たちは少なくない動揺を覚えたというのに、彼だけはあくまでいつも通り。

 玲の本当の名前についても分かっていたのだから、きっと彼は全てを知ってこれまで黙っていたに違いない。

 それでも、一応は訊いておかなくてはならないと、部屋の出口から彼に視線を移したアイギスが青年に質問をぶつけた。

 

「八雲さんは知っていたんですか?」

「何がだ? 会話には主語が……」

「はぐらかさないでくださいっ!!」

 

 湊の様子はあくまで普段通り。一切の動揺なく極めて冷静で、相手を小馬鹿にしたような口調も平常運転と言えるだろう。

 だからこそ、動揺している他の者たちと温度差が生まれているのだが、普段通りでいる者が一人しかいないこともあって、アイギスは彼がわざとふざけているように感じてしまった。

 彼を怒鳴りつけるつもりなど一切なかったのだが、思っていた以上に強い口調で彼を追及する形になると、そこからは鳴上が会話を引き継ぎ、改めて湊に聞き直した。

 

「さっきの善との会話から大体は想像できる。有里、お前は玲が既に死んでいると知っていたんだろ?」

「……ああ、最初に会った時点で気付いていた。クマやマリーが人間ではないと気付くことが出来るんだ。それと同じで玲が魂の欠片から再現されたものだとは分かっていた」

 

 湊の瞳には霊視の力が宿っている。それは一定以上の格を持つ九頭龍家の生まれならば全員が持つ力だが、彼はさらに解析するための能力と死を視る魔眼を持っていた。

 人の身体を構成する成分は基本的に同じだが、生者と死者では直死の魔眼で視える赤白い光の傷が視える位置が異なっている。

 そのため、湊は玲を視た時点で彼女が生きた人間ではないと知っていたが、出会った時点で分かっていたなら話す機会はいくらでもあったはず。

 何故教えてくれなかったんだと、少し拗ねたように口を尖らせながら千枝が尋ねた。

 

「どうしてそれを教えてくれなかったのさ?」

「教える意味がないだろ? “こいつは既に死んでます。今の姿は記録から再現したものであり、死ぬ直前の姿ではありません”とでも言えば良かったのか?」

 

 玲が既に死んでいるという事実。入院着を着ていたシャドウ。三つ目のダンジョンにあった美しい白い髪の束。

 それらの情報から推測すれば、今の玲の姿が死んだときの姿でないことはすぐに分かる。

 薬の副作用で抜け落ちていったのか、それとも治療するときに髪を剃らなければならなかったのか。

 生前の彼女の細かな情報など誰も知らないが、女子たちは同性として髪を失う事の辛さを想像することが出来た。

 そんな可哀想な少女の事を話しているというのに、湊からはくだらないと感じている気配があったことで、直斗が途中で口を挟んで感じたままの疑問を訊いた。

 

「先輩は玲さんが嫌いなんですか?」

「ハッ、俺の態度が冷たいと思ったのか? 逆だ。俺は心底彼女に同情している。別に彼女がどう生きたか何て興味ないし、あの歳で死んだところでだからどうしたとしか感じない」

 

 死を理解している湊にすれば、どうしてそこまで必死になるのかが分からない。

 大切な者のためにならば彼も動くが、自分の命に価値を感じることが出来ない湊は、己の死を認めようとしていなかった玲のことを理解出来ない。

 彼女の死は純粋な結果であり、そこにはクロノスも一切干渉していない。

 外国ではもっと幼い命が平然と奪われている事もあるので、病院のベッドの上で亡くなったのならマシな方ではと思ったくらいだ。

 そのような考え方の青年だからこそ、どんなに突き放すような事を言っていたとしても、別に玲を嫌っているという事はなかった。

 だが、彼は玲のことは嫌っていなかったが、赦せないことが一つあると鋭い視線で部屋の出口を見ながら話す。

 

「だがな。記録の運び屋風情が意思を持った事で己を神と勘違いし、その驕りによって玲を苦しめた事は別だ。何もしなければ、あいつが余計な事をしなければ、今回のようにニコが余計に傷つくことなどなかったっ」

 

 激情のままに青年が吠えると彼の足下で黒い炎が揺らめく。

 魔眼の蒼い瞳が数瞬だけ銀色に変わっていたほどだ。彼は既に何者かを敵として定めているのだろう。

 

「さぁ、二人を追うぞ」

 

 言いながら湊は他の者がついてきているか気にすることなく、一人で部屋の出口へと進んで行ってしまう。

 他人などどうでもいいと冷たい態度を見せながらも、この中で誰よりも玲のことで怒りを感じているのは間違いなく彼だ。

 湊が敵と定めた者は玲に何をしたのか。先に出ていった玲たちはどうなっているのか。

 それを知るためにも校舎へと戻らなければならないため、一同は視線を交わすと先行している青年の後を追い、走り去ってしまった玲たちの許を目指した。

 

 

 


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